西川和久の不定期コラム

Lionの新機能に対応した「Parallels Desktop 7」



 ラネクシーは9月7日、「Parallels Desktop 7 for Mac」の取り扱いを発表、同日よりダウンロード販売を開始した。筆者は7月末に新型Mac miniを購入し、Windows 7を仮想マシンで動かすために同バージョン6を購入したばかりだったが、面白そうだったので早速アップグレード。実際にその環境で原稿を書きながらの使用レポートをお届けする。


●セットアップ

 アップグレード自体は非常に簡単で、ラネクシーのサイトからオンライン購入(お試し版もある)、ダウンロードしたイメージでインストールを開始、アクティベーションした後、古いバージョン(今回のケースだと6)が見つかった場合、削除するか残すかを聞かれる。今回は削除を選び、そのまま続行した。

 リブートは必要なく、あっと言う間にインストールは完了。Boot Campドライブをそのまま使った仮想マシン中のParallels Toolsを最新版と入れ替え、毎日仕事で使っている環境が無事起動する。半日程度テストしたが、取り立てて不都合などは見つからず、通常通り運用できた。毎日使っているだけに、多少不安だったものの取り越し苦労だったようだ。

 このあと、新規にWindows 7をインストールした仮想ディスクと仮想マシンを立ててみた。仮想マシンを新規に作るウィザードを開くと、「DVD/イメージからWindowsをインストール」、「PCからWindowsを移行」、その他に「Chrome」、「Fedora」、「Ubuntu」なども見える。Windows 7のインストールDVDをセットして、表示される手順通り操作を続けると、Windows 7のインストールが始まり、自動的にParallels Toolsまで組み込まれOSが起動する。少し時間がかかるだろうと、席を外し戻ってくると、Windows 7が起動していたので、その速さには驚いた。

 この時、操作スタイルを「Macライク」か「PCライク」かの選択ができる。後者はウィンドウ表示や全画面表示の中でWindowsが動く仮想マシン、前者は「Coherenceモード」と呼ばれ、Mac OS Xのデスクトップ上にWindowsアプリケーションがそのままシームレスに表示されるモード。加えて、Mac OS XのデスクトップとWindowsのデスクトップ、写真や音楽などのファイル共有することも可能だ。

 標準構成では1CPU、2GBメモリ、64GBの仮想ディスクの設定になっているが、「構成のカスタマイズ」で、自由に変更もできる。今回はテスト的に動かすだけなので仮想ディスクは半分の32GB、実用的な速度を知りたいのでCPUは2つへ変更(後からでも変更可能)した。実際の使用感などは後述する新機能やベンチマークテストをご覧頂きたいがかなり快適に作動している。

新規仮想マシンの作成 メディアからWindows 7をインストール プロダクトキーの入力
Coherenceモードやデスクトップ共有などになる「Macライク」を選択 仮想マシン名や保存する場所の指定 構成をカスタマイズして2CPU、ディスク32GBへ
Windows 7をインストール中 完全に自動でParallels ToolsをインストールしWindows 7が起動 メニューバーに追加され、スタートメニューがLion上でそのまま開く

 7の新機能ではないものの、「Parallels Mobile」は、iPhoneやiPadからParallels Desktopを登録した時に使用したメールアドレスとパスワードを使い外からリモート接続することができるApp(App Storeで450円)だ。

 Appを起動すると認識したParallels Desktopのマシン名が左に、仮想マシンなどのリストが右に表示、タップすると、リモート接続し、iPad(iPhone)上に画面が表示される。またリストからも分かるように、仮想マシンだけでなく、メイン環境のLionまでも操作可能となる。有料とは言え、なかなか便利な機能なので、iOS機にインストールしておいて損は無いだろう。

Parallels Mobileの起動画面 Windows 7の仮想マシン 仮想マシンだけでなく、メインのLionも操作可能

●バージョン7の新機能など

 話は前後するが、以前ご紹介した「Parallels Desktop 6」の「Build 12094」でも一応Lionには対応していたが、問題無く動くレベルであり、Lionの新機能などには未対応のままだった。

