オンキヨー、7型Android端末を2011年前半にも投入
~菅社長が「DiS×Android展 2011」の講演で公表

東京・秋葉原のベルサール秋葉原で開催された「DiS×Android 展 2011」

1月25日 開催



 オンキヨーの取締役であり、オンキヨーデジタルソリューションズの代表取締役社長を務める菅正雄氏が25日、東京・秋葉原のベルサール秋葉原で開催された「DiS×Android展 2011」の講演で、新たなスレート端末の投入と普及戦略について言及した。

 「Android搭載スレートとして新たに7型モデルを追加する。さらに、スレートの普及に向けてハードウェアプラットフォームを提供する新たな仕組みを構築する」。

 同イベントは、ダイワボウ情報システムが開催したもので、会場には、オンキヨーを始め、約50社のAndroid搭載スレートPC関連企業が参加。Androidの最先端動向を見ることができた。

 オンキヨーデジタルソリューションズの菅社長は、午後1時からの講演で、「ONKYOのスレートPC事業戦略~アンドロイドが市場を変える~」をテーマに、同社のAndroid搭載スレートPCの取り組みを紹介する中で新たな端末などについて触れた。

オンキヨーデジタルソリューションズの菅社長

 講演の冒頭、菅社長は、スレート端末の定義について考え方を示した。

 「スマートフォンは、ディスプレイが4~5型のもの。それに対して、スレート端末は7型を境界線として、10型ディスプレイを中心としたものになる。そして、当社の場合は、Windowsを搭載したスレート端末をスレートPCとし、Androidを搭載したスレート端末をスレートパッドとし、製品を切り分けている。Windows搭載とAndroid搭載のスレート端末は、まったく異なる状況にある製品だ」などとした。

 また、「オンキヨーでは、商品戦略の考え方を3つに分けて捉えている。1つは、競争相手がゼロあるいは少なく、それなりに大きな市場を狙える戦略。これがスレートの世界だと考えている。当社は、2010年11月28日にWindows版を3機種出荷したが、しばらくは競争相手がおらず、しかも想定される市場規模が大きいといえる。

 2つ目は、競争相手が多くても、自らの強さを発揮する戦略。最たる例がAppleであり、弱い相手を抑え込んで、現在の地位を獲得した。この地位を獲得したのは、iPodの成功が大きい。Appleが競争相手としたのはソニーのウォークマンであり、競争相手を変えることで、マーケットそのものを変えてしまうことができた。

 そして最後が、フロービジネスからストックビジネスへの考え方の転換である。PCメーカーの成績表はマーケットシェアであり、1年間に何台売ったかが評価の基準となっているが、見方を変えれば、年間1,300万台の国内出荷台数を市場として捉えるのではなく、すでに利用されているインストールベースの市場を捉えれば、その5倍から10倍ものPC市場が対象となるビジネスが可能になる。使われている機器に対して、周辺機器として販売するという提案も必要。これはTVのネットワークコントローラとして、スレートPCを利用するといった提案などにもつなげることができる。毎年のフロービジネスではなく、長い視点でのストックビジネスの発想が必要である」などとした。

●WindowsとAndroidのスレートは別カテゴリ

 冒頭に触れたように、菅社長は、スレート端末を2つに分類して捉えている。

 「WindowsベースのスレートPCは、互換性が重視される。これは30年前の1981年8月に、最初のデスクトップPCであるIBM-PCが誕生し、その8年後の1989年に日本から世界初のノートブックPCが生まれたときと同じ状況にある。ノートブックPCは、デスクトップと同等の機能を持ち、ソフトウェアの互換性を持ちながら、フォームファクターを小型化したことで、家や会社の外に持ち出すことができるようになった。いまや、国内市場の約70%がノートブックPC。デスクトップPCしかなければ、市場は半分しかなかっただろう。コンパクト化することで利用シーンを広げ、市場が2倍になったともいえる。スレートPCは、ノートブックの機能を維持しながら、キーボードを省き、さらにコンパクト化したもの。そして、Windowsは開発にかかる費用と時間がゼロ。Windows 7にマルチタッチが標準で搭載されたことも大きい。既存の資産を使用しながら、新たな利用を開拓するものになる」とした。

