笠原一輝のユビキタス情報局

Intel、CULV版Calpellaを今夏に投入へ



CULV版Montevinaを搭載したAcerの薄型ノートPCを手に持つカレン・レジス氏

 Intelは、ドイツ ハノーファー市で開催中のCeBITで記者説明会を開催し、同社のコンシューマ向けの製品に関する説明会を開催した。

 この中でIntelのカレン・レジス氏(PCクライアント事業本部 コンシューマクライアントマーケティングディレクター)は「Montevina世代のUltra-thin Notebooksは大成功を収めた。この流れはCalpellaでも続いていく、今年の夏にはCalpella版のUltra-thin Notebooksが市場に投入される」と述べ、同社がUltra-thin Notebooksと呼ぶ、いわゆるCULV(Comsumer Ultra Low Voltage)と呼ばれる低価格な超低電圧版プロセッサのCalpellaプラットフォーム版が市場に投入され、今夏には実際の製品として店頭に並ぶ見通しだということを明らかにした。

●通常ULVに比べて大幅にプロセッサ+チップセットの価格が引き下げられるCULV

 多くの人が誤解しているようだが、Intelのプロセッサのラインナップに“CULV版”という製品は、過去にも、現在にも存在していない。そもそもCULVというのは、Intelの開発コードネームであり、IntelはCULVとは呼ばず“Ultra-thin Notebooks”ないしは“Ultra-thin Laptops”などと呼んでおり、CULVというのは通称に過ぎない。かつ、CULV版Core 2 Duoなどという製品も存在しない。本誌でもニュース記事やレビュー記事などで「CULV版Celeron 743」などという表現があるが、実際にはこれも単なるCeleron 743であり、CULV版ではないCeleron 743と機能は全く同等というか同じ製品なのだ。

 では何が違うのか? 具体的にはOEMメーカーへ販売されるときの価格が、従来のビジネス向けと位置づけられていたULV版に比べて安価に設定されているのだ。500ドル程度の価格設定の薄型ノートPCに搭載されている事が多いCeleron 743(1.3GHz)だが、1,000個ロット時のリストプライスは107ドル、チップセットとなるGM45(サウスブリッジ含む)が43ドルという価格設定になっている。つまり、2つのチップをあわせた価格がちょうど150ドルというのが、ビジネス向けのノートPC向けに購入した場合の価格となる。もっともプロセッサの価格はOEMメーカー毎に異なっており、ここで述べているのは、筆者の推定に基づく標準的な価格だ。

 ところが、OEMメーカー筋の情報によれば、CULVのマーケティングプログラムに沿った価格では、約半分の80ドル前後になるという。このため、OEMメーカーは、従来のULVマシンよりも安価にマシンを設計することが可能になり、500ドルという従来のULVプロセッサ搭載ノートPCではあり得なかった価格が可能になっているのだ。

●単なる安価ULV版となったCULVのマーケティングプログラム

 この仕組みを見てすぐに思い出すのは、Atomベースのネットブックの仕組だ。しかし大きな違いがある、CULVにはAtomのネットブックには存在していた“液晶は10インチ以下でなければならない”といった低価格になるための要件は存在していない。

 あるOEMメーカーの関係者によれば、当初はきちんとしたガイドラインのようなものが存在していたらしいのだが、各メーカーが各種のCULVノートPCを作っているうちに曖昧になり、もはやそうしたガイドラインは意識されていないのだという。つまり、事実上、ULVプロセッサの価格値下げが行われただけだと理解しておけばいいだろう。

 では、通常版のULVのメリットは何かと言えば、企業向けの管理機能であるvProに対応したチップセット(MontevinaならQM45)を選択できるということだ。エンタープライズ向けのノートPCを設計する場合には、従来通り通常版ULVを選択する必要があるのだ。

●今年の夏にCULVの価格スキームをCalpellaにも適用する
今夏には、CULV版のCore i7/i5/i3などが市場に投入される

 今回Intelが明らかにしたのは、こうしたCULVの価格スキームが、Calpellaプラットフォームの製品にも採用されることだ。

 現在IntelはCore i7-640UM(1.2GHz/4MBキャッシュ)、Core i7-620UM(1.06GHz/4MBキャッシュ)、Core i5-520UM(1.06GHz/3MBキャッシュ)というULV版を用意しているが、これらにもCULVのスキームに応じた割引価格が用意されることになる。

 さらに、第2四半期にはArrandaleベースのPentiumおよびCeleronのULV版が市場に投入される予定となっている。このCULV版プライスも用意されるので、特にArrandaleベースのCeleron ULVは、現行のCeleron 743と同程度の価格設定が用意されているとOEMメーカー筋の情報は伝える。

 実際前出のレジス氏は「Calpella版のUltra-thin Notebooksは、Montevina世代のUltra-thin Notebooksと同じような価格帯の製品になると思う」と発言しており、Calpella世代のCULVノートPCも現行のCULV版ノートPCと同じような価格帯になると考えていいだろう。現在CULVノートPCは、500ドル〜800ドルの価格レンジの製品がほとんどだが、この価格レンジにCalpellaベースの製品も登場してくることになると考えていいだろう。

●Huron RiverでもCULVの価格スキームは残される

 OEMメーカー筋の情報によれば、IntelはCalpellaの後継となるHuron RiverプラットフォームでもCULVの価格スキームを維持するという。

 しかし、実のところIntelはHuron River世代において、CULVで機能の制限などなくディスカウントだけをしている状況を改善すべく、CULV向けにメモリコントローラを2チャネルから1チャネルに減らしたSandy Bridgeを当初計画し、OEMメーカー側に提案していたのだという。通常のULVは2チャネル、CULV版は1チャネルとすることで性能に差をつけ、よりわかりやすい構成にしようという構想だ。

 だが、CeBITで話をきいたOEMメーカー筋の情報によれば、このシングルチャネル版Sandy Bridgeの計画はOEMメーカーなどの反対によりキャンセルされたのだという。このシングルチャネル版のSandy Bridgeを利用すると、OEMメーカーはマザーボードを2種類作る必要があり、それはコスト的に有り得ないと多くのメーカーが反対したということのようだ。

 このため、Huron River世代になっても、現在と同じように500〜800ドル程度のノートPCの市場にCULV版のHuron River搭載製品が登場する、ということになりそうだ。

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(2010年 3月 5日)

[Text by 笠原 一輝]