西川和久の不定期コラム

iiyama PC「10P1100T-AT-FEM」

~Office搭載で4万円切りの10.1型タブレット

10P1100T-AT-FEM(スタンド別売)

 ユニットコムは9月5日、Bay Trail-TとOffice Home and Business 2013を搭載したiiyama PCブランドの10.1型タブレット「10P1100T-AT-FEM」を発表した。単体と、ドッキング式カバー兼キーボード付きの2種類が用意され、前者は何と39,980円(税別)と安価だ。編集部から実機が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。

InstantGoに対応したBay Trail-T搭載10.1型タブレット

 今年(2014年)の4月に前モデルに相当する「10P1000-C-VG」をご紹介したばかりなのに、もう新型の「10P1100T-AT-FEM」が登場した。

 どちらも10.1型のパネルを採用したタブレットであるが、大きな違いは、前者がBay Trail-MのCeleron N2806(2コア/2スレッド、1.58GHz/2GHz)であるのに対し、後者がBay Trail-TのAtom Z3745D(4コア4スレッド、クロック 1.33GHz/1.83GHz)と、SoCが異なることだ。

 また搭載しているWindowsも、64bit版Windows 8.1と、32bit版Windows 8.1 with Bingと言う違いがある。どちらもメモリは2GBなので64bitでも32bitでもあまりユーザーが気にする部分ではないものの、今回はBay Trail-TなのでInstantGoにも対応。使い勝手はかなり差が出そうだ。

 タブレットのみの「10P1100T-AT-FEM」と、ドッキング式カバー兼キーボード付きの「10P1100T-AT-FS」の2種類が発表されたが、手元に届いたのがタブレットのみの「10P1100T-AT-FEM」。主な仕様は以下の通り。

【表】iiyama PC「10P1100T-AT-FEM」の仕様
プロセッサAtom Z3745D(4コア4スレッド、クロック1.33GHz/1.83GHz、キャッシュ2MB、SDP 2.2W)
メモリ2GB(DDR3L-RS-1333)
ストレージeMMC 64GB
OSWindows 8.1 with Bing(32bit)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics、Micro HDMI
ディスプレイIPS式光沢タイプ10.1型(1,280×800ドット)、10点タッチ対応
ネットワークIEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0
インターフェイスUSB 3.0、microSDカードリーダ、音声入出力、前面100万画素/背面カメラ100万画素カメラ、充電用コネクタ、キーボードコネクタ
サイズ/重量約258×173.2×10.8mm(幅×奥行き×高さ)/約670g
バッテリ駆動時間約6時間40分
そのほかOffice Home and Business 2013搭載
価格39,980円(税別)

 SoCは先に書いた通り、Bay Trail-TのAtom Z3745D。4コア4スレッドでクロックは1.33GHz。バースト周波数は1.83GHzとなる。キャッシュは2MBでSDPは2.2Wだ。メモリはDDR3L-RS-1333で2GB、ストレージはeMMCの64GBを搭載している。OSは32bit版のWindows 8.1 with Bing。

 末尾のDの有無によるSoCの違いは、主にメモリの仕様が異なり、D無しは最大4GB、LPDDR3-1066、チャネル数が2。Dありは最大2GB、DDR3L-RS 1333、チャネル数が1。これからも分かるように、最大メモリ帯域幅はD付きの方が狭く、D無しの方が性能は高い。

 グラフィックスはSoC内蔵のIntel HD Graphics。外部出力用としてMicro HDMIを装備している。

 ディスプレイは、光沢ありの10点タッチ対応でIPS式と明記された10.1型。解像度は1,280×800ドット。前モデルと比較して解像度こそ同じであるが、IPS式と明記され、実際視野角は広い。

 そのほかのインターフェイスは、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0、USB 3.0、microSDカードリーダ、音声入出力、前面100万画素/背面カメラ100万画素カメラ、充電用コネクタ(Micro-B)、キーボードコネクタ。センサーについては記述が無い。

 背面カメラが100万画素と言うのはやや残念であるものの、このクラスのタブレットに内蔵されたカメラは、高画素でも画質はイマイチなことが多く、事実上使うことはない。個人的には気にならない部分だ。

 注目すべきは、通常サイズのUSB 3.0が1つ、専用の充電コネクタとキーボードコネクタがあることだろう。多くのタブレットでは充電用兼のMicro USB(2.0)が多く、どこでも気軽に充電できる反面、充電しながらUSB機器は使用できない。本機の場合、USB機器を使いながら充電できるので便利だ。

