笠原一輝のユビキタス情報局

レノボがThinkPad X240で目指したこと

〜UltrabookでもビジネスノートPCの使い勝手を実現

ThinkPad X240

 レノボ・ジャパンから販売されている「ThinkPad X240」は、レノボが“Classic ThinkPad”と呼ぶ従来型のクラムシェル型ノートPCの最新製品だ。Classic ThinkPadには、14型/15型の液晶を搭載したTシリーズ、15型液晶を搭載しプロ向けGPUを搭載したWシリーズ、エントリー向けのLシリーズなどがあるが、Xシリーズは12.5型の液晶を搭載したシリーズとなり、日本ではモバイル向けのノートPCとして人気を集めている。

 現在のThinkPad X240シリーズには、より小型のX240sと、sが付かないX240の2製品が用意されているが、今回取り上げるのはX240で、s付きよりも若干重く厚いが価格は安価に設定されており、メインストリーム向けのモバイルノートPCを必要とするユーザーには有力な選択肢となっている。

 先日からフルHD(1,920x1,080ドット)液晶モデルの販売も開始されたThinkPad X240の設計に関して、ThinkPadシリーズの設計を行なっている大和研究所のエンジニアお2人にお話を伺ってきたので、その魅力について迫っていきたい。

コンシューマライゼーションの時代だからこそ“お父さんのPC”から脱却

 コンシューマ向けであろうが、ビジネス向けであろうが、ノートPCというのは1度設計をしたら、その基本設計はそのままに2年間程度は基本設計を使い回すのが一般的だ。これは、Intelのプラットフォームが2年に1度完全に新しい新アーキテクチャになることが理由の1つで、コストとの兼ね合いで毎年設計を変えると、金型を起こすコストが膨大になってしまうからだ。

 ところがThinkPadシリーズは、実は2009年に発売されたモデルで採用された基本設計(レノボではこれをCS=CleanSheet、クリーンシートと読んでいる)である「CS09」をその後4年に渡って使い続けてきた。「CS09は4年間にわたり基本的な設計は継続してきた、それだけユーザーに受け入れられてきたので、改良を加えながら続けてきた」(レノボ・ジャパン 株式会社 第一ノートブックシステム設計 担当部長 塚本泰通氏)とする。基本設計が優れていたため大きく変える必要が無く、改良しながら製品を開発してきた。CS09の最初の製品はThinkPad T400s(Montevina世代)で、ThinkPad X210/220/230、ThinkPad T410/420/430/510/520/530/410s/420s/430sなどがいずれもCS09世代という事になる。

レノボ・ジャパン 株式会社 第一ノートブックシステム設計 担当部長 塚本泰通氏(左)とレノボ・ジャパン株式会社 機構設計担当 内野顕範氏(右)。手に持っているのはCS13をベースに設計されたThinkPad X240

 そのCS09の後を受け、完全に新設計となるのがX240などで採用されている「CS13」だ。CS13の設計においては「これまでのビジネス向けのPCは、導入の決定権があるITマネージャに選んでもらえるような保守性などを重視した設計になっていた。しかし、スマートフォンやタブレットの普及によりコンシューマライゼーションの波が来ており、クラムシェル型ノートPCでもデザインへの重要度は高まってきており、既存のビジネスノートPCとしての基本的な部分は何も変えないまま、新しいデザインを採用する必要があった」(塚本氏)との通りで、塚本氏の言うところの“お父さんのPC”とでも呼ぶべき従来の質実剛健的なデザインから進化する、それがCS13でのテーマの1つだったという。

 それは、2-in-1デバイスのようにタブレットのような製品にするということではなく、あくまでビジネス向けのノートPCという基本線は維持しつつ、コンシューマ製品のようなデザインにするという二律背反な命題である。

 コンシューマ化という意味では、避けて通れない道としてUltrabookに代表されるような薄型化という流れがある。しかし、一部の製品では薄くすることを攻めすぎたため、液晶ディスプレイ部分の強度に不安がある製品も少なくない。常に持ち運んで使われ、かつ壊れてはいけないビジネス向けPCとしてはそれはどうなの? という製品があるのも事実だ。

