2014年9月20日

2014年9月19日

2014年9月18日

Intel、Clover Trailこと「Atom Z2760」を正式発表
〜フルHD再生が9時間できるWindows 8タブレットが実現可能に

Atom Z2760

9月27日(現地時間) 発表



 米Intelは27日(現地時間)、「Clover Trail」(クローバートレール)の開発コードネームで開発してきたWindows 8タブレット向けSoC(System On a Chip)を、「Atom Z2760」プロセッサ(以下Atom Z2760)として発表した。チップ単体の価格などは未公表で、搭載製品はOEMメーカーからWindows 8の正式発表後に出荷される。

 Clover Trailは、Intelのスマートフォン向けSoCであるMedfield(Atom Z2460としてすでに市場に出荷済み)をベースに、CPUコアをデュアルコア化し、GPUを「PowerVR SGX 545」へと強化。Windows 8タブレットにも対応できるようにしつつ、新しいS0ixステートサポートなどによりアイドル時の電力を抑え、バッテリ駆動で9時間のHDビデオ再生を実現することが可能になるとIntelは説明する。

 Windows 8世代では、ARMアーキテクチャのSoC向けのバージョンであるWindows RTも用意され、Windowsタブレット市場においてARMとx86が真っ向から衝突する形となるが、Intelとしてはx86プロセッサのAtom Z2760は、従来のWindowsデスクトップアプリケーションもそのまま利用できるというアプリケーションの互換性のメリットをアピールし、引き続きWindows市場における優位性を維持したい狙いがある。

●1.8GHzのデュアルコアプロセッサで、2GBのLPDDR2を実装可能

 Atom Z2760は、2011年4月に発表されたAtom Z670(開発コードネームOak Trail)の後継となる製品で、1チップにすべての機能を統合したSoCになっている。Atom Z2760は以下のようなスペックになっている。

Atom Z2760のスペック(Intelの発表した内容より筆者作成)
プロセッサコア SSE3対応x86プロセッサ
コア数 2コア/4スレッド
L2キャッシュ 1MB(512KB×2)
クロック周波数 最高1.8GHz
メモリ LPDDR2/32bit幅デュアルチャネル
クロック周波数 800MHz
最大容量 2GB
GPU PowerVR SGX 545
クロック周波数 533MHz
命令セット Direct3D 9 Level 9.3
HDMI 1.3a
ディスプレイコントローラ 3
ビデオエンジン MPEG-2/VC-1/H.264
ハードウェアデコーダ PowerVR VDX 390
ハードウェアエンコーダ PowerVR VDE285
ストレージI/O eMMCx2
イメージプロセッシングユニット 内蔵
カメラ(リア/フロント) 800万画素/210万画素
オーディオ 内蔵
I/O MIPI-DSI
MIPI-CSI
MIPI-HIS
SPI
UART
HS-UART
I2C
USB2
SDIO 2.0
製造プロセスルール 32nm
パッケージ 14×14mm
TDP 1.7W
対応OS Windows 8

 Atom Z2760はx86プロセッサコアを2つ搭載し、Hyper-Threadingテクノロジーに対応しているため、2コア/4スレッドで動作。Medfieldに対して2倍に強化されている。各コアあたり512KBのL2キャッシュを備えており、SoC全体で1MB。プロセッサコアのクロック周波数は最大で1.8GHzとなり、負荷に応じてクロック周波数は動的に変動する仕組みを採用。命令セットは他のAtomと同じようにSSE3までの対応となっている。

 メインメモリはLPDDR2がサポートされる。LPDDR2はモバイル機器向けに開発されたDRAMで、低電圧駆動によりアクティブ時の消費電力がPC用DRAMより低く、データを保持するために行なうセルフリフレッシュ時の電力を抑える機構を備え、待機電力も低いことが大きな特徴。LPDDR2のクロック周波数は800MHzで、最大で2GBまでの対応となる。DRAMはSoCのパッケージ(14×14mm)上に重ねて、実装面積を抑えられるのも特徴の1つだ。

Atomプロセッサのロゴも変更され、新しいロゴが採用される IDFで公開されたAtom Z2760のブロックダイアグラム

●GPUはPowerVR SGX 545、ビデオエンジンはPowerVR VDX 390/VDE 285

 GPUは、ZシリーズのAtomプロセッサで継続的に採用されているImagination TechnologyのIPコアが活用されている。Intelの発表によれば、GPUはPowerVR SGX 545が採用されており、APIはDirect3D 9 Level 9.3に対応している。Direct3D 9 Level 9.3は、Windows 8で必要最低限とされるスペックで、PowerVR SGX 540を採用しているMedfieldに比べて強化されており、Windows 8でも十分利用できるように配慮された設計となっている。ディスプレイコントローラは3つ内蔵しており、HDMI(1.3a)出力にも標準で対応する。

