27日、三菱総合研究所理事長 小宮山宏氏、慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授 中村伊知哉氏、マイクロソフト代表執行役社長 樋口泰行氏、ソフトバンク代表取締役社長 孫正義氏など7人が発起人となり、「デジタル教科書教材協議会(DiTT)」の設立準備会が開催された。
デジタル教科書教材協議会は、小中学生、高校生、大学生、一般教材などのデジタル教科書実現に向け、(1)デジタル教科書・教材の要件の検討、(2)ビジネスモデル、普及方策の検討、(3)実証実験の企画・実施、(4)そのほかの課題整理・検討・提言の4つの活動を行なう。
デジタル教科書・教材の備える条件として、「小学校1年生が持ち運べるほど軽く、濡らしても、落としても壊れにくい」、「タッチパネル」、「電池が長持ちする」、「セキュリティ・プライバシー面で安心して使える」など10の条件などを試案として掲げている。
発起人として前述の4氏と、立命館大学教育開発推進機構教授 陰山英男氏、NPO法人CANVAS理事長 川原正人氏、東京学芸大学客員教授 藤原和博が名を連ねている。
年会費は、幹事会員は100万円、一般会員は24万円で、すでにNTTコミュニケーションズ、ソフトバンク、マイクロソフトなど12社が幹事会員に、一般会員としてサードウェーブ、セガ、ソニー、電通、凸版印刷など18社が参加を表明し、7月27日の設立総会開催に向けて準備が進められている。
設立総会には、原口一博 総務大臣、鈴木寛 文部科学副大臣も参加予定で、教育界、産業界、政界まで巻き込んだ活動を進めていく計画だ。
今回の設立準備会では、協議会設立の背景や設立の狙いが説明された。
元東京大学総長でもある小宮山氏は、「この協議会は、課題や事例収集も設立目的の1つであるが、やはり実験を行なってみないとわからないことが多い。学校現場にはITが得意な先生もいれば、そうではない先生もいる。こうした先生方の現場の声を含め、3年くらいで1つの決着をつけなければ、10年、20年はとても待っていられない状況が、世界各国で起こりつつある。新しいことをやろうとすれば、さまざまな課題が見えてくるのは当然のことで、課題の抽出と、解決に向けた活動を進めたい」と実証実験を進めながら課題を模索し、実現に向けた活動を進めたいとした。
慶應義塾大学 中村伊知哉氏 | マイクロソフト 樋口泰行氏 | ソフトバンク 嶋聡氏 |
発起人の一人である中村教授は、「当初は、『デジタル教科書協議会』として設立準備を始めたが、教科書に留まらず教材のデジタル化を模索する必要があるとして、『デジタル教科書教材協議会』の名称とすることが決定した。正式な発足前ではあるが、スピード感が必要なことから、2つの委員会活動を立ち上げる。現在、政府が全方位体制で進めているデジタル教科書導入実現に向けた、産官学の受け皿となるべく、教育現場とコミュニケーションを取りながら進めていく」との方針を強調した。
マイクロソフトの樋口泰行社長は、マイクロソフトが制作した「PC 1人1台の先にあるもの 未来の子どもたち」というビデオを紹介しながら、「我々ITベンダーとしては、IT機器を利用することで、情報を検索する力を持つだけでなく、考える力、覚える力、創造力といったクリエイティビティ能力を強化できるような、ネットワーク技術、クラウド技術、アプリケーション技術などを提供していきたい」とアピールした。
ソフトバンク社長室長 室嶋聡氏は、「デジタル教科書実現に向け、予算が足りないと言われているが、ダム建設と比較すれば決して実現不可能な数字ではない。リテラシーという点でも、明日からiPadが日本で発売されるので、誰でも問題なく利用できるようになる」と具体的な数字面から、電子教科書が実現可能だと訴えた。
(2010年 5月 28日)
[Reported by 三浦 優子]