 専用と言っても、5V/2.5A出力、Micro-Bコネクタで1ピン+5V/5ピンGND。Micro USBタイプのACアダプタで充電可能だ。時間はかかるが、PCのUSBポートからも充電できることを確認している。

 キーボードコネクタは、ドッキング式カバー兼キーボード付きの「10P1100T-AT-FS」(49,980円/税別)で使用する専用ポートだ。本体との接続がBluetoothではないため、別途電源を必要としない。

 サイズ約258×173.2×10.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量約670g。ドッキング式カバー兼キーボードは約320gなので、2つ合わせてもギリギリ1kgを切る。バッテリ駆動時間は約6時間40分。Bay Trail-Tなのでもっと行そうな雰囲気だ。この点は後半のベンチマークテストで検証したい。

 以上の内容にOffice Home and Business 2013を搭載して、単体価格は39,980円(税別)。内容を考えるとコストパフォーマンスは高いと言えよう。

前面。中央上に100万画素の前面カメラ、中央下にWindowsボタン
背面。中央上少し左よりに100万画素のカメラ、左中央付近にmicroSDカードスロット、両側面のスリットはステレオスピーカー
右側面と上側面。右側面は回転ロックボタンと音量±ボタン。上側面はヘッドフォン端子、内蔵マイク、Micro HDMI、USB 3.0、電源コネクタ
左側面と下側面。左側面は電源ボタン。下側面はキーボード専用のコネクタ
付属のACアダプタのサイズ45×72×28mm(同)、重量101g。コネクタがMicro-BのUSB式ACアダプタ。入力100~240V(50/60Hz)、出力5V/2.5A
本体の重量は実測で637g。仕様より少し軽い

 筐体は前面がつやありブラック、背面がつや無し(少しブルーがかった)ブラック。また価格が価格なだけに背面はプラスチックであまり高級感は無い。ただタブレットを使う時、自分からは裏は見えないので、特に気にならないだろう。

 前面中央上に100万画素の前面カメラ、中央下にWindowsボタン。背面は中央上少し左よりに100万画素の背面カメラ、左中央付近にmicroSDカードスロット、両側面のスリットはステレオスピーカーだ。左側面は電源ボタン、右側面は回転ロックボタンと音量±ボタン。下側面にキーボード専用のコネクタ。そして上側面にヘッドフォン端子、内蔵マイク、Micro HDMI、USB 3.0、電源コネクタを配置している。

 コネクタ類は上側面に集中しており、(今回試用していないが)専用のキーボードと合体した場合、充電したりUSBポートなどを使ったりすると、ケーブルが上から生えるのでかなり見栄えが悪い。できれば左右の側面に配置して欲しかったところだ(Bluetoothキーボードにして、Windowsボタンを左側に縦位置でスタンドを使えばいいと言う話もあるが……)。

 充電しながらUSB 3.0も使えるので、例えば机の上では常時電源を接続、Micro HDMIで外部ディスプレイへ出力、USB 3.0で高速かつ大容量のストレージへ接続し、キーボードとマウスを付けて薄型PC化するのも面白そうだ。

 専用のACアダプタは、サイズ45×72×28mm(同、プラグ含まず)、重量101g。それなりにコンパクトだ。入力100~240V(50/60Hz)、出力5V/2.5A。

 IPS式の10.1型液晶パネルは視野角も広く、発色、明るさコントラストも良好だ。3分の1ほどに輝度を設定すれば十分明るい。タッチも普通に操作できる。

 ノイズや振動は皆無。発熱も試用した限り暖かくもならなかった。最近涼しくなったことも影響しているかも知れない。サウンドはパワーが無く、低音もほとんど出ないため、か細いシャリシャリした感じとなる。せっかく左右にスピーカーを搭載しているだけに残念だ。

 前面カメラと背面カメラはどちらも100万画素と言うこともあり、今回は作例を掲載していない。

【10月14日記事修正】外部映像出力端子をMini HDMIとしておりましたが、正しくはMicro HDMIとなります。お詫びして訂正いたします。

BBenchで約12時間の長時間バッテリ駆動が可能

 OSは32bit版Windows 8.1 with Bing。スタート画面はLINE以降がプリインストールアプリとなる。少し前からWindows 8.1 with Bing搭載機の試用が増えているが、これまでお馴染みだったWindowsストアアプリが無くなり、このようにスッキリしているケースが増えている。