 そこでレノボでは「我々はCS13を設計するに当たり、2年間慎重にThinkPadとして変えていいモノと変えてはいけないモノを検討してきた。その結果変えてはいけないモノとしてあったのは、使い勝手であり、生産性であり、堅牢性であり、価格だろうと。そこを変えずに、薄型化などのデザインに譲れるモノは譲り、高度なバランスを取ることを心がけた」(塚本氏)と、きちんと交通整理してからCS13の設計を開始したのだという。

薄型化の流れの中でもトラックポイントを実現する工夫を

 ThinkPadとして変えない部分、その代表と言えるのが、ThinkPadのアイデンティティと言ってよい、打ちやすいキーボードと「トラックポイント」と呼ばれるスティック型の入力デバイスだろう。ビジネスPCとして多くの企業ユーザーが重視するのは生産性の高さであり、その生産性に直結する部分が入力デバイスだからだ。

 今回のCS13のThinkPadシリーズを特徴付けているのは、その面積が拡大されたタッチパッドだ。CS09ベースのThinkPadシリーズでは、タッチパッドの位置付けは率直に言ってトラックポイントの補完的な存在というところだった。言うまでも無く、ThinkPadのアイデンティティはトラックポイントにあり、慣れるまで若干の時間を要すのは事実だが、それでも慣れてしまえば多くのユーザーが手放せなくなるデバイスであるからだ。しかし、ビジネスの現場では、レノボ以外のPCメーカーでスティック型のポインティングデバイスを採用している所はほとんど無く、タッチパッドが標準のポインティングデバイスとなっており、そちらで慣れているというユーザーも少なくない。そうした現実がある以上、レノボとしてもタッチパッドを装備しないわけにはいかない……、そうした背景があってThinkPadにはトラックポイントとタッチパッドの両方が搭載されてきた。

 だが、CS09からCS13への4年間で状況は大きく変わった。1つには、OSのユーザーインターフェイスがWindows 8世代になって大きく変わったことだ。Windows 7までは、スタートボタンに代表されるWindowsデスクトップが標準になっていたが、Windows 8世代ではModern UIと呼ばれる新しいスタートメニューを利用したユーザーインターフェイスが標準になっている。これにより、クラムシェル型ノートPCでタッチパネルが無い場合には、タッチパッドのジェスチャーを代替手段として利用する機会が増えている。また、大企業などで一括導入される場合、競合となる製品にはタッチパッドしかないため、その入札要件に“タッチパッド”が入っている例が増える一方だという。

 「これまでのXシリーズでは、タッチパッドが小さかった。実際に調査してみると、ThinkPadのユーザーでもタッチパッドを使っている率は増えてきており、今ではタッチパッド使うユーザーの方が多いぐらい。その上で、Windows 8が導入されたと言うこともあり、タッチパッドの面積を大きく取ることにした」(塚本氏)とし、ThinkPadとしてもそうした流れをしっかり押さえていくという方針で大型タッチパッドを実現したのだという。

 かといって、トラックポイントを無くすという結論に至ったのでは無いという。「薄型化という意味でもトラックポイントを無くした方がよりやりやすくなるのは事実だが、トラックポイントがあるからThinkPadを買うというお客様もいらっしゃる以上、それは使い勝手として妥協できないと考えた」(塚本氏)と、従来からのユーザーを裏切らないため、妥協を許さなかったという。

 トラックポイントを残す上での薄型化の課題は、設計側でカバーしている。具体的には、キーボードの裏側に用意するトラックポイントのコントロールモジュールを再設計することにより、大幅な薄型化を実現しているのだという。従来のCS09世代製品では、キーボードの裏側、ちょうどトラックポイントのスティックの裏側に、圧力センサーと制御基板などを格納したモジュールが装着されており、ここがどうしても厚くなってしまっていた。しかし、CS13ではそれをセンサー部分と制御基板に分離し、制御基板をキーボードのスペースキーの下側に入れ、トラックポイントの真下に来るのはセンサーだけという設計に変更し、厚さを大幅に削減できたのだという。また、トラックポイントのスティックの高さも使い勝手に影響が無い範囲で若干薄くし、こちら側でも高さを稼ぐことで、トラックポイントと薄さの両立を図っているのだという。

