笠原一輝のユビキタス情報局

PowerDVD 10に実装されたDVDビデオの3D変換機能を試す



 サイバーリンクの「PowerDVD 10」は、DVD/BD再生ソフトウェアであるPowerDVDの最新版で、従来バージョンのPowerDVD 9に比べて大幅な機能向上が図られている。その目玉となるのが、3D立体視機能への対応だ。いわゆるBlu-ray 3Dに向けた機能が実装されるなど、来たるべき3D時代へ備えた仕様となっている。

 今回は、PowerDVD 10のこの機能を実際に試して、どの程度3D立体視を楽しむことができるのかをチェックしていきたい。

●3D立体視への対応が目玉となる新しいPowerDVD 10

 サイバーリンクのPowerDVDシリーズは、CorelのWinDVDと並び、古くからDVD再生ソフトウェアとしてユーザーのなじみが深いソフトウェアであり、おそらく多くの読者が1度は利用したことがあるソフトウェアではないだろうか。今回サイバーリンクが発売したPowerDVD 10はその最新版で、従来のPowerDVD 9に比べて多くの点で機能強化されている。

 その最大のポイントは3D立体視への対応だ。PowerDVD 10で実装された3D立体視の機能は大きく3つある。1つ目は業界あげての取り組みが進んでいるBlu-ray 3Dへの対応だ。2つ目がDVDビデオの2D-3D変換機能で、2DのDVDビデオを3D立体視へリアルタイム変換して、3D立体視で楽しむことができる。3つ目がDVDビデオやBDではないビデオファイルを2D-3D変換する機能で、こちらも3D立体視ではないコンテンツを3D立体視環境で楽しむことができる。

□3D関連機能の対応
  最初のビルド Blu-ray 3D登場時に公開されるビルド
Blu-ray 3D再生 -
DVDビデオ 2D-3D変換
ビデオファイルの2D-3D変換 -

 ただし、この3つの機能のうちBlu-ray 3Dへの対応と、ビデオファイルの2D-3D変換機能は、Blu-ray 3Dのコンテンツが市場に投入される頃に提供される予定の無償アップグレードにより実装される予定で、発売時には利用できない。

 このほかにもユーザーインターフェイスの改善、画質向上機能「TrueTheater」のGPUアクセラレーションがNVIDIAのCUDAだけでなくAMDのATI Streamに対応、ノイズリダクション機能/手ぶれ補正機能が追加、Windows Media Center用のUIも更新され、Windows Media Center上からTrueTheaterの設定ができるようになったりしている。

 PowerDVD 10には、Ultra、Deluxe、Standardの3つのSKUが用意されており、それぞれの違いは下表のようになっている。

□PowerDVD 10の3つのSKU
PowerDVD 10 Ultra Deluxe Standard
Blu-ray 3D再生 - -
Blu-ray再生 - -
AVCHD/AVCREC - -
DVD再生
DVD 2D-3D変換 -
FLV/MKV/RM/RMVB対応
ビデオファイル 2D-3D変換 -
Dolby Digital 5.1ch 5.1ch 5.1ch
Dolby Digital Plus/TrueHD 7.1ch - -
DTS 5.1ch 2ch -
DTS HD 5.1ch - -
AAC 5.1ch 2ch -

 注目の3D機能のうち、DVDビデオやビデオファイルの2D-3Dリアルタイム変換機能を利用したい場合にはUltraないしはDeluxe、Blu-ray 3D機能を利用したい場合にはUltraが必要になる。

PowerDVD 10の新しいユーザーインターフェイス。上部にタブが追加され、ムービー、動画、音楽のタブでコンテンツをブラウズして探せるようになっている
TrueTheaterの機能が拡張され、CUDAだけでなくATI Streamにも対応したほか、ノイズリダクション機能などが追加された Windows Media Center上のUIも拡張され、3DやTrueTheaterの操作もWMC上からできるようになった

●AMD、Intel、NVIDIAのGPUに対応したPowerDVD 10の3D立体視機能

 PowerDVD 10を利用してPCで3D立体視を楽しみたい場合には、以下のような要件を満たす必要がある。

  1. 対応GPUないしは高い処理能力を備えるCPU
  2. 2倍速以上のBD-ROMドライブ
  3. 3D立体視に対応したディスプレイ(Blu-ray 3DはHDCP必須)

 以前の記事でも説明した通り、Blu-ray 3Dで採用されいるMPEG-4 MVCというコーデックは、60Mbpsを超えるような高いビットレートが採用されており、その動画をデコードして表示するには非常に高い処理能力が必要になる。PowerDVD 10ではMPEG-4 MVCをソフトウェアでデコードする機能が実装されているものの、クアッドコアのCore i7/i5程度の処理能力がないとデコードできないほど重い処理になるとサイバーリンクは説明している。

