パナソニック株式会社エナジー社は、ノートPCや電気自動車の長時間駆動を実現する高容量リチウムイオン電池の新技術を発表した。
パナソニックエナジー社の野口直人社長 |
同社では、直径18mm、高さ65mmの18650サイズのリチウムイオン電池において、12月18日に、量産品として3.1Ahの製品を発表しているが、今回発表したのは、同じ18650サイズのリチウムイオン電池で、ニッケル系正極を進化させることで、3.4Ahを実現した電池と、ニッケル系正極を用い、さらにシリコン系合金負極を採用することで、4Ahの高容量化を実現した電池の2製品。3.4Ah電池は、「2011年度の早い段階で量産化したい」(パナソニック エナジー社の野口直人社長)としたほか、4.0Ah電池は2012年度の製品化を目指すという。
3.4Ah電池では、プロセス革新の取り組みにより、3.1Ahに比べて、エネルギーを11.2Whから12.2Whへ、エネルギー密度を675Wh/Lから730Wh/Lへと10%高エネルギー化。2.2Ahに比べてエネルギー率を55%も向上しているという。
「高容量かつ充電状態で安定した材料を開発することで、高容量、軽量、高耐久性を実現した。充放電回数が増えても、高い容量維持率を維持でき、コバルト系正極に比べて、2倍以上の耐久性を持つ」という。
実用化検討中の電池モジュールに適用することにより、家庭用太陽光発電(PV)や燃料電池向けの蓄電システム、電気自動車(EV)用電源などにも応用できるとしている。
また、2012年度の商品化を目指す18650サイズの4.0Ah高容量電池は、負極にシリコン系合金を採用したシリコン系材料技術と、プロセス技術により、充放電繰り返し時の合金負極電極群の変形を解消した。
現在、ノートPCの半数以上に採用されている2.2Ahのリチウムイオン電池に比べて、同じ仕様であれば、2倍近い連続駆動時間を実現、またはバッテリのスペースを6セルから3セルへと半分にできる。
ただし、現在Let'snoteでは16時間の連続駆動時間を実現しているが、単純計算でこれを2倍近くまで延長できる計算になるが、これはあくまでも同じ仕様というのが前提。商品化される2012年度に求められる仕様がそのまま当てはまるわけではない。
パナソニックでは、これらの技術に関して、同社では国内337件、海外136件の特許を出願しているという。
一方、同社では、直接メタノール型燃料電池システムの高出力化/高耐久化を実現。2011年度から100Wの高出力可搬型発電機の実証実験を開始すると発表した。
パナソニックが開発したのは、平均出力20Wと、体積当たりの出力を従来の試作品の2倍に高めたの燃料電池システムで、この技術を応用することで100Wクラスの可搬型発電機を開発するという。
「直接メタノール型燃料電池は、大気汚染ガスの排出がなく、内燃機関を利用した発電装置に比べて、二酸化炭素の排出量も大幅に低減することができる発電装置。当社が2008年に開発した試作品の締結部分の構造を見直すことにより小型化したスタックと、燃料をポンプ内部で適正な燃料濃度に直接混合する燃料ポンプなどを組み合わせることで、小型化、省電力化を図ったBOP(バランス・オブ・プラント=発電補助機器)を開発した」という。
また、従来から課題とされていた電極劣化による出力低下に対しては、新たに開発した高濃度燃料利用電極技術によって、耐久性を大幅に向上させ、1日8時間の間欠運転の場合で5,000時間の運転を可能にした。
これにより、比較的消費電力の高い高機能ノートPCの駆動にも対応できるほか、今後の高出力化によりエンジン発電機に比べて圧倒的にコンパクトな可搬型発電機の開発や、発電機と同社の高容量リチウムイオン電池モジュールを組み合わせた屋外電源の実用化、電動二輪車への応用、小型発電機を搭載し長距離走行時にバッテリを充電する電気自動車(レンジエクステンディドEV)などへの応用を図るという。
メタノール電池の耐久性を高めることで実用化レベルに進化 | 燃料電池が内燃機関の代替を促進する | 上が従来のパッケージ。下は新開発のパッケージ。右側のメタノール燃料部を含めてほぼ同じサイズになる |
(2009年 12月 25日)
[Reported by 山田 幸治/山田 幸治]