 ただ、英語キーのようにスペースキーが大きなキーボードでは基板を格納するのは容易だったそうだが、日本語キーのようにスペースキーが小さな環境ではこの基板を格納するのが難しく、結局日本語キーボードのスペースキーの長さに基板の長さを合わせるという設計にせざるをえなかったそうだ。ちなみに、配列としては日本語が1番“変な”キーが多いらしく、グローバルで3種類しかないキーボードの型のうち、日本語だけで1つを消費しているということだった。なんだかんだで、日本のユーザーは優遇されているのだ。

ThinkPad X240で採用されたキーボード。スペースキーの下に、トラックポイントの制御基板が入っている。英語配列キーボード(上)ではスペースに余裕があるが、日本語配列キーボード(下)ではスペースに余裕が無いことがよくわかる
左側の黒いキーボードの裏側にあるシルバーの部分がが従来製品のトラックポイントのセンサー、制御基板が格納されているモジュール。センサーと制御基板が一緒の場所に入っているので厚みがでてしまっている。これに対して右側のThinkPad X240キーボードは、センサーと制御基板が分離しており、厚さ方向が減っていることがわかる

2012年に6列キーボードを採用したからこそ実現できたパームレスト拡大

 キーボードに関しても、見えないところが進化している。塚本氏によれば「キーボードはX1 Carbonからストロークを若干短くしたが、それでもフィーリングが悪化しないような工夫を入れている。X240ではキーボードに貼ってある防水シートにキーがソフトランディングするようになっている」とのことで、従来の世代に比べて若干ストロークは短くなっているものの、フィーリングに関してはほとんど変わっていないのだという。

 具体的には、キーが押されて下にあるパネルに着地するときに、キーボードの裏側に貼られている防水シートに着地する仕組みになっており、フレームなどに直接あたる場合に比べると柔らかい着地になるので、結果的にストロークが短くなっても従来と同じようなフィーリングが実現できているのだという。

 また、2012年型のClassic ThinkPadから採用され始めた6列配列のキーボードも細かな部分が進化している。例えば、2012年型の6列キーボードは「F4」と「F5」、「F8」と「F9」の間にギャップが用意されていなかったのだが、それもユーザーからのフィードバックをもとにスペースが確保できるように改善したのだという。この6列キーボードに関しても、決してユーザーの反応は悪くなかったという。

 レノボ・ジャパン Thinkブランドマネージャ 土居憲太郎氏によれば「2011年モデルから2012年モデルへ移行し、7列配列から6列配列になる時に、2011年モデルの在庫を多めに持っていた方がよいかと営業担当は心配していたが、結果的には通常時よりもむしろ早く2012年モデルへの切り替えが起こった」との通りで、ThinkPadのメインターゲットでもある企業ユーザーには特に違和感無く受け入れられたのだ。

 塚本氏は「2012年モデルで6列配列に移行する時に、このまま7列配列にこだわってやっていく選択肢と、将来のためにフィーリングなどには妥協しないで新しいことにトライするという選択肢という2つを検討し、後者を選択した。その成果は2013年モデルですでに出ており、2013年型モデルでは6列配列になったことで、キーボードを全体的に液晶のヒンジ側に寄せることができ、その結果としてパームレストを大きく取ることができるようになった」と、6列配列が結果的にデザインの自由度を上げることに繋がったと説明する。

ThinkPad X240の内部構造。キーボードを6列配列にして後ろ側に移動させることで、前方にできたスペースにフロント用のバッテリと2.5インチ/9.5mm厚HDDを入れることが可能になった
2013年型のThinkPad X240のキーボード。2012年型6列配列で課題となっていた、F4とF5の間、F8とF9の間が設けられるなど改善が進んでいる