 一方で、Android搭載スレート端末は、「iPadと同じ世界の製品である」とし、「新しいソフトウェアや、コンテンツを開発する必要がある。初期投資が必要になるのがWindows環境との大きな違いになる。だが、一度、初期投資をすると使いやすい専用端末が投入できるようになり、低価格の専用端末としての普及も期待できる。Androidの世界と直接競合するのはiPadになる」などとした。

 また、Windows上でAndroidのアプリケーションが動作するデモストレーションも行ない、Windows搭載スレート端末でもAndroidの世界が広がる可能性を提案してみせた。

 続けて、菅社長は、「スレート端末は、デスクトップPC、ノートブックPCと並ぶ、PC市場の第3の柱になる。その市場の広がりにおいて、我々はどう追随していくかが課題になる。このチャンスを生かし、ナンバーワンを目指したい」と断言した。

オンキヨーが示す3つの商品戦略スレートPCのロードマップスレートパッドのロードマップ。7型の製品投入を予定している
オンキヨーが発売を明らかにした7型のAndroid端末の試作品Bluestackのデモストレーション。Windows上でAndroidのアプリケーションが動作する

●さまざまな要求に応える製品を揃える

 菅社長は、スレートPCの発売から2カ月半の動向を自己分析し、「ノートブックPCを置き換えるのではなく、いままで使われていなかったところで使われていることを実感している。これはノートブックPCが誕生したときと一緒の動き」とコメント。「この2~3年で、200~300万台の市場が創出されると予測している。これにより、1,300万台の国内PC市場が1,500万台規模に拡大することになる」とした。

 さらに、「個人よりも、企業ユースでの引き合いが多い。CPUの強化や、通信モジュール内蔵への要求も多く、さらに、太陽の下でも視認性が高く使いやすいもの、頑丈なもの、軽快なものといった要求もある。また、単機能型のものが欲しいという要求もある。オンキヨーは、こうした要求にもどんどん対応していく考えだ。オンキヨーでは、12月28日から、10型ディスプレイを搭載した2機種のAndroid端末を発売したが、今後、3Gなどの通信モジュールを搭載した製品の投入や、7型ディスプレイ搭載端末の商品化も計画している。7型では、iPodと同じ4:3の形状ものと、16:9のものを用意し、用途によって使い分けてもらえるようにする」と語った。

 一方、菅社長は、「Android市場はまだまだ未整備。30年前にPCが登場した時と同じ状況である」とし、「いま企業が不安に思っているのは、Android搭載のスレート端末が、長年に渡って使えるものなのかどうかという点。さらに、継続して製品が出るのかというこを気にしている。こうした点をきちんと整備しないとビジネスシーンでは使えない。オンキヨーでは、秩序と継続性をコミットし、ハードプラットフォームを提供する。ソフトメーカーをはじめとするサードパーティや、システムインテグレータ、流通業者と一緒になって、検証、評価されたものが推薦できる環境を作りたい。ハードを作るだけでは50点しかとれない。パートナーと一緒に市場を広げることで、100点が取れるようになる」などとした。

さまざまな業種からの引き合いがあるというハードウェアプラットフォームを提供することを提言実現する場としてオンキヨースレートプラザを開設する

 具体的な活動として、2011年2月をめどに、Web上に「オンキヨースレートプラザ」を開設。パートナーが開発し、オンキヨーのスレート端末での動作が確認されたソフトウェアを紹介したり、企業における導入事例の紹介などを行なうという。

 「なんとかこの市場を、パートナーともども拡大させていきたい」と、菅社長は締めくくった。


●参考展示を含むAndroid搭載スレート端末が数多く展示

 「DiS×Android展 2011」は、流通商社であるダイワボウ情報システムが開催したもので、約50社の関連企業が出展。Android搭載スレート端末だけを対象にしたイベントとしては、業界初といえるものだ。

