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東芝、エネルギー/ストレージ/ヘルスケアに注力する新経営方針

〜TV/PCのデジタルプロダクツ事業の再編は急務

東芝 代表執行役社長の田中久雄氏
8月7日 発表

 東芝は、2013年8月7日、2013年度経営方針説明を発表した。

 2015年度に売上高7兆円、営業利益が4,000億円、営業利益率で5.7%を目指す一方、BtoB比率を現在の80%から90%へ拡大、海外比率は55%から65%に高める方針を明らかにした。

 今年6月に代表執行役社長に就任した田中久雄氏が初めて打ち出した中期経営計画であり、「昨年(2012年)5月に佐々木前社長が発表した計画に比べると保守的な数字という指摘もあるが、必ず達成するという意思のもとに出した数字」とコメント。「東芝グループの新たな経営方針は、創造的成長の実現となる。市場の伸長に過度に依存せず、東芝ならでは事業領域の集合体をもとに、自らの成長のエンジンを作り出す。そのためには、市場とお客様の声に耳を傾け、ニーズをしっかりと理解し、東芝の資産や技術を活用して課題を解決し、価値を創造するかが重要。売上高の年平均成長率は7.1%。世界のGDP成長の5.2%を上回ることになる」などとした。

 従来からの「エネルギー」、「ストレージ」に加えて、「ヘルスケア」を3本目の柱に位置づけ、ヘルスケアに関連する事業を集約。ヘルスケア事業は、「現在4,000億円強の事業規模を、2015年度には6,000億円、2017年度には1兆円の事業規模に成長させていく」とした。

 医療分野においては、すでに全世界135カ国で販売、サービスを展開。医療画像診断市場で国内ナンバーワン、全世界で4位という強みを活かし、CTでは現在3位のシェアを2013年度には世界トップを目指す計画を明らかにしたほか、画像周辺医療領域と予防・予後ビジネスへ事業拡大、画像診断領域における高度医療への取り組みを強化するという。

 一方、同社では、新たに「ニュー・コンセプト・イノベーション」を打ち出し、5万件を超える社内の現有技術と社外の技術を組み合わせて、これまで東芝が目を向けていなかった市場に対しても進出。「東芝は、社会インフラからデジタルプロダクツまでの幅広い製品を有しており、事業機会は無限に存在する。東芝が持つこれらの製品を積極的に連携させていくことになる。新たな視点を常に取り入れ、発想の転換を常態化することを目指す。組織を横断した資産、資源の活用のための新体制を10月1日で構築。M&Aを含めて、創造的成長につなげる」などと述べた。

 従来からの事業の柱であるストレージ事業については、「高速性を実現するNANDフラッシュディスクと、大容量化に適したHDDの両方を持つメーカーとして、その優位性を活かした事業を展開していく」とし、「外部変化に機動的に対応した投資判断に加えて、一層のコスト削減に取り組む。ストレージに関する基盤デバイスを自社内に持ち、数多くのノウハウを持つ強みを活かしていく。2014年度には、低アクセス頻度向けの大容量コールドストレージシステムを投入。その一方で、高速化を実現する次世代インメモリー・コンピューティングにも取り組み、クラウドデータセンター向け事業の強化のほか、高速、大容量、省電力、省スペースといったニーズに対応していく」と語った。

 ストレージ・デバイスでは、2015年度には1兆4,000億円の売上高を目指す。

 また、エネルギー領域においては、全世界35カ所で展開するスマートコミュニティプロジェクトへの取り組みをベースに、2015年度に1兆1,000億円を目指すビル・ソリューション事業への展開や、都市インフラソリューションへの取り組み、米IBMのRSS事業の買収によって世界トップシェアとなっているPOS事業をベースとしたリテール・ソリューション(2015年度の売上高目標3,000億円)のほか、火力発電(同3,500億円)、原子力(同6,300億円)、クリーンエネルギー(同2,000億円)、T&Dおよびスマートグリッド(同7,000億円)といった領域に力を注ぐ考えを示した。

 東芝で、今回の中期経営計画を推進するために、事業体制を大きく再編する方針も明らかにし、「2013年10月1日付けで付加価値最大化に向けた事業グループへと再編する。これは2003年4月以来の大規模な再編になる」と位置づけた。

 これまで分散していた医療+ヘルスケア事業を集約し、ヘルスケア事業グループを設置。さらに、電力・社会インフラ事業グループ、コミュニティ・ソリューション事業グループのほか、横断体制としたクラウド&ソリューション事業グループを新設。これらの5つの事業グループの営業・企画担当者を中心に7,800人の社員を、新たに竣工する神奈川県川崎のスマートコミュニティセンターに集約し、「関連する部門を集約させるとともに、他部門との連携を行ないやすい環境を作る」とした。

