モバイラーが憧れた名機を今風に蘇らせる

第9回

東芝「Libretto ff 1100V」

〜マルチメディアを突き詰めたエンターテイメントモバイル

Libretto ff 1100V

 現在、もしモバイルPCを持っていたら、そのPCで何をしているのだろうか。筆者はもちろん、外出先で原稿を書いたり写真を編集したりといった用途に使っているのだが、人によってはプログラミングをしたり、社内のメール確認や、イントラネットの情報確認のためにWebブラウザを使っているのかもしれない。

 いずれにしても、現代的なモバイルPCはビジネス色が濃い。しかしPCは本来汎用的な処理を目指したものであり、その使い方は無限だ。だったら今のゲーミングPCのように、もっと娯楽や趣味に特化したモバイル製品があっても良い。それを当時の技術で最大限に具現化したのが、今回ご紹介する「Libretto ff 1100V」だ。価格はオープンプライスで、発売当時の実売価格は20万円程度だった。

元々趣味性が強かったLibrettoを突き詰めたモデル

 Librettoシリーズ(以降、Librettoシリーズで言う場合はff 1100Vまでを指す)は、趣味性が高いモバイルPCであることに疑いの余地はないだろう。2001年に大きフォームファクタが変わった「Libretto L」シリーズでは、本体サイズが犠牲となった代わりにキーボードの使い勝手が格段に向上し、ビジネス色が濃くなったが、Libretto 20からLibretto ffまでは、趣味を究極に突き詰めたと言っても過言ではない。

 もちろん、Libretto 20/30はそもそも音源を搭載していなかったので音すら再生できなかったし、以前譲って頂いたLibretto 30にはビジネスでバリバリ使われた痕跡があったことから、少なくともビジネスで使えないことはない。しかしもし筆者が、当時誰かの上司で、「Librettoを仕事で使うので会社で買ってください!」と出金伝票を出されたとしても、ハンコは押さないだろう。十年早いが、BYODでお願いしたいところである。

 Libretto ff 1100Vは、Libretto Lが登場するまで、1年半のブランクが開く前の最終モデルである。初代からの流れを汲むLibrettoのコンセプトと粋が、全てこのモデル詰まっている。

 本体サイズは221×132×29.8〜32mm(幅×奥行き×高さ)、重量は980gと、シリーズ内では最もフットプリントが大きく重い。先代に当たる「Libretto SS 1000」では厚さが24.5〜25.4mmに薄型化されていたので、そのトレンドが続くと思ったが、また祖先帰りしている。

 ただしこの大きさで実現可能な、当時で考えうる最高スペックの部品を搭載しており、性能は大きく向上した。例えばCPUはMMX Pentium 266MHzを搭載。メモリは64MBもあり、最大128MBまで拡張可能。HDDは6月発表の「Libretto ff 1000」こそ3.2GBしかないが、10月発表の本製品(ff 1100V)では6.4GBに向上。液晶ももちろんシリーズ最大(と言ってもLibretto 100/110と同じだが)となる、800×480ドット表示対応の7.1型TFTとなっている。ちなみにこの液晶は大変美しく、今なお色褪せない。

 当時は既にモバイル向けのPentium IIが登場しており、CPUクロックも400MHz超が当たり前であったので、決してハイエンドの部類とは言えなかった。2000年にモバイルPentium IIIが投入されると、Libretto ff 1100Vは半値以下で販売される(10万円を割る)こともあった。とは言え、当時のホビー用途では十分すぎる性能だった。

趣味性を加速するリモコンとカメラ

 Libretto ff 1100Vで趣味性を強めている要因はいくつかある。1つ目はなんと言っても液晶リモコン付きのヘッドフォン「i.Shuttle」だろう。このi.Shuttleを使えば、リモコンでPC電源、アプリケーションの起動、カメラの撮影、音楽ファイルの再生やボリューム調節が可能となっている。

 Libretto ff 1100Vが登場した1999年と言えば、ちょうど「Winamp」を使い、MP3形式で音楽を楽しむスタイルが確立されつつあった時代であった。当時はまだAppleの「iPod」やSamsungの「Yepp」のような、HDDやメモリを媒体とし、音楽再生に特化したモバイルデバイスが登場していなかったので、MP3はPCで聴くのが当たり前だった。Libretto ff 1100Vはまさにそのトレンドを取り入れた製品であったと言えるだろう。