 このため、実用にはMPEG-4 MVCのハードウェアデコードが可能なGPUを利用するのがいいだろう。MPEG-4 MVCをデコードするには、以下のようなGPUが必要になる

□PowerDVD 10でBlu-ray 3D再生する場合のGPUの必要要件(2010年3月現在)
AMD Quad Bufferに対応したGPU、ATI Radeon HD 5000シリーズ以上
Intel Intel HD Graphics
NVIDIA VP4を内蔵したGPUで、GeForce GT 240以上

 NVIDIAのGPUであれば最低条件としてVP4と呼ばれる第4世代のビデオエンジンを備えたGPUが必要になる。これに該当するのは今後NVIDIAがリリースする予定のGF100ないしは、Direct3D 10.1に対応したGT21xコアを備えるGeForce GT 240が必要になる。GT21xコアという意味ではGeForce GT 220/210も該当するが、内部エンジンのスループットの問題でこれらの製品ではMPEG-4 MVCのデコードには十分ではないという。

 AMDの場合は少し複雑で、AMDがQuad Bufferと呼ぶ機能を実装したGPUが必要になる。これは左右に異なるイメージをステレオで表示する機能をドライバレベルで実装するものだ。AMDのATI Radeon HD 5000シリーズに内蔵されているビデオエンジンでは、現在の所MPEG-4 MVCのデコードには追いつかないので、あわせてドライバレベルでCPUにも処理を担当させる機能が実装されることになる(なおAMDでは次世代のGPUではMPEG-4 MVCのハードウェアデコードを可能にすると説明している)。これらの機能は、今後AMDのGPUドライバのアップデートに含まれる予定となっている。

 Intelの場合は、Intel自身はサポートをうたっていないものの、サイバーリンクが独自にIntel HD Graphics(Core i7/5/3に内蔵されているGPU、開発コードネーム:Ironlake)で、Blu-ray 3Dの再生を実装しており、こちらを利用しても再生することができるとサイバーリンクでは説明している。

●3D立体視に対応したディスプレイが必要になる、現実的には3D Vision+120Hzディスプレイ

 3D立体視で楽しむには3D立体視に対応したディスプレイも必要になる。現時点では選択肢は大きく2種類で、1つがNVIDIAが提供する電子シャッター方式のメガネとなる3D Visionとそれに対応したリフレッシュレート120Hzのディスプレイ、もう1つが偏光メガネ方式を採用したメガネと偏光フィルムを取り付けた3Dディスプレイとなる。

ZalmanのZM-M220Wには偏光メガネ方式の3Dディスプレイ

 偏光メガネ方式のPCディスプレイはZalmanのZM-M220Wが販売されている。偏光メガネ方式のメリットはポジションさえ決まれば残像などが少なく見えることで、眼への負担も他の方式に比べて少なくなっている。ただ、ZM-M220WはDVI-D入力がHDCPに対応していないほか、そもそもHDMIがないため、Blu-ray 3Dは利用できない。ただし、後述する3D VisionがNVIDIAのGPUでしか利用できないのに対して、偏光メガネを採用しているZM-M220WであればIntel、AMDのGPUでも利用することができるという点はメリットと言える。

 Blu-ray 3Dを見据えた選択という意味では、リフレッシュレート120Hzのディスプレイと3D Visionを選択するというのが現時点では最もロジカルな選択肢と言える。3D Vision(別記事参照)はすでに販売が開始されており、2万円弱で入手することができる。

 3D Visionを利用するには以下のようなスペックを満たす必要がある。

  1. 120Hz表示に対応したディスプレイ
  2. 3D Visionと互換性があるNVIDIA GPU
  3. Windows Vista/7

 3D Visionと互換性があるGPUに関してはNVIDIAのWebサイトが詳しいのでここでは触れないが、基本的にはGeForce 8以降と考えるといいだろう。なお、GPUの処理能力によっては3D効果を十分に受けられない可能性があるほか、3D Visionではデュアルリンク出力が必須となっているため、ビデオカード側のデザインでデュアルリンク出力が可能になっていない場合には利用することができないのでこの点も注意しておきたい。

 気になるディスプレイだが、現在日本で入手できるディスプレイは選択肢がそんなに多くない。フルHD(1,920×1,080ドット)に限るのであれば、デルが販売している「Alienware OptX AW2310」が事実上、唯一の選択肢となる。Alienware OptX AW2310は応答速度が3msと高速で動きの速い動画にも十分対応できるほか、120Hzのリフレッシュレートに対応しているため3D Visionで利用することができる。原稿執筆時点では49,800円で販売されていた。

