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F1の現場で使われるエプソンの最新スマートグラス
~メルセデスAMGペトロナスがガイドツアーを実施
2016年10月7日 17:42
F1世界選手権に参戦しているメルセデスAMGペトロナスは、今シーズンから、エプソンのスマートグラス「MOVERIO」を活用したガレージツアーを実施している。
メルセデスAMGペトロナスは、10月10日に三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットで決勝が行なわれる「F1世界選手権日本グランプリ」において、11月30日に発売予定のMOVERIO新製品「BT-300」を初めて使用した。
エプソンは、2015年からメルセデスAMGペトロナスをスポンサードしており、今年3月に開催された開幕戦のF1オーストラリアGPで、BT-200を用いたガイドツアーを実施。各グランプリでも同サービスを提供してきた。
メルセデスAMGペトロナスチームが招待したVIPゲストが、レース開始前にガレージを見学する際、より臨場感が高く付加価値を持った見学体験を実現することを目的に、スマートグラス「MOVERIO」を導入。レースマシンのエンジンレイアウトや、その性能などについて動画を用いて説明。メルセデスチームのF1への参戦の歴史、サーキットの状況やチームメンバーのプロフィール、最新の統計データなどの情報を、音声の説明に合わせてMOVERIO上に表示する。
説明者はタブレットを用いてMOVERIOを操作。説明の進行に合わせて画像を切り替える。動画を駆使し、わずか2.5秒で終了するピット作業の様子も紹介する。
メルセデスAMGペトロナスは、「従来は、ヘッドフォンを使用した音声だけのガイドであったが、MOVERIOを使用することで画像を付加することができ、視覚面からも説明を補完。ゲストにはとても好評だ」とする。
ガイドツアーは約20分の構成だが、MOVERIOを使用した説明は、その中でも目玉コンテンツの1つになっている。
MOVERIOを活用した説明では、鈴鹿サーキットには多くのチャレンジングなコーナーが存在し、R130コーナーやスプーンカーブが有名であること、メルセデスベンツワークチームは、1930年代からシルバーアローの名称で親しまれていること、その背景には車検で重量がオーバーしていると判明し、それをクリアするために塗装を剥がし、ベアメタルで出場。勝利したというエピソードがあったことなどを紹介。
さらに、シニアマネジメントチームのプロフィールやエンジニアの役割、24人のピットクルーが各自の役割を正確にやり遂げるため、毎日12回の練習を繰り返していることなどが説明された。また、ペトロナスとの協力によって、ガソリンの分子構造の設計や、燃料および潤滑剤の研究などを推進。最新の「メルセデス F1 W07 Hybrid」に搭載しているハイブリッドエンジンの燃料効率技術は25倍前進し、エンジン効率の大幅な跳躍を実現したという。この進化が続けば、2030年までのCO2排出量目標を3年以内に達成でき、一般的な乗用車は1ガロンで165マイルの燃費を実現できると予測した。
BT-300は、スマートグラス「MOVERIO」の第3世代の製品であり、シリコンOLED(有機EL)を採用することで、小型・軽量化とともに、高輝度や高コンストラスト、高色域、高解像度、高画質化を実現したのが特徴。従来モデルのコントラストでは実現できなかった「スクリーン感(表示枠)を意識させない映像表現」が可能になっている。
これまでのBT-200に比べて、より鮮明な画像表示を実現。周りを見ることができるシースルーの特徴を活かしながら、ARコンテンツを表示しており、ゲストはガレージの様子を確かめながら画像を見ることができる。
セイコーエプソン HMD事業推進部長の津田敦也氏は、「シーズンを通じてサービスを提供している、メルセデスAMGペトロナスによるMOVERIOの活用は、BtoBtoCにおける活用事例としては代表的なものになる」と位置付ける。
今シーズンは、全世界21カ所で開催されるF1世界選手権を、メルセデスAMGペトロナスチームと共にMOVERIOが転戦したというわけだ。
メルセデスAMGペトロナスは「チーム内では、コミュニケーションが非常に重要になる。来シーズンは、MOVERIOと無線技術を活用して、エンジニアもARを活用できるような環境を作り上げたい」などとした。
一方でメルセデスAMGペトロナスでは、パドック内でエプソン製プリンタも活用している。
シーズンを通じて10台のプリンタを活用。これを全世界21のサーキットを巡回するために用意した、6つのセットに振り分けて使用している。
パドックでは、ラベルプリンタの「ColorWorks TM-C3500」や、インクジェットプリンタの「WorkForce WF-2010W(日本ではPX-105)」、「WorkForce WF-5190(日本ではPX-S840)」を採用。各種情報をプリントアウトして情報を共有しているという。また、パドックで貼り出している、子供たちが書いた応援メッセージもプリンタで印刷したものだという。そのほか、工場においては、設計図印刷用に大判インクジェットプリンタの「SureColor T-Series」を活用したり、産業用ラベルプリンタ「LabelWorks」を導入したりしているという。
さらにレギュレーションの変更に伴い、エンジニアとドライバーの無線通信が制限されたため、ピットから指示する内容をラベルプリンタで打ち出して、ステアリングやコックピット部に貼付。無線では「左下を見ろ」と伝えるだけで、伝えたいことを伝えられるようにしたという。ドイツグランプリ以降、この無線制限は緩和されているが、「プリントしたものを貼付し、それを使っていた方が使い勝手が良い」という理由から、現在でも、この手法を採用。「エプソンのプリンタが、停止せずに安定的に稼働し、迅速に印刷作業をサポートすることは、メルセデスAMGペトロナスの勝利に重要な役割を果たしている」とした。
なお、メルセデスAMGペトロナスは、ルイス・ハミルトン氏およびニコ・ロズベルグ氏をドライバーに擁し、2014年および2015年のコンストラクターチャンピオンシップを獲得。2016年もチャンピオンシップをリードしている。
エプソンは、2015年からオフィシャルチームパートナーとして複数年のグローバルパートナー契約を締結。インクジェットプリンタ、スキャナー、3LCDプロジェクター、スマートグラス、ウェアラブル機器で同チームをサポートしているほか、2人のドライバーのヘルメットバイザーとレーシングスーツ、レーシングカーの車体に「EPSON」のロゴを掲示している。
メルセデスAMGペトロナスは、「メルセデスAMGペトロナスとエプソンは、優れた技術を世界中の顧客に対して提供していくという、ブランドに対する価値を共有している。このパートナーシップはお互いの進化に繋がっている」とコメントした。
また、エプソンでは、「F1選手権の開催地は、いずれもエプソンのビジネスにとって重要な地域であり、スポンサーシップ契約を最大限に活用し、世界中の顧客との関係を深め、先進技術の訴求に繋げていく」とした。