エプソンは、ビジネスインクジェット複合機/プリンタ製品ラインナップを拡充し、新たに9機種を9月20日より順次発売する。価格はすべてオープンプライス。
新製品はいずれも実売4万円以下で、エントリー向けラインナップを拡充する。従来と同様、レーザープリンタと比較してファーストプリントの高速性やイニシャルコスト/ランニングコストの低減を謳う。
今回から新たな試みとして、ビジネス向けインクジェットプリンタとレーザープリンタのカタログを統合し、比較できる数値を共通化することで、ビジネスユーザーが購入の際に性能やコストを検討しやすくした。
●A4カラー複合機/プリンタPX-605F |
A4カラー複合機は、「PX-675F」、「PX-605F」、「PX-535F」、「PX-505F」を新たに投入。発売時期は9月20日で、直販価格は順に39,980円、29,980円、24,980円、19,980円。
PX-675FとPX-605Fのプリンタ/スキャナエンジンは共通で、違いは675Fが給紙カセット2基で合計500枚の給紙、605Fが給紙カセット1基で250枚の給紙になっている点。両製品ともに自動両面印刷をサポートする。
プリンタ部の主な仕様は、インクが顔料4色、解像度が5,760×1,440dpi、印刷速度がカラー/モノクロともに最速約38ppm、対応用紙がA4~はがきなど。背面に手差しトレイを備える。耐久性は6万ページ、ランニングコストはA4カラー文書が約9.1円/枚、モノクロ文書が約2.6円/枚。
スキャナ部の主な仕様は、センサーがCIS、解像度が1,200×2,400dpi、出力が24bit、対応用紙が最大A4まで。30枚のADFを備える。このほか33.6kbps対応のFAXモデムやコピー機能を備える。
インターフェイスはUSB 2.0、Ethernet、IEEE 802.11b/g/n対応無線LAN、SDカード/メモリースティックデュオ/xD-Picture Cardスロット、PictBridge用USBホストなどを備える。本体サイズおよび重量は675Fが449×427×308mm(幅×奥行き×高さ)/約11kg、605Fが449×417×243mm(同)/約9.1kg。
PX-535FとPX-505Fもプリンタ/スキャナエンジンは共通で、違いは535Fは30枚のADFとEthernet、PictPridge用USBホストを装備しており、505Fがそれらを省いている点。PX-675F/605Fとは異なり、給紙カセットではなく背面備え付けの120枚給紙可能なASF(オートシートフィーダ)を利用し、自動両面印刷は非対応となる。
PX-535F | PX-505F |
プリンタ部の主な仕様は、インクが顔料4色、解像度が5,760×1,440dpi、印刷速度がカラー18ppm/モノクロ34ppm、対応用紙がA4~はがきなど。耐久性は5万ページ、ランニングコストはA4カラー文書が約13.1円/枚、モノクロ文書が約4.3円/枚。
スキャナ部の主な仕様は、センサーがCIS、解像度が1,200×2,400dpi、出力が24bit、対応用紙が最大A4まで。33.6kbps対応のFAXモデムやコピー機能も備える。
インターフェイスはUSB 2.0、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANなどを備える。本体サイズおよび重量は535Fが392×377×221mm(同)/約6kg、505Fが392×377×177mm(同)/約5.1kg。
A4カラープリンタは、「PX-205」と「PX-105」の2機種を投入する。発売時期は9月20日で、直販価格はそれぞれ16,980円、9,980円。
PX-205はPX-605Fのプリンタエンジン、PX-105はPX-535Fのプリンタエンジンの仕様を踏襲する。PX-205は自動両面印刷に対応。インターフェイスは共通でUSB 2.0、Ethernet、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANを備える。
本体サイズおよび重量は、205が449×380×165mm(同)/約5.4kg、105が392×264×148mm(同)/約3.3kg。
PX-205 | PX-105 |
●A4モノクロ複合機/プリンタ
PX-K751F |
A4モノクロ複合機は、「PX-K751F」の1機種を新たに投入する。発売時期は11月初旬で、直販価格は34,980円。
A4モノクロ印刷が約1.8円/枚の低ランニングコストを実現する製品。プリンタ部の主な仕様は、インクは顔料、解像度は1,200×600dpi、印刷速度は約26ppm。対応用紙はA4~はがきなど。250枚給紙可能なカセットと80枚給紙可能なASFを備える。オプションで250枚給紙カセットを追加可能。耐久性は10万ページ。
スキャナ部の主な仕様は、センサーがCIS、解像度が1,200×2,400dpi、出力が24bit、対応用紙が最大A4まで。33.6kbps対応のFAXモデムやコピー機能も備える。
インターフェイスはUSBとEthernet。本体サイズは460×420×341mm(同)、重量は約14.1kg。
A4モノクロプリンタは、「PX-K701」と「PX-K150」の2機種を新たに投入する。発売時期は11月初旬で、直販価格はそれぞれ19,980円と7,980円。
PX-K701 | PX-K150 |
PX-K701はPX-K751Fのプリンタエンジンの仕様を踏襲する。インターフェイスはUSBとEthernet。本体サイズは460×420×284mm(同)、重量は約11.2kg。
PX-K150は印刷解像度が1,440×720dpiで、120枚の背面ASFを備えたモデル。印刷速度やランニングコストは測定中としている。インターフェイスはUSB 2.0、Ethernet、IEEE 802.11b/g/n対応無線LAN。本体サイズは392×264×148mm(同)。
