スティーブン・ザン氏 |
NVIDIAは29日、モバイルプロセッサ「Tegra 3」についての説明会を開催し、いくつかのデモを交えながら、同プロセッサの性能や特徴について、同社テクニカルマーケティングエンジニアのスティーブン・ザン氏が説明を行なった。
今回の説明内容のほとんどは、ASUSTeK製Tegra 3搭載Androidタブレットの「Eee Pad TF201」の発表時などのものと重複するので、かいつまんで紹介すると、Tegra 3は、4つのCPUコアと、1つのコンパニオンコアによって構成される、高性能と低消費電力を両立したSoC(System on chip)ということだ。
性能について、果たしてクアッドのような高性能のものが必要なのかという懐疑的な声もあるが、ザン氏は「数年前にスマートフォンにデュアルコアがもたらされた際も同じような声があったが、今では多くのユーザーがそれを普通に使いこなしている」と述べ、PC用CPUがそうであったように、モバイルCPUでも多コア化は必然的な流れであるとした。
ハード/ソフトが相乗的に進化し、ユーザーはより多くのことを望むようになる | PC用CPUのマルチコア化の歴史 | モバイル用ではPCでのノウハウを活かし、より速いペースでマルチコア化が進んでいる |
一方で、携帯端末に対するユーザーの最大の不満点がバッテリの持ちの悪さという結果が示すように、モバイルプロセッサでは性能だけでなく、低消費電力であることが重要となる。この点について、Tegra 3はCPUの構造および、いくつかの支援技術によって低消費電力を実現している。
Tegra 3は、4つの高性能コアに加え、動画の再生や文字の表示といった低負荷のことだけを請け負う低消費電力のコンパニオンコアを組み合わせるという「4-PLUS-1」という構造になっている。画像やWebページの読み込みなど瞬発的な反応が求められる状況や、3Dゲームのように継続的に高い性能が求められる状況ではストレスなく動作するが、負荷が下がると、自動的に高性能コアからコンパニオンコアへと移行する。これにより、Web閲覧、音楽再生、動画再生、ゲームプレイといったいずれの状況でも、Tegra 3はTegra 2より消費電力を引き下げている。
このほか、液晶について、消費電力の高いバックライトの輝度を下げながらも、表示色を明るいものに補正することで、バックライトオンの時と同等の見栄えを実現する「PRISM Display技術」を搭載。同技術の実現に際しては、搭載液晶に合わせた最適化が必要となるため、NVIDIAでは端末メーカーと協業して、この技術を搭載している。この補正は、GPUを使って全画素を60fpsで解析した上で行なっているが、これに伴う消費電力の増分は、バックライトの輝度低下に伴う消費電力の低下よりも小さい。なお、同技術は端末によって、メーカーがオフにしていたり、ユーザーがオン/オフを切り替えられる場合がある。
もう1つTegra 3の特徴として、タッチセンサーの認識をCPUで処理していることが挙げられる。同社ではこれを「DirectTouch」と呼んでおり、専用のコントローラが不要になり、消費電力およびコストを引き下げられるだけでなく、1秒あたりの認識サンプル数も向上し、よりスムーズな追随が可能となる。DirectTouchについては、Atmel、Cypress、Synapticsといったメーカーが対応を表明している。
このほかザン氏は、2011年11月のTegra 3発表以降、今日までに6社から11機種のタブレット、5社から5機種の搭載スマートフォンが発表/発売されたことや、「Sonic the Hedgehog 4: Episode II」など同プロセッサに最適化された高画質/高精細なゲームタイトルが各種発表されていることなどをアピールした。
また、質疑応答では、Appleが新しいiPadの発表に際して、同製品のグラフィック性能がTegra 3よりも4倍高いと説明したことについて、「確かに特定のベンチマークではそういった結果が出るが、すべてにおいてiPadが4倍高性能なわけではない。また、画質を含めた総合的なゲーム体験においては、Tegra 3が勝る」との見解を示した。
Tegra 3搭載タブレット | Tegra 3搭載スマートフォン | Tegra 3に最適化されたゲームも登場 |
Sonic the Hedgehog 4: Episode IIの実際の画面 | Golden Arrow THDの実際の画面 | GeForceとTegraに最適化されたリモートデスクトップソフト「Splashtop THD」により、PCゲームを遅延なく720pの画質でリモートプレイできる |
(2012年 3月 29日)
[Reported by 若杉 紀彦]