■西川和久の不定期コラム■
富士通は、大画面ノートPCの2011年夏モデルを5月19日より順次発売した。これに先立つ5月13日に発表されたのはLIFEBOOKのAHシリーズとNHシリーズの2種類。今回はその中から、AHシリーズの最上位に相当するAH77/Dをご紹介する。
AHシリーズは、「AH77/D」、「AH56/D」、「AH54/D」、「AH42/D」、「AH52/DA」の全部で5モデル。CPUは順にCore i7-2630QM、Core i5-2520M、Core i3-2310M、Pentium B940。最後の「AH52/DA」は、無線LAN経由でデジタルTV放送が見られるチューナユニット「ワイヤレスTV」が付属する。全てCPUから分かるようにSandy Brdigeアーキテクチャとなる。
店頭モデルとカスタマイズモデルがあるが、今回送られて来たのは、店頭モデルの「LIFEBOOK AH77/D」。主な仕様は以下の通り。
FMV「LIFEBOOK AH77/D」の仕様 | |
CPU | Intel Core i7-2630QM(4コア/8スレッド、2GHz/TB 2.9GHz、キャッシュ6MB) |
チップセット | Intel HM65 Express |
メモリ | 8GB(4GB×2) PC3-10600 DDR3-SDRAM (最大8GB)/2スロット空0 |
HDD | 750GB(5,400rpm) |
OS | Windows 7 Home Premium(64bit)SP1 |
ディスプレイ | 15.6型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット |
グラフィックス | Intel HD Graphics 3000、HDMI出力、ミニD-Sub15ピン |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n |
光学ドライブ | BDXL対応Blu-ray Discドライブ |
その他 | USB 3.0×2、USB 2.0×3(内1つはPowered)、メディアスロット(UHS-I規格対応)、マイク・ラインイン兼用入力、ヘッドフォン・ラインアウト兼用出力、Webカメラ、指紋センサー、Office Home and Business 2010 |
サイズ/重量 | 384×266.3×28.8~37.5mm(幅×奥行き×高さ)/約2.8kg |
バッテリ駆動時間 | 約1.7時間 |
実売価格 | 19万円前後 |
CPUは、Intel Core i7-2630QMプロセッサ。4コア、8スレッドでクロック数は2.0GHz。Turbo Boostで2.9GHzまで上昇する。チップセットはコンシューマ向けノートPCでお馴染みのIntel HM65 Express。メモリは最大8GBに対応するが、この「LIFEBOOK AH77/D」は、出荷時から4GB×2で8GB搭載済だ。これまでいろいろなノートPCをレビューして来たが、BTOではなく、量販店モデルで8GB実装しているのは今回初となる。最近メモリが安くなっているので、今後このようなパターンは十分考えられる。
もちろんOSはフルにメモリが使える64bit版Windows 7 Home Premium。SP1適応済だ。HDDは5,400rpmの750GB、光学ドライブはBDXLに対応したBlu-ray Discドライブを搭載している。BDXLは、BDが最大50GBに対し、100GBもしくは128GBの容量を持つ。
グラフィックスはCPU内蔵のIntel HD Graphics 3000。グレア(光沢)タイプの15.6型液晶パネルを採用し、解像度は1,366×768ドットだ。なおこのパネルには、LEDバックライト付高色純度・高輝度のTFT カラーLCD(スーパーファイン液晶)が使われている。出力は、HDMI出力とミニD-Sub15ピン。
ネットワークは有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/nに対応している。このクラスでBluetooth非搭載なのが少し惜しいところか。
その他のインターフェイスは、USB 3.0×2、USB 2.0×3(内1つはPowered)、UHS-I規格に対応したメディアスロット、マイク・ラインイン兼用入力、ヘッドフォン・ラインアウト兼用出力、Webカメラ、指紋センサー。UHS-I規格は、既存のUHS(Ultra High Speed)との下位互換性を持ちつつ、転送速度が現状の25MB/secを上回る104MB/secまでをサポートするSDカードの規格だ。また他社に無い特徴として、タッチパッドの右横に、スクロール専用の「スクロールパッド」を搭載する。
