Windows 8.1ユーザーズ・ワークベンチ

Windows 8.1を食わずギライにならないために

 Windows 8がリリースされてから約1年半、バージョンは8.1になって、この春には大規模アップデートも予定されている。それでも、Windows 8なんて、という声が聞こえてくることがある。Windows XPのサポート終了ももうすぐで、消費税率も上がることから、家庭用のPCを新しくしようと考えているユーザーもいるかもしれない。今回は、その抵抗感を少しでも和らげることについて考えてみる。

Webサイト=アプリと考えればアプリの数は無限

 新しいものに慣れるのは大変だ。実際、携帯電話でも方向キーでメニュー階層を操作する“ガラケーUI”が最高と考えていた方は少なくないんじゃないだろうか。でも、その大部分は今、スマートフォンの画面タッチに慣れきっている。人間なんてそんなもんだ。

 まず、Windows 8.1は、ハイブリッドOSであるという点を再確認しよう。つまり、これまで慣れ親しんできたクラシックなデスクトップの世界と、いわゆるモダンUIの世界の二面性を兼ね備えている。それぞれの世界では、それぞれ専用のアプリケーションを使う。

 考えようによっては、デスクトップ環境そのものが、モダンUIのアプリであると言える。つまり、これまでのWindowsでいうなら、コマンドプロンプトに相当するのがデスクトップ環境という考え方だ。

 いずれにしても、これまではデスクトップ環境しかなかったわけだし、そこで動くアプリだけを使って全ての作業をしてきた。その作法をそのまま新しく追加された環境のアプリに適用しようとしても使いにくくなるだけだ。

 PCでの作業については、情報の生産と消費に分けて語られることが多いが、まず、このうち消費については、これまでのデスクトップ上のアプリでやってきた作業をストアアプリに置き換えることができないかどうかを検討してみよう。最適なアプリがあればそれでいいし、なければないでブラウザに注目してみる。

 情報表示に使うアプリの筆頭はWebブラウザだ。ブラウザを使うときには、できる限りモダンUIの方を使うようにする。以前も書いたように、モダンUIのブラウザといっても実際にはストアアプリではない。だが、全画面で没入型の表示を提供するモダンUIのブラウザは情報の消費に向いている。タスクバーやアドレスバーなどの余計なパーツが表示されないので、情報に集中できるというメリットがある。

 モダンUIのブラウザを常用するためには、よく使うWebサイトにアクセスしやすくしておいた方がいい。これまでなら、よく使うサイトはブックマークとして「お気に入り」に登録したり、お気に入りバーに常駐させていたと思う。あるいは、タスクバーにピン留めするという方法を使っていた方も多いだろう。

 Windows 8.1ではWebサイトをタイルとしてスタート画面にピン留めすることができる。これを“超お気に入り”として使うことで、スタート画面から直接サイトを開けるようにしてしまおう。まるでアプリを開くように、お気に入りのサイトをスタート画面から呼び出せるようにするわけだ。

 任意のサイトをモダンUIのブラウザで表示させ、画面下部から指をスライドインしてアプリバーを表示させ、★ボタンをタップするとお気に入りの一覧が表示されるが、そこでピンのボタンをタップすると「スタート画面にピン留めする」のフライアウトが表示される。このボタンをタップすると登録は完了だ。フライアウトというのは、ちょっとした対話のためのパネルUIのことをいう。

 スタート画面に戻り、右端にスクロールすると、今、ピン留めしたサイトが見つかるはずだ。この要領で、よく使うサイトを全てピン留めしてしまう。

 これで、サイトについてはまるでアプリのように使えるようになる。TwitterやFacebookはストアアプリが提供されているが、さまざまなサイズの画面が縦使いされたり横使いされたりする中で、フォントサイズも自由にならないなど機能不足は否めない。ブラウザでWebサイトを開いた方がずっと使いやすいのだ。ブラウザなら、ズーム倍率を指定できるほか、必要に応じてピンチでズーム倍率を自由にできる。

 このように「Webサイト=アプリ」と捉えるようになると、ブラウザを開きっぱなしでサイトを切り替えたりといったことは考えなくなってしまう。別のサイトを開きたい場合は、いったんスタート画面に戻りタイルをタップしてそのサイトを開くのだ。

 もちろん、頭の中で、あのサイトはすでに開いているという意識があるかもしれない。その場合は下からのスライドインで開いているタブを一覧し、そこからサイトを探して切り替えればいい。

 それと同時にお気に入りのアプリはストアで探して、どんどん追加していけばいい。このあたりは、スマートフォンの使い方とまるで同じだ。アプリとサイトを同列で考えること。これが第一歩だ。

スタート画面に並ぶタイル。アプリとWebサイトが混在していても何の違和感もない

やっかいなIMEと日本語

 一方、情報の生産はどうか。エディタ1つまともなものが見つからないと嘆くユーザーが少なくないようだ。例えば、Google Keepなどは、スマートフォンとの同期もでき、メモ帳代わりに使えて重宝するが、なんらかの理由でインターネットに接続できない場合には手も足も出ない。