パームレストの拡大により実現した、2.5インチ/9.5mm厚ドライブの内蔵

 実は6列キーボードによる設計の自由度向上は、ThinkPad X240ユーザーに別のメリットももたらしている。タッチパッドに面積を取れるようになったのはもちろんだが、もう1つのメリットとして、大きくとったパームレストの下の空間に、2.5インチ/9.5mm厚のHDDを格納できるようになったことだ。大容量の2.5インチHDD/SSDを活用できるのは、大きなメリットと言えるだろう。

 現在多くのUltrabookでは薄型化を実現するために、ストレージにはmSATAやM.2のSSDを採用する例が多い。確かに薄型化には有効なのだが、それらのストレージが故障した場合、ユーザー側では交換できず、即サービスでの修理行きとなる。その間ユーザーとしてはPCを使えないので、ビジネスが停滞するという問題に直面することになる。対して、ThinkPad X240のように、2.5インチ/9.5mm厚のドライブであれば、比較的容易に交換用のドライブも入手できるし、ユーザーが自分で交換すれば引き続きPCを利用することが可能だ。

 それを実現する上で、ストレージデバイスの実装方法に関しても今回の製品では工夫されている。CS09世代の製品では、ストレージデバイス自体にゴム製のマウンタを取り付け、ストレージの上下に隙間を作り衝撃を吸収する仕組みを採用していた。衝撃吸収の観点では非常に良かったのだが、その分Ultrabookに入れるには厚みがでてしまうという課題があった。そこで、CS13世代では、新しいASF(Anti-Shcok Floating)と呼ばれる仕組みが採用されており、それによって薄く、軽くなりながらむしろ耐衝撃性を上げている。

 CS13世代ではエラストマー(Elastomer)というゴムとプラスチックの中間のような素材とプラスチックからなる新しい構造体を採用しており、エラストマーがHDDのネジ穴に挿入されている形になっている。そしてこのエラストマーがトランポリンのような役割を果たすことで衝撃を吸収し、HDDに衝撃を与えない形になっている。HDDの耐衝撃性は、薄くなったにもかかわらず43%も改善したのだという。

左がCS09までで利用していたゴム製のHDDマウンタ。右が新しいCS13で採用されているエラストマーとプラスチックから構成されているHDDマウンタ
マウンタの赤い部分がエラストマーで、衝撃を吸収しHDDを守る役目を果たしている。見た目にはとても衝撃を吸収しそうには見えないが、実際には従来に比べて43%も耐衝撃性が改善しているという
従来のThinkPadシリーズでは、底面にもっとごついゴム足がついており、それが衝撃を吸収していたが、CS13ではより小型でUltrabookとしてのデザインを妨げないゴム足に変更されるなどの工夫も加えられている

Ultrabookでは珍しい柔軟な内蔵+取り外しのバッテリ構成

 X240ではバッテリの構成が非常に柔軟に設計されていることも大きな特徴の1つとなっている。ThinkPad X240では、ボディのフロント部に3セルの角形バッテリ(容量23Wh)を内蔵しており、ボディのリア部に3セル角形(同23Wh)、6セル角形(同46Wh)、6セル丸形という3種類のバッテリを内蔵可能だ。ユニークなことに、この内蔵されている3セルも、注文時に内蔵させないことが可能で、リアバッテリのみで注文することもできるのだ。まとめると、X240では下表のようなバッテリ構成が可能と言うことになる。

【表1】X240でのバッテリ構成
フロントバッテリ リアバッテリ 合計容量
- 3セル角形(23Wh) 23Wh
- 6セル角形(47Wh) 47Wh
- 6セル丸形(72Wh) 72Wh
3セル角形(23Wh) 3セル角形(23Wh) 46Wh
3セル角形(23Wh) 6セル角形(47Wh) 70Wh
3セル角形(23Wh) 6セル丸形(72Wh) 95Wh

 つまり、ユーザーは23Whから95Whの間で、重量と相談して構成を決めることが可能になっているということだ。重くても長時間バッテリ駆動が良いという人は、フロント角形3セル+リア丸形6セルという構成を選べば良いし、逆に軽い構成が良いという人はフロントの内蔵バッテリを抜きにしてリアだけ角形3セルという構成を選べばよい。

