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川崎重工、ロボットショールーム「カワサキ ロボステージ」をお台場に開設

~今冬にはVRアトラクションも体験可に。新規ヒューマノイドも開発中

イベントにはタレントの市川紗椰さんも登場した

 川崎重工業株式会社は、人共存型の産業用ロボットや医療用ロボットの展示・性能を体感できる、東京ロボットセンターショールーム「Kawasaki Robostage(カワサキ ロボステージ)」を、2016年8月6日に開設すると発表し、前日の5日にオープニングイベントを開催した。イベントでは、新規ヒューマノイドも開発中であることが公開された。

人とロボットとの新しい関係を予感させる場所

「Kawasaki Robostage」。港区台場2丁目3番1号 トレードピアお台場1F

 「Kawasaki Robostage」は、「人間の創造力」と「Kawasakiの技術力」が出会い、人とロボットとの新しい関係を予感させる場所として、「人とロボットの共存・協調の実現」をメインコンセプトとし、これから到来するロボット社会に向けた、人とロボットの共存・協調のありかたを提案するという。一般向けで、誰でも無料で入ることができる。

 ロボットは、2015年に発売された人協調型の双腕スカラロボット「duAro(デュアロ)」、大型ロボット「BX165」のほか、10台を展示。展示内容は随時更新予定で、食品分野、電子・電気分野、医療向けのロボットなどの各種デモンストレーションを見ることができる。所在地は、東京都港区台場2丁目3番1号 トレードピアお台場1F。デモンストレーションは随時行なっていく予定とのことだ。

 同社は、2020年に予定されている「ロボット国際競技大会」にもアピールできる拠点とすることで、日本政府が目指すロボット産業の発展、ならびに中小企業のロボット普及・浸透に貢献していくとしている。

 なお、予約なども必要ないが、どのように運用していくかは随時判断していくという。

「Kawasaki Robostage」概要
オープニングイベント後のぶら下がり取材時の模様。6日以降はロボットが真ん中に設置される。

ロボット社会の新たなるステージを切りひらく

川崎重工業株式会社 代表取締役社長 金花芳則氏による挨拶から始まった

 イベントでは、川崎重工業株式会社 代表取締役社長の金花芳則氏、同 常務執行役員 精密機械カンパニー ロボットビジネス センター長の橋本康彦氏が登壇し、同社のロボットビジネスについて紹介した。また、各地の工場のリアルタイムモニタリングや、タブレット端末を使ったロボットの遠隔操作の様子もデモンストレーションされた。

 その後、ゲストとしてロボットや鉄道好きで知られる、タレントの市川紗椰さんも加わって、テープカットとロボットの未来を語るトークショーが行なわれた。

 代表取締役社長の金花芳則氏は、同社が創立120周年を迎えることと、初の国産の産業用ロボット「川崎ユニメート2000型」を実現したことを振り返り、今後の発展を見据えてロボットセンターを開設したと語った。未来のロボット社会の新たなるステージを切り拓くという意味を込めて、「Kawasaki Robostage」という名前にしたという。

川崎重工業株式会社 代表取締役社長 金花芳則氏
川崎重工業株式会社 常務執行役員 精密機械カンパニー ロボットビジネス センター長 橋本康彦氏

「Kawasaki Robostage」

大型ロボット「BX165」が両脇に立つメインステージ。車体溶接の動きを行なう

 常務執行役員 精密機械カンパニー ロボットビジネス センター長 橋本康彦氏は、川崎重工のロボット産業の歩みを振り返ったあと、ロボステージ全体と、今後のロボットビジネスの展望について紹介した。

1969年、日本初の産ロボ投入
スポット溶接ロボット
塗装ロボットは自動車だけでなく携帯電話の塗装も
アーク溶接ロボット
半導体製造で活躍するウェハ搬送ロボット
食品業界で活躍するパラレルリンクロボット
医薬品業界にもロボットは進出
duAroは人共存ロボットの在り方を提案

 ロボステージでは、主に双腕スカラロボット「duAro」を動かす。まずレセプションロボットが受付として入り口に設置され、各国語に対応したパンフレットを渡す。似顔絵を描いてくれるロボットもある。