 今回新しくなった7は同社のサイトによると「フルスクリーン対応」、「Launchpad対応」、「Coherenceモード時のLionスタイルのアニメーション対応」、「再開機能対応」、「仮想マシンでのLion対応」、「Mission Control対応」、「カメラ共有」、「64bit対応によりパフォーマンス向上」、「3DやディスクI/O、共有フォルダのパフォーマンス向上」、「最大1GBのビデオメモリ」、「7.1サラウンドサウンド」……など多岐に渡り追加改善されている。画面キャプチャは6でも対応していた機能も含め特徴的なのをピックアップして掲載した。

 まずCoherenceモードは、ご覧のようにWindowsアプリケーションがシームレスにMac OS Xのデスクトップに表示されるモードだ。この時、デスクトップ共有をONにすると、WindowsのデスクトップとMac OS Xのデスクトップ、そして写真や音楽などのフォルダまでも共有できる。Windows Media Playerに表示しているライブラリはMac OS X側のiTunesライブラリだ。

 対してWindowモードは、昔からある仮想マシンと同じ見せ方でWindow内でOSが作動する(デスクトップ共有は可能)。Windowの右上にLionの新機能であるフルスクリーンへの切り替えアイコンがあるのがわかる。

Coherenceモード Windowモード。デスクトップ共有になっていることが分かる ビデオメモリが最大256MBから1GBへ
Lionの全画面表示対応 Windows環境もマルチディスプレイ対応 Mission Control対応
Windowsで起動しているアプリケーションが……。 Dock上にも表示される Launchpad対応

 マルチディスプレイ環境の場合は、Lionの仕様で、メニューバーがある方がフルスクリーンの対象となるが、オプション/フルスクリーンの「Mac OS Xのフルスクリーンを使用」のチェックを外すと、従来通り、カレントのディスプレイがフルスクリーンの対象となる機能も持っている。更に「フルスクリーンで全てのディスプレイを使用」にチェックを入れると、6ではできなかったWindowsの環境でもマルチディスプレイが可能となる。

 実は筆者が7にして一番嬉しかったポイントはここだ。もともとCore 2 Quadを搭載した旧メインマシンはマルチディスプレイで使用し、右側には主に参照のみのWindowを並べ、実作業は左側のディスプレイで行なっていた。それがMac mini+Parallels Desktop 6にシステムを変更した結果、物理的にはマルチディスプレイなのだが、Windows 7はシングルディスプレイでしか使えず、少し不便だったのだ。また先に書いたようにメニューバーがある方がフルスクリーンの対象にならない設定も可能。以前の記事で指摘した問題も解決され、「いいね!」ボタンを100回ぐらい押したい気分となった(笑)。

 一方、Mission Controlは6でも一見動いているように見えたが、バーチャルスクリーンを切り替えたり、Windowの置き場所によってはうまく動かないことが多かった。しかし7では完全対応となり、安心して操作することができる。LaunchpadにWindowsアプリケーションが並ぶのもなかなか面白い。いずれにしてもCoherenceモードにおけるWindowsアプリケーションとMacアプリケーションの混在がより一層進んだ形だ。

 Parallels Destop自体のメモリ使用量は6と変わらず。Mac miniのメモリが8GBあるからと言って、仮想マシンに4GB設定すると(+ビデオメモリ)、Mac OS X側の残りメモリはかなり圧迫されることになる。Mac OS Xの環境と両立させたい場合は、2CPU/3GB程度にするのが無難だ。

●バージョン6とのベンチマークテスト比較

 気になるパフォーマンスの変化は、バージョン6と7のWindowsエクスペリエンス インデックスとCrystalMarkの結果を比較してしてみた。ただし6はメモリ3GB、7はメモリ2GBとなっている。CPUに関しては2つと同じだ。どちらもカッコ内が6の値となる。

 また6はBoot Campした物理的なHDDをそのまま使用、7は仮想ディスクを使用しているので、ここだけは比較対象とはならないものの、遅い内蔵HDDと比べて仮想ディスクの方が桁違いに速い結果になっている。実際Windows 7の起動もスプラッシュスクリーンが表示されてから10秒程度しかかからない。

