笠原一輝のユビキタス情報局

GPU搭載ゲーミングノートに力を入れるGIGABYTE

~ハイエンドブランド「AORUS」を展開

台北市の隣の新北市にあるG-STYLEのオフィス

 GIGABYTEと言えば、本誌の読者にとってはマザーボードやビデオカードを手掛けている台湾メーカーとして認知されているだろう。それら市場で人気を誇る同社だが、以前より事業の多角化を進めており、PCやサーバー製品のODMビジネス、スマートフォン、周辺機器などさまざまなビジネスを展開している。

 その中でも比較的古くから取り組みが行なわれているのがノートPCビジネスだ。GIGABYTEのノートPCは、以前から軽量薄型などでユニークな製品があり、台湾では割と人気を集めている。現在は特にゲーミングノートに力を入れ、「GIGABYTE」ブランドと、上位ブランドとなる「AORUS(オーラス)」の2つで製品展開を行なっている。

 そうしたGIGABYTEのノートPCビジネスの概況、AORUSやGIGABYTEブランドのノートPC製品についてお話を伺ってきたので紹介していきたい。

ディスクリートGPUを搭載したゲーミングノートPCに力を入れるGIGABYTE。ハイエンドブランドAORUSも導入

 前述の通り、GIGABYTEは自作PC市場においてASUSやMSIと並ぶトップ3に入るメーカーで、日本での認知度も高い。秋葉原や、PCパーツを扱う小売店に行けばGIGABYTEの製品が多数並んでいる。

 だが、本社のある台湾に行けば、GIGABYTEは大手の総合PCメーカーの1つと認識されている。もちろん、マザーボードやビデオカードも提供しているが、それ以外にもノートPC、マウス/キーボードなどの各種周辺機器を販売しており、人気を博しているのだ。

 さらに、GIGABYTEはグループとしてODMビジネスも行なっており、サーバーやノートPCなどの製造を日米欧のブランドメーカーから受託している。近年ではスマートフォンビジネスも台湾などで行なっており、新しい事業にも積極的に取り組んでいるのだ。

G-SYTLE AORUS製品部門 GM ランバート・タイ氏
G-STYLE社はGIGABYTEの子会社のノートPCメーカー

 そうした総合PCメーカーやODMメーカーの顔も併せ持つGIGABYTEが、自社ブランドのノートPCを販売する子会社として設立したのが「G-STYLE」で、現在GIGABYTEブランドとAORUSという2つのブランドのノートPCを販売している。G-SYTLEの製品部門 GMのランバート・タイ氏は「GIGABYTEブランドとAORUSの関係は、トヨタとレクサスのような位置付けになる。よりメインストリーム向けに近い製品がGIGABYTEブランドとなり、プレミアム向けがAORUSになる」とのことで、2つのブランドを使い分けることで、ユーザーに製品の位置付けを分かりやすくしていくということだった。

 なお、GIGABYTEは戦略として、ノートPCの中でも比較的ハイエンドセグメントの製品だけにフォーカスしているという。「ノートPC市場には沢山のプレイヤーがひしめいており、消耗戦に参加するつもりはなく、基本的にはディスクリートGPUを搭載した14型~17型のゲーミングPCなどに注力している」とのことで、グローバルでは成長市場となっているゲーミングPCに注力していると説明した。

 このため、GIGABYTEのノートPCにはいくつかのユニークな機能が搭載されているという。1つはTwitchライブ配信向けのハードウェアエンコーダモジュールだ。Twitchはゲームの実況中継で知られる動画配信サイトで、現在はYouTubeに次ぐ規模の動画サイトとなっている。このTwitchへの配信ソフトとして有名なXsplitでは、CPUやGPU内蔵のエンコーダ(IntelのQSVや、NVIDIAのNVENCなど)でエンコードして配信できるのだが、G-STYLEの一部製品ではハードウェアでエンコードを行なえるAverMedia製のカードモジュールを搭載しており、CPUやGPUにほとんど負荷をかけずにTwitchへの配信を行なうことができるのだ。

XspliteをTwitchへの生配信にハードウェアエンコーダが利用できる

 このほか、キーボードのRGBバックライトをキーごとあるいは特定の領域をまとめて色(1,680万色)を変えられる機能が用意されており、ゲームごとにプロファイルで設定して変更することができ、特定のゲームでプレイしやすいように特定のキーだけを光らせるなどが可能だ。

RGBバックライトを利用すると、1680万色から色を選択してキーボードを光らせることができる。一部のキーだけとか、全てのキーとか、キーボード全てを別の色にするなども可能

 また、ユニークな取り組みとしてはミリタリーカモフラージュ(いわゆる迷彩塗装)の技術で知られるMULTICAMとのパートナーシップで、筐体全体を迷彩にしたノートPCを限定発売している。この筐体は全てハンドメイドで水圧転写印刷の技術を利用しており、とても転写とは思えない品質で実現されている。17型、15型、14型の3つのラインナップがあり、それぞれ300台、500台、500台の限定生産だ。

14型、15型、17型の3つのディスプレイサイズが用意されている迷彩塗装のノートPC。なお、迷彩塗装ではあるが、防水防塵ではないので、本気でジャングルに持って行くと大変なことになりそうだ……
タイ氏のプレゼン資料

先日発表されたばかりのGeForce GTX 10シリーズを搭載したノートPCをラインナップ

 タイ氏は台湾の輸出振興を促進しているTAITRA(タイトラ)が制定している優れた輸出製品に与えるアワードとなるTAIWAN EXCELLENCEを受賞した製品としてGIGABYTEの2つの製品を紹介した。1つは「AORUS X5 v6」で、もう1つは「P55Wv6」というゲーミングノートだ。