 塚本氏によれば「こうした構成にしたのはお客様の選択の自由度を上げたかった。リアだけに丸形セルを採用したのは、コストを重視するお客様がそれを選択できるようにしたかったのと、デザイン上の理由」とのことだ。確かに丸形セルを利用した場合には、後ろが若干持ち上がる形になり、入力のしやすさが増す。また、もう1つ見逃せないのは、丸形セルのコストパフォーマンスだ。丸形セルは充電サイクルが250回程度と千回近くまで可能になっている角形セルに比べて寿命は短いものの、容量あたりの単価は安く、交換バッテリをオプションとして購入するとしても比較的安価に入手できる。そのあたりは、ユーザーが目的に応じて選ぶことができるのが嬉しいところだ。

 もちろん、バッテリが2つあっても安全性には問題が無いよう考慮されて設計されている。例えば、2つのバッテリがあった場合、2つのバッテリから同時にシステムに給電されるようなことがあれば、基板が壊れるなどの問題が発生する。そこで、ThinkPadでは、ThinkEngineと呼ばれる独自のASICを搭載しており、そのASICがハードウェア的にバッテリの動作を制御している。このため、システムに給電しているバッテリがいきなり取り外されたとしても、瞬時に内蔵バッテリに切り替えて動作を継続するので、システムが予期しないシャットダウンを起こしたりしないようになっている。

 また、バッテリには寿命があり、何度も充放電してサイクル数を増やすと、早く寿命が来てしまう。それを避けるために、ThinkPad X240ではフロントの内蔵バッテリはできるだけ使わず、リア側のユーザーが交換できるバッテリを優先して充放電するようになっている。リア側のバッテリはユーザーが自分で交換できるのに対して、内蔵バッテリはサービスで交換しなければならないための配慮だ。

 現在、Ultrabookという薄型化の流れの中でユーザーがバッテリ交換できる製品は減る一方だ。ビジネスの現場では、バッテリがなくなればビジネスが中断してしまうという課題がある。その課題に応えるという意味でこうした柔軟な構成が可能になっていることは、出先での仕事が多いビジネスユーザーには嬉しい設計だと言えるだろう。

左側が6セル/丸形(72Wh)バッテリ。右側が6セル(46Wh)/3セル(23Wh)角形のバッテリ。ユーザーが好きなバッテリを選択できる
内蔵、はめ殺しにされている3セルのバッテリ(赤い破線部分)。CRU(交換可能部品)ではないため、ユーザーが交換することはできない

ドックコネクタも一新、小型化を実現

 このThinkPad X240のリア側バッテリは、14型のThinkPad T440sと同じバッテリを共有している。これは日本では12型のThinkPad X240が売れ筋だが、米国などでは14型のThinkPad T440sが売れ筋であるためだ。それぞれの地域で売れ筋が違っても、同じバッテリが共有できれば、製造する量が増えるため、結果としてバッテリのコストを下げられるからだ。ただ、そのためにはX240とT440sで、バッテリのコネクタの位置などを共通にしなければならないため、T440sの開発チームとのすり合わせはかなり大変だったそうだ。

 CS13ではClassic ThinkPad(Xシリーズ、Tシリーズ、Wシリーズ)用として用意されているドッキングステーション/ポートリプリケータ用のコネクタが一新され、完全に新シリーズとなっている。これに合わせて、ドック用コネクタも一新されており、従来のモノよりもより小型のコネクタへと変更されているという。このコネクタでは、機能を減らさずにコネクタを減らす工夫がされており、例えば従来のドックコネクタでは、ビデオ出力のための信号線が多数通っていたのを、「ドック側にDisplayPortのハブを設ける形に変更することでピン数を減らしている」(塚本氏)と、見た目には分からない、かつユーザーの使い勝手を損なわない形で変更を加えているのだという。