 もう1つは液晶下部に備え付けられた、CMOSカメラ「SCOOPY」だ。今となってはPCにカメラを統合するのは当たり前でなんら不思議はないのだが、当時はデジタルカメラというジャンル自体が新興したばかりであった。そんなわけでカメラがPCに搭載されるのも、ソニーの「バイオC」シリーズで「MOTION EYE」があった程度。バイオCのカメラは比較的好評価を得たので、本機はそのバイオに追従して搭載したと見られる。

i.Shuttle(実物はないので、これは発表会の記事から引用)
SCOOPYと延長ケーブル(同)
SCOOPYは約160度回転可能で、背面を撮影できる

 本機のカメラはバイオC1のMOTION EYEと同様、背面に回して撮影できる。MOTION EYEにはない特徴として、カメラを本体から取り外して、付属のケーブルで1m先に延長できる点が挙げられる。つまり本体は机や膝の上に置いたまま、手や三脚でカメラを支持してやや離れた場所から撮影できる、ということだ。シャッターボタンも、SCOOPY本体やキーボード上部に付いている。

 そして外観で忘れてはならない特徴として、スケルトン仕様のキーボード採用が挙げられる。1990年代後半と言えば、任天堂の「ゲームボーイ」シリーズを台頭に、Appleの「iMac G3」など、個人向け製品でスケルトンボディが大流行した時期があったのだが、本製品もその流行をキーボード(だけ)に取り入れた、と言えるだろう。

 リモコンにしろカメラにしろスケルトンキーボードにしろ、Libretto ff 1100Vはコンシューマ色が非常に強いモデルとなっていることが分かる。

 キーボードのキーピッチは15mmとされている。Enterキー横のPageUp/PageDownなどが省かれているためだ。初代のLibretto 20などと比較するとかなり余裕があり、ミニノートに慣れたユーザーであれば難なくタッチタイピングできる印象。それでもフルサイズキーボードほど高速には入力できない。一方、リブポイントの使い勝手は従来から変更されていない。

 むしろ評価すべき点は、こうしたUI部分よりも、豊富なインターフェイスだろう。IrDA赤外線の搭載はもちろんだが、本モデルから別売りのドックなどを使わずとも外部ディスプレイの出力が可能となった(ミニRGB出力で、変換ケーブルが付属)。また、当時のフラッシュメモリメディアの代表格であったスマートメディアスロットも標準で装備。さらに56Kモデムも内蔵しているので、ホビー用途ならこの1台でほぼ賄えた。

特徴の1つとなっているスケルトンキーボード
本体背面。インターフェイスの多くが集中している。右に吸気口が見えるが、開口部は1世代前のLibretto ff 1100CTより大きくなっている
USB。当時まだ立ち上げたばかりの規格であった
ミニRGB出力端子も装備しており、ドッキングなしで外部ディスプレイを接続できる
右側面。REMOTEと書かれたこの端子はi.Shuttle接続用だ。内部的にはUSBの信号が通っている
スマートメディアスロットも装備されている
56Kモデムのジャック。折りたたみ式で本体にツライチで収納可能
左側面はPCカードスロットとDC入力がある
シリーズお馴染みのリブポイント。本機がLibrettoにとって最後の搭載となった
液晶背面のクリックボタン。Libretto 30世代からは随分と小型化したが、使い勝手はあまり変わってない。触るだけでも識別できるよう、左クリックボタンの中央に凹みがある

シリーズで一貫した分解方法。謎のチップの正体は……

 LibrettoシリーズはLも含めて、分解方法がほぼ共通している。底面のネジはメモリスロット部を除き全て同じ長さで、それを全部外してから、キーボード上部のキーボード留めバーを外す。次にキーボードを引き上げフラットケーブルを外し、液晶に繋がっているケーブルを外す。後は上のフレートと下のフレームを分離させるだけである。

 HDDの交換を行なう場合も、この手順を踏む必要がある。Libretto 20/30/50/60/100/110までは、分解せずともネジ2本でHDDの取り外し可能だったので、メンテナンスの性という意味ではかなり後退しているのだが、本体の薄型化などのためにこうした構造を採用しているのだろう。

底面のネジを全て外し、キーボード上部のキーボード留めを外す。キーボードを外してから上フレームのツメを外していけば、内部にアクセスできる
取り外した上部。液晶と一体化している
液晶のヒンジは、キーボードの手前までパーツが伸びており、堅牢性は非常に高い
上フレームを取り外した直後の内部はこのようになっている
モジュラージャックおよびキーボード/液晶のコネクタは別パーツとなっているので、これを取り外す
これがボトムカバー
ボトムカバーに「TOSHIBA OME」の文字があり、当時の青梅事業所で製造された可能性が高い
こちらが表面。HDD装着スペース、スピーカーやPCカードスロット、CMOSバッテリなどが見える
こちらは裏面。スマートメディアのスロットが見えるが、そのほかの主要部品はヒートシンクに隠れている