サイズ384×266.3×28.8~37.5mm、重量約2.8kgと、15.6型の2スピンドルノートPCとしては平均的であるが、バッテリ駆動時間は約1.7時間とかなり短い。ただしオプションの内蔵バッテリパック(63Wh)が用意され、これだと約5.2時間になる。店頭予想価格は19万円前後。
なお、今回ご紹介するのは店頭モデルでスペック固定になっているが、同社のWebでカスタマイズが可能になっており、ノングレア(非光沢)パネルや、アイソレーションタイプのキーボードが選べるなど、一般的なBTOより一味違う構成が可能だ。
トップカバーはカラーバリエーション「プレシャスホワイト」の白。白と言ってもいろいろな白があるのだが、この白はかなり明るめの白だ。模様も無く、中央にロゴがあるのみとスッキリしている。キーボードやタッチパッドも含めボディの他の部分は、底の黒以外全て白で統一。バランスの良いデザインだ。「LIFEBOOK AH77/D」のカラーバリエーションは、加えて「ビターブラック」、「プレミアムレッド」、「アトランティックブルー」の計4種類となっている。
液晶パネルは明るくそして原色系が見栄えし、非常に抜けの良い発色だ。写真や動画などが生き生きしている。視野角も15.6型搭載のノートPCの中では広め。バックライトOFF時でもある程度見えるので省エネ作動も期待できる。
キーボードは10キー付き。中央を強く押すと若干たわむものの、十分許容範囲だろう。また、主キーボードの上に、機能キーとして[エコ]、[メニュー]、[インターネット]、[メール]、[辞書]などが並び、ワンクタッチで各アプリケーションを呼び出すことが可能だ。エコモードONにすると、キーボードの写真でタッチパッドや機能キーの周囲が青く点燈している部分がOFFとなる(エコモードの詳細は後述する「省電力ユーティリティ」設定可能)。
タッチパッドは段差があり、パームレストなどがの表面がツルツルしているのに対してザラザラしている。ボタンは間に指紋センサーを挟み左右独立。クリック感があり、軽めなので指に負担がかからない。また右横に「スクロールパッド」を搭載。形に合わせて指で円を描けばアプリケーション上の表示がスムーズにスクロールする。感度やスクロール速度などは、後半に掲載している「TruePrint」で設定可能だ。使用感もなかなか良い。
振動やノイズ、熱などは特に感じない。特筆すべきは、放熱ファンの排気口が後ろにあることだ。一般的なノートPCであれば、左右どちらかの側面にあり、そこから排気が出て気になることがある。しかし、この位置であれば通常操作とは無関係な場所なので、神経質になる必要も無い。
ステレオスピーカーは液晶パネルの下(機能キーの上)にあり、角度的に調度操作している人に向くようになっている。従って音が耳へダイレクトに届き、非常にクリア。ノーマルのままだと若干低域のバランスが悪いものの、DTS BoostをONにすれば不足部分が自然に補われ迫力のある音となる。最大出力も十分あり楽しめる。
総じて完成度は高く、Core i7&メモリ8GBとは言え、店頭予想価格19万前後は、同クラスと比較して少し高めだが、後半のソフトウェア部分も含め+αの価値はあるだろう。
●初心者に優しい豊富なソフトウェアOSは64bit版Windows 7 Home Premiumで8GBのメモリ空間をフルにアクセスできる。Intel HD Graphics 3000とメモリ共有だが、8GBもあればそれを差し引いても十分以上だ。SP1適応済みで、Internet Explorerは9になっている。
タスクトレイに常駐しているソフトウェアは「Norton Internet Security」、「TruePrint」、「Intel HD Graphics」、「Realtek HDオーディオ」、「NetworkPlayerサーバーヘルパー」、「Plugfree NETWORK」、「OmniPass」、「PointGrab」、「アップデートナビ」、「Intel My WiFiテクノロジー」、「省電力ユーティリティ」、「CyberLink YouCam」と、結構多いものの、メモリが8GBもあるため、全体的な作動にはほとんど影響しないものと思われる。
「省電力ユーティリティ」は、「オーディオ」、「無線LAN」、「PCカード/メディアスロット」、「有線LAN」、「ディスプレイ」、「ワンタッチボタン/フラットポイント」の有効無効(もしくは段階)を個別に設定できる。
