多和田新也のニューアイテム診断室

Radeon HD 6000シリーズのハイミドル「Radeon HD 6790」



 AMDは4月5日、Radeon HD 6000シリーズの新モデルとなる「Radeon HD 6790」を発表した。Radeon HD 6000シリーズとしては、初めての700番台の型番を持つ製品で、ミドルレンジ寄りに位置付けられる製品となる。このパフォーマンスをチェックしてみたい。

●Bartsコアベースのハイミドルレンジ

 今回発表されたRadeon HD 6790は、Radeon HD 6700シリーズという新しいラインナップとなる。AMDの資料によると、Radeon HD 6800シリーズとHD 5700シリーズの中間に位置付けられている(図1)。ミドルレンジについては依然としてRadeon HD 5700シリーズが継続販売される格好となり、そのやや上のセグメントをカバーする製品となる。

 そうした新しい位置付けとなる本製品は、Radeon HD 6800シリーズで用いられるBartsコアを用いている。BartsコアはRadeon HD 6900シリーズで採用されたVLIW4アーキテクチャではなく、旧来のVLIW5をベースとしている。5SPをまとめたSIMDユニット16基で構成されるSIMDエンジンを14基持つコアである(図2)。Radeon HD 6870はこれを14基、HD 6850は12基有効化している。そして、Radeon HD 6790は10SIMDエンジン、800基のSPが有効化された製品となる。

【図1】Radeon HD 6790の位置付け。Radeon HD 6800シリーズとRadeon HD 5700シリーズの間を埋めるセグメントとなる
【図2】Bartsコアの特徴とブロックダイヤグラム。Radeon HD 6790は10SIMDエンジンが有効化されている

 類似製品との仕様比較は表1に記したが、同じく800SPのRadeon HD 5770に比べて、テッセレータのオンチップバッファの増量などの改良、UVD3の実装、メモリインターフェイスが大きな違いとなる。とくにメモリインターフェイスは、ハイエンド寄りの製品であるRadeon HD 6800シリーズをベースとしたコアであることから256bitインターフェイスとなっており、もともとミドルレンジとして設計されたRadeon HD 5770に対する大きな優位性といえる。

【表1】Radeon HD 6790シリーズの仕様

Radeon HD 6790 Radeon HD 5770 Radeon HD 6850
コアクロック 840MHz 850MHz 775MHz
SP数 800基 800基 960基
テクスチャユニット数 40基 40基 48基
メモリ容量 1GB GDDR5 1GB GDDR5 1GB GDDR5
メモリクロック 1,050MHz 1,200MHz 1,000MHz
メモリインターフェイス 256bit 128bit 256bit
メモリ帯域幅 134.4GB/sec 76.8GB/sec 128GB/sec
ROPユニット数 16基 16基 32基
ボード消費電力(アイドル) 19W 18W 19W
ボード消費電力(ピーク) 150W 108W 127W

 さて、今回テストに使用するのは、AMDから借用したリファレンスボードである(写真1)。クーラーはRadeon HD 6850などのリファレンスデザインと同様のものとなっている。

 インターフェイスはRadeon HD 6000世代らしい構成で、DVI-I×2、HDMI、mini DisplayPort×2が用意される(写真2)。もちろん、Eyefinityもサポートしている。

 電源端子は6ピン×2の構成(写真3)。消費電力はRadeon HD 6850よりも大きい150Wが公称されている。

 Radeon HD 6850よりも高クロック動作となっている関係で、より高消費電力な製品となってしまっているが、AMDの資料でも表記にバラツキがあり、おそらく150Wという公称値は、これ以下を保証するという意味合いの数値と推察される。それでも6ピン×2が必須という時点で、ミドルレンジというにはヘビーな要求仕様といえるだろう。

 CrossFire端子は1基を備える(写真4)。つまり2-wayまでのCrossFireをサポートしているということを示している。

【写真1】Radeon HD 6790のリファレンスボード。ボード長はRadeon HD 6850と同程度 【写真2】ディスプレイ出力はDVI-I×2、HDMI、mini DisplayPort×2となっている
【写真3】電源端子は6ピン×2。消費電力は150Wが公称されており、6ピン×1でもギリギリまかなえるが、2本繋がないと起動しなかった 【写真4】CrossFire端子は1基備えている

