西川和久の不定期コラム

あのAndroidクラムシェル「Gemini PDA」が正式国内販売開始!

 リンクスインターナショナルは2018年12月21日、英Planet Computersと正規代理店契約を締結し、12月23日より「Gemini PDA」の国内販売を開始した。実機が編集部から送られて来たので試用レポートをお届けしたい。

5.9型2,160×1,080ドット/4GB/64GBでQWERTY配列メンブレンキーボード搭載

 もともと「Gemini PDA」は、MWC2017で発表、クラウドファンディングで資金調達、そして2018年2月から出荷開始となっているデバイスだ。デザインはかつてのクラムシェル型PDA「Psion」を手掛けたMartin Riddiford氏だ。

 特徴はなんと言っても上の写真からもわかるように、キーピッチ約14mmのQWERTY配列メンブレンキーボードを採用していること。パネルは5.9型2,160×1,080ドット。つまり大きめのスマートフォンに、物理的なキーボードを搭載したデバイスとなる。

 当初から技適を取得しており、並行輸入可能だったが、今回国内でリンクスインターナショナルが扱うこととなり、グッと入手しやすくなった。取扱店舗は、ビックカメラ、ソフマップ、コジマ、ツクモ、およびヨドバシカメラ。おもな仕様は以下のとおり。

Planet Computers「Gemini PDA」の仕様
SoCMediaTek Helio X27(MT6797X、10コア、Mali-T880 MP4 GPU内蔵)
メモリLPDDR3 4GB
ストレージeMMC 64GB
OSAndroid 7.1.1
ディスプレイ5.9型2,160×1,080ドット(403dpi)、マルチタッチ対応
ネットワークIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.1
SIMMicro SIMスロット(VoLTE対応)
対応バンドGSM 850/900/1,800/1,900MHz
CDMA 850/1,900MHz BC0 BC1+ EVDO
WCDMA 900/2,100MHz
LTE 1/2/3/4/5/7/12/17/20/41
インターフェイスUSB Type-C×2、microSDカードスロット、500万画素前面カメラ、3.5mmヘッドフォンジャック、ステレオスピーカー、マイクロフォン
センサーAGPS、加速度、光、ジャイロ、磁気
サイズ/重量171.4×79.3×15.1mm(幅×奥行き×高さ)/重量約310g
バッテリ4,220mAhリチウムイオン
店頭予想価格75,000円前後

 SoCはMediaTek Helio X27。2.6GHz駆動のCortex-A72が2基、2GHz駆動のCortex-A53が4基、1.6GHz駆動のCortex-A53が4基と、計10コアで構成され、GPUにMali-T880 MP4を内包している。メモリはLPDDR3 4GB、ストレージはeMMC 64GB。OSはAndroid 7.1.1。

 ディスプレイは5.9型2,160×1,080ドット(403dpi)、マルチタッチ対応。またType-C経由でHDMI出力にも対応している(手持ちでアダプタがなく未確認。Type-C/DisplayPortでは作動せず)。

 ネットワークはIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.1。Micro SIMスロットが1つ。対応バンドは表のとおりだ。VoLTEにも対応する。

 そのほかのインターフェイスは、USB Type-C×2、microSDカードスロット、500万画素前面カメラ、3.5mmヘッドフォンジャック、ステレオスピーカー、マイクロフォン。充電は左側のType-Cから行なう(右側は未対応)。背面カメラはオプションとなる。センサーはAGPS、加速度、光、ジャイロ、磁気を搭載。

 サイズ171.4×79.3×15.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量約310g。4,220mAhリチウムイオンを内蔵し、店頭予想価格は75,000円前後だ。英Planet Computersのオンラインショップで499.17ポンド(約70,538円)なので、かなり良心的な価格と言えよう。

