西川和久の不定期コラム
ドンキのキーボード付き2万円2in1を実際に使ってみた
2016年11月30日 06:00
11月1日、日頃PCとはまったく無関係のドン・キホーテからいきなり低価格の2in1が発表された。筆者もこのニュースを観た時、驚いた。仕様では分からないパネルの品質やキーボードの打ち心地など、気になる部分も含め、試用レポートをお届けしたい。
Atom x5/2GB/32GBとエントリークラスの2in1
これまで2in1を含むいろいろなタブレットを触ってきたが、1世代前のBay TrailのAtom搭載機ではメモリ1~2GBが主流。そして最近増えてきたCherry Trail世代のAtom搭載機ではメモリ2~4GB。パネルサイズや解像度、ストレージは(主にeMMC)機種によるといったところ。価格は構成などに左右されるがザックリ5万円前後だろう。
そんな中、PCメーカーではないドン・キホーテからいきなり2in1が発表された。しかも税別19,800円と驚くべき価格だ。なお、こちらは店頭販売のみでオンラインショップでの取り扱いは行なわれていない。
プロセッサはAtom x5、メモリ2GB、ストレージはeMMCで32GB。10.1型IPS式のパネルを採用し、キーボードとドッキングするタイプだ。本連載で最近扱った中では、メモリやストレージ容量は違うものの(4GB/128GB)、ASUS「TransBook Mini T102HA」が比較的近い2in1となる。
メモリが2GBなので、4GB搭載機ほど余裕があるわけではないが、ネット中心、加えてOffice Mobileなど、ライトな用途であればそれほどストレスを感じないレベルで操作できるだろう。2万円で購入できることもあり、まさに製品名にある「ジブン専用PC&タブレット」という位置付けの製品だ。主な仕様は以下の通り。
【表】ドン・キホーテ「ジブン専用PC&タブレット KNWL10K-SR」の仕様 | |
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SoC | Atom x5-Z8300(4コア、1.44~1.84GHz、キャッシュ2MB、SDP 2W) |
メモリ | 2GB(DDR3L) |
ストレージ | eMMC 32GB |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics |
ディスプレイ | 10.1型IPS式1,280×800ドット(光沢あり)、10点タッチ |
ネットワーク | IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0 |
インターフェイス(本体) | USB 2.0(Micro USB)、microSDカードスロット(32GBまで)、Micro HDMI、音声入出力、前面HD/背面WQHDカメラ |
インターフェイス(キーボード) | USB 2.0×2 |
サイズ/重量 | 約259.5×179.3×19.52mm(幅×奥行き×高さ)/約580g(タブレット時)、約600g(キーボード) |
バッテリ駆動時間 | 約6.1時間 |
その他 | Microsoft Office Mobile付属 |
税別価格 | 19,800円 |
プロセッサはIntel Atom x5-Z8300。4コア4スレッドでクロックは1.44GHzから最大1.84GHz。キャッシュは2MB、SDPは2W。Atom x5-Z8350と比較して最大クロック数が若干低いSKUとなる。
メモリはDDR3L 2GB、ストレージはeMMCで32GB。最大32GBまでのmicroSDカードスロットも搭載している。OSは64bit版Windows 10 Home。
ディスプレイは、光沢ありの10.1型IPS式1,280×800ドット。10.1型だと1,366×768ドットや1,920×1,080ドットも考えられるが、コストとのバランスだろう。外部出力用にMicro HDMIも装備している。ビデオ機能はプロセッサ内蔵Intel HD Graphics。
そのほかのインターフェイスは本体側に、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0、USB 2.0(Micro USB)、音声入出力。キーボード側にUSB 2.0×2。必要最低限だが、実用上、問題ないレベルだ。また仕様には載っていないが、前面HD(1,280×720ピクセル)/背面WQHD(2,560×1,440ピクセル)カメラを搭載している。
サイズは約259.5×179.3×19.52mm(幅×奥行き×高さ/合体時)、重量約580g(タブレット時)、約600g(キーボード)。合体時1kgを少しオーバーするのが残念なところか。
価格はMicrosoft Office Mobile付属で冒頭で書いたように税別19,800円。PCメーカーではないとは言え、ちょっと衝撃的な価格だ。僚誌AKIBA PC Hotline!でたまに見かける中華タブレットに近いレンジとなる。確かにこの金額なら”ジブン専用”で衝動買いできる範囲ではないだろうか。
筐体はシルバーとブラックでまとめられ、ほぼプラスチックだがチープな感じは一切なく結構カッコいい。キーボード込みで約2万円なら十分それ以上だ。単独で実測590g、ドッキング時で約1.2kg。物凄く軽いわけではないものの、クラス相応だろう。
前面はパネル中央上にHDカメラ、中央下にWindowsボタン。左右の縁にスピーカー。背面中央上ににWQHDカメラ。本体左側面には何もなく、右側面に電源入力、Micro HDMI、Micro USB、音声入出力。上側面に電源ボタンと音量±ボタン。下側面にドッキング用のコネクタとmicroSDカードスロットを配置。合体時にケーブル類は右側面下側にまとまっているため、ケーブルが宙に浮いてカッコ悪くなることもない。