多国語に対応した受付ロボット
タッチパネルで対応言語を選択する
duAroによる似顔絵描き

 「duAro」は食品業界への展開も視野に入れており、Robostageでは、ピザとお寿司を作るデモを行なう。ピザ用では、トッピングのケチャップをかけたり、オーブンに入れて取り出す動作を行なう。お寿司ではシャリの上にエビや卵などのネタを載せていく。1台のロボットで両方のデモを行なうため、片付けもロボットが自分で行なう。なお実際に扱うのは食品サンプルで、本物ではない。

ピザ作りと寿司を作るduAro
握り寿司を作る様子
ピザ作りと寿司作り

 医薬品用ロボットは「分注」と呼ばれる作業を行なってみせる。1台は滅菌や洗浄のため、オールステンレス構造となっているが、夜は照明でライトアップし、ダンスをさせることで、夜間の通行人からも窓越しに楽しめるものになるという。なお、外からもロボットの映像とロボットの姿を楽しんでもらうことができるとのことだ。

医薬品用ロボット
3台のロボットによる協調作業
医薬品用ロボットによる分注作業

 メインステージでは、大型ロボット「BX165」が画面と連動して、自動車溶接現場で活躍する様子を披露する。半導体工場で活躍するウェハ搬送ロボットも高速動作を見せる。

 このほか、主に一般の学生に産業用ロボットの面白さを体感してもらうことを狙って、duAroのプログラム体験ができるブースも用意されている。

画面と連動して溶接の動作を見せる大型ロボット「BX165」
ウェハ搬送ロボット
プログラム体験も可能
溶接の様子を再現

IoTによる工場の「見える化」も体験可

IoTによる工場の「見える化」

 続けて、IoT関連デモとして、ロボットビジネスセンターFAクリーン総括部 総括部長の長谷川省吾氏が一緒に登壇し、遠隔地にあるロボットの製造工程のリアルタイムの様子を中継で示した。画像だけではなく、各工場の工程がデータとして帰って来るというものだ。まずは明石にあるduAroの工場が紹介された。

 中国蘇州では、ロボットがロボットを作るというコンセプトで、人が得意な工程とロボットが得意な工程を分析し、それぞれ適材適所に配置して実施しているという。本部では、ロボットがモーターや減速機を搭載していく様子を見ることができるほか、生産工程のモニタリングとして、各生産工程の生産用ロボットのデータをモニタリングすることも可能だ。西神戸工場では車体溶接をしている様子が紹介された。

 橋本氏は「東京ロボットセンターから全ての状況をモニタリングできる。世界の距離を超えて繋がっていく時代になった」と語った。

遠隔地の工場のモニタリング
各工程のデータが見られる
ロボットと人が共同でロボットを組み立てる中国工場の様子
ロボットの稼働状況
タブレット端末を使った遠隔地のロボット操作もデモされた
ロボット操作画面

Robostageの将来と、Kawasaki によるヒューマノイド開発

製品化を目指したヒューマノイド開発を行なっていることも公開された

 さらに橋本氏は「まだ紹介していないものがある。その中で3つ予定しているものを紹介したい」と続け、今後の展開について語った。

 まず1つ目は「バーチャルロボライド」。HMDと産業用ロボットを組み合わせた、VRアトラクションが体験可能になるという。橋本氏は「ジェットコースターにも飛行機にもなる。ソフトウェアとロボットの動きをリンクさせると、色んな乗り物が体験できる」と語った。「バーチャルロボライド」は、今年の冬頃には登場予定だ。

 2つ目は手術支援ロボット。Kawasakiでは、2013年に医療用検査機器シスメックス株式会社と共同出資で株式会社メディカロイドという会社を作っている。社名の由来は、Medical+Android、つまり医療用ロボット。2017年には第1弾の医療用ロボットシステムを、2019年には手術支援ロボットを投入予定であるという。それもRobostageで公開されるとのことだ。

