性能向上が図れるマザーボード
エムエスアイコンピュータージャパン株式会社は、AMDとNVIDIAのビデオカードを混載して3D性能の向上が図れる「Lucid HYDRA ENGINE」を搭載したマザーボード「Big Bang-Fuzion」を1月16日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は39,800円前後の見込み。
LucidのHYDRA ENGINEは、Direct3Dとディスプレイドライバの間に割り込み、異なる性能や機能のビデオカードに、それぞれが得意とする処理を負荷分散させることのできる技術。ハードウェアとドライバの両方によって実現した。
ハードウェア面では、PCI Express x16(2.0)バスの下にHYDRA ENGINEがあり、さらにその下に2つのPCI Express x16(2.0)に分岐される仕組み。HYDRA ENGINEがブリッジの役割を果たすため、NVIDIA SLIやAMD CrossFireXで必要とされるケーブルなどが不要とした。
一方ドライバ面ではDirect3Dとディスプレイドライバの間に割り込み、データのコマンドや処理を分析し、アンチエイリアス、ステンシル処理、および色深度の処理を、各々のビデオカードが得意とするほうに割り振り、GPUに処理をさせる。この処理は先述のHYDRA ENGINEがハードウェアで行なうためCPU負荷が少ないという。その後、それぞれのGPUのデータを共有して再構成する仕組み。
NVIDIAとAMDのビデオカードを混載して性能向上が図れる | Lucid HYDRA ENGINEの仕組み | ハードウェア面にはPCI Expressのブリッジチップに近いが、負荷分散などもハードウェアで行なう |
実際に会場で行なわれたデモ | デモ機ではRadeon HD 5870とGeForce GTX 285を搭載していた | 製品のパッケージ |
設定できるのは、NVIDIAの同一GPU、NVIDIAの非同一GPU、AMD(ATI)の同一GPU、AMDの非同一GPU、そしてNVIDIAとATI両方のマルチベンダーの5つ。例えば、Radeon HD 4890と同4850、GeForce GTX 285と同260、Radeon HD 4870とGeForce GTX 275といった組み合わせで利用可能。対象機種はドライバのアップデートで、今後随時更新される予定としている。
同じベンダーの異なるGPUでできる組み合わせ。なお、製品出荷時には表にはないRadeon HD 5000シリーズも対応する | NVIDIAとAMDの組み合わせに対応するGPU | NVIDIAで異なるGPUを組み合わせた場合の性能向上率 |
AMDで異なるGPUを組み合わせた場合の性能向上率 | NVIDIAとAMDの組み合わせでも確実に性能が向上するという | ゲームにおけるベンチマークで性能向上を実証した |
もう1つの特徴は、三洋電機の導電性高分子タンタル固体電解コンデンサ「POSCAP」を100%採用している点。同コンデンサでは電導率を高めることで低ESRを実現し、リップル電流を抑え、安定した出力が可能。また、誘電体酸化皮膜の微小な欠損に対して自動的に絶縁する自己修復機能と、無酸素構造により、高い信頼性を実現。85℃という悪環境下でも112,000時間、65度の環境下で449,000時間以上の寿命を謳う。
CPUソケット周辺。POSCAPの採用により高信頼性を謳う | POSCAPは低ESRの実現によりリップル電流を抑え、安定した出力が可能 | 異なる温度環境下における寿命の想定 |
このほか、手のひらサイズでオーバークロックや動作状況監視などが可能なコントローラ「OCダッシュボード」、独自のオーバークロックツール「OC Genie」、高効率なVRM「DrMOS」、電圧の測定が可能な「V-チェックポイント」と、ディップスイッチによる電圧調節が可能な「V-スイッチ」、Creative EAX 5.0に対応したサウンドカード「Quantum Waveオーディオカード」などを搭載/付属する。
バックパネルに接続してリモートで監視やオーバークロックができる「OCダッシュボード」 | 音質にこだわったというQuantum Waveオーディオカード |
Quantum Waveオーディオカードはジャック端子が違う色に光る仕組み | 主な付属品。マニュアル類が充実している |
対応CPUはLGA1156のCore i7/i5で、チップセットはIntel P55 Express。対応メモリはDDR3で、スロットは4基。拡張スロットは、PCI Express x16×3、同x1×2、PCI×2。ストレージインターフェイスは、SATA×10、IDE。バックパネルインターフェイスは、USB 2.0×10(うち2基はPowered eSATA)、Gigabit Ethernet、IEEE 1394、PS/2×2などを備える。
7日に都内で開かれた記者発表会では、MSI本社 副社長のEric Chang氏が挨拶。同氏は、「Big Bang-Fuzionの登場によって、ユーザーはSLIやCrossFireXのように、同じメーカーの同じビデオカードで性能をアップグレードしなければならないという制約を取り払うことができた。現時点では我々のみの機能であり、競合他社に優っている」とアピールした。
LucidのHYDRA ENGINEについては、LUCIDLOGiX Technology VP of R&DのDavid Belz氏が、「我々の製品で、ハイエンドからローエンドのGPUまで、スケーラブルなパフォ-マンス向上を実現する。今後はハイエンドのマザーボードだけでなく、ローエンドのマザーボード向けにも提供してきたい」と説明した。
エムエスアイコンピュータージャパン マーケティング部の石岡宣慶氏は、「Lucid HYDRA ENGINEとPOSCAPの採用は我々が世界初。今後日本の市場向けにこの2点強く訴求していき、競合他社に“勝てる”製品にしていきたい」と語った。
MSI 副社長のEric Chang氏 | LUCIDLOGiX Technology VP of R&DのDavid Belz氏 |
石岡宣慶氏 | 集合写真。なお、パッケージには大きく「日本品質」という帯がついているが、この帯がついたまま出荷するという |
(2010年 1月 8日)
[Reported by 劉 尭]