●ハイミドルレンジ〜ミドルレンジの製品をテスト

 それではベンチマーク結果の紹介に移りたい。テスト環境は表2のとおり。テスト対象は1万円台半ばから2万円台半ばの製品群とした。テストに使用した製品は写真5〜8のとおり。なお、GeForce両製品はオーバークロックモデルを用いているが、MSIのAfterBurner2.0によって定格クロックへ下げてテストしている。

【表2】テスト環境
ビデオカード Radeon HD 6790 (1GB)
Radeon HD 6850 (1GB)
Radeon HD 5770 (1GB)
GeForce GTX 550 Ti (1GB) GeForce GTX 560 Ti (1GB)
グラフィックドライバ 8.84.2-110322a-115844E GeForce Driver 267.59 GeForce Driver 266.66
CPU Core i7-860(TurboBoost無効)
マザーボード ASUSTeK P7P55D-E EVO(Intel P55 Express)
メモリ DDR3-1333 2GB×2(9-9-9-24)
ストレージ Seagete Barracuda 7200.12 (ST3500418AS)
電源 CoolerMaster RealPower Pro 1000W
OS Windows 7 Ultimate Sevice Pack 1 x64

 なお、先月紹介したGeForce GTX 550 Tiのテスト環境・テスト対象と似通っているが、ドライババージョンを統合するために、すべて再テストを行なっている。ドライバはRadeon各製品はAMDからRadeon HD 6790のレビュー用に提供されたドライバ。NVIDIA両製品は、テスト時点でNVIDIAのWebサイトからダウンロードできる最新のWHQLドライバを用いている。

 なお今回、BattleForgeにおいてアップデートプロセスが完了せずに起動できないトラブルに見舞われたため、今回のテストから省いている。

【写真5】Radeon HD 6850のリファレンスボード 【写真6】Radeon HD 5770を搭載するGIGABYTEの「GV-R577UD-1GD
【写真7】GeForce GTX 550 Tiを搭載するGIGABYTEの「GV-N550OC-1GI 【写真8】GeForce GTX 560 Tiを搭載する「GV-N560SO-1GI

 まずはDirectX 11対応タイトルの結果から紹介する。テストは、「3DMark 11」(グラフ1)、「Alien vs. Predator DirectX 11 Benchmark」(グラフ2)、「Colin McRae: DiRT 2」(グラフ3)、「Lost Planet 2 Benchmark」(グラフ4)、「Stone Giant DirectX 11 Benchmark」(グラフ5)、「Tom Clancy's H.A.W.X 2 Benchmark」(グラフ6)、「Unigine Heaven Benchmark」(グラフ7)の結果である。

【グラフ1】3DMark 11
【グラフ2】Alien vs. Predator DirectX 11 Benchmark
【グラフ3】Colin McRae: DiRT 2
【グラフ4】Lost Planet 2 Benchmark
【グラフ5】Stone Giant DirectX 11 Benchmark
【グラフ6】Tom Clancy's H.A.W.X 2 Benchmark
【グラフ7】Unigine Heaven Benchmark

 ざっと見て分かるのは、Radeon HD 6790はRadeon HD 5770よりは高性能だが、Radeon HD 6850ほどの性能ではない、という点である。Radeon HD 5770より高性能であるのはメモリインターフェイスの差が大きいと見られる。とくに3DMark 11やH.A.W.X.2でよりRadeon HD 6850に近い性能を見せるあたりは、テッセレータのオンチップバッファの効果も出ていると推測される。

 一方、Radeon HD 6850に対してはコアクロックこそ高いものの、SIMDユニットが2基制限されたことの影響となる。SPだけでなく、テクスチャユニットの削減も影響が大きいだろう。

 GeForce勢に対しては、まずGeForce GTX 560 Tiほどのパフォーマンスは持っていないことがわかる。先月紹介したGeForce GTX 550 TiとRadeon HD 5770で後者がまずまずの結果を見せたことから、より高性能を期待できるRadeon HD 6790の対抗となり得るかと思って比較対象に加えたが、結果としてGeForce GTX 560 Tiはワンランク上の性能を持つことが確認できたに過ぎなかった。