付属のACアダプタはサイズ約75×40×30mm(プラグなど突起物含まず)、重量122g。5V/2.5A出力だがUSB式ではなく専用のコネクタとなる。電圧が異なれば仕方ないが、5VならMicro USBの方が汎用性が高いだけに少し残念。
気になるパネルの品質は、IPS式で視野角は広く、発色も綺麗、コントラストや明るさも十分確保され、価格を考えれば文句なしだ。タッチの反応も良い。パネルの傾きは掲載した写真が最大となる。
キーボードはアイソレーションタイプで主要キーのキーピッチは約18mm。強く押すと若干たわむが気になるほどでもなく、クリック感があり合格レベル。タッチパッドは物理的なボタンがない1枚プレート型。追尾性は悪くないものの、操作しているとなぜかしばしば共有パネルが表示されたり、2本指によるスクロールの反応が鈍いなど難がある。あと一歩改善して欲しいところ。左右の側面にUSB 2.0を配置。
振動やノイズは皆無。発熱も(時期にもよるだろうが)使用中特に気にならなかった。サウンドは前面左右にスピーカーがあり、パワーはもっと欲しいが、ステレオ感は十分ある。
総合的に約2万円と考えると、タッチパッドが惜しいものの、予想以上の品質でまとめられており正直ビックリしている次第だ。今年(2016年)扱ったマシンの中ではナンバーワンのコストパフォーマンスと断言できる。
ライトな用途であれば問題ない性能
OSは64bit版Windows 10 Home。メモリが2GBなので32bit版でも良さそうだが、上位モデルの予定でもあるのだろうか(できれば+1万円してもいいので、Atom x7/4GBモデルが欲しいところ)。
初回起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。デスクトップは何も変更されず標準のままだ。Atom x5でメモリ2GBということもあり、高性能は期待できないものの、ライトな用途であればそれほど不満になることもないだろう。
ストレージはeMMCだが「Generic NCard」とあるだけで詳細は不明。C:ドライブのみの1パーティションで約28.24GB割り当てられ空きは17.3GBと結構少ない。データ類をmicroSDカードへ逃がすのが無難だ。Wi-FiはBroadcom製が使われている。
プリインストールのアプリは、Windowsストアアプリ、デスクトップアプリともに特にない。Windows 10標準のままだ。またコントロールパネルのプログラムと機能の一覧も空。本当にピュアなWindowsで、これはこれで珍しい。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2/Home(accelerated)、BBenchの結果を見たい。参考までにGoogle Octane 2.0(Edge)とCrystalMark(4コア4スレッドで条件的には問題ない)のスコアも掲載した。
winsat formalの結果は、総合 3.6。プロセッサ 5.8、メモリ 5.5、グラフィックス 3.6、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6。メモリのバンド幅は5359.25379MB/s。PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)は1,364。Google Octane 2.0は6,727。CrystalMarkは、ALU 21,385、FPU 18,146、MEM 15,266、HDD 14,870、GDI 3,722、D2D 2,607、OGL 2,886。Atom x5搭載機としては速くも遅くもなく平均的なスコアだ。
BBenchは、キーボードを付けたまま、バッテリ節約機能オン、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果は、バッテリの残2%で42,023秒/11.8時間。通常の残5%で41,722/11.6時間。仕様上は約6.1時間なので、倍近く作動している。バックライトをもう少し明るくしても9時間以上は持ちそうだ。
最後に筆者の個人的な意見だが、PCのシェアがスマートフォンに食われている理由の1つとして、(一般的に)やることに対して価格が高過ぎると思っている。クリエイティブな用途を除き、ちょっとネットして、Officeを触り、画像や音楽動画を管理編集するだけで5万円以上、Core iクラスになると10万円を超えてくる。費用対効果が低過ぎるのだ。
対してスマートフォンは画面が狭いだけでできることは変わらず。ならば確実に必要なスマートフォンを優先しPCは余裕があれば……となるのは当たり前。しかしこのクラスがこのレンジの価格になると話は変わってくる。パッケージの写真を掲載したのもこの手のPCは既にハイテク商品ではなく事務機/家電になったという証拠のような気がしたからだ。
メーカーとしては安価なPCを出しても儲からないのでやりたくない気持ちも分かるが、かと言って、最新鋭の高価なモデルばかりでは一部に売れても裾野が広がらず、結果全体のシェアは落ちる一方となる。同社に限らず、このクラスの今後にも期待したい。
以上のように、ドン・キホーテ「ジブン専用PC&タブレット KNWL10K-SR」は、基本的にはライトな用途となるものの、それにしてもルックスも含めこれだけのものが税別で2万円を切るとは驚きである。
タッチパッドの感度やACアダプタがUSB式ではなく専用など、一部気になる部分もなくはないが、それが許せてしまう完成度だ。安価にジブン専用のマシンを所有したいユーザーにお勧めの逸品と言えよう。