Windows 10ユーザーズ・ワークベンチ

OSと統合されたOneDriveを有効に使う

 MicrosoftのクラウドストレージサービスOneDriveは、Windows 10になって、その仕様が大幅に変わった。良くなったところもあれば悪くなったところもある。それでも、現在、もっとも使い勝手のよいサービスとして利用しない手はない。

Windows 10に統合されたOneDrive

 Windows 8/8.1では別途配布のユーティリティを個別にインストールする必要があったOneDriveだが、Windows 10では完全にOSに統合され、エクスプローラーとの連携も考慮されるようになっている。その容量も、Office 365ユーザーには現在1TB、将来的には無制限になるという方針だ。先日、Office 2016の発表会時に、デモブースの係の方から無制限移行はキャンセルという説明を受けたが、それは誤りであったと日本マイクロソフト広報から連絡を受け、ホッと一安心しているところだ。

 OneDriveは、個人用フォルダーの中のシステムフォルダーの1つとして、ローカルドライブに専用のフォルダーが作成される。以前の名前はSkyDriveだったので、Windows 8時代から利用していたユーザーは、SkyDriveフォルダーがOneDriveにリネームされる。Windows 10を初回に起動してしばらくすると、OneDriveサービスが動き出し、最新のモジュールにアップデートされるのだが、そのときにリネームされるようだ。

 最新モジュールでは最初に同期するフォルダーの選択を求められる。デフォルトでは全てのファイル、フォルダーがクラウド上のOneDriveと同期されるようになっている。

 OneDriveの利用にはMicrosoftアカウントが必要だが、Windowsのアカウントに関連付ける必要はない。プランとしては、15GBまでは無料、100GBが190円/月、200GBが380円/月だ。年間換算するとそれぞれ、2,280円、4,560円となるので、200GBを超える容量が必要な場合はOffice 365プリインストールPCを購入し、サービス部分を1年ごとに更新するのが賢いかもしれない。各社秋冬モデルでは、Office Mobile と Office 365 サービスを組み合わせたタブレットなどもデビューしている。こうしたデバイスを入手できれば、Office 365サービスを毎年6,264円で維持できる。これなら単独で300GBのOneDriveを契約するよりも安い。もちろん、さらに投資して、フル機能のOffice 2016プリインストール機を購入するのが理想だ。

【17時50分訂正】記事初出時、OneDriveの利用にはMicrosoftアカウントでWindowsにログインする必要があるとしておりましたが、これは誤りです。お詫びして訂正します。

ローカルとクラウドの違いに注意

 さて、デフォルトでは、OneDriveはローカルのOneDriveフォルダーと、クラウド上のOneDriveフォルダーにある全てのファイル、フォルダーを同一内容に保とうとする。ローカルで作成したり、他のフォルダーからコピーしたりしたファイルがあれば、それがクラウドにアップロードされるし、ほかのPCで作成したファイルがクラウドにアップロードされていれば、それを検知したPCはそれをローカルへダウンロードする。

 「すべて同期」を選んでおくのがもっとも分かりやすいのだが、クラウド側の総ファイル容量が、ローカルストレージ容量より多い場合は、当然ながら、全部を同期することができない。そこで、OneDriveでは、どのフォルダーを同期するかを個別に指定することができ、同期を指定したフォルダーのみが同期の対象となる。指定しなかったフォルダーについては、ローカルのOneDriveフォルダーには存在しないことになる。存在しないように見えるファイル、フォルダーについてはWebで確認するしかない。Windows 10では、Windows 8/8.1にあったストアアプリのOneDriveもなくなってしまっている。

 Windows 8.1までは、同期されていないファイル、フォルダーについても、エクスプローラから参照すれば、まるでそこにあるように見えた。そして、開いたり、コピーしたりしようとした時点でダウンロードが始まった。つまり、ローカルのストレージを圧迫せずに、オンデマンドでファイルの入手ができたのだ。当然、そのためにはインターネット接続が必要だ。だから、インターネット接続ができない状態で、ローカルにないファイルを操作しようとしても、それができなかったわけだ。目の前にあるのに操作ができないということが、エンドユーザーの混乱を招いたようで、Windows 10では、いさぎよくローカルにあるフォルダーだけがエクスプローラで表示されるようになった。

 これが使いやすいか使いにくいかは議論の分かれるところだ。少なくとも、クラウドにのみ存在する自分のファイルやフォルダーをWindows 10から参照するためには、ブラウザを使ってサービスサイトを開くしかないわけだ。サイトを開かない限り、自分がクラウド上にどのようなファイルを所有しているのかは分からない。

Explorerとの統合

 クラウドとローカルが完全に同一、つまり、全てのファイル、フォルダーが同期しているということを前提にすれば、Windows 10でのOneDriveは大幅に使いやすくなっている。

 たとえば、エクスプローラーでOneDrive下のフォルダーやファイルを表示させた状態で、任意のファイルやフォルダーを選択し、右クリックしてショートカットメニューを表示させると、

  • OneDriveリンクの共有
  • その他のOneDrive共有オプション
  • OneDrive.comで表示
  • 同期するOneDriveのフォルダーを選択

という項目が見つかる。このうち、特に便利なのは、OneDriveリンクの共有だ。メールに添付するにははばかられるような、それなりに大きなファイルを誰かに届けたい場合には実に便利だ。この方法で共有リンクを取得すると、同時にクリップボードにそのURLがコピーされ、メールの本文やSNSのメッセージなどに簡単に貼り付けることができる。