●出荷台数60万台、シェア50%以上を狙う中野修義氏 |
8月21日に都内で開かれた製品発表会では、製品の位置づけ、新機能の活用法、そしてシェアなどの販売戦略などを中心に語られた。
エプソン販売株式会社 取締役 販売推進本部長の中野修義氏は、「A3のカラー複合機は2010年までブラザーの独走状態であったが、2011年に我々が投入したことで市場が2倍に拡大し、シェアを58%獲得するに至った。しかしながら月1,000枚以下を印刷する25,000円台のエントリー向けラインナップが手薄だった。2012年のラインナップはこの領域をしっかり確保し、今後のステップアップの基盤を築きたい」とした。
エプソンがA3複合機投入後の市場拡大 | 2012年のフォーカス市場 |
ビジネス市場におけるインクジェットのアドバンテージとして、印刷コストが安い、ファーストプリントが速い、対応用紙の多様性、そして節電性能などを挙げ、ユーザーに中心に訴求していきたいとした。
さらにエプソンならではのサービスとして、外出先からプリンタに与えられたメールアドレス宛にメールを送ることで印刷できる「メールプリント」や、新製品でスキャンした文書を、登録済みのプリンタのメールアドレスに直接送信して印刷できるFAXのようなことを実現する「メールdeリモート印刷」、PCのドライバ設定画面からプリンタのメールアドレスを指定して、あたかもローカルプリンタのように印刷できる「リモートプリントドライバー」など、「Epson Connect」と総称される機能を搭載し、ビジネス市場における利用シーンを拡大していきたいとした。
ビジネスにおけるインクジェットの価値 | インターネットを通して印刷する機能を「Epson Connect」に統括 |
エプソンプリンタの独自機能 | Epson Connectの提案 |
セイコーエプソン株式会社 プリンター企画設計部 部長の和田高一氏は、新製品の特徴について説明。これまで追求してきたビジネスインクジェットの基本性能に加えて、新製品では耐久性、堅牢性、使い勝手の向上および小型化、モノクロラインナップの充実を目指したという。
和田高一氏 | 新製品の位置づけ |
基本性能はこれまで通り、文字や写真でそれぞれ異なる処理を施すことで画質を高める機能、蛍光マーカーでなぞってもにじまない顔料インク、ファーストプリントの高速性、レーザープリンタと比較した時の低消費電力性、そしてレーザープリンタと比較した時の低ランニングコストをアピールした。
新製品のポイント | 高い印刷品質 | 顔料インクの特徴 |
水についてもにじまない顔料インク | マーカー耐性も備える | ファーストプリントの必要性 |
カラーのファーストプリント速度 | モノクロのファーストプリント速度 | インク定着が速いため、乾燥時間が短く高速印刷が可能 |
低消費電力性 | レーザープリンタと比較した時のランニングコスト |
耐久性の面では、新製品ではいずれも5万~6万ページというエントリーレベルのレーザープリンタ相当の耐久性を実現している。また、従来チルトに対応している操作パネルが固定式となって堅牢性が向上したほか、排紙トレイも4段から3段へと部品数を減らし、構造的にも改善。給紙カセットも堅牢性を高めた。
使い勝手の向上の面では、新たに一部のモデルで背面手差し給紙を備えることで、厚紙や封筒などの特殊用途の印刷をサポート。また、ユーザーが交換可能なメンテナンスボックスや現在機能するボタンのみ点灯するライティングナビゲーションを備えたタッチパネルなどを搭載した。
一方小型化においては、PX-105/535F/505Fのみとなるが、従来のPX-403Aから幅を42mm縮めた設計を採用したという。モノクロラインナップにおいては、PX-K751で1万ページ印刷可能なインクを用意したことをアピールした。
新製品の特徴 | 耐久性の向上 | 排紙部の剛性を向上 |
給紙カセットの改良 | 背面手差し給紙の追加 | 交換可能なメンテナンスボックス |
操作部の改善 | 本体の小型化 | モノクロモデルの投入と大容量インクの開発 |
複合機のスキャン結果をもう1台別のプリンタで出力できる「メールdeリモート印刷」 | リモートのプリンタを、普段使っているプリンタと同様に振る舞うリモートプリントドライバー |
リモートプリントドライバーの画面 | 各プリンタのEpson Connect対応一覧 |
最後に販売戦略について、エプソン販売株式会社 OP MD部 部長の鈴村文徳氏は、「インクジェットは企業にとって“本体価格が安い”というイメージが定着しているものの、もっとも重視されている“ランニングコストが安い”点については認知度が相対的に低い。新製品の投入と同時にレーザープリンタとカタログを統合することで、“レーザープリンタの2分の1”の低ランニングコストを徹底的に訴求していき、認知拡大を図る」とした。
またインターネット経由で印刷できる「Epson Connect」についても、郵送代替、FAX代替になることを提案し、ビジネス向けインクジェットの新たな価値を創出していく。これにより2012年は合計60万台出荷し、A4/A3ともにビジネス向けインクジェット市場でシェア50%以上を狙いたいとした。
鈴村文徳氏 | 新製品の発売時期 |
製品の直販価格 | 販売目標 |
ユーザー調査によるランニングコストへの意識 | レーザープリンタとのランニングコスト比較 | 低ランニングコストを徹底的にアピール |
Epson Connectの利用例(郵送代替) | Epson Connectを利用すればFAXの代替にもなる | ビジネスにおけるEpson Connectの利用シーン |
(2012年 8月 21日)
[Reported by 劉 尭]