 Windowsエクスペリエンス インデックスは、総合5.0(5.1)。プロセッサ6.6(6.6)、メモリ5.5(5.9)、グラフィックス5.0(5.3)、ゲーム用グラフィックス5.1(5.1)、プライマリハードディスク6.6(6.3)。面白いことに6と比較してスコアにばらつきがある。ただこの程度の差であれれば体感的に分かる範囲ではない。

 CrystalMarkは、ALU 27544(25167)、FPU 25350(24260)、MEM 30319(26849)、HDD 59216(5874)、GDI 11820(7781)、D2D 1872(1492)、OGL 2375(2410)。ほぼ7の方がスコアが高く、こちらの方が実際の感触に合っている。またどちらにも言えることだが、グラフィックスに関してはあまり向上は見られなかった。GDIが若干早くなっているので、7の方が全体的に少しキレがいいかな……程度だ。

 ここに現れていない結果として、起動/終了、サスペンド/復帰が速くなっている点が挙げられる。一旦Windows 7をサスペンドして他のOSを起動したり、Boot CampしてまたLionへ戻りWindows 7を起動する時などあまりストレスを感じなくなった。

 さらに共有フォルダやディスクI/Oのパフォーマンスも明らかに向上。6の時、例えば動画が多数入っているフォルダのサムネイル表示に時間がかかったり、FTPで受信したファイルがすぐに反映されず「最新の情報に更新」しないとファイルが現れなかったり……と、ちょっとした不都合があった。しかし7ではこのようなことが全く無く、普通に操作可能となっている。筆者的にはバージョンアップして良かったと思えるポイントの1つだ。

Windowsエクスペリエンス インデックスは総合5.0。プロセッサ6.6、メモリ5.5、グラフィックス5.0、ゲーム用グラフィックス5.1、プライマリハードディスク6.6 CrystalMarkはALU 27544、FPU 25350、MEM 30319、HDD 59216、GDI 11820、D2D 1872、OGL 2375 もう1つの売り、Lionから仮想マシン上でLionを起動。Flash Player以外(本文参照)、試した範囲では普通に使うことができる

●Lion上でLionを起動可能

 最後にParallels Desktop 7最大の売りの1つ、仮想マシンでLionを起動する機能をご紹介する。

 実はLionになってから使用許諾が変わり、Lion上の仮想マシンを使ってLionを動かして良いことになっている。一般的な用途においてのメリットは、メインの環境を汚さず、ソフトウェアのチェックができる程度だろう。

 一方、筆者のようなiOSアプリの開発者としてのメリットは大きい。いつもiOSのベータ版が出る時はiTunesもベータ版を使わなければならず、それがメインの環境だと、ライブラリや同期に不都合が出る可能性があり、できれば環境を分けたいと思っていた。もちろん物理的なマシンが2つあれば問題無いものの、この機能を使えば安心して分離可能だ。

 なお、PC上の仮想マシンでもOKなら喜ぶ人も多いと思われるが、現状は残念ながらNGだ。

 インストール自体は非常に簡単で、先の「仮想マシンを新規に作るウィザード」で「復元パーティションを使用してOS X Lionのインストール」を選択、仮想ディスクの容量などを設定した後、自動的にネットワーク経由で必要なコンポーネントをダウンロード、終了後、インストーラが動き出し、ユーザー登録などのいつもの画面となる。この時、外部ドライブへインストールする時とは違いUSBメモリへ起動用イメージをインストールする必要は無い。ダウンロードするのに1時間ほどかかった以外は、サクッと進んだ。

 また2台目の仮想Lionマシンを作る時は、既にモジュールがローカルにあるのでダウンロードは行なわず、即インストーラが動き出す。いずれにしてもWindows 7の仮想マシンを作るよりメディアが無い分簡単で、初心者でも大丈夫だろう。

