西川和久の不定期コラム
富士通 arrows Tab「RH77/X」
~2in1としては大きめの12.5型ディスプレイを採用
(2016/3/23 06:00)
富士通は、arrows Tabブランドから12.5型液晶を搭載した2in1「RH77/X」を1月に発表した。発売は3月予定となっている。ご存知のように2in1は10型や11型のパネルが多く、12.5型は少し大きめ。ポータビリティや使い勝手が気になるところ。編集部から実機が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。
12.5型のパネルとSkylake世代のCore i5を搭載した2in1
富士通のWebサイトで「パソコン・タブレット(Wi-Fi専用)」のページを開くと、同社が展開しているノートPC、一体型PC、デスクトップPCごとに付けられたキャッチコピーを確認できるが、今回紹介する「RH77/X」は“スタイリッシュな2Wayタブレット”と謳われている。タブレット系ではRH/QH/GHシリーズがそれぞれラインナップされており、「RH77/X」はペン対応2in1という特徴を備えている。機能的に2in1でペン対応なのはRHのみである。
主な仕様は以下の通り。
富士通「RH77/X」の仕様 | |
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プロセッサ | Core i5-6200U(2コア/4スレッド、2.3GHz~2.8GHz、キャッシュ3MB、TDP 15W) |
メモリ | LPDDR3-1600 4GB |
ストレージ | 256GB SSD |
OS | Windows 10 Home |
ディスプレイ | 12.5型(光沢)、フルHD(1,920×1,080ドット)、タッチ対応 |
グラフィックス | CPU内蔵Intel HD Graphics 520 |
ネットワーク | IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.1 |
インターフェイス | USB 3.0、microSDカードスロット、Mini DisplayPort、音声入出力、200万画素前面カメラ/500万画素背面カメラ |
センサー | 加速度/地磁気/照度/ジャイロ |
その他 | カバーキーボード、256段階スタイラスペン、Office Home & Business Premium プラス Office 365サービス、ATOK 2015が付属 |
バッテリ駆動時間 | 実稼働8時間以上(34Whリチウムポリマー) |
サイズ/重量(タブレットのみ) | 319×201.3×9.5mm(幅×奥行き×高さ)/約890g |
税別店頭予想価格 | 19万円弱 |
プロセッサは、Skylake世代のIntel Core i5-6200U。2コア4スレッドでクロックは2.3GHzから最大2.8GHz。キャッシュは3MBでTDPは15W。このクラスのノートPCや2in1のCore i5としては標準的なSKUとなる。メモリはLPDDR3-1600の4GB。ストレージはSSDで約256GB。OSは64bit版Windows 10 Homeを搭載する。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 520。外部出力用としてMini DisplayPortを装備し、4K(最大4096×2,160ドット)対応。タブレットや2in1でHDMI系ではないのは珍しいところ。
ディスプレイは、光沢ありの12.5型フルHD/1,920×1,080ドット。もちろんタッチにも対応している(10点)。仕様にはIPS式とは明記していないものの「LEDバックライト付 タッチパネル式 高輝度・広視野角TFTカラーLCD」とあるので、見た感じも含めおそらくIPS式だろう。
インターフェイスは、IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.1、USB 3.0、microSDカードスロット、音声入出力、200万画素前面カメラ/500万画素背面カメラ。センサーは加速度/地磁気/照度/ジャイロを搭載。有線LANがないものの必要であれば、拡張クレードルやUSB 3.0で対応できる。USB 3.0は電源供給可能なPoweredタイプだ。
そのほかとして、256段階スタイラスペン(バッテリ不要)、Office Home & Business Premium プラス Office 365サービス、ATOK 2015が付属する。少し面白いのは、同社の製品ページのスタイラスペンのことを割とサラッと流していること(製品ページへのリンク)。逆にくどくど書かなくても当たり前になってきたという感じだろうか。