 このほか、フルHDでなくてもよければ、サムスン電子の「SyncMaster 2233RZ」や日本エイサーの液晶プロジェクター「H5360」も日本で入手可能だ。SyncMaster 2233RZは解像度は1,680×1,050ドットとなるが、応答速度は2Dで5ms、3Dでは3msと比較的高速で十分にゲームや3Dに利用できるスペックになっている。SyncMaster 2233RZ原稿執筆時点では大手通販サイトなどで32,800円で販売されていた。日本エイサーのH5360は解像度は1,280×720ドットの720pプロジェクタで、120Hzのリフレッシュレートに対応している。 H5360は大手通販サイトなどで65,000円程度で入手することができる。ただし、これらはデュアルリンクのHDPCには対応しないので、Blu-ray 3Dの視聴はミニD-Sub15ピンで接続することになる。

デル Alienware OptX AW2310 サムスン電子 SyncMaster 2233RZ 日本エイサー H5360

●実写映画で大きな効果があることを確認、完璧ではないがそれなりには楽しめる

 今回PowerDVD 10の3D立体視をテストするにあたり用意した環境は以下の通りだ。

テスト環境
CPU Core i7-860
マザーボード Intel DP55KG
メモリ 6GB
GPU GeForce GT 240/512MB
ディスプレイ Alienware OptX AW2310

 3D立体視を利用するには、まずNVIDIAの3D Visionのドライバをインストールする必要がある。詳しくは3D Visionの記事にあるのでここでは繰り返さないが、ディスプレイドライバも通常のForceWareではなく、3D Vision専用のドライバパッケージを導入する必要があるので注意したい。

 なお、Alienware OptX AW2310にはHDMIとDVI-Dの2つの入力が用意されているが、3D Visionで利用する場合には必ずDVI-Dの方を利用する必要がある。というのも、Alienware OptX AW2310に限った話ではないが、ほとんどの製品のHDMI入力はシングルリンクのみの対応で、デュアルリンクには対応していないからだ。このため、デュアルリンクを必要とする3D Visionは、現時点でHDMI経由では利用できないのだ。

 設定が終わるとNVIDIAのテストツールを利用して3D立体視に見えていることが確認できる。その後PowerDVD 10でDVDビデオを再生し、メニューバーに用意されている3Dというボタンが押すと、3D立体視のメニューが表示され「Cyberlink TrueTheater 3Dを有効にする」というチェックボックスをチェックし、ディスプレイの種類から「120Hz Time Sequential 3D LCD(NVIDIA 3D Vision)」を選択すると3D立体視で映像が表示されるようになる。なお、PowerDVD 10の3D立体視表示はフルスクリーンモードでしか表示できず、DVDの早送りやスキップなどを行ないたい場合には1度3Dモードを解除しないと操作できない。

3Dの機能を有効にするには“Cyberlink TrueTheater 3Dを有効にする”にチェックを入れ、対応するディスプレイを選ぶ Alienware OptX AW2310にはHDMIとDVI-Dの2つの入力があるが、3D Visionを利用する場合にはDVI-Dを利用する

 実際にコンテンツを再生して気がついたことは、CPU負荷への影響はほとんどないことだ。CPU負荷は10%前後で推移しており、ほとんど負荷がかかっていない状態だ。もちろんCore i7-860とGeForce GT 240を利用していることもあるが、これだとメインストリーム向けのCPUでも十分に利用可能だろう、というよりも、おそらくそんなに難しい処理をしていないのだろう。

 もう1つ気がついたことは、3D Visionのメガネと視力矯正用のメガネの関係だ。視力矯正用のメガネをしていなければ3D Visionのメガネはほとんど顔と密着するように装着できるので外部から眼に入る光を遮断できるようになっているのだが、視力矯正用のメガネをかけている場合には3D Visionのメガネをその上から二重にかける形になり、必然的に周囲の光がメガネの隙間から入ってきてしまう。すると、光の加減から、眼に負担がかかったり、3Dに見えなかったりする。そこで、部屋の蛍光灯をオフにしてカーテンを引いてみると、かなりいい感じで見えるようになった。

★アニメーション(機動戦士ガンダム00 第1話)

 はっきり言って、セルで描かれる日本のアニメーションは3D立体視には最も向いていないコンテンツの1つだろう。このPowerDVD 10の2D-3D変換機能は背景はそのままで動いている人物などを二重化する仕組みのようだが、アニメーションの場合背景とキャラクターの輪郭があまりはっきりしていないものも少なくないからだ。しかし、今回視聴したガンダム00の場合、ロボットやキャラクターが背景からしっかり独立して描かれているためか、しっかりと立体視で見ることができた。ただし、効果そのものは後述する実写映画などに比べるとやっぱり少ないようだ。3D VisionではIRエミッタに用意されているホイールを利用して3D立体視の効果を調節できるのだが、アニメーションの場合には最大に設定しておくぐらいでちょうどよかった。