 AORUS X5 v6はCPUに第6世代Core(クアッドコア)、GPUにGeForce GTX 1070を搭載したゲーミングノートPC。GeForce GTX 1070は、NVIDIAが開発コードネーム「Pascal」として最近リリースした最新GPUだ。これに15.6型フルHD(1,920×1,080ドット)でリフレッシュレート120Hzないしは15.6型WQHD+(2,880x1620ドット)IPS液晶のいずれかが選択可能になっており、前者を選んだ場合、NVIDIAのG-Syncが利用可能だ。

 NVIDIAのVR Ready認証を取得しており、Oculus RiftないしはHTC Viveを利用可能。VRと言うと、基本的にデスクトップPCが多く推奨されるが、VR Readyのロゴを取得している製品であればノートでも心配はない。

AORUS X5 v6のスペック

 GeForce GTX 1070を搭載しているが、内部構造を見直すことで、厚さ22.9mm、重量2.5kgとゲーミングノートとしては比較的薄型軽量を実現している。前出のキーボードライティングの機能や、Killer DoubleShot Proによるネットワークのトラフィックをコントロールするソフトウェアが搭載されており、ゲーム操作のパケットだけを有線LANに、それ以外を無線LANに流すことができる。

Killer DoubleShot Proの説明、流すパケットをEthernetとWi-Fiで振り分ける

 もう1つの製品がGIGABYTEブランドのP55Wv6。説明を行なったG-STYLEの製品部門3課 アラン・ソン氏によれば、こちらも同じ15.6型の液晶を搭載したゲーミングPCだが、もう少しコストパフォーマンス側に振った製品になる。このため、GPUはGeForce GTX 1060とミドルレンジのGPUになっている。ディスプレイは15.6型フルHD IPS液晶で、CPUは第6世代Coreプロセッサ(45W、クアッドコア)が採用されている。外付けディスプレイでの利用も意識された設計になっており、ディスプレイ出力はHDCP 2.2に対応したHDMI 2.0になっている。

G-STYLE 製品部門3課 アラン・ソン氏
P55Wv6のスペック
AORUS X5 v6を説明するスライド
P55Wv6を説明するスライド

ディスクリートGPU+クアッドコアCPU+95Whのバッテリで19.9mm厚/1.89kgを実現したAero 14

 GIGABYTEブランドの「Aero 14」は、14型WQHD(2,560x1,440ドット)IPS液晶を搭載したゲーミングモバイルノートPCという位置付けの製品で、今年(2016年)の6月に開催されたCOMPUTEX TAIPEIで発表された。

 G-STYLE 製品部門3課主任 ヘンリー・チュー氏は「現在のノートPC市場の主役は薄型ノートPCになりつつある。しかし、それらの製品にはディスクリートGPUが搭載されていないのでゲーミングPCとして使うには力不足。そこで、薄型だが、ディスクリートGPUを搭載した製品としてAero 14を企画した」と説明した。もちろんメインターゲットはゲーミングPCユーザーだが、ディスクリートGPUを搭載したことで、ワークステーション替わりにモバイルPCを使いたいというプロフェッショナルユーザーもターゲットになるという。

G-STYLE 製品部門3課主任 ヘンリー・チュー氏
オレンジ、ブラック、グリーンの三色展開
UVカットライン入りの天板デザイン
ほかのノートPCと比べると、ポップな感じなデザインになっている
デバイスマネージャ表示

 搭載されているのはGeForce GTX 970M(GDDR5/3GB)で、CPUはTDP 45Wの第6世代CoreベースのクアッドコアプロセッサCore i7-6700HQになる。通常の薄型ノートPCの場合は、ディスクリートGPUはなく、CPUは比較的強力な製品でもUプロセッサのTDP 28W版になるので、このスペックはかなり強力だと言える。一方で、厚さは18.9~19.9mm、重量は1.87kgに収まっている。

Aero 14のスペック

 こうした製品では確かに薄さ、軽さを実現しているが、バッテリの容量がとても少なくて、結局数時間しか使えないという製品が少なくない。しかし、Aero 14は94.24Whという大容量のバッテリを搭載している。一般的なUltrabookでは40~50Wh程度ぐらいなので、このことはバッテリ駆動時間の観点からは重要だ。

 チュー氏によれば、MobileMark 2014で10時間程度のバッテリ駆動が可能ということで、ディスクリートGPUを搭載していないUltrabookと同じような駆動時間を実現できているのは注目に値する。そうした設計が可能になったのは、ファンを2つ内蔵したためで、2つの銅製のヒートパイプを活用してSoCとdGPUの両方を冷やすことが可能になっていることで、比較的薄型軽量を実現できたということだ。

デュアルファンとデュアルヒートパイプを採用することで、dGPU+45W TDP CPUの組み合わせで19.9mm厚を実現

 なお、G-STYLEによれば、こうしたGIGABYTEブランド、AORUSブランドのノートPCは現在日本の小売り店では販売されていないが、同社の代理店を経由してAmazon.co.jpなどの通販サイトでは販売されている。記事を作成している8月下旬の時点ではAORUS X7 Pro V4、P15Fv5、P34Gv5などの製品を確認できた。

 今後、今回紹介したような製品も販売される可能性もあるということなので、興味があるユーザーはAmazon.co.jpや日本でのAORUSブランドのWebサイトをチェックしてみるといいだろう。

Aero 14を説明するスライド