 とりあえず試してみてほしいのは、Microsoftが無償で提供している「OneNote」だ。Officeアプリの1つだが、ストア版は無償で提供されている。少なくとも文字の入力や、ちょっとした手書きのメモについては十分な機能を持っている。当然、OneDriveを使って、ほかの環境のOneNoteと作業内容が同期される。そして、Android、iOS、もちろんWindowsデスクトップと、あらゆる環境用にアプリが提供されているので、可用性も高く重宝するはずだ。

 情報の生産に欠かせないのが文字入力だが、モダンUIでの文字入力はデスクトップと同様にIMEを介在することになる。そして、日本語入力のためには日本語用IMEがその役割を担う。

 「Microsoft IME」は、Windows 8.1になって、ソフトウェアキーボードに変更があり、いわゆる日本語のフリック入力がサポートされた。残念ながら、このキーボードレイアウトは、ほかのIMEには使用が許されていないため、ATOKなどサードパーティ製のIMEは従来通りとなっている。

 スマートフォンでフリック入力に慣れているユーザーは、キーボードを使った長文入力には使い慣れたIME、タッチによる入力にはMicrosoft IMEを使うといった切り替えをお勧めする。複数のIMEがインストールされている場合、その切り替えはチャームの「設定」でキーボードを切り替える。手書き入力もそれなりに使えるのでチャレンジしてみるのもいいだろう。

 ストアアプリでの入力ボックスにはいくつかの種類があって、IMEのモードが自動的に切り替わるようになっている。

  • 汎用のテキスト
  • 固定サイズの単一行テキスト
  • 単一行数値
  • パスワード
  • メールアドレス
  • URL
  • 電話番号

といったものが用意されている。それぞれの入力ボックスに応じてIMEの入力モードが切り替わる。例えばメールアドレスボックスなら、@が含まれるメール専用キーレイアウトに切り替わるといった具合だ。困るのは意図せぬ場面で、文字を入力しようとするとMicrosoft IMEが日本語入力をオンにしてしまうことだ。これにはいつもイライラさせられる。

左右の親指だけでWindowsを操作

 情報の消費はブラウザ、それ以外はストアアプリ、デスクトップに行くのは最小限という使い方にこだわるようになると、タッチ操作における指の動きがパターン化されていく。

 例えばタブレットを両手で抱えている場合、左手親指で画面左からスライドインを繰り返すことで起動しているアプリが順次切り替わっていく。

 スライドインした指を離さずに、スッと戻せばサムネールで起動中のアプリが表示されるが、よほど多くのアプリを起動しているのでない限り、数回のスライドインで目的のアプリにたどりつくだろう。

 ブラウザの場合は、下からのスライドインでタブを選択して目的のサイトを開く。これも左右どちらかの親指を使う。

 アプリ内でのスクロールも親指なら、チャームを出すのも親指でいい。つまり、Windows 8.1タブレットを両手で支えている場合、ほとんどの操作は親指だけで成立することになる。また、ブラウザの戻る、進むも画面内での親指フリックでできる。右フリックで戻る、左フリックで進むだ。

 これが、タブレットを自立させていたり、テーブルの上に置かれたりしている場合は、人差し指を多用することになるかもしれない。

 いずれにしても、モダンUIを操作するのに使う指は、かなり少なくても済むのだということがよく分かる。このことに気がつくと、Windowsタブレットを使うのがとてもラクになる。タスクバーの小さなボタンに照準を合わせて指で突くような操作が面倒になってしまうのだ。

右からのスライドインでチャーム表示
左からスライドインして、指を離さずに戻すと最近使ったアプリの一覧
下からスライドインすると開いているタブの一覧
タブ一覧状態でも左からスライドインして指を離さずに戻すと最近使ったアプリ
左からスライドインすると別のアプリに切り替え。

 先に挙げたアプリバーは、下からのスライドインで表示されるが、上部アプリバーと下部アプリバーがある。多くの場合、現在の状況に応じた指示は下部アプリバーを使うので、画面の上部に手を伸ばすことはほとんどなく済ませられるというわけだ。

 極端な話、Windowsは両手の親指だけで操作ができるといってもいい。キーボードと同様に両手を使うことがポイントだ。そしてリズムで画面をタッチする。それだけでWindowsはとても軽快な感覚で操作できるようになる。これは、ピュアタブレットでも、2-in-1でも同じだ。タッチ対応クラムシェルならヒンジ部分をつかんで親指操作すればいい。

 ちなみに上部アプリバーはナビゲーションバー、下部アプリバーはコマンドバーと呼ばれることもあるようだが、モダンアプリのUIは、まだまだ暗中模索が続いているようで、これが決定版といったUIが確立されるには、もう少し時間がかかりそうだ。

(山田 祥平)