瀬文茶のヒートシンクグラフィック

サイズ「虎徹」

~サイズが作り上げた新定番サイドフローCPUクーラー

 今回は、サイズ製のサイドフローCPUクーラー「虎徹」(SCKTT-1000)を紹介する。購入金額は3,280円だった。

阿修羅の設計を取り入れたコストパフォーマンス志向のサイドフロー

 サイズの虎徹は、2013年10月に発売されたサイズオリジナルブランドのCPUクーラーだ。冷却ファンに120mm角ファンを採用し、IntelとAMDの主要なコンシューマ向けソケットをサポートする。

 オーソドックスなサイドフロー型レイアウトを採用する虎徹のヒートシンクは、4本の6mm径ヒートパイプ、銅製のベースプレート採用のベースユニット、56枚のアルミフィンを備えた放熱ユニットによって構成されている。コストパフォーマンス志向の製品らしく、ヒートシンク全面へのめっき処理は施されていないが、ヒートパイプを潰さずに挟み込むベースユニットや、最上段に配置された装飾板など、阿修羅との類似点が確認できる。

 リテンションキットにも、阿修羅と同じブリッジ式リテンションを採用している。このリテンションキットは、AMDソケットへの固定時、マザーボード側の標準バックプレートの仕様によって取り付け方法が変わるという欠点があるが、手順を守れば取り付けやすく、固定状態の再現性も高い。虎徹との組み合わせでは、ヒートシンクが固定具上空に被るようなことも無いので、大変扱いやすい。

 冷却ファンには、サイズオリジナル設計採用の120mm角ファン「隼120」のPWM制御対応モデルを採用。この隼120は、400±200rpm~1,400rpm±10%の範囲で回転数を調整することができ、低速~中速までをカバーできる。ヒートシンクのファンへの固定には、金属製クリップを用いる。この金属製ファンクリップは、リブなしタイプの120mm角ファンであれば、厚みを問わず搭載可能な仕様となっており、市販のケースファンへの交換も可能だ。なお、ヒートシンク本体は、2基のファンを搭載可能な形状になっているものの、ファンクリップが1セットしか同梱されていないため、ファンを追加購入するだけではデュアルファン構成での運用はできない。

虎徹 CPUクーラー本体
付属品
同梱ファンの「隼120」。PWM制御に対応している
ファンの固定は付属のファンクリップで行う。リブ無しの120mm角ファンであれば市販のケースファンも固定可能
ベースユニットは、阿修羅と同じくヒートパイプを潰さず挟み込む方式を採用。
メモリスロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE搭載時)
拡張スロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE搭載時)

 干渉排除型デザイン採用したという虎徹は、放熱ユニットの厚みを抑えたことでメモリスロットとの干渉を回避している。また、今回検証に利用したASUS MAXIMUS V GENEとの組み合わせでは、拡張スロットとのクリアランスも十分に確保されていた。

 同じく干渉排除型デザインを採用しながらも、140mm径ファンを採用した阿修羅では、拡張スロットとのクリアランスが厳しかったが、120mm角ファン向けにヒートシンクを若干小型化したことで、虎徹は物理的干渉が起こりにくいヒートシンクとなっている。

冷却性能テスト

 それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定し、それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。

【グラフ】テスト結果

 冷却性能テストの結果を見てみると、3.5GHz時のCPU温度は53~60℃となっており、CPU付属クーラーより25~32℃低い結果となった。ファンの回転数を600rpmに絞っても25℃のアドバンテージがあるというのは、CPU付属クーラーからのアップグレード用として申し分ない結果と言える。

 一方、CPUの発熱が増すオーバークロック動作時は、4.4GHz動作時に68~81℃を記録。4.6GHz動作時は、20%制御時こそ94℃超過でテスト中止となったが、フル回転時に78℃、50%制御時でも83℃を記録した。価格やヒートシンクのスペックを考慮すると、虎徹の冷却性能は驚くほど優秀だ。

 動作音については、約600rpmで動作する20%制御時、900rpmで動作する50%制御時は十分静かに動作している印象だ。付属ファンの隼120は、1,000rpmを境に風切り音が大きくなる傾向にあるようで、フル回転設定時の約1,330rpmで動作している際は、それなりに大きな風切り音が発生していた。冷却性能テストの結果を考慮すると、オーバークロックをしない限り、ファンを全開で動作させる必要は無い。PWM制御でなるべくファンの回転数を絞って運用すれば、標準構成でも十分に静粛な動作が可能だ。

本来の役割に忠実。質実剛健なCPUクーラー

 実売価格3,000円前後という価格でありながら、虎徹の冷却性能と使い勝手はかなり高いレベルに達している。めっきを施し美しく仕上げたヒートシンクのようなルックスは無いが、「CPUの冷却」という、CPUクーラー本来の役割を追求して作られた、質実剛健なヒートシンクなのである。単なるコストパフォーマンス志向のCPUクーラーと侮ることはできない。

 全高160mmというハードルがクリアできるタワー型PCケースを利用しているのであれば、虎徹はシンプルに静粛性と冷却を強化できる有力な選択肢となる。CPU付属クーラーからのアップグレードを検討しているのであれば、是非候補に加えたいヒートシンクだ。

【表】サイズ「虎徹 (SCKTT-1000)」製品スペック
メーカーサイズ
フロータイプサイドフロー
ヒートパイプ6mm径4本
放熱フィン56枚
サイズ(ヒートシンクのみ)130×58×160mm (幅×奥行き×高さ)
重量480g
対応ファン120mm角25mm厚ファン「隼120」
電源:4ピン
回転数:400±200rpm~1,400rpm±10%
風量:20.7~79.0CFM
ノイズ:5.3~28.0dBA
サイズ:120×120×25mm
対応ソケットIntel:LGA 1150/1155/1156/2011/1366/775
AMD:Socket AM2/AM2+/AM3/AM3+/FM1/FM2

(瀬文茶)