 また、システムボードもできるだけ小型化を果たすために、内蔵モジュールは従来のPCI Express Mini Card(いわゆるMini PCI Express)から、M.2へと変更しているという。なお、メモリに関しては、X240ではシングルチャネル構成で1枚を挿す形になっている。「デュアルチャネルでオンボードか、シングルチャネルでDIMMかどちらかを選ばなければならず、マーケティングからはThinkPadのユーザーは交換できる方がいいだろうと言われ、この形にした」(塚本氏)と、スペースとユーザーのニーズを勘案した結果この形になったそうだ。実際問題メモリの帯域幅が性能に影響を及ぼすのはグラフィックス周りということになり、3Dゲームで大量のデータをメモリにロードする時ぐらいだろう。12.5型のX240がそういう用途に使われる可能性が高いかと言われればそうではないことも事実で、そうした意味では妥当な判断では無いだろうか。

 なお、今回のThinkPad X240では、特に日本のユーザーからの要望が多かったフルHD(1,920x1,080ドット)の高解像度ディスプレイが採用されている。塚本氏によれば「これまでは日本を除けば、ワールドワイドレベルでは高解像度ディスプレイを採用して欲しいというニーズはほとんどなかった。しかし、近年ではタブレットなどで高解像度化の流れがあり、徐々にニーズがでてきている」と、ほぼ日本だけだった高解像度化の要求がグローバルになってきたことが、フルHD液晶が用意された最大の要因なのだという。

 ただ、当初はX240もフルHDのパネルを採用する予定が無かったのだが、開発途中でフルHDのラインナップも加えることになったため、投入時期に関しては若干ズレが生じて、12月からフルHDの受注開始というスケジュールになったということだった。

ドッキングステーションに接続するコネクタもより小型の新設計(左)に変更されている。それに合わせて信号線も調整されており、従来はアナログRGB、DVI、DisplayPortなどが独立して出されていたのがDisplayPortのハブがドッキングステーション側に入る構造に変更されている
新しいドッキングステーション。DisplayPort、HDMI、DVI、RGBと多彩なディスプレイ出力が用意されているのが特徴的
CS13の特徴の1つとしては、このようにディスプレイが180度開く設計になっていることが挙げられる。会議中に向こう側にいる人にちょっと画像を見せたりということもすっとできるのは嬉しいところ
カードモジュールもPCI Express Mini CardからM.2へとフォームファクタが変更されている。左からX240用のM.2のWi-Fiカード、2012年モデルまでのPCI Express Mini Card(ハーフサイズ)のWi-FI、X240用のM.2のワイヤレスWANカード、PCI Express Mini Card(フルサイズ)のワイヤレスWANカード。M.2カードが小さくかつ薄くなっていることがわかる
X230の基板(左)とX240の基板(右)。X240がより小型化されていることが分かる。メモリはシングルチャネル構成
X240用基板の裏面

新しい機構設計を採用することで、低コストで高い剛性を実現

 ThinkPad X240では、機構設計も大幅に見直されている。レノボ・ジャパン株式会社 機構設計担当 内野顕範氏によれば「ThinkPad X230までは特定の部分に高価な材料を使うことで強度を出す一点豪華主義的な設計。それに対してThinkPad X240ではできるだけコストをかけずに強度を出すことがテーマとなっていたので、複数のパーツをうまく組み合わせることで強度を出す設計にしている」と、機構設計のコンセプトがThinkPad X230までとは大きく異なっているのだという。

 具体的に言うと、ノートPCの強度は、一般的にAカバー(液晶の裏面)、Bカバー(液晶面)、Cカバー(キーボード)、Dカバー(底面)の4つのカバーを組み合わせることで確保される仕組みになっているのだが、ThinkPad X230までは、AカバーとDカバーにマグネシウムという高価だがそれだけで強度が出せる素材が利用されていた。しかし、X240では薄型化のため薄型液晶モジュールを採用する必要があり、その分機構設計に回せるコストが減ってしまったのだという。そこで、X240ではAカバー、Bカバー、Dカバーにグラスファイバー入りのABSを利用し、Cカバーにロールケージを入れるという構造とし、これらを組み合わせて利用することで強度を出す設計になっているのだという。

