西川和久の不定期コラム

ドスパラ「Diginnos mini DM110-S3」

~機能的に充実したMini-STXの小型PC

Diginnos mini DM110-S3

 ドスパラは9月21日、Mini-STXフォームファクタを採用した小型デスクトップPC「Diginnos mini DM110-S3」を発表した。コンパクトなPCが好きな筆者にとっては気になる存在だ。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。

Mini-ITXよりさらにコンパクトなMini-STXマザーボードを採用

 一般的にソケット式でプロセッサが交換可能なPCに使われているフォームファクタは、「ATX」、「microATX」、「Mini-ITX」と3種類。基本サイズは順に305×244mm(幅×奥行き)mm、244×244mm(同)、170×170mm(同)。サイズはWikipediaを参照して書いたのだが、表にはほかにもいろいろなタイプが載っており、比較的長い間業界に居る筆者でさえも知らないものもあったりする。

 もともとこれらのサイズは、当時のチップセットの構成も含め、パーツサイズや拡張性から逆算してできた大きさだ。従って基本的に大きいものほど古い。しかし現在、ゲームやワークステーション以外の用途ではビデオカードを別途搭載する製品は珍しく、ほとんどプロセッサ内蔵で事足りるようになった。拡張カードが不要なら、上述の中で一番小さい「Mini-ITX」でさえもスペースが余ってしまう。

 と言っても「Mini-ITX」未満のサイズ、例えば「Nano-ITX」や「Pico-ITX」だと、プロセッサはオンボードになってしまい交換ができない(このクラスのPCでプロセッサを交換するのかという話は別として)。そこに登場したのが汎用フォームファクタ最小の「Mini-STX」だ(Mini Socket Technology eXtendedの略)。フットプリントは147x140mm。「Mini-ITX」より30mmほど小ぶりでほぼCDケースの大きさとなる。

 今回発表されたのはこのMini-STXフォームファクタを採用したコンパクトなデスクトップPC、「Diginnos mini DM110-S3」。主な仕様は以下の通り。

【表】ドスパラ「Diginnos mini DM110-S3」の仕様
プロセッサIntel Core i3-6100(2コア/4スレッド、3.7GHz、キャッシュ3MB、TDP 51W)
ソケットLGA1151
メモリ8GB DDR4 SO-DIMM (PC4-17000/4GB×2/最大32GB)
ストレージHDD 500GB(5,400rpm)
OSWindows 10 Home
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 530
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11ac無線LAN、Bluetooth 4.0
インターフェイス前面 USB 3.0×2(Type-A×1+Type-C×1)、背面 USB 2.0×1、USB 3.0×1、側面 USB 2.0×2、DisplayPort、HDMI、ミニD-Sub15ピン、音声入出力
サイズ/重量80×155×155mm(幅×奥行き×高さ)/約1.35kg
税別直販価格49,980円から(メモリ4GBモデル)

 プロセッサはCore i3-6100。2コア4スレッドでクロックは3.7GHz。キャッシュは3MBでTDPは51W。Core i3なのでTurboBoostは使えないが、それでも3.7GHzは結構速い。ソケットはLGA1151。

 メモリはスロットが2つあり、DDR4 SO-DIMMで最大32GBまで搭載可能。標準構成では4GB×1だが、手元に届いたのは4GB×2の計8GBになっていた(+5,080円/+税)。

 ストレージは5,400rpmの500GB HDD。写真から分かるように、2.5インチを2基マウント可能で、M.2 SSDにも対応している。できれば高速でオンボードに収まる後者にしたいところか。OSは64bit版のWindows 10 Home、既にAnniversary Update(Redstone 1)になっていた。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 530。DisplayPort、HDMI、ミニD-Sub15ピンとフル装備だ。

 ネットワークは有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11a/b/g/n/ac。Bluetooth 4.0にも対応する。