前面カメラはパネル左上にある
横から。ヒンジの部分が弧を描きうまくバランスしているのがわかる。角度は固定
左側面。3.5mmヘッドフォンジャック、Type-C(充電兼)、マイク。パネルフチのスリットはスピーカーL
右。スマートボタン、Type-C(HDMI出力兼)、マイク。パネルフチのスリットはスピーカーR
右/下(閉じたところ)。広いほうのパネルがはずれ、Micro SIMスロット、microSDカードスロット、オプションの背面カメラ用スペースなどがある
左/上(閉じたところ)。こちら側はとくにパネルがはずれる仕掛けにはなっていない
COVER REMOVAL TOOL。付属のこれを使い、テコの原理でパネルをパッキっと外す
パネルを開けたところ。中央付近が背面カメラ用スペース、その横がMicro SIMスロット、右側がmicroSDカードスロット
QWERTY配列のメンブレンキーボードを採用。[Fn]キーとのコンビネーションでキー手前側面の刻印となる
キーピッチは実測で約14mm
付属品。マイクロファイバークロス、クイックスタートガイド、ステッカー、ACアダプタ(出力5V/2A、約45×35×25mm(幅×奥行き×高さ)/重量35g)、充電用Type-Cケーブル、COVER REMOVAL TOOL
重量は実測で305g
いろいろなパターンで発光する5つのLED。後述するLEDisonでパターンや通知アプリを設定する
iPhone Xとの比較。171.4×79.3×15.1mm(同)/5.9型 vs 143.6×70.9×7.7mm(同)/5.8型なのでずいぶん違う。とくに厚みは約倍ある

 筐体は暗いシルバーベースでキーボードや左右はブラック。金属製で非常にクールだ。ただしサイズ171.4×79.3×15.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量約310gと言うこともあり、iPhone Xとの比較写真からもわかるようにかなり大柄。またずっしり重い。

 前面カメラはパネル左上。左側面に3.5mmヘッドフォンジャック、Type-C(充電兼)、マイク。パネルフチのスリットはスピーカーL。右側面にスマートボタン、Type-C(HDMI出力兼)、マイク。パネルフチのスリットはスピーカーRを配置。

 この横位置で左右にマイクとスピーカーがあることからもわかるように、ディスプレイを閉じたまま縦位置で握ると、筐体の上下はセンサーが感知し、マイクとスピーカーを切り替え、普通にスマートフォンとして通話することが可能だ。右側面にあるスマートボタンは閉じた状態で着信オフフック/オンフックとなる。

 付属品は、マイクロファイバークロス、クイックスタートガイド、ステッカー、ACアダプタ(出力5V/2A、約45×35×25mm(同)/重量35g)、充電用Type-Cケーブル、COVER REMOVAL TOOL。

 Micro SIMスロットとmicroSDカードスロットへのアクセスは、付属のCOVER REMOVAL TOOLを使いパネルをパッキっとはずせば内部が現れる。ただこのはずし方は何度もやっていると壊れそうな感じで、少しおどおどしてしまう。内部は、中央付近が背面カメラ用スペース、その横がMicro SIMスロット、右側にmicroSDカードスロットがある。

 5.9型2,160×1,080ドットのディスプレイは403dpiで文字などもスムーズ。もちろん明るさ、コントラスト、発色、視野角なども非常に良好。ハイクオリティなパネルが使われている。

 そして本機最大の特徴であるQWERTY配列メンブレンキーボードは、主要キーのキーピッチは約14mmを確保。ソフトながらもしっかり打鍵感もあり、狭めのキーピッチにさえ慣れてしまえばソフトウェア式より楽に入力できる。もちろんAndroid準拠のIMEで日本語入力も可能だ。

 とは言え、QWERTY配列の物理キーボード好きはPC育ちで40歳以上の年齢ではないだろうか。それ未満になるとテンキー入力のほうが速く、長文も平気な世代となる。したがって本機は年齢層で評価がかなり分かれそうな感じだ。

 今回手元に届いたキーボードレイアウトはUS Englishだったが、Planet Computersでは日本語かな刻印つきのモデルも用意されている。ただ実際リンクスインターナショナルがこれを入荷するかどうかは不明だ。

 ノイズや振動はもちろん皆無。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけてもパネル左半分が少し暖かくなる程度だった。

 サウンドはパネルの左右にスピーカーがあり、小柄ながらもステレオ感がある。ただスピーカー出力/ヘッドフォン出力ともにパワーはあるものの、とにかく荒い(歪っぽい)。もう少し滑らかに再生してほしいところだ。

 カメラに関しては前面のみで、基本ライブカメラ用と言うこともあり、評価はしていないが、顔認識の追尾性や発色はそこそこの性能だった。

 繰り返しとなるが、本機の特徴はQWERTY配列メンブレンキーボードだ。これが刺さるか刺さらないかでイメージは180度違うものになる。実際の使用感などは、ぜひ店頭などで確認していただきたい。

