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DirectX 12やVRで再び脚光を浴びるAMD FXプロセッサ
2016年7月11日 20:17
日本AMD株式会社は11日、都内で記者会見を開き、Radeon RXシリーズおよびデスクトップCPU/APUなどの情報を説明した。Radeon RXシリーズについては別記事を参照していただきたいが、本記事では米AMD Business Development Manager, Client Component ChannelのJames Prior氏による、APUおよびCPUの説明について紹介する。
同氏は冒頭で、まもなく搭載製品が出荷される第7世代AシリーズAPU(コードネームBristol Ridge)について解説。第7世代では、AMD FX/A12/A10向けのCPU 4コア/GPU 8CUバージョンと、A9/A6/E2向けのCPU 2コア/GPU 3CUバージョンの2バリエーションが用意されることが明らかとなった。
いずれもAMDプロセッサとしては初めてDDR4メモリに対応し、前者はDDR4-2400、後者はDDR4-2133までをサポート。プロセスの最適化と改善により高い動作クロックを実現し、AVFSの最適化により電力効率も改善。GPUコアも最大1GHzに達し、UVDやVCEの改善によりビデオ再生時の効率を高めた。
これらにより、2年前のハイエンドと比較して56%高いCPU性能を実現。GPUについてもCore i7より53%、第6世代APUと比較して38%高速であるとした。また、3年前のAMDプラットフォームと比較して、1080pビデオ再生時の消費電力を3分の1に低減、システム性能を38%高めたという。
デスクトップ向けプロセッサについては、新たに投入された「Wraith Cooler」などにより、静音性を改善した。また、ハイエンドのWraith Coolerだけでなく、ローエンド向け製品に付属するリテールクーラーも静音性を改善したという。
このところAMDは新チップセットを発表していないが、マザーボードについては引き続き開発されており、USB 3.1やM.2/NVM Expressなど、最新のトレンドを取り入れている。Socket AM3+については10枚、Socket FM2については8枚、2016年以降投入されたとした。
「なぜ今更AMD FX用のマザーボードを投入し続けているのか」という点に関してAMDは、未だ同価格帯において競合に対して優位性が保たれているという。FXの下位モデルに関しては日本では既に入手が困難だが、競合と比較して多いコア数やキャッシュ容量、そして全モデルクロック倍率がアンロックであることを挙げた。特にPentium G対抗のFX-4000シリーズやCore i3対抗のFX-6000シリーズでは優位性がある。
また、AMDはこれまでIntelの同価格帯と比較して3D性能で遅れをとっていたが、DirectX 12の登場により、マルチコアに対して負荷が分散されるようになったことで、FXプロセッサの多コアによる優位性が顕著になった。例えばゲーム「Ashes of the Singularity」にて、FX-6350は性能が167%向上するという。
Prior氏は、「AMDは特にゲームメーカーと協業したり、お金をかけて最適化をしたりせずに、ゲームがDirectX 12に対応しただけで、これだけの性能向上が図れた」とアピールした。
また、HTCのVRヘッドセット「Vive」においても、FX-8350が公式に推奨されているほか、米国のゲーム誌「PC Gamer」でも、FX-6350でOculus Riftが使用可能としている。AMD自身もSteamVRのテストを行なっているが、FX-6350以降とGeForce GTX 970/Radeon R9 390以降を組み合わせれば概ねVRの必要要件をクリアできるという。つまり、DirectX 12とVRによって、FXプロセッサが再び脚光を浴びるようになったとAMDは謳っているわけだ。
一方で、次期ハイエンドプロセッサ「Zen」の開発も進められている。Zenは最大8コア/16スレッドのハイエンドプロセッサで、Excavatorと比較してIPCが40%向上しているという。また、これまでAMDはハイエンド向けのAM3+、メインストリーム向けのFM2+、エントリー向けのAM1でプラットフォームが分断化されていたが、次世代は全てAM4に統合され、2020年まではソケットを提供し続けるとした。