 ダイワボウ情報システムの取引先である首都圏地域の販売店やシステムインテグレータなどを対象に実施。事前登録は1,100人に達したという。

同時開催されたセミナーは毎回盛況となった

 「当初はセミナーの出席規模も100人程度を想定していたが、取引先への告知を開始して2日間で満員となる盛況ぶりに、急遽、会場を拡大した。業界関係者のAndroidに対する関心の高さがわかる」と同社では説明する。

 当初は、東京・秋葉原のベルサール秋葉原の2階を展示およびセミナー会場としていたが、1階にセミナー会場を移行。それでもセミナーは毎回盛況となった。

 展示会場では、オンキヨーが自社ブースに2010年12月28日に出荷したAndroid端末「スレートパッド」を展示したほか、併催されたセミナーで投入計画を明らかにした7型ディスプレイ搭載のプロトタイプを展示して、来場者の関心を集めていた。

 オンキヨーデジタルソリューションズの菅正雄社長は、「展示会場でも、Windows 7搭載スレート端末の上でもAndroidアプリケーションが動作できるようなデモストレーションも行なった。さらに、出展各社に対して45台のスレートパッドを貸し出し、デモストレーションが行なえるように協力した」と語る。

オンキヨーが参考展示した7型のAndroid端末。16:9と4:3を用意。2011年前半の発売を予定しているオンキヨーのWindows搭載スレートPC。11月から3機種を投入している

 そのほか、東芝、日本エイサーなどが正式発表前のAndroid端末のプロトタイプを展示したほか、マウスコンピューターはLuvPad AD100を、NECではLifeTouchを展示して、それぞれデモストレーションを行なっていた。

東芝が参考展示していたAndroid搭載のスレート端末東芝デジタルメディアエンジニアリングがプロトタイプとして展示したAndroid端末。筆圧を関知した入力が可能両側にバッテリが内蔵でき、順番に入れ替えることで連続稼働を可能にするといった使い方も可能
日本エイサーが参考展示したスレートPC。詳細は明らかにしていないマウスコンピューターのブースでは「LuvPad AD100」を実演してみせたNECのAndroid端末「LifeTouch」を展示。CESで展示された2画面タイプやキーボードタイプなどは展示していなかった
アイ・エス・ビーが展示したネットコムのiSkylight 7。Snapdragon 1GHzを搭載したローコスト版同じくiSkylight 7。こちらはTelechips 800MHz(TCC8900)を搭載したAndroid端末
1月中にトライウインから発売される予定の通信機能付きデジタルフォトフレーム「Luna CPS-No.1」AspenソリューションのASPELIUS。CPUはMarvell Aspen-M 800MHz

 ソフトウェア関連では、クラウドをベースとしたサービスや画像補正アプリケーション、データベースや多言語入力システム、予約管理や名刺管理といったビジネスアプリケーション、セキュリティ関連製品、コミュニケーション製品など幅広い領域からの製品・技術展示が行なわれたほか、開発環境ソリューションやハードウェアの検査環境の提案なども行なわれており、Androidの普及に向けた地盤が整いつつあることを感じる展示内容となっていた。

スレート端末を利用したアプリケーションも展示。サイボウズのKUNAIのデモストレーションセースルフォース・ドットコムによるクラウドを利用したデモストレーションアクシスソフトの名刺情報管理サービスのデモストレーション
Androidの開発プラットフォームなども展示されていたこちらはタッチパネル液晶画面の検査機
日本通信はスレート端末によるB-mobile活用を提案エレコムはスレート端末用の各種サプライを展示

 ダイワボウ情報システムでは、「2011年4月以降の次世代Androidの今後の技術的な進化に期待が集まる一方、医療、金融、教育分野などにおいて、Androidの導入に関心が高まっている。こうしたイベントをいち早く開催することで、ダイワボウ情報システムがこの分野に対して、先行的に取り組んでいる姿勢を示したかった」としている。

 2月には、大阪、名古屋で開催される同社プライベートイベントの中で、Android搭載スレート端末の展示などを行なっていく計画だという。

(2011年 1月 26日)

[Reported by 大河原 克行]