基本的に本体は12.5型のタブレットだが、ドックコネクタがあり、付属のカバーキーボードを接続可能。2in1として機能する。このキーボードは写真からも分かるように、接点も見た目も割とSurfaceのそれに近い。機能的な違いはキーボードバックライトがないことだろうか。
本体のサイズは319×201.3×9.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量約890g。カバーキーボード装着時で厚み約14.7mm、重量約1.25kgとクラスの割に軽くて薄くなっている。34Whリチウムポリマー電池を内蔵し、バッテリ駆動時間は最大8時間以上。
税別店頭予想価格は19万円弱。内容や国産で大手メーカー製と考えると無難なところだろう。なお、オプションで拡張クレードル(USB 3.0×2、HDMI、ミニD-Sub15ピン、DisplayPort、Gigabit Ethernet)も用意されている。価格は15,984円だ。
型番は異なるがWebサイトの同じページに掲載されている「WR1/X」は、カスタムメイドモデル(WEB MART限定)に相当する。プロセッサやメモリは固定となるが、ストレージ(128/2566GB)、キーボードやOfficeの有無などが選択可能だ。
本体色はブラックとなっているが、裏はクローム。前面のフチとキーボードがブラックと、渋くてカッコいい仕上げだ。本体は重量890gと1kgを切っているのだが、サイズや質感の関係か、持ち上げると結構重く感じる。カバーキーボードを装着し、閉じた状態はマットなグレーが表となり落ち着いた雰囲気だ。カバーキーボードの有無に関わらず結構薄いのでカバンに入れてもかさばらない。
前面はパネル中央上に200万画素前面カメラ、下にWindowsボタン。背面中央上に500万画素背面カメラ。左側面に音声入出力、USB 3.0(Powered)、Mini DisplayPort、ステータスLED×2、電源入力、microSDカードスロット。右側面に電源ボタン、ボリューム±ボタンを配置。下側面にはカバーキーボード接続コネクタと左右の凹みがクレードル接続コネクタだ。スピーカーは上側面のメッシュ部分に埋め込まれている。付属のACアダプタのサイズは134×32×26cm(同)。重量は183g。
USB 3.0やMini DisplayPortの位置が上にあるので、スタンドを立てて使った場合、ケーブルを接続すると宙に浮いてしまう。できれば下側に欲しかったが、ここはスタンド収納スペースとなっている関係でどうにもならず仕方ないところ。スタンドは約90度まで傾けることが可能だ。
少し気になったのはmicroSDカードスロット。通常はスロットにゴム製のカバーが付いているのだが硬くてなかなか外せない。無理に引っ張ると千切れそうで怖かった。ただし、試作サンプルであるため製品版では改善されている可能性があることを付記しておく。
12.5型のディスプレイは、明るさコントラスト、発色、そして視野角も十分確保され、高品質なものが使われている。また輝度最小でもかなり明るい。ブルーライトカットモードを搭載しているので、気になる人には嬉しいポイントだろう。
スタイラスペンはバッテリ不要タイプだ。EdgeのWebノート機能で軽く使ってみたが、大きさや太さ、重量など持った感じは一般的なボールペンと同じ。また書き心地も割と良く、ズレなどもなく、自然に扱うことができる。ただ付属の固定用パーツがテープ貼り付け。今一歩の工夫が欲しいところ。
カバーキーボードは、雰囲気こそSurfaceのそれに似ているが、質感はもっとノートPCっぽく重厚感(?)があり、キーもしっかりしている。このため実測で342gになるのは仕方なく、あまり軽くしてフィーリングが悪くなるのを避けた格好だ。フットプリントに余裕があるため、歪な並びやキーピッチが狭くなる部分もなく、お手本的なレイアウトになっているもの魅力的。タッチパッドもそこそこ広く、2ボタン式なのも使いやすい。
1点気になるのはコネクタを含む凸部分に、割と強い磁石が仕込まれていることだ。カード類を近くに置くとまずそうなので、カバンへ収納する場合、財布などは別の場所に入れた方がいいだろう。
ノイズや振動は皆無。発熱はちょうど、この時期としては寒かった時に評価したこともあり、特に気にならなかった。
サウンドはWaves AudioのMaxxAudioを搭載し、オンとオフとではずいぶん印象が変わる。とは言え、内蔵スピーカーはオンで音が広がるものの、パワー/低音/高音も不足している。筐体のサイズを考えると致し方ないだろう。逆にヘッドフォン/イヤフォン接続時は、ぐっと実用的になり、かなり聴ける音となる。ただジャンルにもよるだろうが、もう一歩パワーが欲しいところ。
なお、ヘッドフォン出力では最大192kHz/24bitのハイレゾ対応している(ただしオーディオドライバのアップデートが必要)。