★スポーツ(2002 FIFAワールドカップオフィシャルフィルム)

 スポーツは一見すると3D立体視に最も向いていそうなコンテンツに思える。背景とプレイヤーが独立しているため、2D-3D変換にも適してそうだ。確かに3D化の効果はかなりあり、立体的に見えるのは感動した。ただし、動きが速いプレーになると、2D-3D変換が追いつかないのかやや残像が残るような映像に見える。動きが速い映像がやや気持ち悪く見える傾向は他のコンテンツでも確認できたので、このあたりはこの2D-3D変換の得意ではない部分と言うことができるだろう。

★実写映画(スター・トレック)

 結論から言えば、実写映画はもっとも2D-3D変換に向いているコンテンツだと感じた。人物と背景がきちんと独立しているので、変換エンジンからも判別しやすいのだろう。スター・トレックの場合、宇宙船の戦闘シーンと人物による会話のシーンの両方があるが、宇宙船の戦闘シーンもそんなに速いシーンがなく、割と違和感なく見ることができた。

 こうしたプレミアムコンテンツでは写真を撮影することは著作権法上できないため、今回はインターネット上(こちらのサイト)で著作権フリーとして公開されていたコンテンツをDVDビデオに編集して写真を撮影した。

 正直、写真ではほとんどよくわからないのだが、3D立体視を裸眼で見たときの特徴である人物などの二重化が行なわれていることは確認できるだろう。これも画面中央は二重化による差分が少なく、画面の端に行けば行くほど二重化の差分が大きくなっている。そうした処理により立体に見えるようにしているからで、PowerDVD 10の2D-3D変換がきちんと行なわれていることが確認できた。

準備ができたら3D機能をオンにすると 3D表示が有効になる。3D表示が有効になると強制的にフルスクリーン表示になり、解除するにはマウスでダブルクリックする 3D表示が有効になるとIRエミッターのNVIDIAのマークが明るい緑に点灯する
3D表示がオンになると、このように2重に表示される。端に行けば行くほど二重の差が大きくなる カメラにメガネの片側だけかぶせて撮影するとこのように見える。これを両目で見ると立体的に表示されているように見える。

●本格的な3D立体視時代に備えた先行投資として十分に楽しめる2D-3D変換機能

 以上のように、PowerDVD 10の2D-3D変換機能は、明らかに効果があるし、完全ではないものの、それなりに楽しめるものであると筆者は思う。もちろん最初から3D立体視用に作ってあるコンテンツの3D効果には明らかにかなわない。

 しかし、もともと3D立体視向けの作られたコンテンツはほとんどないのが現状だし、何よりも最大のコンテンツと目されるBlu-ray 3Dの提供も2010年の後半になるだけに、既存のコンテンツであるDVDビデオを利用してそれなりに3D立体視を楽しむことができる本機能は価値があると言えるのではないだろうか。

 正直言って筆者も当初は3D立体視には懐疑的だった。というのも、こういう技術は過去に何度も登場してそのたびに消えていったという歴史も知っていたし、何よりもメガネをかけるという不自然さに違和感を感じていたからだ。

 しかし今回、映画「スター・トレック」をPowerDVDの2D-3D変換機能を利用して2時間フルで見た後に、筆者は“3D立体視いいじゃん派?”に宗旨替えすることにした。というのも、見ているうちに慣れてきて違和感がなくなってきたからだ。逆に2Dの画面で見るのが物足りなくなってきたと言えば理解してもらえるだろうか。だから今はBlu-ray 3Dのコンテンツが登場するのを本当に楽しみにしているし、それに向けて液晶も120Hz対応のものに新調しようと思っている。こればっかりは実際に見てもらって確認してもらわないと体感してもらうのは不可能なのだが、とにかく筆者が強調したいのは最初の5分であきらめないで欲しいということだ。

 そうした3D立体視の機能を、本格的な3Dコンテンツが登場する前にいち早く体感できるという意味で、PowerDVD 10の2D-3D変換機能は非常に貴重なものであると言える。3D立体視を見るのに必要なコスト(3D Vision+液晶+PowerDVD)は決して安価でないのも事実だが、3D時代に備えるという意味では十分楽しめるし、Blu-ray 3Dが登場した時には本格的な3D立体視が楽しめるのだから十分価値があると言えるだろう。

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(2010年 3月 25日)

[Text by 笠原 一輝]