Windows 8カウントダウン

Windows 8の日本語入力



 OSが新しくなったといって、おいそれと変えられないのが日本語入力環境だ。いわゆるIMEの扱いに関して、これまでと少し変更が加えられている。今回は、その状況について見ていくことにしよう。

●言語と入力方法

 Windows 8には「言語設定」と呼ばれる概念があり、使用する言語を複数設定し、「言語リスト」として登録しておくことができる。フランス語やイタリア語、韓国語、中国語といった異なる言語を簡単に切り替えて使える仕組みだ。そして、それぞれの言語について、複数の「入力方式」を設定しておける。この「入力方式」が、これまででいうところのIMEだ。Windows 7までは、IME=キーボードだったが、物理的なキーボードと入力方法としてのIMEが切り離された形になる。これはこれで妥当な設計だ。

 たとえば、Officeをインストールすると、Microsoft Office IME 2010がインストールされるし、ATOKをインストールするならそれも可能だ。これらのIMEは、日本語言語の入力方式として登録される。

 ただし、これらの入力方式は、クラッシックデスクトップ環境でしか使えない。かつてMetroと呼ばれた新環境下では、強制的にデフォルト入力方式であるMicrosoft IMEが使われる。

 入力方式の切り替えは、Windwosキーを押しながらスペースキーを押すことで実行できる。だが、デスクトップ環境でATOKがインストールされていたとしても、Metro環境下ではグレーアウトしていて利用できないことが分かる。

 不思議なのは、システムの起動直後にMetroアプリで日本語を入力しようとしても、それができない点だ。この場合、Windows+スペースでMicrosoft IMEを選択すると、日本語を入力できるようになる。

 今後、ATOKなどのサードパーティ製IMEが、Metro環境でも使えるようになるかどうかはわからない。iOSがそうであるように、IMEのような種類のアプリは認められない可能性もありそうだ。ただ、入力方法を選択するための操作として、Windows+スペースがあるのは、言語を切り替えるためだとしても、その選択肢としてグレーアウトした使えないはずの入力方式が出てくるのは不思議だ。

日本語環境では言語リストに日本語が登録されている。追加した言語はここに並び、もっとも頻繁に使用する言語を第一言語として先頭に置いておく
言語の追加は自由。表示言語とは別に各国語をリストに追加できる
IMEは入力方式として各言語の下にぶらさがる。

●アプリと言語

 Windows 7までは、IMEの状態はアプリケーションごとに別々だった。あるアプリではMicrosoft IMEを使い、別のアプリではATOKを使うということができていた。また、IMEのオン/オフ状態もアプリごとに別々に設定されていた。

 ところが、Windows 8では、全アプリのウィンドウで共通の入力方式を使うことがデフォルトになり、もし、Windows 7のように、異なるIMEを使いたい場合は、言語の詳細設定で、「アプリウィンドウごとに異なる入力方式を設定する」を有効にしておく必要がある。

アプリウィンドウごとに異なる入力方式を設定したり、従来のような言語バーを使用するには、詳細設定で指定しておく

 これができないと何が困るかというと、たとえば、スペースバーの打鍵でスクロールするようなアプリ、また、英数記号キーの打鍵がコマンドになるようなアプリを、日本語入力しているアプリと併行して使っているときにおかしなことになる。ピリオドを入力したつもりなのに、未確定の読点が入力された状態で、コマンドとして機能しないといったことが起こるわけだ。これは、アプリの構造にもよるかと思うが、混乱してしまう可能性もある。

 しかも、デフォルトでは、そのとき使っている入力方式が何なのかがタスクバーには表示されない。タスクバーに表示されるのは日本語環境なら「日本」という文字列だ。これは、言語が日本であることを示している。IMEである入力方式は、言語下のサブ項目になっているということだ。

 ただし、従来のようにIMEごとのアイコンを言語バーとして表示させることはできる。こちらは言語バーの「詳細設定」で、「使用可能な場合にデスクトップ言語バーを使用する」を有効にし、そのオプションで、言語バーの表示の方法を設定しておく必要がある。

言語バーに関する設定によって、従来のような言語バーが表示される

●レジストリは健在

 こうしたさまざまな振る舞いを見ていくと、Windows 8は、仮想キーボードを含むキーボード入力を、完全にOSの掌握下に置きたがっているが、完全にそれができなかった痕跡が見え隠れしている。

 キーボード入力について敏感になっているように見えるWindowsだが、レジストリデータベースにおけるScancode Mapによるキーアサインの変更は健在で、たとえば、CtrlキーとCaps Lockキーを入れ替えるようなユーティリティはきちんと使える。また、愛用して手放すことのできない「KeyMouXr」も、少なくともクラシックデスクトップ環境では従来通り使えている。Windowsのバージョンが上がるたびに、これらが使えなかったらどうしようかとドキドキするのだが、今回は安心していいようだ。

 ただし、KeyMouXrのように、キー入力をフックして置き換えるタイプのユーティリティは、Metro側では使えそうにないが、レジストリの書き換えで入れ替えたキーについてはWindows 8におけるすべてのキー入力時に有効になっている。

 ちなみに、KeyMouXrを他のWindows 8環境で使おうとして気がついたのだが、「すべてのユーザー」用のスタートアップフォルダが、隠しフォルダになっている。

C:\ProgramData\Microsoft\Windows\Start Menu\Programs\StartUp

 アップグレードなどで以前から登録されていたものは、そのまま起動時に実行されるようだし、手動でフォルダを開いてショートカットを入れておけばいいので、問題はないが、新たに登録したい場合には覚えておくといい。