HDDは750GB(5,400rpm/キャッシュ8MB)の「HTS547575A9E384」、光学ドライブは「BD RW BD-5740L」を搭載。HDDのパーティションはC:ドライブ約339GB、D:ドライブ約339GBと、調度半分ずつ割当てられているが、初期起動時、各パーティションの容量を変更できるようになっている。この構成でC:ドライブの空きは空き約302GB。その他のデバイスとしては、Wi-Fiモジュールに「Intel WiFi Link 1000 GBN」、USB 3.0のコントローラはRenesas製だ。
インストール済みのソフトウェアは同社だけあって大小合わせてかなりの数となる。要点だけに絞ると、先に説明した機能キー(ワンタッチボタン)に割当てられているのは、[エコ]ボタンに「省電力モードへの切替」、[メニュー]ボタンに「@メニュー」など(画面キャプチャ上3枚参照)。ワンタッチでアプリケーションが起動し、家電的な感覚でPCが扱える便利なものだ。
そして、以前ご紹介したWebカメラに手をかざして操作する「PointGrab ハンドジェスチャーコントロール for FUJITSU」、人感センサーの「Sense YOU Technology 設定」、指紋センサーを使う「OmniPass」と言ったセンサー系。初心者に優しいガイド系は「パソコン準備ばっちりガイド」、「サポートナビ」。
大物としては「Office Home and Business 2010」、「筆ぐるめVer.18」、「Corel Digital Studio for FUJITSU」、「Roxio Creator LJ」など。そして辞書系は「広辞苑第六版」、「現代用語の基礎知識 2011年版」、「家庭医学館」、「学研パーソナル統合辞典」を備える。
「F-LINK」は、対応しているスマートフォンや携帯電話からWi-Fiを使い、ダイレクトに写真・動画などのデータを双方でやり取りできる機能だ。対応している機器を調べたところそれなりの数があり(F-LINKサポート情報)、該当する機器を持っているユーザーであればポイントは高い。
ここで紹介したソフトウェアは一部であり、詳細は同社のWebを参照して欲しいが、いろいろなジャンルのアプリケーションが購入後即使えるのは、特に初心者にとっては便利だと思われる。
省電力モードへの切替([エコ]ボタンで起動) | @メニュー([メニュー]ボタンで起動) | 辞書([辞書]ボタンで起動) |
パソコン準備ばっちりガイド | サポートナビ | F-LINK |
TruePrint | PointGrab | Realtek HD オーディオマネージャ |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.9。プロセッサ 7.4、メモリ 7.6、グラフィックス 5.9、ゲーム用グラフィックス 6.2、プライマリハードディスク 5.9。グラフィックスがIntel HD Graphics 3000、5,400rpmのHDDと言うこともあり、バランス的に少し凹凸があるが、CPUのパワーに引っ張られ、使用上、特に何処かが遅く感じることはなかった。
CrystalMarkは、ALU 50640、FPU 46229、MEM 38316、HDD 9871、GDI 14391、D2D 1808、OGL 2565。Windows エクスペリエンス インデックスと同様の傾向が見て取れる。第2世代Core i7プロセッサ搭載機としては平均的なスコアだ。
BBenchは、省電力モード、バックライトOFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ONでの結果だ。バッテリの残11%で5,090秒(1.4時間)。カタログスペック上、約1.7時間なので、ほぼ仕様通りの結果となった。1.4時間はかなり短いものの、屋内のちょっとした移動程度を想定しているのだろう。デスクトップ替わりに使うなら十分だ。もし気になる場合は、オプションの内蔵バッテリパックを使う手もある。
以上のようにFMV「LIFEBOOK AH77/D」は、Core i7のパワーに8GBメモリフル実装、USB 3.0も含め、必要そうなインターフェイスは一通り全て揃った2スピンドルノートPCだ。15.6型の液晶パネルは明るく発色も綺麗でサウンドもなかなか。全体の完成度は高い。豊富なプリインストールソフトウェアも魅力的。
スペックの割りにBluetooth、SSDや7,200rpmのHDDが無いなど、一部似合わない部分もあるが、国内メーカーに全てお任せしたい初心者に特にお勧めの逸品だ。