オフィス家具メーカー6社が「IT社会の理想・未来のオフィス」公開

PMO秋葉原は、柱のないレイアウトフレキシビリティの高いオフィスとなっている

2月19日/22~25日 開催

会場:PMO秋葉原



 ライバルとしてしのぎを削る、株式会社イトーキ、株式会社インターオフィス、株式会社内田洋行、株式会社岡村製作所、コクヨオフィスシステム株式会社、プラススペースデザイン株式会社の6社のオフィス家具メーカーが一堂に会し、「理想のオフィス・未来のオフィス」をテーマとしたコラボ・コンペティションが19日、秋葉原で開催された。

 会場となったのは野村不動産が展開する、中小規模でありながら、大規模ビルと同レベルのセキュリティなどを実現したオフィスビルブランド「PMO(プレミアム・ミッドサイズ・オフィス)」の5棟目の物件である「PMO秋葉原」。1月末に完成したこの物件は、JR秋葉原駅から徒歩7分の立地にあり、貸し床面積918坪、基準階床面積131坪、8階建てで、ベンチャー企業やシステム開発会社など規模は小さくても、高セキュリティ、ネットワーク設備の充実を求める企業をターゲットとしている。

 既存のPMOシリーズの物件では、アロマ空調を導入するなど斬新的なコンセプトを取り入れていることから、オフィス内のレイアウトについても大手オフィス家具メーカーがデザインコンペを実施することで、新しいスタイルのオフィスを提案する。

 2月19日、2月22日~2月25日の計5日間、コンペティションを開催し、来場者の投票を最も集めたメーカーが、今後PMOに設置する新しいモデルオフィスのメインコーディネートを担当することが決定している。

●iPhoneで変わるオフィス:インターオフィス

 インターオフィスのプレゼンテーマは、「iPhoneがもたらすニューワークスペース」。iPhoneのような携帯端末の進化と、クラウドコンピューティングの普及によってオフィスの役割は大きく変わっていると定義。従来のようにオフィスがデスクワークを行なうためだけの場ではなくなり、仕事は外出先でこなし、オフィス内ではコミュニケーションや休息をとるための場として活用されるという斬新なコンセプトのもと、独のオフィス家具メーカーであるvitraのグリーンのソファを置いて、オフィスというよりもリビングのような雰囲気を醸し出す展示を行なった。

 iPhoneについては、スマートフォンを利用したプレゼンやコミュニケーションツールを開発している株式会社サイバーウェアのソリューションを展示。未来のオフィスは実現不可能なものではなく、すぐに実現可能であることをアピールした。

インターオフィスのブースでは、独vitraのグリーンの家具を設置し、オフィスのデスクワーク以外の役割をアピールiPhoneを使ってプロジェクターを操作し、情報共有することも想定している

●個人スペースを重視:プラススペースデザイン

 プラススペースデザインは、「私の間」をタイトルに、茶室と同じ1坪サイズの個人ブースを展示。未来のオフィスでは「私」という視点が欠かせないとして、個人が周囲からは隔離されることはなく、なおかつプライバシーを保てるスペースを提案している。茶室と同スペースなど日本の伝統をふまえた作りながら、周囲とのプライバシーを保つためにパーティションとなっているガラス部分が透明、スモークにボタン1つで変えることができ、リモコンで明るさの調整、周囲の雑音を消すためのスクリーンノイズなど最新技術が取り入れられた机となっている。机部分も、「ITを活用することでペーパーレスが進み、書類など荷物を置くためにスペースがとられていた。机の上に置くPCもノートPCや、液晶ディスプレイによって大きなスペースは必要なくなった」との観点からあえて奥行きは狭くなっているのも特徴的だ。

プラススペースデザインの展示した個人用ブースは、手元の明かり、周囲のノイズを消すためのスクリーンノイズ付き茶室を意識したデザインというだけに、どこか和を感じさせるデザインとなっている
パーティション部分のガラスはスイッチ1つで透明にも、スモークにも

●ウェルネスを重視:岡村製作所

 岡村製作所は、「Smart Work」というタイトルのもと、ストレッチ、ウェルネス、スリムを実現するオフィスを提案した。このコンセプトは、無駄なものを省き、必要なところには積極的に投資をするオフィスを想定。工事を行なうと大きなコストがかかる電気やネットワーク回線を埋め込んだ壁部分はそのままに、従来型の机とテーブルが効率的に並んだレイアウトでも、オフィス内に簡単な会議スペースを設けた最近増えているタイプのオフィスでも、レイアウトできる。

 長時間PCに向かいきりになるエンジニアを想定し、身体に負担をかけないよう後ろにのけぞったスタイルで作業ができるPCデスク「Cruise」、沖電気工業株式会社と共同開発し、沖電気のメカトロニクス技術から生まれたロボットレッグと岡村製作所のシーティング技術が融合した「Leopard」も展示。快適なオフィス空間の実現をアピールした。