 GeForce GTX 550 Tiに対しては、DirectX 11対応タイトルではやや不利なタイトルが多いRadeon HD 5770だが、Radeon HD 6790ではかなり詰め寄れていることが分かる。

 続いてDirectX 9/10世代のベンチマークである。テストは「3DMark Vantage」(グラフ8、9)、「Crysis Warhead」(グラフ10)、「Far Cry 2」(グラフ11)、「Left 4 Dead 2」(グラフ12)、「Unreal Tournament 3」(グラフ13)だ。

【グラフ8】3DMark Vantage(Graphics Score)
【グラフ9】3DMark Vantage(Feature Test)
【グラフ10】Crysis Warhead
【グラフ11】Far Cry 2
【グラフ12】Left 4 Dead 2
【グラフ13】Unreal Tournament 3

 こちらもDirectX 11タイトルのベンチマークと大局的な結果に差はないが、Radeon HD 6790のGeForce GTX 550 Tiに対する優位性が高い印象を受ける結果となった。とくにUnrel Tournament 3がRadeon HD 5770とGeForce GTX 550 Tiの関係性を覆し、フィルタ類を適用しなければGeForce GTX 550 Tiを凌駕するほどの性能を見せる結果となっているあたりが顕著な結果といえる。

 やはり、ここでもRadeon HD 6850との差は大きくなっており、この点についてはDirectX 11であろうが、DirectX 10/9であろうが、メーカーが設定した位置付けを超えるほどの性能は見られない。

 最後に消費電力の測定結果である(グラフ14)。ここではGeForce製品に対する、Radeonシリーズの省電力性がよく出ており、とくにロード時にGeForce GTX 550 Tiを下回る消費電力で安定しているのは好印象を受ける部分だ。

【グラフ14】消費電力

 ただ、Radeon HD 6790に関していえば、Radeon HD 5770はおろか、Radeon HD 6850をも超える消費電力となった。公称値ほどの差ではないものの、とくにRadeon HD 6850との性能差を考えれば、残念な結果といえる。逆にRadeon HD 5770からの性能の伸びは大きいが、消費電力はそれほど大きくは伸びていないと捉えることもできるだろう。

●性能と電力のバランスに中途半端さを感じる製品

 以上のとおり結果を見てくると、それほど良い印象を受けない製品というのが率直な総論となる。Radeon HD 6850とRadeon HD 5770の間のセグメントを埋める製品として、性能面では確かにその位置付けとなる。その点で、Radeonシリーズ同士で比較検討するなら、この2製品が対抗となる。

 700番台というシリーズ名を考えれば、Radeon HD 5770の置き換えを期待する向きもあるだろう。性能は大きく飛躍しており、消費電力差も小さい。だが6ピン×2という要求仕様はRadeon HD 5770の置き換えにはふさわしくない印象も受ける。より性能が高く、6ピン×1仕様、かつUVD3やマルチディスプレイ環境というRadeon HD 6000シリーズの機能を持つRadeon HD 6850の素性の良さが目立ってしまっている。

 また、現在のRadeon HD 5770は1万円台前半、Radeon HD 6850は1万円台半ばから後半程度で、約5,000円程度の差だ。この間にRadeon HD 6790が入ってくることになるが、両製品に対する価格差は非常に小さい。

 また、GeForce GTX 550 Tiとの比較検討においては、Radeon HD 6790の良さを見いだすことができる。だが、GeForce GTX 550 TiとRadeon HD 6850の比較、と置き換えてもRadeon HD 6850がそれ以上の魅力を持っているといえる。

 その意味で、Radeon HD 6790のポイントは、Radeon HD 6850より若干ながら安価な価格帯でUVD3などのRadeon HD 6000シリーズの機能が盛り込まれた、という点に尽きる。自作ユースというよりは、チャネルマーケットに対して価格帯のバリエーションを広げたことに意味があるのではないだろうか。

 自作ユースではかなりニッチな隙間を埋める製品という印象になるが、例えば、公称値150Wならぎりぎり6ピン×1基でも電力供給はまかなえるわけで、独自のボード設計が可能なベンダーが6ピン×1基仕様のRadeon HD 6790製品などをリリースすることがあれば、もう少し対象ユーザーも広がるのではないかと思う。リファレンスデザインにはないベンダー独自の付加価値に期待したい。