ライバルには教えたくない本日の特選アプリ

飯マズ写真で悪名高い筆者がiPhoneのRAW撮影で汚名返上

~DNG形式が扱える「Lightroom for Mobile」を使ってみた

 「Lightroom for Mobile」は、AdobeがAndroidおよびiOS向けに提供しているモバイルアプリで、Creative Cloudの一部として提供されているLightroom CCのモバイル版という位置付けになる。

 先日そのLightroom for MobileのiOS版(Lightroom for iOS)がバージョンアップされ、新たにiPhoneやiPad Proの一部機種で使えるDNG形式と呼ばれるAdobeのRAW画像形式のサポートが開始された。今回の記事ではそうしたLightroom for MobileにおけるRAW画像の撮影とその活用方法について紹介していきたい。

機械に頼って良い写真を“作りたい”と思っていますが何か?

 本誌をよくご覧の読者なら筆者のことは改めて自己紹介する必要はないとは思うが、筆者は本誌などを中心にPCを始めとしたデジタル機器や半導体などについてのレポートを書くことを生業としている。

 だが、正直に告白すると、写真を撮るのに自信がある方ではない。美しい写真を撮るにはやはりセンスが必要だと思うのだが、自分のセンスなるものはこれっぽっちも信頼していないため、写真を撮る時には機械(つまりはカメラの機能)に頼ることがほとんどだ(要するにフルオートの写りが良いカメラを使うということだ)。現在、本誌を始めとした記事作成に写真を撮る場合にはソニーのミラーレス一眼カメラ「α6000」を利用して撮影しているのだが、基本的にはフルオートで撮影し、AdobeのCreative Cloudのフォトグラフィプランプラン(月額980円/税別)で利用できる「Lightroom CC」である程度修正して使用している。

 そんな筆者にとって、最近の小さな悩みはSNSなどに投稿する時に利用する写真の品質。特に食べものなどを撮って友人などとシェアするのだが、スマートフォンで撮影した食事写真が安定の“飯マズ写真”となっているので、なんとかしなくてはと思っていたのだ。

 また、せっかく旅行に行ったら、風景だって綺麗な写真で残したいと思うのが人情だ。だが、同じ風景の写真を撮っているのに、家族が上げたものはとても良い写真なのに、自分の写真はそうでもないとなると、やはりへこむのが人間というものだろう。

 そこで「センスを鍛えてなんとか!……」と考えないのはいけないことだとは思うのだが、やはりそこは機械になんとかしてもらいたいと思うのが筆者のスタイル。そんな時に筆者の目に飛び込んできたのが、このニュース「iOS版LightroomがRAW撮影をサポート」だ。これってもしかして、自分みたいに撮影した後で“ズル”していい写真をSNSに投稿したいという人に向いてんじゃね?と思って早速試してみることにしたのだ。

DNG形式というAdobeのRAW画像形式をサポートするLightroom for Mobile

 AdobeのLightroom for Mobileは、Adobeがリリースしているモバイル機器(iOS、Android)向けのソフトウェアの1つ。Android版とiOS版の2つがあるのだが、今回の目玉機能であるRAW撮影(実際にはAdobeのRAW画像形式となるDNG撮影)が可能になるのは、iOS向け(Lightroom fos iOS、Lightroom fos iPhoneとLightroom for iPadがある)のバージョン2.5以降となる。

 なお、Android版(Lightroom for Android)に関しては既にバージョン2.0でこの機能はサポートされており、原稿執筆時点の最新版となるバージョン4.1で同じように利用できる。ただし、対応可能かどうかはデバイスの設計による。筆者の手元にあった端末でテストしたところ、Xperia X Performance(SO-04H)は未対応、Nexus 5X(SIMロックフリー版、Android 7.0にアップグレード済み)は対応、Galaxy Note Edge(SC-01G)は未対応だった。Androidの場合にはカメラを選ぶので、使えるかどうかは実際にLightroom for Androidをインストールしてみないと分からない(インストール後は体験版として動作するので、メニューからデバイス情報を参照するとDNG撮影が可能かチェックできる)。

Lightroom for Androidでもカメラが対応していれば、DNG撮影が可能だが、どの機種で可能かどうかは公開されていないのでインストールしてみないと分からない
Xperia X Performance(SO-04H)はDNGに未対応

 iOSの場合には1,200万画素以上のカメラを持っているデバイスが対象で、iPhone 6s/6s Plus、iPhone SE、iPhone 7/7 Plus、9.7インチiPad Proに対応している。今回のレビューには、先日発表されたばかりのiPhone 7を利用した。

Lightroom for iOS バージョン2.5の起動画面、右下のカメラのアイコンを押すとLightroomのカメラアプリが起動する
Lightroom for iOSのカメラ画面

 DNGの撮影を行なうには、Lightroom for iOSのアプリ内部のカメラ機能で撮影する必要がある。アプリを起動すると、右下にカメラのアイコンが表示されるので、それを利用して撮影するだけだ。JPGかDNGのアイコンをタッチすると、撮影するファイル形式の選択を行なえる(なお、DNG形式で撮影すると1つのファイルで15MBとなっていた)。

 撮影した画像は、Lightroomのライブラリにだけ登録され、iPhoneの標準の写真ライブラリ(カメラロール)には登録されない。撮影した後、Lightroomで修正して(もちろん修正しなくても良いが)、カメラロールにコピーするという形で出力することが可能だ。