 さて、基板の上を見ていこう。と言っても取り外しただけでは多くの部品が絶縁フィルムやヒートシンクに覆われており、主要チップとして見えるのはヤマハの音源チップ「YMF715F-S」と、Lucent製の56Kモデム「1646T00」程度である。CPUなどにアクセスするには、まずはこれらの邪魔を取り除く必要がある。

 まずはHDDベイの下の絶縁フィルムを剥がすと、64MB分のメモリが見える。採用されているチップはNECの「μPD42S65165G5-A60-7JF」だ。64MbitのEDO DRAMで、これを8枚搭載することで容量64MBを実現している。この近くには、日立製のマイコンと見られるチップと、Macronix製のBIOSを格納していると見られるフラッシュチップが見える。

 一方ヒートシンクの方を外すと、CPU、ビデオチップなどが見える。CPUはスペック通りのMMX Pentium 266MHz、ビデオチップはNeoMagicのMagicGraph 128XD(NM2160C)だ。残る2つのチップはいずれも東芝製で、おそらくノースブリッジとサウスブリッジの役割を果たしているものと思われるのだが、残念ながら資料がないので詳細は分からない。

ヤマハのサウンドチップ「YMF715-S」。サウンド回路周辺もオペアンプやコンデンサを多用した堅実な作り
LUCENTの56Kモデム「1646T00」。俗称はMars2のようである。PCI接続と見られる
ラトックシステム(!)のスマートメディコントローラ「RG85539C」。PCカード接続のようである
右のMAXIM Integrated製「MAX785CAI」は現在データシートがないが、PCMCIAの電源コントローラのようである。左の「MAX798」はバッテリ駆動機器のメインCPU電源を提供するステップダウンDC-DCコンバータである
主要部品を見るためには、このヒートシンクを取り外す必要がある
本機の心臓部はMMX Pentium 266MHz。薄型パッケージを採用している
東芝内製のチップセットとみられるチップ。この辺りは東芝製PCで一貫している(デスクトップPCでも独自チップセットを採用していた)
こちらも東芝製の「TC203G64AF」。詳細は不明だが、サウスブリッジ相当の機能を実装していると思われる
このコラムでは2度目の登場となる、NeoMagicのビデオチップ「MagicGraph 128XD」。ビデオメモリを内蔵しており、実装コストを減らす
HDDの下には、NEC製のEDO RAM「D42S65165G5-A60-7JF」が見える
もう1つ、BIOSを格納しているとみられるMacronixのNORフラッシュが見える
CPU付近に見えるこの「74LS125A」はTexas Instruments製のバスバッファである
CPU裏には東芝製のSRAM「TC55V328BFT-15」がある
PCカードスロットの下には、シールに隠れて型番が見えないチップが見えるが、用途は不明

 さてこのヒートシンクだが、何やらPCカードスロットの下のフィルムと接着剤繋がっているようだったので、PCカードスロットのリテンションメカニズムの一部を取り外してフィルムを取り外したところ、フィルムの下にやや変わったチップが2個搭載されていることが確認できた。

 ダイがサブストレートについており、それがマザーボード上にハンダ付けされている。この当時としては珍しい種類のチップだ。型番などが印字されていないので(数字はあったが、検索してもヒットせず)、これだけを見てすぐなんのチップか分かる人は少ないのではないだろうか。CPUのほぼ裏に装着されていることがヒントとなるが、これは512KB(256KB×2)の2次キャッシュである。

 今となっては、2次キャッシュがCPUのダイに統合されているというのは当たりであるが、2次キャッシュを初めて内包したIntelのx86 CPUはCeleron 300A(Mendocino)であり、それまでは外付けのチップで、さらにその前は存在すらしなかった。2次キャッシュは性能向上に大きく貢献するが、この筐体でPentium IIと同じ512KBも搭載したのは立派だと言えるだろう。残念ながら、本製品に採用されているSRAMは具体的にどのような仕様のものなのか確認できないが、改めてPC性能進化の歴史を認識させられる。

このチップの写真だけ出されたら、何のチップかすぐ分かる人は少ないだろうが、2次キャッシュである
基板上にJVCのシルク印刷が。同じ印刷が、Libretto U100などにも存在する