 このため、X230世代までは、弁当箱のようにDカバーにマザーボードなどを取り付けその上にCカバーをかぶせるという構造になっていたのが、X240世代ではCカバーにマザーボードやヒンジなどを取り付けていくという仕組みになっている。これにより、Dカバーだけを外せば、すぐにすべてのパーツ(マザーボード、メモリ、ストレージ、バッテリ)などにアクセスでき、メンテナンス性が向上するという二次的な効果もあったのだ。

 内蔵バッテリは、レノボの言うところのCRU(お客様交換部品)ではないため、ユーザーが取り外せない部品(つまりサービスに出さないと交換できない部品)扱いになっているのだが、それでも実際には裏蓋を外すだけでアクセスすることが可能なため、通電状態のままでバッテリが外される事故などが起きないような工夫もされている。具体的には裏蓋が取り外されたことを検知するセンサーのようなモノが入っており、裏蓋が取り外されると前出のThinkEngineがそれを通知し、内蔵バッテリからの給電を強制的に止める仕組みが入っている。本来の保守手順では、BIOSセットアップで内蔵バッテリを止めてから行なう仕組みだそうだが、安全性を考慮してこうした設計にしているのだという。ユーザーがバッテリを交換する目的でなく、メモリやストレージなどCRUを交換する場合でも裏蓋を外す可能性があるためそうした仕組みになっているのだ。

 また、この仕組みはOSのブート前に行なわれるPOST(Power On Self Test)にも利用されており、マザーボードが裏蓋が開いたことを検知していなければ、パーツ構成などが変わっていないことを意味するので、POSTのいくつかの手順を省略する仕組みになっているという。ちょっとした工夫ではあるが、ユーザーにとっては少しでも起動時間が短くなるのは嬉しいことだし、ユーザーが誤ってバッテリが通電されたままCRUを交換したり壊してしまうという事故を防ぐ意味でも、大事な工夫と言えるだろう。

右から、CS09ベースのThinkPad X230のCカバーとDカバー、CS13ベースのX240のDカバーとCカバー。従来モデルでは底部カバーとなるDカバーにマザーボードなどが取り付けられる弁当箱構造だったが、CS13ではCカバーに部品を取り付け、Dカバーは蓋になっている
ThinkPad X240のDカバー、単純に単なる蓋になっている。この蓋が外されると、センサーで内蔵バッテリへの給電が止まる仕組みになっている。

Ultrabookなのに、従来のClassic ThinkPadの使い勝手を実現したX240

 このように見てくると、CS13という全くの新設計を採用したThinkPad X240が、従来モデルのThinkPad X230から大きく変わった製品だということが見えてくるだろう。Ultrabookにしては珍しく内蔵バッテリだけでなく2つ目の取り外し可能なバッテリを取り付けられること、ThinkPadのアイデンティティと言えるトラックポイントや、Windows 8時代に必要な大型タッチパッドの搭載をしながら薄型を実現していること、9.5mm厚のストレージを内蔵可能なことなど、Ultrabookという枠の中で従来のビジネスノートPCでは当たり前だったことを実現しているという点が最大の特徴だと筆者は思う。Ultrabookであろうがなかろうが、こうした機能はビジネスノートPCとして必要であり、Ultrabookをビジネスに利用したいというユーザーにはまさに重要なポイントとなるだろう。

 最近だとノートPCが注目されるのは、他社よりも薄かったり、軽かったりという製品が注目されがちであり、我々もどうしてもそうした製品を注目の製品として取り上げがちであるのは事実だが、実際にビジネスに使うとなると今回紹介したような交換できるバッテリ、交換できるストレージ、使い勝手の良いポインティングデバイスは、ビジネスの継続性や日々の使い勝手という点で重要な差別化ポイントだと言ってもいいだろう。Ultrabookであろうが、ノートPCにはそうした点を期待したいというユーザーであれば、ThinkPad X240は検討するに値する製品であると感じたことを、今回の記事のまとめとしたい。

(笠原 一輝)