Core i5搭載タブレットとしては平均的なパワー
OSは64bit版のWindows 10 Home。初期起動時、スタート画面(タブレットモード)は1画面。FUJITSUのブロックがプリインストールとなる。デスクトップ画面は壁紙の変更と、国産機らしくショートカットが満載だ。
SSDは256GBのSamsung「MZNLN256HCHP」。C:ドライブのみの1パーティションで234.35GBが割り当てられ空きは196GB。
Wi-FiはIntel「Dual Band Wireless-AC 8260」、BluetoothもIntel製だ。また、Gigabit Ethernet用のIntel「Ethernet Connection I219-V」が見えるものの、同社の仕様によると「オプション品を利用することで、有線LAN接続が可能です。(拡張クレードルまたはLAN変換アダプタ)」となっている。
プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリが、「MapMark Webクリップツール」、「My Cloud エコDX」、「My Cloud スタジオ」、「My Cloud プレイ」、「My Cloud ホーム2.0」、「My Cloud コントロール(ストアアプリではない)
」、「マカフィーセントラル」、「楽天gateway」。
My Cloudは、一般的な写真や動画、音楽のみならず、自宅の家電をコントロールできるのが同社らしいところか。
デスクトップアプリは、「@niftyでブロードバンド(html)」、「@メニュー」、「ATOK(ATOK 2015ツール」、「ATOK 2015のアンインストール」、「ATOK 2015を既定の言語に設定」、「JSユーザー登録・確認」、「スタートアップツール for ATOK 2015」)、「Corel WinDVD」、「CorelDigital Studio for FUJITSU」、「DigiBookBrowser」、「Plugfree NETWORK」、「Roxio Creator LJ」、「Waves MaxxAudio」、「筆ぐるめ23」、「マカフィーリブセーフインターネットセキュリティ」などATOKとマルチメディア系。
加えて、「F-LINK NEO」、「FUJITSU ステータスパネルスイッチ」、「FUJITSU ソフトウェアディスク検索」、「FUJITSU 電源オフUSB充電ユーティリティ」、「FUJITSU 始めに行なう設定」、「FUJITSU バックアップガイド」、「FUJITSU バックアップユーティリティ」、「アップデートナビ」、「ウィンドウ整列ユーティリティ」、「富士通アドバイザー」、「ワンタッチプライバシー」といった同社のツール系がここぞとばかり用意されている。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2/Home accelerated、バッテリ駆動時間テストはBBench。またCrystalMarkの結果も掲載した(今回は2コア4スレッドと条件的に問題なし)。
winsat formalの結果は、総合 5.7。プロセッサ 7.4、メモリ 5.9、グラフィックス 5.7、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 8.15。64bitでメモリが4GBの場合、5.9が最大となるため、バンド幅を確認したところ20819.78789MB/secだった。
PCMark 8 バージョン2/Home acceleratedは3104。CrystalMarkは、ALU 42668、FPU 45759、MEM 49089、HDD 39697、GDI 13175、D2D n/a、OGL 11107。Core i5-6200U搭載機としては平均的で特に速くも遅くもない。
BBenchは、バッテリ節約機能オン、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残3%で28,632秒/7.95時間の約8時間。ほぼ仕様通りだ。先に書いた通り、バックライト最小でも結構明るく、割と(室内であれば)実際に近い数値となるだろうか。
以上のように富士通「RH77/X」は、12.5型フルHDのパネルとSkylake世代のCore i5を搭載した2in1だ。256段階スタイラスペン、Office Home & Business Premium プラス Office 365サービス、ATOK 2015が付属しているのも用途によってはポイントが高い。ヘッドフォン出力によるハイレゾ対応も個人用としては魅力的。
仕様の範囲内で特に気になる部分もなく、10型や11型のタブレット/2in1で物足らなかったユーザーにお勧めしたい逸品と言えよう。