 さらに、相手に共有リンクとして、ファイルの在処を知らせたあとに、ファイルに修正が必要になった場合も、直接そのファイルを修正すれば、クラウド上のファイルと同期され、相手は常に最新のファイルを入手できるというわけだ。

 ローカルのファイルが既にクラウド上と同期されているかどうかは、ファイルのアイコンを見れば分かる。ファイルの作成直後は同期中の青いマークがアイコンに付くが、同期が完了すると緑のマークに変わる。

 Windowsの通知領域には、OneDriveの通知アイコンが常駐している。このアイコンにポインタを重ねると、現在の状態がバルーン表示されるようになっている。また、アイコンの右クリックで表示されるショートカットメニューには、エクスプローラーでの右クリックメニューと同様のもののほかに、容量の管理や設定、終了といった項目が用意されている。

同期前のファイルアイコンには同期待機のマークが付く
通知領域の通知アイコンを確認すれば状態が分かる
同期後はファイルアイコンに緑のチェックマークが付く

 OneDriveは、Windows 10へのサインイン時に自動的に開始され、サービスとしてWindowsに常駐しているが、同期がうまくいかないなど、なんらかの理由でOneDriveを終了させることもできる。その再起動は、スタートメニューのすべてのプログラムからOneDriveを実行するだけでいい。再起動によって、エクスプローラーがOneDriveフォルダーを開き、サービスが再開する。経験的に、たまに同期がなかなか終了しないことがあるが、いったんOneDriveを終了させて再起動すれば正常な状態に戻るようだ。

通知アイコンの右クリックでショートカットメニューが開く
通知アイコンをクリックすれば状態の詳細情報が得られる
詳細情報ではエラーと解決方法が提示される
OneDriveを開くと赤い×がついていて問題が起こっていることが分かる
フォルダーアイコンを見れば同期中、同期前が一目でわかる
何も問題がなければ同期は最新状態でクラウドとローカルが同一であるということを確認できる
最終更新の時間も分かる

同期対象に変更あり

 一方、Windows 8の時代には、OneDriveを介して同期されていた複数デバイスの設定同期だが、それが限定的なものになっている。個別に同期を設定できるのは、

  • テーマ
  • Internet Explorer settings
  • パスワード
  • 言語設定
  • 簡単操作
  • その他のWindowsの設定

となっている。一般公開されているビルド10240では、「Internet Explorer setting」ではなく、「Webブラウザーの設定」という表記になっているが、最新のInsider Previewでは「Internet Explorer setting」に改められている。要するに新ブラウザEdgeでは、お気に入りやリーディングリストの更新は、デバイスごとに独立しているということだ。

 また、壁紙などの個人設定は引き継がれているが、ロックスクリーンについてはデバイスごとに固有となり同期はされないところも中途半端な感が否めない。

クラウドのファイルを直接読み書き

 OneDriveフォルダーは個人用フォルダー下に作成されるシステムフォルダーだと書いたが、このフォルダーは他のシステムフォルダーとは異なり、プロパティの場所タブでその位置を変更することはできない。変更するには、通知アイコンの右クリックで設定を呼び出し、いったんOneDrvieのリンクを解除し、再設定時に場所を変更しなければならない。さらに、特定フォルダーツリー下のみとなり、異なる位置にあるフォルダーを個別にといったことはできない。

 分かりにくいのは、一部のアプリケーションで、OneDriveを直接読み書きする機能が用意されている点だ。たとえば、Office 2016では、各アプリが共同編集をサポートするようになったが、これは、各アプリがローカル保存したファイルを同期するといったプロセスを踏まずに、OneDrive上のファイルを直接書き換えることで実現されている。これまでは、OneNoteだけがこの機能をサポートしていたが、WordやExcel、PowerPointなどでもこの機能がサポートされるようになった。

設定画面ではOneDriveのリンク解除もできる
OneDriveフォルダーの場所変更は、いったんリンクを解除する
同期するフォルダーを個別に指定する。任意のフォルダーツリー下を丸ごと、あるいはそのフォルダー下の任意のフォルダーのみを指定できる
通常は同期済フォルダーのファイルアイコンには緑のマークがついている
ファイルを右クリックしたときのショートカットメニューにはOneDrive関連の項目が用意されている
同期済のファイルのリンクを共有すると、そのURLがクリップボードにコピーされる
設定では個別の同期についてオン/オフを切り替えることができる

 実に便利な機能で、複数のデバイスでファイルを開きっぱなしにして、それぞれで内容を書き換えても問題は起こらない。これまではファイルの排他処理が行なわれて、編集内容の競合を回避してきたわけだが、自分自身はもちろん、他人であっても、ファイルへの同時アクセスが可能となり、1つの文書を同時多発的に編集することができるようになった。

 OneDriveはWindowsのみならず、iOSやAndroid用のアプリも配布されていて、さらにこれらのデバイスにOfficeアプリを入れておけば、ファイルの共同編集はこれらのデバイスでも有効だ。大きな家計簿ファイルをExcelで作り、外出時の支出については、その都度スマートフォンで入力しておくといった応用はもちろん、完成したファイルの推敲を移動中のスマートフォンで行なうということもできる。

 こうした使い方が将来的に一般的なものになるのであれば、エクスプローラーへの統合は、もう少し仕様を考え直した方がいいかもしれない。エクスプローラーからファイルを開いた時と、アプリケーションからファイルを開いた時で挙動が異なるというのは分かりにくいからだ。非同期対象のファイル、フォルダーの扱いを含めて再考が必要だ。

(山田 祥平)