 ビデオエンジン周りも充実しており、ビデオエンコーダ/デコーダエンジンにはGPUと同じくImagination TechnologyのIPコアが利用されている。デコーダが「PowerVR VDX 390」、エンコーダが「PowerVR VDE 285」だ。デコーダのPowerVR VDX 390を利用すると、H.264/VC-1/MPEG-2(1080p、60フレーム)のハードウェア再生が可能になる。

 また、イメージシグナルプロセッサも内蔵しており、プロセッサを利用しなくても撮影した画像や動画を圧縮形式に変換して保存することができる。Intelによれば、リアカメラ800万画素、フロントカメラ210万画素まで対応可能になっており、タブレット用として考えれば十分な機能だろう。

 このほかにも、タブレットで必要とされるセンサー類(タッチ、GPS、加速器、ジャイロ、電子コンパス、高度計、近接センサー、光センサー)を接続するための各種インターフェイス(MIPI、SPI、I2Cなど)を内蔵しているほか、USBに関してはUSB 2.0のコントローラを2つ内蔵しており、1つをUSB OTG(On-The-Go)と呼ばれるホストにもデバイスにもなれる端子(最近のタブレットやスマートフォンのMicroUSB端子)に利用し、もう1つは一般的なPCのUSB端子にするという使い方が可能だ。

●無線は別チップ、Intelからも3GやLTEモデムを提供

 無線関連(Wi-Fi/Bluetooth/WWAN)に関しては、USBまたはMIPI-HSI/UART SPIを介して接続する。Atom Z2760を担当しているIntelのモバイルコミュニケーション事業部は、Intelが独Infineonから買収した無線モデム(3GやLTEモデム)も担当しており、OEM/ODMベンダーはそれらとセットで購入できるほか、サードパーティの無線モデムを利用することも可能だ。

 ただし、Centrino Advanced-N + WiMAX 6250などのWiMAXとWi-Fiのコンボモジュールは、Atom Z2760では利用できない。なぜかというと、WiMAX部分こそUSB接続だが、Wi-FiはPCI Expressを利用して接続しているからだ。Atom Z2760はPCI Expressには対応していないため、仮に実装してもWiMAXしか利用できない。

 このため、IntelはAtom Z2760の対応WAN技術として3G/LTEだけを挙げており、WiMAXには何も触れていない状況になっている。ただし、技術的に不可能というわけではなく、サードパーティのUSB接続WiMAXモデムチップなどを利用すれば搭載機も可能だ。

●新しいS0ixステートをサポートし、Windows 8のConnected Standbyに対応

 Atom Z2760の特徴は、通常のPC向けプロセッサに比べて圧倒的に省電力であることにある。OEMメーカーが本体の熱設計時に参照するピーク時消費電力の指標である熱設計消費電力(TDP)はSoC全体で1.7Wと圧倒的に低い。Intelが設計したリファレンスデザインは厚さ8.5mmで、WindowsタブレットでもAndroidタブレットに負けないぐらいの薄さの製品を実現可能だ。

 消費電力が低いのはピーク時だけでなく、待機電力と呼ばれるOSやアプリケーションが停止している時の消費電力も圧倒的に低くなっている。すでに別記事に詳しいためここでは繰り返さないが、S0ixというIntelが独自に拡張したSステートを追加し、待機時の電力を大幅にカットするという仕組みが入っている。

 Intelは、タブレットで一般的に利用される容量27Whのバッテリを利用したリファレンスシステム(10型液晶搭載、Wi-Fiオン)で、9時間のHD再生が可能であると発表している。ディスプレイの電源だけをオフにしたWindows 8のConnected Standbyを利用した場合には、30日間充電しなくても稼働している状態にしておくことができるという。なお、Windows 8でConnected Standbyを利用するには32bit版を利用する必要があるが、Atom Z2760では最大メモリが2GBであるため、32bit版のみで特に問題は無いだろう。