 余談だが、Libretto ff 1100Vの基板には、「JVC」のシルク印刷がある。この付近にはそれらしきチップが実装されていない上、JVCという部品略称もなさそうであることから、これは基板製造元のロゴ−−つまりこのプリント基板は日本ビクター製であることを示す可能性はある。

 このJVCのロゴは後の「Libretto U100」や「dynabook SS SX」の基板でも確認できる。Libretto U100時代の基板技術については、東芝が自ら基板技術について詳しく解説していたりするので、少なくとも設計や開発は東芝かも知れないが、基板製造については日本ビクターに委託していた可能性が高い。日本ビクターにPC向け基板を製造する能力があったとすれば、ASUSと共同開発したミニノート「InterLink XP」を出せたのも、不思議ではないのだが、確証はない。

編集部員より譲り受けるが、付属品は一切なし

 さて、今回登場するLibretto ff 1100Vは編集部員より譲り受けたものを利用したので、購入費は0円である。ただ問題はいくつかある。

 1つ目はACアダプタが付属していなかったこと。以前復活させたLibretto 30/60、およびLibretto L2はACアダプタのDCプラグ形状は共通の円形同軸なので、相互利用が可能であったのだが、この2機種の間に挟まれたLibretto ff 1100は角形なのである(Libretto 100世代から変更された模様)。

 本体を入手してから数カ月の間、秋葉原のジャンク屋を回っても、これに対応したACアダプタがなかなか見つからず、いっそうのこと筐体をくりぬいて同軸ジャックに置き換えてしまおうと考え、千石電商でジャックを購入した。しかしそれを購入した直後に限って、U&J MAC'Sで対応ACアダプタが見つかったりするものだ。電源周りはリスクを冒して改造するよりもこちらの方が安全だと考え、1,500円でACアダプタを購入した。

 こうしてめでたく電源を入れられるようになったところ、これが何の問題もなくWindows 98が立ち上がった。まあ、問題ないと言ってもそれはソフトウェアの話で、HDDがやたらと騒音を立てる辺りや、ちょっと負荷をかけるとファンが爆音で回ったりする点は直さなければならない。

 HDDに関しては、2.5インチのIDEタイプであれば、一般的な9.5mm厚でも基本的に問題なく搭載できる。標準搭載されるHDDは、若干薄い8.45mmの「MK6411MAT」なのだが、マウンタ自体が9.5mmに問題なく対応できる。9.5mmのHDDのシャーシ設計によっては、上フレームの一部と干渉するかも知れないが、その場合コネクタの挿入を若干浅くするなど調節すれば問題なく入る。なお、今回はOS環境をそのまま流用するので、予めクローンしておく。

 一方ファンがうるさい問題だが、こちらは分解してみたところ、フィンがフレームからはみ出しているタイプで、フレームを外さなければフィンを取り出せないのだが、このフレームはろう付けされていて分解不可であった。まあ、とても不快というほどではないので、この辺りは諦めるとしよう。

購入したACアダプタ
標準搭載のHDDは東芝内製である。9.5mmより若干薄い8.45mmのタイプである
ご覧の通り、9.5mm厚のHDDと比較して1mm弱薄い
HDDのシャーシ設計によっては、上フレームのケーブルガイドと干渉する
その場合、写真のように若干コネクタの差し込みを浅くすると収まる場合がある
ファンはCMOSバックアップバッテリの下にあり、絶縁カバーを外すとアクセスできる
ただしフレームがろう付けされていて分解は難しいので、今回は諦めた

 なお、今回はSCOOPYを伸ばすためのケーブルや、リモコンのi.Shuttleを入手できなかった。まぁ、今時大した使い道もないので特に問題はないのだが、少し残念ではある。活用する場合は、この特徴を除いた使い道を考えなければならない。

ヤマハのサウンドチップを活用せよ

 今回、標準環境で試用していて、目星をつけた機能がある。それはヤマハのMIDIだ。先述の通り、本機はサウンドチップにヤマハ製のYMF715F-Sを採用しており、このチップ自体はLibretto 60にも搭載されているものなのだが、新たにヤマハのミキシングソフト「XG Studio Mixer」、およびソフトシンセサイザーの「S-YXG50 Player」が入っている。

 お目当てはもちろんS-YXG50の方である。2000年前後と言えば、ヤマハのサウンドチップ「YMF724」、「YMF744」が大流行したこともあり、筆者もそれを搭載したサウンドカードを長らく使っていた。YMF724はXGフォーマットのMIDIに対応していて、非常に高音質なMIDI再生ができた。筆者は当時作曲を楽しんでいたのだが、自作曲をする際も、MIDIデータを楽しむ際も、ヤマハのMIDIサウンドが標準だった。