岡村製作所の長時間PCに向かうエンジニアを想定したPCデスク「Cruise」は、座ってみると後ろに反り返ったスタイルで机に向かうことから、姿勢などに無理がない作りとなっているロボットレッグを内蔵した「Leopard」は座ってみると、安定感があり、腰痛など長時間の座業がつらい人には有り難いチェア
岡村製作所では、さまざまなオフィスレイアウトに対応できるオフィスを提案し、低コストでありながら、創造性を上げるオフィスを提案している

●サテライトで本社の雰囲気:内田洋行

 内田洋行は、「No Rule もう、ルールはいらない」をテーマに、オフィス家具とITソリューションの両方を販売する同社らしい提案を行なった。

 中央部分に85型のプラズマTVを設置し、ロジクールのWebカメラ、イー・モバイルの通信と、内田洋行が販売しているテレビ会議システム「Vidyo」を利用して、内田洋行本社の映像をリアルタイムで上映。サテライトオフィスなど本社とは離れたところで仕事をしている人が本社の雰囲気を感じながら仕事ができるオフィスを演出した。映像は大型モニターだけでなくPCに映し出すことが可能で、ホームオフィスで仕事中の社員が利用することもできる。また、本人側の映像を流せない場合、本人の代理としてNEC製ロボット「PaPeRo」を本社に置いて、PaPeRoの目に搭載されたカメラを通して本社の映像を確認したり、PaPeRoの音声で応答するといったことも可能となっている。

 展示を覆っている筐体「スマートインフィル」は、レンタルでオフィスを利用する場合を想定し設置する建物に依存せず、自由にレイアウトすることが可能で、プロジェクターなどのデバイスも自由に設置できる。

 利用されている照明はLEDで、PCを通して明るさなどを調節できるようになっている。

内田洋行ではオフィスに依存せず設計、設置ができる筐体「スマートインフィル」を使ったオフィス展示を行なった。壁部分には杉材を使い、リラックス効果を演出することもできるスマートインフィルに取り付けた照明はLEDを採用
内田洋行本社の映像をテレビ会議システム「Vidyo」を使ってリアルタイムで上映。現段階では、建物にインターネットが入っていないため、イー・モバイルの通信を利用し、1万円未満のロジクール製Webカメラを使用しているものの、85型モニターでも十分耐えられる画質となっている。
NEC製ロボット「PaPeRo」のカメラを通してコミュニケーションを取る提案も行なっている

●LANシートでセキュリティを確保:イトーキ

 イトーキは、「オフィスLANの常識を変える 一枚のITネットワーク ~LANシート」のタイトルで展示を行なった。2008年7月に発売した、電波をシールド内に封じ込めることで、シートの上に置いたPCが無線LAN接続される「LANシート」と、LANシートを設置したテーブルを展示。セキュリティ面に不安があることから、無線LAN導入に踏み切れていない企業に対し、外部に通信が漏れることがないため、セキュリティの高い無線LANが実現できるオフィス環境をアピールした。

イトーキが販売する2次元LANシステム「LANシート」は、東京大学発のベンチャー企業である株式会社セルクロスの二次元通信技術「@ELL」を活用。近接コネクタ、アクセスポイントをセルクロスが、オフィス向けシートを帝人ファイバー株式会社の「セルフォーム」を使用し、イトーキを含む3社協同開発製品となっている。上映されているプレゼンは、LANシートに置いたPC、プロジェクタを通して流れている動画で、PCをLANシートから外してしまうと、上映も止まってしまう

●レイアウトの自由度を重視:コクヨオフィスシステム

 コクヨオフィスシステムは、「適業適“場”」をタイトルに、変化に対応しやすいオフィスを提案した。

 最近ではフリーオフィスを採用する企業が増加し、オフィスレイアウトも以前よりも柔軟になっているものの、電源の位置に縛られている現実に着目し、バッテリを内蔵し、社員がいなくなった夜、充電しておけば自由な場所に設置できるテーブル「バッテリーシェアードデスク」を展示。新しいオフィスのあり方をアピールした。

 マルチタスクテーブル「WorkLink」は、複数の人が同時利用できるデスクで、パーティションを用いて1人用スペースとして活用することも、パーティションを取り除いて簡易会議用に利用することもできる。

 衝立代わりにも利用できるホワイトボード「SCREEN BOARD」は、高さを変えることができるので、少人数の会議、テーブル全体に集まった人が利用する会議など、場面ごとに違う利用ができる。

 「場」を自由に利用できる機器を提案することで、ワークスタイルが自在に変わっていくことができることをアピールした。

コクヨオフィスシステムが参考展示していた「バッテリーシェアードデスク」。中央にバッテリが内蔵されているので、社員がいない時間に充電しておけば、電源を意識せずに設置できる。商品化は、バッテリ寿命の短さが問題となって、現段階では実現していない
マルチタスクテーブル「WorkLink」は、衝立あり、なしのどちらでも利用可能ホワイトボード「SCREEN BOARD」は衝立代わりにも、意見共有用にもどちらにも利用できる

(2010年 2月 22日)

[Reported by 三浦 優子]