シャープ、「Mebius」新製品発表会
~グローバル規模で100万台目指す

Mebius PC-NJ70A

4月21日 開催



 シャープ株式会社は21日、光センサー液晶をポインティングデバイスとして搭載したノートPC「Mebius PC-NJ70A」シリーズを発表。これにあわせて、都内で記者会見を開催した。

 PC-NJ70Aは、同社独自の光センサーを搭載した液晶を初めて商品化したもの。従来のPCのタッチパッド部を、この光センサー搭載液晶に置き換えることで、ここでコンテンツの表示を行ないつつ、ポインティング操作が行なえる。ペンと指両方に対応することや、マルチタッチ、スキャナ機能などを主な特徴とする。そのほかPC部の主な仕様については関連記事を参照されたい。

 発表会の冒頭では、同社 代表取締役 副社長執行役員 商品事業担当 松本雅史氏が挨拶。同氏は、「我々は、14日の時点で詳細がまだ明らかにされていない新製品のモニター募集を開始したが、わずか1日で、当初1カ月スパンで予定していた1万人を超える応募があった。これは、ユーザーが我々のMebiusに高い期待と関心を寄せている証拠だと思う」と語った。

 続いて、Mebiusの歴史を振り返り、「'95年にTFT液晶を搭載した初代Mebiusをリリースして以来、'99年にはブラックTFT液晶を搭載し“銀パソ”ブームの火付け役となったPC-PJ2、2001年には圧倒的な薄さを実現したMURAMASAを発売し、“液晶のシャープ”の切り口からPC業界をリードしてきた。いずれも各方面から高い評価をいただいた」説明した。

 新製品に光センサー液晶を搭載した動機として、「情報機器の市場環境は大きく変化し、携帯電話やPCの機器間の垣根が無くなっている。そのネットワークの核としての役割を担うPCに、今回新たに光センサー液晶を搭載することで、ネットワークによる新たなコミュニケーションを形成していきたい」と語った。

代表取締役 副社長執行役員 商品事業担当 松本雅史氏Mebiusの歴史タッチ液晶による新たなコミュニケーションの創出

 光センサー液晶の製品化としては今回が初。一般的には静電容量方式や抵抗膜方式などがあるが、「これらの良さをいずれも継承しつつ、フィルムを非搭載とすることで高い表示品質を実現した。ペン入力やマルチタッチによって、メールやブログに手書きのイラストや文字を付加でき、新しい使い方や楽しみ方で、新しいコミュニケーション文化を築ける。新製品もまた“液晶のシャープ”の名に恥じない製品である」と話した。

 新製品の販売は、“一家の2台目、私の1台目”をコンセプトに訴求していく。また、同社は3月に事業改革を行なったが、情報システム事業本部と移動体事業推進本部を、パーソナルソリューション事業推進本部に統合することで、総合力を高める。今後は欧米諸国や中東などにも展開していき、“早期にグローバルで100万台を売り上げたい”とした。

 光センサー液晶の主な機能について、同社 パーソナルソリューション事業推進本部 副本部長 新井優司氏が説明。実際にタッチパッドで描いた絵をメールソフトに貼り付けて送る様子や、手書き入力で文字認識し辞書を引くところ、2本の指で画面の拡大やスクロールを行なう様子をデモし、光センサー液晶の優位性をアピールした。

 光センサー液晶に対応するソフトについては、現状では付属の付箋紙や、ピアノなどのミニゲームなどに限られているが、6月をめどにスキャン機能を応用したゲーム的なソフトのダウンロード提供を開始する。また、同時に目処に開発環境を公開し、サードパーティーの開発協力も呼びかける。

 また、ユーザーを中心に商品の使いこなし方や手書きなどの楽しみ方を発信する場として、Webサイト「シャープな暮らし研究所」を開設。4つのテーマを中心にユーザーの意見や声を集め、次期モデルの商品アイディアを募集し、製品に反映していきたいとした。

パーソナルソリューション事業推進本部 副本部長 新井優司氏光センサー液晶の搭載光センサー液晶の仕組み
光センサー液晶と他の方式の比較手書き文字やイラストの挿入手書きでイラストを描いたあと、「貼り付け」ボタンを押すとアクティブなアプリケーションに貼り付けられる
手書き文字入力では中国語や韓国語にも対応するマウスモード使用時はアニメーションポインタが指の動きをトレースするモニター募集を行なったページは、「シャープな暮らし研究所」にリニューアルされる

Microsoftのダレン・ヒューストン氏

 発表会では、米Microsoft Corporate Vice President, Consumer & Onlineのダレン・ヒューストン氏からのビデオメッセージも寄せられた。同氏は新製品の発表に祝辞を送るとともに、Windows Liveソフトウェアスイートがプリインストールされたことに謝意を表し、「ユーザーが、光センサー液晶による手書き入力機能を、Windows Liveのコミュニケーションに活かしてもらいたい」と語った。

 質疑応答では、なぜネットブックのアーキテクチャを採用したかの理由について問われ、松本氏は「より多くのユーザーに使ってもらうためには、低価格であることが重要であると考えたから」と答えた。

 また、シャープのPC事業を継続する意義についての問いに対して同氏は、「PCは現在コモディティ化されているだけでなく、ネットブックのようなWebブラウザとメーラーだけが使えればよい製品も出始めている。我々がPC事業をやるからには、今回の製品のように、ネットブックをさらに使いやすくパワーアップしたものを提供していくことが使命であると考えている」とした。

 さらに、「PC市場は全世界を見ると、ノートPCに限って言えば1億5,000万台の規模があり、ミニノートだけでも2,000万台の市場がある。その中でシャープは、今回の製品によってある程度のシェアを確保していきたいし、していかなければならないと考えている。また、今回の手書き入力は、漢字圏やアラビア文字圏にも有力な機能であり、これらの国においても2009年度中に展開していきたい」と付け加えた。

 一方、光センサー液晶の外販の可能性としては、「我々はデバイス事業としてやっているので、他社がやりたいという要望があれば提供をしていく。今回我々はその市場開拓の先頭に立ち、サードパーティーの開発なども含めた市場形成をしていく役目を果たしたい」と答えた。


発表会で展示されたPC-NJ70A(ホワイトモデル)ブラックモデルスタイラスペンを本体左側に収納できる
本体右側本体底面。吸気口などがなくすっきりしているペンを取り出してみたところ
ペンは伸縮式となっているホワイト/ブラックモデルともに細かいドット模様が描かれている別売りのアドオンジャケットで、自分で印刷した絵柄などを挟んで天板に装着してデコレーションできる
光センサー液晶に辞書を表示させたところ。実質ここはランチャーとなっている辞書を選んでタッチすると対応の辞書が立ち上がる電卓機能
【動画】光センサー液晶でボウリングをプレイしているところ

(2009年 4月 21日)

[Reported by 劉 尭]