VRロボットアトラクションが今冬に登場予定
手術支援ロボットも製品開発予定
日本のヒューマノイド研究と川崎重工業

 3つ目はヒューマノイドである。川崎重工業は、これまでにも「HRP(人間協調・共存ロボットシステムプロジェクト)」のような国家プロジェクトで、ヒューマノイド開発に関わってきた経緯がある。HRPでは主に遠隔操作のインターフェイスを担当していたが、新規に開発予定のヒューマノイドでは、東京大学稲葉研究室と組んで、ハードウェアから開発していくという。

 人間が、水中では水中服を着たり、火災現場では消防服を着るように、服を着せ変えながらさまざまな現場に対応し、転倒しても立ち上がることができる、役に立つロボットを数年後の製品化を目指し開発していくという。

 なお、その後のぶら下がり取材で「ニーズがないのでは?」という記者たちの問いに対し、橋本氏は「ニーズがないとは思っていない。災害現場や危険な現場で使えるロボットがないだけだ」と述べた。また、稲葉研究室の既存ロボットのハードウェアを使うものではなく、全く新規のロボットとなるという。丈夫で軽量なロボットを目指すとのことだ。

東京大学稲葉研究室と共同で新規のヒューマノイド開発へ
危険な場所での作業などを用途とする

トークショー 将来は「サヤロイド」も登場?

トークショーの様子

 トークショーでは、金花社長は「産業用ロボットの魅力とロボット技術と顧客ニーズのマッチングの2つが目的」と改めてRobostageの目的について紹介した。

 市川紗椰さんは、ロボット好きになったきっかけは、小学生の時に好きだった、アイザック・アシモフのロボットシリーズだったと振り返った。アシモフの小説の中で、社会のさまざまなシーンで、ヒューマノイドだけではなくあらゆるロボットが出てくることに対してさまざまな可能性を感じ、ロボットの絵を描いたりしていたという。

 「鉄腕アトム」と「鉄人28号」の時代に育ったという橋本センター長も「教科書はロボットの落書きだらけだった」とその話を受けた。当時から「将来はロボットを作りたい」と思っていたという。

 金花社長は「彼がいたおかげでここまで(同社の)ロボットが成長してきた。彼は川崎重工業のスティーブ・ジョブズ。すごい発想をする。ちょっとした顧客の気づきやアイデアからロボットを創造する。色んなアイデアを出してくれている」と評価した。

 続けて、今後はどんなロボットが実現すると考えているか、という司会の質問に対し、市川紗椰さんは「生産年齢人口が下がる中で、ロボットの適用領域が広がっている。妄想している未来が広がっているのかな、とワクワクしている」とコメント。橋本氏も「高齢化社会で人と共存するロボットが重要だ」と述べ、「人が幸せになるためにどうすれば良いか。高齢者でもロボットの力で動けるようにするなど、ロボットが役立っていければ」と続けた。

 金花社長は、2人の話のさらに先の未来の話として「およそこういうことをやりたいなと思ったら、それがほとんどできる時代が来るのではないか。今日はしんどいなと思ったら、自分そっくりのロボットがやってくれるような時代もくるかもしれない。でも、色んなことがロボットでできる時代になると、『これだけは人間がやる』という仕訳をしないといけなくなるのではないか」と語った。市川紗椰さんは「サヤロイドですね。欲しいです」とコメントし、会場の笑いを誘った。

 さらにこの後、話題は川崎重工業のメイン事業であるエネルギーや輸送関連、特に鉄道ビジネスの国際展開に及んだ。同社は信頼性の高い鉄道車両を世界各地に輸出している。鉄道車両マニアである市川紗椰さんは、わざわざ日本製の車両を見るために海外まで足を運んだことがあるという。

 最後に橋本センター長が「ロボットも色々な形で貢献する。工場での製造生産だけではない。お寿司やハンバーガーを作ったり、似顔絵も描いてくれる。そういう可能性も知ってもらいたい」と語り、市川紗椰さんが「ロボットの未来がここにつまっている。ぜひ足を運んで自分たちの目で確かめて欲しい」と呼び掛けてトークショーを締めくくった。

市川紗椰さん
テープカットも行なわれた