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「全国廃墟ツアーをしたい」、そんなニッチな興味にも合う旅行プランをAIが練ってくれるサービス「Deaps」

~富士通グループのベンチャー企業が開発

Deaps

 Deaps Technologiesは、AIで繋がるお出かけスマートフォン向けアプリサービス「Deaps(ディープス)」を開発。2016年12月から提供を開始する。

 利用者の想いや行動データをもとに、同じ趣味や嗜好を持つ人々の体験や情報を繋ぐことで、利用者の潜在的な興味や、キーワード検索では見つけ出せない希少な情報をAIが収集。深い体験ができる旅や、お出かけプランとして提案する。

Deaps Technologies 代表取締役 CEOの宮本章弘氏

 Deaps Technologiesの宮本章弘代表取締役CEOは、「ニッチで、ディープな情報を提供できるのがDeapsの特徴。全国のコインランドリーを巡りたいという人たちや、顔はめ看板巡りをしたいといった人たちなど、ニッチで、ディープなニーズに対しても、それに最適な情報を、AIを活用することで提供することができる。利用すればするほど、利用者の趣味や嗜好の理解を深め、より興味深いスポットやプランを提供できるようになる」という。

 Deapsは、同アプリにおける利用者の操作履歴や、お気に入り登録しているプランやスポット、コメントの内容、行動パターンなどから、AIが利用者の趣味や嗜好を分析。Deapsにログインすると、これらの分析をもとに、季節や場所、流行などを取り込んだプランおよびスポットを表示する。

 旅先でコスメコレクターがDeapsを利用すると、その地域でしか販売されていない限定コスメが入手できる店舗を紹介したり、カリスマモデルが愛用するヘアケア製品を試せるエステサロンなどを紹介したりする。

 利用者の属性は、同じ趣味や嗜好を持つ利用者の情報をもとに拡大。同じコスメ好きの人が夢中になっている趣味の中から、旅先にあるアニメや映画の舞台となった場所の情報、パワースポットなど、利用者が気が付かなかった意外なプランを推奨するという。

 また、利用者は推奨するスポットを登録したり、興味深いスポットの巡り方などを発信でき、同じ趣味を持つ利用者と深い情報が共有できるようになる。

 さらに、同社では、継続的にDeapsのサービスを強化する考えを示しており、2017年度中には、プレミアムコンテンツを有償で提供。2018年度には、マーケットプレイスを開設し、一般利用者や企業などが、プレミアムコンテンツを課金アイテムとして販売できるようになる。

 プレミアムコンテンツは、旅先などで体験して欲しい現地のスポットに紐付く情報を、音声ガイドや動画、AR、スタンプラリーなどを通じて提供することになる。

Deaps AIテクノロジーの優位性
人と趣味の繋がりを深める
インテリジェントフィルタにより、趣味嗜好に一致するデータのみを表示
信頼性を高めるスコアリングモデル
プレミアムコンテンツの展開
ロードマップと売上目標

 「廃墟ツアーのプランに対して、それに合わせた怖い話を聞くことができる音声ガイドで提供するといった付加価値を提供できる。これは、ユーザーに開かれたサービスとして提供。ユーザーを巻き込んだエコシステムを構築することで、ユーザーに対しても、作る楽しみととも、収益のチャンスも提供することができる」という。コンテンツの価格は120円からを予定している。

 そのほか、仮想通貨の導入に加えて、Deaps Createの提供によるコンテンツの開発促進も行なう。

 なお、Deapsでは、機械学習および深層学習の技術を採用するが、データドリブン技術のため、まずはデータを収集することが前提となる。サービス開始当初は精度が低くなるとしている。

 「Deapsでは、旅をどこかに行って終わりになるものではなく、行く途中も、行ってからも楽しむことができるサービス。趣味を極めて、日本に眠るディープなお出かけ、旅情報を掘り起こすことができる」としている。

 AI技術には、同社独自のAIプラットフォーム「Deaps Cognitive Platform」を活用。人と趣味のつながりを深めることができる「DeepConnect」技術と、趣味や嗜好に一致するデータだけを表示し、情報収集の疲労を軽減する「IntelligentFilter」技術、スコアリングと情報拡散制御、テキスト分析などにより、情報の信頼性を高める「TrustedControl」技術によって、サービスを提供するという。

 「2015年4月に企画を開始した時点では、富士通のAI技術であるHuman Centric AI Zinraiが発表されておらず、その時には、BtoCに最適化した技術が見当たらなかった。そこで独自にAI技術を開発した。今後、当社が持たない技術で有効なものがあれば、Zinraiを使っていきたい。また、数値を活用したさまざまなサービスが想定されるために、プラットフォームを横展開していくことも想定している」という。

 Deapsでは、まずは、20代、30代の女性をターゲットにするという。

 「調査によると、20代、30代の女性のうち、69%が情報量が多すぎると感じているという。消費者ニーズの多様化と情報量の増加という2つの大きな問題があるが、こうした多様化を受容し、個性を繋ぐことを、AI技術の活用によって解決することを目指す。人々が持つオリジナル情報をAIで繋ぎ、新しい感動を生み出すサービスを提供する」とした。

 女性層をターゲットにしていることから、女性が操作しやすい画面を意識したという。

操作しやすい画面を意識した

 Deapsは、iPhone版を12月から提供。Android版は2017年度中に提供する。AppStoreおよびGoogle Playを通じて無償でダウンロードできる。

 今後3年間で約100万人のアクティブユーザーの獲得を目指すという。

 また、2019年度から海外展開も開始する計画だ。

Deaps Technologyの紹介

 Deaps Technologiesは、2016年7月に、富士通グループのSE会社である富士通システムズ・イーストのベンチャー企業として設立した。

 富士通システムズ・イーストでは、2015年12月に、社内ベンチャー制度を立ち上げ、ベンチャー奨励金として500万円の提供や復職の保障、起業から会社運営までを支援することで、新たな価値を創出するソリューションサービスをいち早く提供することを目指した。Deaps Technologiesは、その第1号企業となっていた。

 「富士通システムズ・イーストでは、定款上、BtoCビジネスができないという背景と、チャレンジ精神を持って取り組むという社内改革の1つの取り組みでもあった」(富士通 グローバルサービスインテグレーション部門東日本ビジネスグループビジネス戦略本部・中崎毅本部長)という。

 11月1日に、富士通システムズ・イーストは、富士通と経営統合。Deaps Technologiesの301万円の資本金のうち、66%を宮本章弘代表取締役CEOを始めとする同社経営陣が出資。富士通システムズアプリケーション&サポートが34%を出資している。

 富士通でシステムエンジニアとして13年間の経験を持つ宮本氏が、AIに関する技術バックグラウンドを持った社員とともに、ベンチャー企業としてスピンオフ。「富士通は集団意思決定のために時間がかかるといった体質があったが、とくに、AIはスピードが大切。ベンチャーとして、意思決定が早くできる点は大きなメリット」だとする。

 社員数は5人。2021年度までの累計で、20億円の売上高を目指している。