セットアップ

 初期設定は、一般的なAndroid搭載スマートフォンと比較して驚くほど簡単だ。画面キャプチャからわかるように、言語選択から日本語を選択、キーボードレイアウトを選べば完了する。Google関連の許諾など一切ない。一般的なスマートフォンもこうなってほしいところだ。

言語選択
日本語を選択
本機の場合、キーボードレイアウトにEnglish(US)を選択
スタート

 SIM情報/設定やアクセスポイントなどは従来のAndroidと同じだ。先に掲載したように、COVER REMOVAL TOOLを使いトップカバーをはずし、SIMをセット、該当するSIM/アクセスポイントを選べば再起動の必要もなく、即使用可能になる。SIM1はMicro SIM、SIM2はeSIMとなる。

SIM情報と設定。右上のステータスが[VoLTE][4G]になっている
アクセスポイント名

LEDisonなどオリジナルアプリを搭載したAndroid 7.1.1

 初期起動後のホーム画面は1画面。「ファイルマネージャー」、「マップ」、「LEDison」、「Data」、「Gmail」、「フォト」、「App Bar」、「Notes」のショートカットを配置。ドックには「メッセージ」、「電話」、「カメラ」、「Agenda」、「連絡先」が並んでいる。左下の矢印はアプリメニューを引っ張り出すアイコン。通知パネルは上から下へのスワイプ、ウィジェット/壁紙設定はデスクトップの長押しと一般的だ。

 ストレージは空きが58.24GB(若干の画面キャプチャを含む)。microSDカードにデータを逃がせるのでとくに問題ないだろう。Androidのバージョンは7.1.1と少し古い。

 メモリは(設定以外)とくにアプリを起動しない状態で1.1GB使用で空き2.6GBと余裕がある。ナビゲーションバーはソフトウェア式だ。画面分割表示にも対応している。設定/Gemini Settingsには、本機固有の各機能オン/オフがある。

Home
アプリ画面(1/3)
アプリ画面(2/3)
アプリ画面(3/3)
通知パネル
設定/端末の状態
設定/内部共有ストレージ
設定/メモリ
タスク切り替え
画面分割
設定/Gemini Settings
設定/ディスプレイ(HDMIのオン/オフがある)

 アプリは、「カメラ」、「カレンダー」、「ダウンロード」、「ドライブ」、「ハングアウト」、「ファイルマネージャー」、「フォト」、「ブラウザ」、「マップ」、「メッセージ」、「音声検索」、「時計」、「設定」、「電卓」、「電話」、「連絡先」、「Agenda」、「App Bar」、「Chrome」、「Data」、「Duo」、「eSIM Wallet」、「FMラジオ」、「Gemini Voice Assistant」、「Geminiキーボード」、「Gmail」、「Google」、「Keep」、「LEDison」、「Notes」、「PlanetSynceAdapter」、「Playストア」、「Play Music」、「Playムービー&TV」、「SIM Toolkit」、「YouTube」。

 基本、Playストアに対応しているので、後から必要に応じてアプリを追加することができる。eSIM Walletは、先の設定で少しふれたが内蔵しているeSIM用の設定アプリとなっている。

 ほかは画面キャプチャを参考にしてほしいが、おもしろいのはLEDison。先に掲載した写真、トップカバーに埋め込まれた5つのLEDを光らすパターンと、アプリの通知によって任意のパターンを光らすという機能を持っている。うまく設定すれば、新着メール、Facebookのいいね! など、LEDの発色パターンを見るだけで把握でき便利に使えるだろう。

App Bar。Windowsのタスクバーに似たルックスと機能を持つ
App Barの設定
LEDison(1/2) LEDイルミネーションのパターン設定
LEDison(2/2) LEDイルミネーションを使った通知アプリ設定
DATA(Database)
DATA(Database)/設定
Notes
Notes/IMEがGoogle日本語入力。Shift+Ctrlで切替できる。GboardなどほかのIMEも使用可能
ファイルマネージャー/Home
ファイルマネージャー
Agenda/週View
Agenda/月View
カメラ(1/3)
カメラ(2/3)
カメラ(2/3)
FMラジオ。オートスキャンで一番低い周波数。どうも海外用の87.5MHz~108MHzのようだ(国内用は76MHz~90MHz)

 ウィジェットは、「カレンダー」、「Googleカレンダー」×2、「ドライブ」×3、「ブラウザ」×2、「マップ」×5、「メッセージ」、「時計」×2、「設定」、「連絡先」×3、「Agenda」、「Chrome」×2、「Gmail」×2、「Google」×5、「Play Music」×3、「Keep」×2。Agenda以外は標準的なものだ。