 少し試した範囲での不都合は、Flash Playerの「ハードウェアアクセラレーションの有効化」のチェックを外さないと再生画面がブラックアウトしてしまうこと。結果、ソフトウェアのみでの再生となり、HD(720p)の再生が微妙になる。ただ動画を見るだけなら、メインの環境を使えば済む話なので、特にデメリットにはならないと思われる。それ以外は本当に仮想マシンで動いているの? と思うほどスムーズに操作できる環境だ。

 Xbench 1.3の結果を掲載したので見て欲しいが、CPUやメモリなどは大雑把に30%ダウン(もともと物理的に4スレッド/2コアか仮想的に2コアかの差がある)。Quartz GraphicsやUser Interface Test、ディスクに関しては仮想マシンの方が速いと言う結果になっている。


仮想マシン上のLion
(2CPU/3GB/仮想HDD)
Mac miniの実環境
Results 259.93 330.39
CPU Test 198.27 231.26
GCD Loop 294.92 15.55 Mops/sec 307.73 16.22 Mops/sec
Floating Point Basic 153.28 3.64 Gflop/sec 184.98 4.40 Gflop/sec
vecLib FFT 123.66 4.08 Gflop/sec 157.17 5.19 Gflop/sec
Floating Point Library 460.2 80.14 Mops/sec 438.94 76.43 Mops/sec
Memory Test 503.59 567.38
System 495.16 579.24
Allocate 1611.47 5.92 Malloc/sec 2181.96 8.01 Malloc/sec
Fill 373.59 18164.58 MB/sec 400.21 19459.18 MB/sec
Copy 362.14 7479.81 MB/sec 450.01 9294.71 MB/sec
Stream 512.32 556
Copy 492.47 10171.86 MB/sec 542.1 11196.94 MB/sec
Scale 492.05 10165.70 MB/sec 538.02 11115.34 MB/sec
Add 544.01 11588.48 MB/sec 582.07 12399.25 MB/sec
Triad 524.5 11220.34 MB/sec 564.05 12066.32 MB/sec
Quartz Graphics Test 405.62 384.21
Line [50% alpha] 349.34 23.26 Klines/sec 326.01 21.70 Klines/sec
Rectangle [50% alpha] 439.42 131.19 Krects/se 436.65 130.36 Krects/sec
Circle [50% alpha] 328.64 26.79 Kcircles/sec 322 26.25 Kcircles/sec
Bezier [50% alpha] 316.78 7.99 Kbeziers/sec 284.81 7.18 Kbeziers/sec
Text 1011.34 63.26 Kchars/sec 962.12 60.19 Kchars/sec
OpenGL Graphics Test 140.42 331.44
Spinning Squares 140.42 178.13 frames/sec 331.44 420.45 frames/sec
User Interface Test 276.1 116.27
Elements 276.1 1.27 Krefresh/sec 116.27 533.63 refresh/sec
Disk Test 351.47 54.67
Sequential 209.09 97.41
Write [4K blocks] 1037.73 637.15 MB/sec 97.29 59.73 MB/sec
Write [256K blocks] 721.41 408.17 MB/sec 73.5 41.58 MB/sec
Read [4K blocks] 62.15 18.19 MB/sec 116.16 33.99 MB/sec
Read [256K blocks] 1449.44 728.48 MB/sec 116.72 58.66 MB/sec
Random 1101.6 37.99
Write [4K blocks] 387 40.97 MB/sec 15.06 1.59 MB/sec
Write [256K blocks] 2206.07 706.25 MB/sec 74.83 23.96 MB/sec
Read [4K blocks] 2870.93 20.34 MB/sec 58.97 0.42 MB/sec
Read [256K blocks] 4073.44 755.86 MB/sec 116.97 21.71 MB/sec

 以上のように「Parallels Desktop 7」は、全画面表示やMission ControlなどLionの新機能に対応した上に、起動や終了、サスペンド/復帰、そしてI/O周りが体感で分かるほどパフォーマンスも向上。仮想マシン上でLionまでも動かせる。総じて仮想マシンでここまで普通に使える環境になるとはいい時代になったものだ。

 従来ユーザーはもちろん、最近Macを購入し、Windowsも含め仮想マシン上で他のOSも動かしたいユーザーに是非お勧めしたい仮想環境ソフトと言えよう。