 そのほかのインターフェイスは、前面 USB 3.0×2(Type A×1+Type-C×1)、音声入出力。背面にUSB 2.0×1、USB 3.0×1、側面にUSB 2.0×2。マザーボードに拡張スロットはないものの、先に書いた通り、一般的な用途であれば特に問題なく、これだけのUSBポートがあればお釣りが来るぐらいだ。

 サイズは80×155×155mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.35kg。電源は外付けのACアダプタで19V/6.32Aのものが付属する。

 価格は4GBモデルで49,980円(税別)。筐体やマザーボードを見る限り、ASRock製小型ベアボーン「DeskMini 110」そのものであり、DeskMini 110単体で価格は17,000円ほど。プロセッサ、メモリ、ストレージ、OSを加えると妥当なところか。

 なお、Core i5-6500、メモリ8GB、HDD 1TBを搭載する「Diginnos mini DM110-S5」は59,980円(税別)。BTOでWindows 10 Pro、SSD、メモリ増量などに対応している。また、シリアルポートおよびVESAマウントもそれぞれ税別980円で追加可能で、組み込みなどの用途にも対応できる。

前面。USB 3.0×2(Type A×1+Type-C×1)と音声入出力
背面。電源入力、DisplayPort、HDMI、ミニD-Sub15ピン、USB 2.0×1、USB 3.0×1、Gigabit Ethernet。上部にWi-Fi用のアンテナを付けるコネクタが2つ
左側面。USB 2.0×2。スリットからCPUファンが見える
右側面。VESAマウンタ用のおうとつとネジ穴がある
斜め横(iPhone 7 Plusとの比較)。iPhone 7 Plusは高さ158.2mmなので、ほぼ同じなのが分かる
ACアダプタは145×60×35mm/重量510g。口はミッキータイプ。Wi-Fi用のアンテナ2本と、もう1台2.5インチHDDが内蔵できるようSATAケーブルが1本付いている
ケースから外したところ。背面のネジ4本で簡単に外すことができる
マザーボード。ほとんどファンが面積を占めているのが分かる。メモリはSO-DIMM×2。M.2(PCI Express3.0 x4専用)のコネクタも見える
マザーボードの裏側。2.5インチのベイが2つ。1つはHDDが実装済み
Mini-ITXとの比較。写真の都合上Mini-ITXのコネクタ類分だけ高くなっているが、Mini-STXフォームファクタの方が一回り小さいのが分かる

 筐体はマットブラック。とにかく小さいのが特徴的だ。左側面のスリットから見えるファンが巨大に見えてしまうほど。iPhone 7 Plusと並べた写真もあるので、そのサイズ感がお分かりいただけるだろう。またMini-ITXのマザーボードと比較しても一回り以上小さく、汎用のソケットが乗っていると考えるとなかなか興味深い。

 前面はUSB 3.0×2(Type A×1 + Type-C×1)と音声入出力。背面は電源入力、DisplayPort、HDMI、ミニD-Sub15ピン、USB 2.0×1、USB 3.0×1、Gigabit Ethernet。左側面にUSB 2.0×2、右側面にVESAマウンタ用のおうとつとネジ穴を配置。また背面上部にWi-Fi用のアンテナを付けるコネクタが2つある。付属のACアダプタは145×60×35mm、重量510gと少し大きめだ。メディアカードスロットがないものの、これだけUSBポートがあれば、必要に応じてカードリーダを付ければよく、特に問題にはならない。

 ケースからマザーボードを取り出すのは、背面のネジ4つだけと非常に簡単。メンテナンスも容易だろう。相対的に巨大に見えるファンの横にメモリスロットが2つ、90度横側にWi-Fi、Bluetooth、M.2用のコネクタなどがある。なおこのM.2はPCIe Gen3 x4専用だ。裏側には2.5インチが2つ入るストレージ用のマウンタ。1基は装着済でもう1基用に少し特殊なSATAケーブルが1本付属する。

 振動や発熱は試用した範囲では特に気にならなかったが、さすがにファンは少し音が聞こえる。筐体が小さく、どうしても手元に置きがちなので仕方ないところ。少し離れた場所へ設置すれば気にならないだろう。

