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NTTコム、従来の半額で利用できる都内6番目のデータセンターを公開
(2013/12/17 16:14)
NTTコミュニケーションズ株式会社は17日、2013年4月23日に開設した同社にとって都内6番目のデータセンターとなる「東京第6データセンター」を報道関係者に公開した。本記事では、同施設の特徴にも繋がっているテクノロジを紹介する。
なお、セキュリティ上の理由で写真撮影が禁止されていたため、本稿掲載の写真などは全てNTTコミュニケーションズ提供によるものであることをお断りしておく。
東京第6データセンターは、最大3,000ラックを収納可能で、稼働から半年で予約分を含めて約半分のスペースが販売済みと好調な滑り出しを見せているという。都内の中心部にほど近い場所に設置されており、山手線の駅から徒歩7分のアクセスという立地で、万が一の際には都心のオフィス街から徒歩による往来も可能であることが顧客にも価値があるという。
今回の見学に当たって説明を行なった、同社クラウドサービス部データセンターサービス部門の瀬尾浩史主査によると、地方部のデータセンターよりも、都市圏のデータセンターに対する需要は高いという。データセンターは設置したらそれで終わり、というわけにはいかず、実際には現地での対応が必要となるため、地代などのコストはあるものの、アクセスの良い都心部に新しいデータセンターが設立された。
同データセンターの最大の売りとして挙げられたのが「ハイコストパフォーマンス」という点だ。瀬尾氏は「免震やセキュリティなどは当たり前になってきて同じようなデータセンターが増えてきている。お客さんに一番喜んでいただけることは何かと考えると、やはり価格を安く、という声が大きいので、性能や品質は維持しつつ低価格化を狙った」と、この特徴を掲げる理由を述べている。そして、その低コスト化を実現するために、いくつかの対策を行なった。
1つ目は1部屋当たりのラック数を増やし、ラック当たり単価を下げたことだ。これまで部屋の中に設置していたUPSやバッテリなどを、「ロータリーUPS」という国内初導入の発電機(詳しくは後述)でまかなうことで、ラックのために使える面積を拡大。さらに、従来のデータセンターでは幅700mmのラックだったものを600mmのものとした。
さらに、このラックは従来の40Uから46Uへ高さを増している。従来は床面の耐荷重を1平方当たり1トン、1ラック搭載可能重量500kg、1ラック当たりの供給電力が6kVAであったものを、床面耐荷重1.5トン、1ラック搭載可能重量750kg、供給電力9kVAへと、1.5倍に拡張。例えば、従来3ラック必要だったシステムであれば、2ラックで収まるという計算になる。
このラック当たり単価の削減と、ラックそのものの数の削減により、運用コストは最大で半分に減らせるという。
低コストデータセンターを支えるテクノロジ
このように低価格化を図った東京第6データセンターであるが、その低価格化を実現したり、安全に運用するためのテクノロジについても説明を受けた。
まずは先述した「ロータリーUPS」である。これは停電時に稼働する発電機である。通常、データセンターには停電に備えてUPSやバッテリ、ガスタービンエンジンなどが設置されるが、これをロータリーUPSに置き換えた。
同社のシンガポールのデータセンターに導入実績があるものの、国内で導入するのは初めて。海外製のため、技術者をメーカーに派遣してメンテナンスなどの研修を受けたという。
ロータリーUPSとは、非常用発電機とUPSを一体化した装置で、ディーゼルエンジン、フライホイール、発電機から成る。通常時はフライホイールを毎分4,500回転の速度で回転させている。停電時には、フライホイールの慣性力で発電機を運転させて給電を継続。並行して2秒以内にディーゼルエンジンが起動し、10秒ほどでディーゼルエンジンと発電機がクラッチで接続されて発電機を動作させられるようになる。ディーゼルエンジンは通常のレシプロタイプで、屋上より排気。燃料は48時間以上供給されるようになっている。
この設備1台で2,000kVA(1,600kW)の発電が可能で、1部屋分の電力をまかえる。これを最終的に18台導入するという。なお、ガスタービン発電機も別途備えており、空調設備の約8割と照明設備などはこちらでまかなうようになっている。
ちなみに、ロータリーUPSは6階建ての5階と6階に設置。浸水の回避と、騒音が大きいことを、上層階に設置した理由に挙げている。
【お詫びと訂正】ロータリーUPSの停電時の起動プロセスの説明で、一部事実を異なる部分がありましたので修正しました。
空調設備も新しい方法を取り入れた。1ラック当たりへの供給電力が従来のデータセンターの1.5倍となったことで、冷却面でもより強力なものが求められる。そこで、データセンターでは地震などが発生した際の水漏れなどのトラブルを避ける意味であまり使われてこなかった、水冷式の空調設備を導入。免震構造を取り入れたことで実現した。
また、サーバールームはおよそ25℃が平均温度になるが、冬場や夜間の屋外気温はそれを下回ることも珍しくないため、外気を取り入れて、空調設備の能力を補助するようにしている。
さらに、サーバールームは、ラック間のスペースの下側から冷気を取り入れるが、このエリアをシートで密閉。その冷気がサーバーラック内を通って暖気となり上方へ抜けていく流れになっており、冷気と暖気を完全に分離する仕組みで効率を高めている。
こうした空調設備の効率アップや、LED照明などの電力削減の結果、通常は1.5程度の数値となるPUE(全電力中のITシステム電力を表す指標)は、1.2となっている。
ちなみに、本センターは免震構造を取り入れることで水冷空調設備の導入が実現したことを先述したが、東京第6データセンターはオフィス棟とサーバー棟に分かれており、サーバー棟に免震構造を導入。オフィス棟は従来からの耐震構造となっている。耐震構造では、建物に揺れ自体は発生するため、設備の誤作動などの危険は残る。
免震構造のサーバー棟は、最大で60cm動き、衝撃を最大80%吸収できる。実際、東日本大震災では、仙台駅前のビルが23cm動いたといい、それを超える規模の地震が来ても大丈夫と太鼓判を押す。
免震装置は、地震の揺れを吸収する「積層ゴム支承」や「鉛プラグ入り積層ゴム支承」、加速度を軽減させる「直動転がり支承」、揺れを吸収し軽減させる「オイルダンパー」という4種類を組み合わせている。
さらにケーブルや燃料パイプなどの配管設備も柔軟性のあるものとしたほか、通信ケーブルは、NTTが全国に張り巡らせている耐震トンネル「とう道」へ直結している。
この東京第6データセンターは立地選定は、「たまたま広い敷地が見つかった」というのも理由だが、もう1つに「近くにNTTの通信センターがあり、とう道を使いやすい」ことも理由だったそうだ。また、東京湾から10km、荒川から約1.5kmと離れており、水害に対しても危険性が低い地域であるとしている。
このほかの主な設備は写真で紹介するか、オフィス棟にはデータセンター設置企業が利用できるオフィスルームや、休憩コーナーも設置。休憩コーナーにはと呼ばれるLANケーブルや工具セットなどを扱う「IT自販機」も用意されている。