 ところがYMF724はWindows Vistaでドライバのサポートを打ち切られ、自作PCで泣く泣くYMF724を手放した経緯がある。そのため、ここしばらくはそうしたMIDIデータを、あの時楽しんでいた音で聴くことがなかった。本機に入っているS-YXG50なら、(YMF724ほどではないが)再度あの時の感動を蘇らせることができる、と考えた。というわけでMIDIを鳴らしてみたが、うむ、やはり素晴らしい。

S-YXG50がプリインストールされている
こちらはXG Studio Mixer
S-YXG50はソフトウェアシンセサイザーで、MIDIデバイスとして動作する。そのためCPU負荷も設定できる
最大発音数や最大CPU使用率など、懐かしい設定がいっぱいだ。本機種の場合、この設定で問題ない(ただし負荷がかかると遅延したりするのはご愛嬌)

 何度もこのコラムに繰り返し登場するが、筆者はDOS/V互換機を使う前は、NECの「PC-9821V12」を使っていた。V12に搭載されていた音源はPCMだけで、FM音源すら搭載されていなかったため、MIDIを鳴らすことはできなかった。しかしその頃友達は「Cakewalk」を使って作曲しており、その曲を聞きたいがために、いつからしか自宅で綺麗なMIDIを鳴らすことが憧れとなっていた。

 ハードウェアであれば、当時最強のビデオカード「EDGE 3D」(NVIDIAのnv1搭載)を購入すればMIDI音源も付いてくるので、3D性能も強化できて一石二鳥であったが、当時中学生でお小遣いがあまりなかった筆者は買えなかった(ビデオカードは1万円ぐらいのVirge DXとPermedia 2を買った)。「WinGroove」を試聴して“いいなぁ”と思いながらも、シェアウェアで支払えなかった。結局、「プリンセスメーカー2」のCD-ROMに収録されていたローランドの「VSC-88」の体験版で、1回につき1分程度しか曲を再生できない制限を食らいながら、何度もプレーヤーソフトの一時停止と再生ボタンを繰り返して押したのは、いい思い出である。

 なお、「PC-98NX」世代のマシンには、このVSC-88が標準搭載されていて、なおかつMMXに対応していたバージョンを搭載していたので、CPU負荷が低かった。そんなわけで、ソフトウェアMIDIを快適に再生するために、MMX Pentiumも欲しかった。V12には最終的にアイ・オー・データ機器の「PK-MXP233/98」を載せたが、Libretto ff 1100Vは、それよりも高速なCPUを搭載しているとはなかなか感慨深い。ちなみに、MMX Pentiumにパワーアップしたものの、結局ソフトウェアシンセサイザーを買う前にDOS/V環境に移行し、YMF724を使っていた。

MIDIのブーム再び

 余談が続くが、2015年ちょっとした“MIDIルネサンス”が起きた年ではないかと思う。その代表はやはりローランドのソフトウェアシンセサイザー「SOUND Canvas for iOS」の登場だが、iPad向けのMiseluのBluetooth MIDIキーボード「C.24」など、話題になるハードウェアも登場している。

 ヤマハも、MIDIの良さを分かっている。ヤマハ謹製のMIDI再生ソフト「ミッドラジオプレーヤ」は、今でも生きており、最新版の7.2.1は、Windows Vista/7/8対応版のほか、Windows 98/Me/2000/XP対応版も用意されている。そして、ヤマハの楽譜サービス「ぷりんと楽譜」、音楽配信サービス「ミュージックデータショップ」などで本ソフトが利用されている。

 まあ、今時Libretto ff 1100Vでこれらのサイトにアクセスして音楽をダウンロードして楽しむというのは、セキュリティの観点からあまり現実ではないのだが、できるかできないかと聞かれれば“できる”わけである。

 とは言え、本機でネットに直接接続しないにしても、MIDIならUSBメモリやCFカードで手っ取り早くデータが転送できるので、しばらくはネット上でフリーのMIDIデータを探しながら、本機でじっくりそれを楽しもうと思った次第だ。人類はせっかくこういった資産を創造しているわけだから、永遠と次世代に受け継ぎたいものである。

【表】購入と復活にかかった費用(送料/税込み)
Libretto ff 1100V 0円
ACアダプタ「PA2501U」 1,500円
合計 1,500円

(劉 尭)