 序文にも書いたが筆者はコンパクトなデスクトップが好きで(と言うより、昔のように拡張する必要がないため、であればできるだけコンパクトに的な)、Mini-ITXのものは現在でも1台常用している。

 電源内蔵かどうかでケースのサイズが大きく変わるとは言え、ケースだけで比較すると、幅だけでも3倍近くあり、「この小さい筐体にLGA1151用のプロセッサを搭載できるマザーボードが収まってしまうのか……。」と、ちょっとしたギャップ萌えだ(笑)。次自作する時はぜひ挑戦したいところである。

コンパクトなのになかなかの性能。できればSSDで使いたところ

 OSは64bit版のWindows 10 Home。ただしTH2ではなくRD1(Anniversary Update)になっており、追加のUpdateもさほど時間がかからない。Core i3でメモリ8GBだが、ストレージがHDDの関係でシステムの性能がスポイルされてしまうのが惜しいところ。

 スタート画面(タブレットモード)は1画面。特に追加されているタイルはない。デスクトップも標準のままだ。

 HDDは5,400rpmで500GBの「HGST HTS545050A7E680」。Cドライブのみの1パーティションで約465GBが割り当てられており、空きは445GB。

デバイスマネージャ/主要なデバイス。HDDは5,400rpmで500GBの「HGST HTS545050A7E680」。Gigabit EthernetとWi-Fi、BluetoothはIntel製
HDDのパーティション。Cドライブのみの1パーティションで約465GBが割り当てられている

 インストール済みののソフトウェアは、Windowsストアアプリは特になし。デスクトップアプリは、「パソコン診断ソフトPC-Doctor」、「マカフィーリブセーフ」、Intelなどのシステムツール系だ。なおBTOでMicrosoft Officeなどをプリインストールすることも可能となっている。

パソコン診断ソフトPC-Doctor
マカフィーリブセーフ

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2/Home accelerated。またCrystalMarkの結果も掲載した(2コア4スレッドと条件的に問題ない)。

 winsat formalの結果は、総合 5.9。プロセッサ 7.7、メモリ 8.1、グラフィックス 6.3、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 5.9。メモリのバンド幅は26,687.16071MB/s。PCMark 8 バージョン2/Home acceleratedは3405。CrystalMarkは、ALU 59150、FPU 59472、MEM 64733、HDD 10742、GDI 19978、D2D 5582、OGL 18538。

 メモリがDDR4で4GB×2とデュアルチャネル作動になっているため、バンド幅26,687.16071MB/sと少し速め。他もそれなりに高スコアなのだが、いかんせんストレージがHDDなので、そこが足を引っ張ている。やはりSSDが欲しいところ。またプロセッサの温度が割と低いのは結構ポイントが高い。

「winsat formal」コマンド結果。総合 5.9。プロセッサ 7.7、メモリ 8.1、グラフィックス 6.3、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 5.9
PCMark 8 バージョン2/Home acceleratedは3405
PCMark 8 バージョン2/Home accelerated(詳細)。CPUクロックは800MHzから最大の3.6GHzまで結構激しく上下している。温度は40度切る辺りから最高50度ほどと低めだ
CrystalMark。ALU 59150、FPU 59472、MEM 64733、HDD 10742、GDI 19978、D2D 5582、OGL 18538

 以上のように、ドスパラ「Diginnos mini DM110-S3」は、Mini-STXフォームファクタのコンパクトデスクトップながら、プロセッサはCore i3から、2.5インチのストレージ2基とM.2に対応。そしてSO-DIMMスロットが2つあり、基本的な拡張性が確保されている上に、USB Type-Cも含めたインターフェイスが満載。もちろんGigabit Ethernet、Wi-FiとBluetoothも入っており抜けがない。

 近くに置くと少しファンの音が気にならないでもないが、筆者も含め、小型のデスクトップPCが好きなユーザーにお勧めしたい逸品と言えよう。