F1マクラーレンを支えるレノボのThinkPad

10月4日 開催



 3年ぶりに鈴鹿サーキットに戻ってきたF1日本グランプリが2009年10月4日に開催されたが、すでに報道されているように、優勝はレッドブルのセバスチャン・ベッテル。2位がトヨタのヤルノ・トゥルーリ、そして、3位にマクラーレンのルイス・ハミルトンが入賞し、21回目の日本GPが幕を閉じた。

レーシングカーには所狭しと各社のロゴが並ぶ

 ご存じの通り、F1は、多くのスポンサーによって支えられる興業イベントだ。レーシングカーはもちろん、レーサーのユニフォーム、ピットで働くエンジニアが身につける作業着には各社のロゴが所狭しと、その存在をアピールしている。

 たとえば、ThinkPadでおなじみのレノボは、今回の日本GPで3位入賞を果たしたハミルトンが所属するマクラーレンのスポンサーだ。車体にロゴがないので気がつきにくいのだが、レノボには、ThinkPadという強力なアイコンがある。そして、そのThinkPadがマシンとレースを強力に支援する。スポンサーの関係で表面には出てこないかもしれないが、おそらくは、マクラーレンチーム以外でも、かなり多くのチームの裏方としてThinkPadが使われているのではないだろうか。

 マクラーレンは、レノボとのパートナーシップ契約に伴い、CADのシステムハードウェアを、SunのUNIXワークステーションから、レノボの製品に総入れ替えしてしまったという。タイミングとしても、CADソフトのベンダーがUNIXバージョンのサポートを終了しようとしているといった事情もあるなど、マクラーレンにとっても、レノボにとっても好機だった。

 レノボは、マクラーレンの設計オフィスに、ThinkStation S20ワークステーション123台を導入した。すべてが標準構成で、Xeon W3570に8GBメモリ、そして、500GBのHDDにWindows XPの64bit版という構成だ。この切り替えによって、マクラーレンのチームは、以前の70%の時間でシミュレーションを完了できるようになったという。

 また、レノボは、個々のエンジニアが使うモバイル機として、80台のThinkPad W500を別途導入している。もはや、ピットで作業するエンジニアはもちろん、レーサー自身でさえ、PCを駆使できなければ、レースは成立しなくなっている。エンジニアによっては、3台のThinkPadを持ち歩きながら、世界を転戦しているという。

 マクラーレンチームでは、2機のマシンのために、1機あたり約20名のエンジニアが張り付く。したがって、ピットでは、約40名のエンジニアが何かしらの作業をしているわけだ。ピット内には約80台のThinkPadが設置され、走行の分析や、手直しのためにディスプレイが凝視され、ああでもないこうでもないといった議論が、レーサー自身を含めたスタッフの間でかわされる。

ピットにはThinkPadがズラリと並び、エンジニアとレーサーがデータを元に作戦を練る。中央はレーサーのハミルトンマシンに乗ったままでもThinkPadでデータを参照する

 マクラーレンとのパートナーシップは2009年からだが、レノボがF1と関わるようになって、レノボ自身の認知度は格段にあがってきているそうだ。同社がスポーツイベントに力を入れていることもあるが、全世界共通のプログラムをスポンサードすることは、きわめて高い効果があるのだそうだ。レノボには、ThinkPadそのものの認知度は高いが、レノボというベンダー名の認知度がそれになかなか追いつかないという悩みがある。だが、2008年の北京オリンピックのスポンサードにより、レノボの認知度は一気に向上したことから、F1でも、その効果を期待するという。

プルー氏とThinkPadについて楽しそうに語り合う内藤氏

 日本GPの会場には、ミスターThinkPadともいうべきレノボ・ジャパン取締役副社長、内藤在正氏も応援にかけつけ、ピットでエンジニアたちとのコミュニケーションを楽しんでいた。

 ハミルトンの担当チーフエンジニアであるフィル・プルー氏の会話との中では、ブルー氏がT400を最高に気に入っているという話がきけたという。T400はレノボがパートナーシップによる標準構成として提供しているマシンではない。プルー氏が今まで使ったThinkPadの中で、T400が最高だと褒めてくれたということは、レノボとのパートナーシップ締結以前にも、ThinkPadがレースの現場で愛用されていたということだ。そんな話を聞けば、内藤氏がうれしく思うのは当然だ。そのうれしさからか、こんなコメントをもらえた。

 「次のThinkPadのアッと驚くイノベーションは2011年ですね。バッテリの技術に関しては、相当完成されているので、それ以外の部分です」。

 さて、レースを支えるThinkPadが次に見せてくれる驚きは、いったいどんなものなのだろうか。2年後が楽しみだ。

※写真はレノボ提供のイメージです。鈴鹿サーキットで撮影された写真は内藤氏の写っているものだけです。

(2009年 10月 6日)

[Reported by 山田 祥平]