 田中社長は、とくにクラウド&ソリューション事業グループに対して言及。「新規事業立ち上げの鍵となるのが、クラウド&ソリューション基盤の構築になる。社会インフラ、BtoB事業分野において、さらに収益力を向上させ、システム全体で他社と差別化を図り、製品、システムからソリューションサービスまで一貫したビジネスモデルを構築する。ここでは他社とのアライアンスも積極的に活用する。変化に応じることができる東芝クラウド基盤を確立する」などと述べた。

 これらの新組織のほかに、従来からの電子デバイス事業グループを継承。さらに、PCやTVなどを担当したデジタルプロダクツ事業と、白物家電などの家庭電器事業とを合わせたコンシューマ&ライフスタイル事業グループを新設する。なお、旧来のデジタルプロダクツ事業の東芝テック、家庭電器事業の照明部門、空調部門は、いずれもコミュニティ・ソリューション事業グループに移管する。

 こうした中、2015年度に売上高1兆3,000億円を目指すコンシューマ&ライフスタイル事業グループは、構造改革の対象となる。

 TV事業は2年連続で500億円規模の赤字となり、さらに先頃発表した2013年度第1四半期(2013年4〜6月)の業績もTV事業は800億円規模の赤字。また、PC事業も2013年度第1四半期実績の売上高は前年比11.5%減の1,555億円、営業赤字を計上することになった。

 「デジタルプロダクツ事業の再編は急務であると認識している。また、家庭電器でも大半の製品を海外で生産していることから、急速な円安進行の影響で国内での収益悪化が顕在化している」と指摘した。

 東芝では、7月に、デジタルプロダクツ事業の収益改善、事業体質強化を目的とした、TV事業およびPC事業の構造改革を発表したところだ。

 これは、デジタルプロダクツ事業の2013年度下期黒字化を目指すもので、新興国市場の開拓、BtoB事業へのシフト、高付加価値商品のグローバル展開などを柱に、売り上げおよび利益の拡大を目指すとともに、経営のスリム化とコスト削減を図る。

 TV事業とPC事業の合計で、2013年度には2012年度比で約100億円、2014年度には約200億円の固定費削減を図る。

 田中社長は、「デジタルプロダクツ事業の構造改革によって、利益創出に向けた集中と選択を実施。さらなる軽量経営体質の再構築を目指す。だが、これは今年度の構造改革の第1弾であり、下期の黒字化に向けては、まだまだ不十分な内容である。さらなる固定費の削減、もう一段踏み込んださまざまな施策が必要。生産や国内外の販売体制の抜本的見直しを含め、聖域を設けず、大胆な構造改革を実施する予定である。できるだけ早い時期に具体的な内容を伝えたい。デジタルプロダクツ事業の今年度下期の黒字化は必ず達成する」と意気込んだ。

 白物家電についても、「円安対策を鋭意進めるとともに、海外事業の強化、構造改革を進め、収益改善を進める」と語った。

 コンシューマ&ライフスタイル事業グループにおいては、セキュリティ・モビリティ強化機種の拡充、TSCMやTSSMといった東芝が持つクラウドソリューションの強化、文教およびヘルスケア向けソリューションの拡充といった「BtoB領域の強化」、TV向けクラウドサービスやスマート家電の展開、販売・マーケティング・サービス体制の共有、デザインコンセプトの統一といった「TV、PC、家電事業のリソース共有」、グラスレス3Dの医療機器への応用、画像処理技術や画像認識技術の車載システムへの応用などの「技術活用」に取り組む姿勢を強調した。

 「世界において、東芝らしいブランド、イメージを認識してもらうことが大切。デジタルコンシューマで生まれた技術を他の分野へ応用していくことも重要な取り組みになる。さらにインフラ、ヘルスケアの領域でも他社にはできない差異化の要素として、東芝のデジタルプロダクツ事業が持つ技術を転用できる。革新的な商品づくりを通じて、事業を強く成長させたい」とした。

 中期経営方針説明の最後に田中社長は、「創造的成長の実現には、『バリューイノベーション(創新)』、『プロセスイノベーション(創意)』、『ニュー・コンセプト・イノベーション(創発)』が必要である。『人と、地球の、明日のために。』というスローガンのもと、20万人のグループ従業員が総力を挙げて、創造的成長を目指す」との姿勢を強調した。

(大河原 克行)