ホワイトバランスが間違っている飯マズ写真もレタッチすることで劇的に改善

 実際に、富士山まで旅行に行ってDNG形式で撮影し、その後レタッチしてSNSにアップしてみた。編集機能は豊富に用意されているが、風景写真の場合には必要な場所だけの切り出し、それに加えてホワイトバランスなどを調整すると見栄えの良い写真ができあがる。

Lightroom for iOSのレタッチ画面

 Lightroom for Mobileには画像の切り抜きをタッチで行なえるほか、自動で角度補正を行なえる。例えば、下の富士山の写真の場合、水面が水平になっておらず、やや傾いて撮れてしまっている。より見栄えのいい写真にするには角度を調節したいところ。Lightroom for Mobileでは角度補正ボタンが用意されており、それによりCPUが自動で写真を判別して水平が出るように調整してくれる。実際、修正前と修正後を比べて見れば水面が水平になっていることが分かるだろう。

少し傾いて撮影してしまった富士山の写真
こちらは角度修正前の画面、水面がやや傾いていることが分かる
自動角度補正を利用して補正したところ、水面が水平になっていることが分かる

 また、編集メニューではホワイトバランス、色温度などを細かく調整できる。パラメータの意味がよく分からないというユーザーであっても「自動階調」のボタンを押すことで、CPUが写真を自動で判別して調整できる。また、ヒストグラムなども表示できるので、それを見ながら明るさを調整したりということも可能だ。この富士山の写真の場合には自動階調をオンにするだけで充分見栄えの良い色になった。

自動階調オフの状態
自動階調オンの状態、オフに比べて鮮明で明るいな画像になっている。このようにヒストグラムを表示させて確認することも可能
最後に富士山を中心にもってきて調整完了

 最後に切り抜きの機能を再度使って富士山が真ん中あたりにくるように調整すれば完成。その後は、右上にある共有ボタンを利用して、カメラロールに保存したり、共有メニューからInstagramなどのSNSに投稿したりということが可能だ。

共有メニューからカメラロールにコピーしたり、SNSにシェアできる
共有する時はJPGに変換されるがサイズが最大か2048pxの2つのサイズが選べる

 既に述べたように“飯マズ写真”として定評のある筆者の食べ物写真なのだが、飯マズ写真が量産される原因は、たいてい間違ったホワイトバランスで撮影されてしまい、食べ物の色が食べ物っぽく見えなくなることが原因だ。従って、常にちゃんとホワイトバランスを調整してから撮影すれば、ヒドイ飯マズ写真は回避できるのだが、料理の写真はみんなで食べている時にはほかの人を待たせないといけないので、調整して撮影とかやってる時間がない場合がある。そんな人もRAWで撮影して調整すれば、飯マズ写真から脱却可能だ。

典型的な飯マズ写真、ホワイトバランスがややおかしい
まず必要な部分を切り抜いて
ホワイトバランスを調整する、カスタムでも調整できるし、用意されているメニューから選ぶこともできる

 ここで使っている写真は友人とバーベキューした時に撮影したタン塩を焼いている写真だが、まさにそのホワイトバランスを間違っており、美味しそうには見えない。しかし、Lightroom for Mobileでホワイトバランスを調整してあげると、ちゃんと肉らしく見えるようになった。

 なお、Lightroom for iPhoneの場合、3本指でタッチすると、レタッチする前の状態を確認することができる。それを利用すれば、どちらの方が良いかを比較しながらレタッチできるので、便利だ。

3本指でタッチすると、補正前の画像が表示される
指を離すと補正後の画像になる

Creative Cloudのサブスクリプションを契約すると、PCとの連携機能が使えてさらに便利に

 本アプリを利用するには、Adobeのアカウントが必要になる。Adobeアカウントは、Creative Cloudのサブスクリプション契約をしていなくても作成できる無料のアカウントで、持っていなければAdobeのWebサイトで作成しておくといいだろう。

 基本機能は無料のアカウント作成だけで使えるのだが、Creative Cloudのサブスクリプションを契約していれば、Adobeのクラウドストレージ経由で撮影した写真をデスクトップPCのLightroomと同期するなどの追加機能を利用できる。

 現在のところ筆者は、急ぎの時はさっとiPhoneで編集してアップロード、じっくりレタッチしたい場合、あるいは仕事用の写真として使う場合には、PCのLightroomを開いて編集している。撮影したDNG形式の写真は1つのファイルで15~16MBになるので、そのままではスマートフォンのストレージを圧迫してしまう。そのため、残しておくべきものはPC側でローカルストレージに保存し、あとは定期的に消している。

 なお、PCのLightroomで消した写真は、スマートフォン側でも消されるので、スマートフォンのストレージの管理という観点でもスマートだ。この結果、スマートフォンがPCからはWi-Fiで接続できるカメラのように使えていて便利だ。

Lightroom for iOSに登録されている写真
撮影した画像が、PC版のLightroom CCにも自動で同期される

 AdobeのCreative Cloudフォトグラフィプランは、月額980円(税別)でPhotoshop CC、Lightroom CC、そしてクラウドストレージを安価に使えるサブスクリプションサービスで、今回紹介したLightroom CCと、Lightroom for Mobileの連携もできるようになり非常に利便性が高い。PCで写真の管理をしているが、モバイル機器とも連携させたいと考えているなら、Creative Cloudの契約を検討してみてはいかがだろうか。