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富士通研究所、ポケットサイズでウェアラブルなリアルタイム音声翻訳機

ウェアラブル型ハンズフリー音声翻訳端末

 富士通研究所は、世界初となるウェアラブル型ハンズフリー音声翻訳端末を開発した。

 医療現場での診察や看護など、両手が塞がりやすい業務に適したハンズフリーの音声翻訳端末として開発したもので、病棟での看護などのシーンにおいて、端末にふれずに外国人との会話が可能になる。

 富士通研究所では、2016年に人の音声や話者の位置を認識し、端末にふれずに自動で適切な言語に切り替えるハンズフリー技術を開発。同年には、東京大学医学部附属病院と、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)と共同で、医療分野らおける据え置き型タブレットを使った多言語音声翻訳の実証実験を行なってきた経緯がある。

医療現場を想定した対話のデモンストレーション。リアルタイムに翻訳して対話ができる

 「実証実験を通じてわかったのは、病棟での看護などのさいに、医療者の両手が塞がる場合が多く、端末にふれることなく、身につけて利用できる音声翻訳端末への期待が大きいという点。

 また、受付や検査のようにあらかじめ決まった場所で患者と会話する場合だけでなく、病棟での看護など、さまざまな場所における会話での用途にも、音声翻訳端末が求められていることがわかった。

 訪日外国人の増加に伴い、病院を訪れる外国人患者が増加しており、両手が塞がりやすい医療者の負担を軽減しながら、課題となっている多言語による会話の支援が可能になる」と、富士通研究所では語る。

 富士通研究所では、ウェアラブル型ハンズフリー音声翻訳端末の開発にあたり、音道形状の工夫によって、小型無指向性マイクを用いる話者識別技術を開発した。

 医療現場では、空調機器や検査機器などからのさまざまな雑音が発生しているため、医療者の位置が、患者から遠く離れていると、雑音の影響で発話検出の精度が低くなるといった課題があった。そこで、雑音に強い発話検出技術の精度を向上させ、同時に、筐体を大幅な小型化を実現した。

 「音道をL字型形状として、目的方向以外からの音を減衰させ、目的方向に対する指向性を強調する技術と、小型の無指向性マイクの採用により、端末の小型化を実現した。医療者方向からの音は、1回回折するのに対して、医療者方向以外からの音は2回回折する。音は回折するさいに減衰する性質があるため、医療者方向の指向性を強調することができる」という仕組みだ。

 また、「患者方向(横方向)に高感度マイク素子を採用し、患者音声の録音レベルを大きくしたほか、雑音抑圧技術により、空調機器や検査機器などの定常雑音を抑圧することができた」という。

 今回開発した技術により、大病院の検査室相当の環境(60dBの雑音環境)において、医療者と患者が対面で会話するさいに、80cmという自然な距離間で、95%の発話検出精度を達成したという。

 さらに、筐体のデザインにおいては、富士通グループで、スマートフォンビジネスを行なっている富士通コネクテッドテクノロジーズが持つ携帯電話やスマートフォンの開発で培ってきた小型化、軽量化の技術を活用。医療現場の使い勝手を考慮した音道形状のデザインの採用と、小型化を実現した。

 「形状は、医療者の両手が自由に使えるネームプレート型とし、直感的に操作できるキーアイコンや形状、印字を採用。医療者と患者の両方にとってやさしい印象と、安心感を与えるラウンドフォルムとした」という。

 現在、日本語、英語、中国語に対応している。

 富士通研究所では、東大病院とNICTと共同で行なっている多言語音声翻訳の臨床試験において、新たに開発したウェアラブル型ハンズフリー音声翻訳端末を2017年11月から適用。医療現場での有効性を検証する予定だ。

 「臨床試験の結果を踏まえ、対応言語と利用場所を拡大していく」という。

 富士通研究所では、この技術を活用した音声翻訳システムを、観光施設などでの接客や、自治体での窓口業務など、さまざまな分野への展開を検討し、2018年度中の実用化を目指す。

ネームプレートのようにつけて、ハンズフリーで使用することが可能だ