●ARM SoCに匹敵か、それを上回る低消費電力を実現

 気になるClover Trailの性能だが、Intelの説明では、SPEC CPU2000の整数演算処理で、競合他社のCortex-A9ではない独自開発ARMコアのデュアルプロセッサ/1.5GHz(筆者注:おそらくQualcommのSnapdragon S4のことだと思われる)と比較して、シングルスレッド処理で1.2倍、マルチスレッド処理では1.54倍になるという。

 また、消費電力の比較では、Intelから結果が公表されている。下はそれを筆者がまとめたものだ。

  Androidタブレット 10型 iOSタブレット 10型 iOSタブレット Retina Display Atom Z2760タブレット
  消費電力 バッテリ駆動時間 消費電力 バッテリ駆動時間 消費電力 バッテリ駆動時間 消費電力 バッテリ駆動時間
アイドル 2.7W 11時間 2.5W 12時間 5W 5.9時間 2.3W 13時間
Webブラウジング 3.4W 9時間 2.6W 12時間 4.5W 7時間 2.8W 11時間
HDビデオ再生 3.1W 10時間 2.5W 12時間 4.3W 7時間 3W 10時間

 iOSタブレットがどこの製品かは言うまでもないと思うが、Androidタブレットはバッテリ25Whのバッテリを搭載した製品だとした。Atom Z2760を搭載したタブレットに関しては27Whのバッテリでテストされている。なお、参考までにiPad 2は25Wh、新しいiPadは42.5Whのバッテリ容量とAppleより公表されている。

 ディスプレイで相当消費しているRetina Displayを搭載したiOSデバイスは論外として、Atom Z2760を搭載したタブレットは、AndroidタブレットもiOSタブレットも下回っており、若干大きめ(2Whほど)のバッテリで計測しているとはいえ、バッテリ駆動時間でも上回っていることが見てとれる。

●ARM SoCと同等の消費電力はx86互換が最大の強み

 このように、Atom Z2760の特徴は、ARMアーキテクチャのSoCに比べてx86プロセッサの弱点だったアイドル時の消費電力を大幅に削減したことで、ARMベースのタブレットと変わらないか、それ以下の低消費電力なプラットフォームを実現したことにある。

 IntelはAtom Z2760を、当初はWindows 8専用のプラットフォームとして展開していく。ただし、Linuxなど別のプラットフォームに関しても将来的な対応を否定しているというわけではないと説明する。Windows 8世代では、x86向けのWindows 8とARM向けのWindows RTが併存する形となるが、Windows RTがこれまでMetro Style Appsと呼ばれてきたWindowsストアアプリケーションしか動作しないのに対して、x86向けWindows 8では、Windows 7までに開発されてきたデスクトップアプリケーションがそのまま動作する。

 これは特にビジネス向けでは重要で、例えば企業向けの業務ソフトウェアや、暗号化ソフトウェア、クライアント管理ソフトウェアなどは、すべてx86向けのデスクトップアプリケーションとして提供されている。仮にWindowsストアアプリケーションへ移行していくとしても、コンシューマ向けのアプリケーションに比べて膨大な時間がかかると考えられる。このため、ビジネス向けのタブレットでは、ARMベースのタブレットを選ぶより、現在のPCの延長線上にあるx86ベースのAtom Z2760搭載タブレットを選ぶのが自然の流れになるだろう。

 もちろん、コンシューマユーザーであっても、すでに多数のWindowsアプリケーションのライセンスを所有していれば、Atom Z2760搭載タブレットでそのまま利用できるのは大きなメリットだろう。今後Windowsストアアプリケーションが普及すれば、AndroidやiOSのタブレットと同じような感覚でWindowsタブレットを使うことができるようになる。

 なお、8月末にドイツで行なわれたIFAでは、多数のAtom Z2760搭載タブレットが発表されており、Windows 8の正式発表後に市場に投入される見通しだ。IFAでは、Acer、ASUS、HP、Lenovo、Samsung ElectronicsがAtom Z2760を搭載した製品を展示していたが、Intelによれば10のOEMメーカーが、20のデザインをすでに終えていると発表されている。Intelのプレスリリースには、前出のメーカー以外にもDell、富士通、LG Electronics、ZTEなどがOEMメーカーとしてあげられており、まもなく搭載タブレットなどが発表されるだろう。

Lenovoの「ThinkPad Tablet 2」 HPの「ENVY X2」
Samsung Electronicsの「ATIV Smart PC」 Acerの「ICONIA TAB W510」 ASUSの「Vivo Tab」

(2012年 9月 28日)

[Reported by 笠原 一輝]