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NVIDIA、AIをグラフィックスにも適用していくとアピール

~QuadroをThunderbolt 3外付けボックスで利用するドライバを提供開始

NVIDIA プロフェッショナルビジュアライゼーション担当 副社長 ボブ・ペティ氏

 NVIDIAは、7月30日~8月3日(現地時間)に開催されているプロフェッショナルグラフィックスのための学会/展示会「SIGGRAPH 2017」が行なわれている米国カリフォルニア州ロサンゼルスConvention Center近くの会場で、7月31日に記者会見を開催し、SIGGRAPH 2017で発表する内容を説明した

 この中でNVIDIAは別記事で紹介しているAIを活用したレイトレーシングのライブデモを行なったほか、同社のプロ向けGPU「Quadro」シリーズ向けの新ドライバを提供し、Thunderbolt 3で接続される外付けGPUボックスでQuadroを利用可能にすると発表した。

AIを利用したレイトレーシングのデモを、OptiX v5 SDK+DGX Station上で行なう

 NVIDIA プロフェッショナルビジュアライゼーション担当 副社長 ボブ・ペティ氏は「NVIDIAは過去25年にわたって最高のグラフィックスを提供してきた。近年ではそれに加えてCUDAによりGPUを利用した汎用演算も可能になり、Teslaの製品ラインがスーパーコンピュータに採用されている。現在はGPUを利用したディープラーニングを活用したAIで世界を変えてきた」と述べ、近年NVIDIAが自動運転車などに活用しているAIを、グラフィクス用途にも活用していくとした。

AI革命
NVIDIAが研究している研究論文の概要

 NVIDIAによれば、今回のSIGGRAPH 2017には合計で7本の論文を提出しており、その多くがAI関連だという。その中から4つ紹介されたのが、AIを利用した顔アニメーション、AIを利用したアンチエリアシング、そしてAIを利用した光源の移動、そしてAIを利用したノイズ低減だ。それらに関しては別記事で紹介しているので、そちらを参照して頂くとして、ここでは会場で行なわれたデモを紹介していきたい。

AIによるノイズ低減の説明
左はAI未適用、右がAI適用。AI未適用ではGPUの処理能力に限りがあるので、演算が終わるまではノイズが乗ったままになるが、AIを適用するとその時間を短くできる
AIを利用したレイトレーシングのデモ。左側のAI未適用の画面ではノイズ状態が続くが、右側のAI適用済みの側は瞬時に演算が終わる

 発表会の会場で行なわれていたのは、AIを利用したレイトレーシングのデモ。レイトレーシングでは、光源などを考慮しつつ光の軌道などを再現する必要があるが、AIを利用したレイトレーシングではAIが正常なものとそうでないものを学習し、それにより正しい画像を作り出す。学習は、データセンターにあるTeslaベースのHPCを利用して行なわれる。

 今回のデモに利用したニューラルネットワークの場合は学習だけで1日かかっているという。その学習データを今度は、デモに利用されているワークステーション上に構築されているニューラルネットワークにダウンロードされ、それを利用して推論を行なうことで、処理途中の画像からノイズを除去する。

OptiX 5.0 SDKを発表、11月より無償で配布
DGX Stationの性能
DGX Station

 今回のデモは、NVIDIAが11月に無償で提供する予定のSDKとなるOptiX 5.0を利用して開発されており、ニューラルネットワークはNVIDIAが5月にサンノゼで行なったGTCで発表したVoltaを4つを搭載した水冷ワークステーションとなるDGX Station上で動作しているという。DGX Stationは、Xeon E5-2699 v4と比較して157倍高速にレンダリングすることができるとアピールした。

Project Holodeckは今回のSIGGRAPH 2017では体験デモが可能に
ロボットシミュレーションのISSACもデモされる

 また、NVIDIAはVRに関しても数々の研究をしており、米国の大学などと各種の研究を行なっていると説明した。今回のSIGGRAPH 2017では、5月のGTCで概要を発表したProject Holodeckの体験デモを行なうという。Project Holodeckは、複数のユーザーが1つのVR空間で、同じデータを閲覧して作業することが可能になる。例えば、自動車の開発などで、3D CADのデータを複数のユーザーが見ながらデザインについての意見出しを行なうなどの用途に使うことができる。

 また、同じくGTCで発表したロボットの開発シミュレーションISSACに関しても展示し、それを物理的にしたロボットも展示するとした。

QuadroでもeGPU外付けボックスを利用可能にする新ドライバを本日より提供開始

 NVIDIA プロフェッショナル・ソリューション・ビジネス プロダクトマーケティング シニアディレクター サンディープ・グプテ氏は、いわゆるeGPU(External GPU)と呼ばれる、Thunderbolt 3を利用したノートPCに接続する外付けGPUボックスについて説明した。

NVIDIA プロフェッショナル・ソリューション・ビジネス プロダクトマーケティング シニアディレクター サンディープ・グプテ氏
薄型ノートPCの普及で、dGPUが搭載されないノートPCが増加

 「現代では薄型ノートPCが普及しているが、薄型ノートPCにはiGPUのみか、dGPUが乗っていてもローエンドの場合が多く、Premiereなどのクリエイティブ系のソフトウェアや、SolidWorksやCATIAなどのプロフェッショナルなソフトウェアを利用するには十分ではないことが多い。そこで、eGPUのソリューションを使えば、そうした薄型ノートPCを使う場合でも、GPUを利用して性能を向上させることができる」と述べ、同社がプロ向けGPUと位置づけているQuadroシリーズを、eGPUに対応させることを明らかにした。

NVIDIAのパートナーからは外付けボックスとQuadroをセットにした製品も提供予定
Quadro P4000を利用したデモ

 NVIDIAはGeForceシリーズのドライバでは、こうしたThunderbolt 3を利用するeGPUの外付けケースで利用することをサポートしてきた。しかし、Quadroではそれをサポートしておらず、eGPUの外付けケースにQuadroを入れても利用することができなかったのだ。

 このたび、NVIDIAが本日から提供を開始したQuadroの最新ドライバ(v385.12)で、eGPUとして利用することをサポートしており、利用できることになったのだ。このドライバは、NVIDIAがパートナーと協力して提供するセット商品(外付けケース+Quadro)だけでなく、既存の外付けケース+Quadroでも利用することができるという。グプテ氏によれば、現状ではQuadro P4000以上(P4000、P5000、P6000、GP100)のQuadroが対象になるということだった。

 また、NVIDIAはTITAN向けにビデオ編集時やディープラーニングの学習性能を引き上げた新ドライバも提供すると明らかにした。TITAN XなどのTITANブランドの製品で利用することが可能だ。

TITANシリーズ向けの新ドライバでビデオ編集時やディープラーニングの学習時の性能を10倍引き上げる(TITANシリーズでのみ利用可能)
TITAN Xと外付けGPUボックスの組み合わせでPremiere Proを利用しているところ

 なお、この場合ISV認証(ソフトウェアベンダがどのハードウェアで動くかを保証する認証制度)がどうなるかが気になるところだが、NVIDIAによれば2つのケースがあるという。1つはGPUに対して認証が与えられている場合はそのまま有効になる場合が多いという。しかし、システムに対して認証が与えられるタイプのISV認証の場合、当然eGPUの外付けボックスに対して認証を与えた例は1つもないため、現状では認証はない状態だという。今後NVIDIAはこの課題をどうするのか、ISVと話し合いをしているということなので、今後改善される可能性はあるが、現時点ではシステム認証の場合にはISV認証は適用されないので注意が必要だ。