壁紙/ウィジェット/設定。デスクトップ長押しで表示
ウィジェット(1/8)
ウィジェット(2/8)
ウィジェット(3/8)
ウィジェット(4/8)
ウィジェット(5/8)
ウィジェット(6/8)
ウィジェット(7/8)
ウィジェット(8/8)

昨今のAndroid搭載機としては性能が低め

 ベンチマークテストは簡易式だが「Google Octane 2.0」と「AnTuTu Benchmark」を使用した。Google Octane 2.0は9,653、AnTuTu Benchmarkは94,389。Google Octaneは筆者が合格ラインとしている1万に近くまずまず。ただAnTuTu BenchmarkはASUS ZenFone 5(138,397@Snapdragon 636)よりかなり低いスコアとなっている。

 一般的なスマートフォンにはない物理的なキーボードが付いているとは言え、店頭予想価格75,000円前後なので、もう少し性能が出てほしいところだ。ただ、ブラウザやFacebookアプリなどテキストベースはまったく不満なく扱えたため、本機の特性的(つまりゲームはあまり対象とせず、テキスト中心)には問題ないだろう。

 バッテリ駆動時間は、Wi-Fi接続、音量と明るさ50%でYuTubeを全画面連続再生したところ、約12時間で電源が落ちた。数日さわった程度なので利用頻度によっても変わると思われるが、スタンバイと併用で断続的な利用だと数日は持ちそうな感じだ。

Google Octane 2.0は9,653
AnTuTu Benchmarkは94,389
AnTuTu Benchmarkの結果はASUS ZenFone 5よりかなり低いスコア
設定/電池。5時間経過で72%。約12時間ほどで電源が落ちた

 ちなみに本機は正式にマルチブートにも対応しており、ファームウェアを入れ替えることによってLinuxも作動させることができる。ここにいろいろ書かれているので興味のある方はご覧いただきたい。

 最後に余談になるが、筆者個人的には、Gemini PDAは残念ながら「出番がないかな……」と思う。まず、(高画質の)メインカメラとおサイフケータイがない点が痛い。つまりメインにはなりえない。

 また普段はカバンを持ち歩かない習性から、もう1台持つには余裕がないことも挙げられる。普段からカバンを持ち歩くなら、この程度の端末を入れておくのは苦でもないが、衣服のポケットしかないとなると、スマートフォン1台と財布が入っているため本機のスペースがない(とくに夏場)。

 加えて、カバンを持つときは、LTE対応のSurface 3を持ち歩く状態となるので、キーボードという面では(パコパコする打鍵感だが)本機以上だ。

 さらに、出先でおもに使うアプリがFacebook、Instagram、Twitterなどは、タイムライン式のものが多く、Webサイトもいまやモバイル用は縦長を想定。横位置の画面では非常に見にくく、物理キーボードが使えるメリットを、このデメリットが打ち消してしまう。もちろん縦表示も可能だが、その時はキーボードが邪魔になる。もしパネルが90度回転して、逆T字型にキーボードを配置できていれば、また違った感想になっただろう。

 HP 200LX(1994年)が出たころは、さまざまな小型デバイスを持っていたが、今となってはずいぶん環境が変わってしまったと実感する今回の試用だった。


 以上のようにPlanet Computers「Gemini PDA」は、LTE対応、10コアのMediaTek Helio X27/4GB/64GB、5.9型2,160×1,080ドットパネル、QWERTY配列メンブレンキーボード、そしてAndroid 7.1.1を搭載した小型スマートフォン(PC?)だ。物理的なキーボードがあるため、比較的長い文章を入力するのも苦にならない。

 加えてトップカバーに埋め込まれた5つのLEDをアプリの通知で任意のパターンに光らせたり、独自カレンダーアプリAgenda、データベースData、メモ帳Notesなど、PDAっぽく使える機能も標準装備している。加えてファームウェアを入れ替えればLunixとのマルチブートも可能となる。

 気になる点は、ハードウェア的には価格のわりに性能が低いこと。また、Androidアプリの多くが縦位置を想定して作られているので、横位置で使うと画面効率が低いことなどが挙げられる。

 とは言え、このサイズにこれだけのものを詰め込んだ端末はほとんどなく、このルックスに「お!」っと思ったユーザーにおすすめしたい逸品だ。