 初期起動時のデスクトップは、壁紙の変更と、左側ほぼ2列に並ぶショートカット。ストレージ容量が少なめのデバイスとしては結構多い。Norton Internet Securityが常駐しているため、何も設定していないと「いますぐアクティブ化」のパネルが、ことあるごとに表示される。

 ストレージは「Samsung MCG8GC」が使われていた。実質C:ドライブのみの1パーティションで、約50.21GBが割り当てられ空きは46.1GB。回復パーティションは7.81GBと少なめだ。microSDカードと併用すればそれなりのデータ量を扱える。

 Wi-FiとBluetoothモジュールはBroadcom製。表記スペック上は、IEEE 802.11b/g/nだが、認識されているのは「Broadcom 802.11abgn Wireless SDIO Adapter」なので、ハードウェア的にはIEEE 802.11aにも対応している。また、デバイスマネージャにはTPM 2.0、Kionix Sensor Fusion Device/Kionix KXCJ Accelerometer SPBと言った、センサー系のモジュールも見える。

スタート画面1
スタート画面2
起動時のデスクトップ
デバイスマネージャ/主要なデバイス
ストレージのパーティション

 プリインストールソフトウェアは、Windowsストアアプリが、「LINE」、「Yahoo!天気・災害」とかなり少なく、またメジャーどころなので画面キャプチャは掲載していない。

 デスクトップアプリは、「Office Home and Business 2013」、「AOSBOX for UNITCOM」、「LoiLoScope 2」、「Norton Internet Security」、「Norton Online Backup」、「Zoner Photo Studio 15」。正直AOSBOX for UNITCOMとNorton Online Backupは、機能が被っていると思うが、余計なお世話か。

アプリ画面1
アプリ画面2
アプリ画面3
InstantGoは「powercfg /a」コマンドで「スタンバイ(接続されています)」と表示されればON
AOSBOX fot UNITCOM
Norton Online Backup

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、BBenchの結果を見たい。CrystalMarkのスコアも掲載した(4コア4スレッドで条件的には問題ない)。

 winsat formalの結果は、総合 4.1。プロセッサ 6.3、メモリ 4.5、グラフィックス 4.1、ゲーム用グラフィックス 4.2、プライマリハードディスク 7.1。PCMark 8 バージョン2は1218。CrystalMarkは、ALU 24519、FPU 20338、MEM 19981、HDD 13444、GDI 4582、D2D 3177、OGL 3148。参考までにGoogle Octance(デスクトップ版IE)は3574となった。

 SoCの末尾がDなのが影響しているのか、プロセッサの割にメモリのスコアが低めなのが気になるところ。せめて5は超えてほしかった。この関係なのか[PrtScr]キーで画面キャプチャを行なうと、少し引っかかりのような(瞬間反応しない)ものを感じる。とは言え、全ての結果を見ると、Bay Trail-Tにありがちな数値なので、特に気にすることは無いだろう。

 BBenchは、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残2%で43,198秒/約12時間。何時もの残5%で11.6時間。スペック上が約6時間40分なので倍近い駆動時間となった。これだけ差が出るのも珍しい。輝度最少は暗いが、これなら少し上げてもかなり行きそうだ。

winsat formalコマンドの実行結果。総合 4.1。プロセッサ 6.3、メモリ 4.5、グラフィックス 4.1、ゲーム用グラフィックス 4.2、プライマリハードディスク 7.1
PCMark 8 バージョン2の結果は1218
BBenchの結果。バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/ONでの結果。バッテリの残2%で43,198秒/約12時間。何時もの残5%で11.6時間
CrystalMarkは、ALU 24519、FPU 20338、MEM 19981、HDD 13444、GDI 4582、D2D 3177、OGL 3148

 以上のようにiiyama PC「10P1100T-AT-FEM」は、Bay Trail-TとOffice Home and Business 2013を搭載した10.1型Windowsタブレットだ。パネルがIPS式なので視野角も広く、発色なども価格を考慮するとクオリティが高い。またこのクラスとしては珍しくInstantGoにも対応している。充電しつつUSB 3.0が使えるのも嬉しいポイントだ。さらににバッテリ駆動時間はBBenchで約12時間というのも魅力的である。

 筐体とサウンドのクオリティはやや惜しいものの、安価でOfficeを搭載した10.1型タブレットを探しているユーザーにお勧めしたい逸品だ。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/