震災時、ツイッターを使う人へのお願い



 まずは東北地方太平洋沖地震が3月11日に発生し、被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。

 現在、震災報道をTV番組で見ながら、PCやスマートフォンを使って情報を集めている方が多いと思う。特にツイッターを使っての情報収集を、この震災をきっかけに始めたという方も、少なくないだろう。筆者のツイッターアカウント(@rokuzouhonda)では、日常的な話もしながらも、解る範囲でいくつかの情報を発信したり、他者の発信する内容を再発信(リツイート)したりしていたところ、この週末で300人もフォロワーが増えた。

 この週末は多数の異例が続いた事もあり、ツイッターなどソーシャルネットワーク(SNS)のアクセスが爆発。SNSの良いところと、悪い部分の両方の顕在化を強く感じた。と同時に、SNSの使い方について考えるところも大いにあった。

 特に利用者の自由度が高いツイッターの場合、使い方次第、捉え方次第で良くも悪くも大きな影響が出る場合がある。この震災時に本格的にツイッターを使い始めた方は、いくつか最低限覚えておいた方が良いことがある。

●「RT」を自分で止めることはできない

 いまさら本誌読者に対してツイッターについて詳しい説明は不要だろう。

 ツイッターの面白さは140字という限られた文字数の中で、工夫をしながらコミュニケーションを取れる事だ。ただ、機能が少なく文字の組み合わせでシンプルに意図を伝えるツイッターの特性がマイナスに働く場合もある。

 中でもリツイート(RT)の使い方は、ツイッターを毒にも薬にもする。その影響力の大きさは、自分の想像を遙かに超えている場合がある。

 他人のつぶやきを自分のアカウントから発信し直すリツイートもその1つで、これがツイッターの公式機能として採用されるまでの間は、ユーザー自身が誰かのつぶやきを引用するための、単なる記述ルールにしか過ぎなかった。

 たとえば、「これからインプレスに向けて出発」というつぶやきに

気をつけて!RT @rokuzouhonda: これからインプレスに向けて出発

といったように使う。あるいはコメントを付ける場合は「QT」(Quote:引用)と表現する場合もあるが、基本は同じだ。これを「コメント付きリツイート」「非公式リツイート」という。非公式があれば公式もあるが、公式リツイートは自分のコメントを入れる事ができないため、非公式を使う事も少なくない。

 ただ、非公式リツイートはしばしば問題を引き起こす。特に災害時は、不完全な情報が一人歩きして戻ってこない事がある。非公式リツイートが一種のチェーンメールのようになり、注意喚起のために発信した情報が口伝で拡がってしまい収拾がつかなくなる。

 また非公式リツイートは文字数制限を回避するため、中継するユーザーが内容を編集し、言葉のニュアンスや重要な情報が欠落している場合がある事も考慮しておかなければならない。(可能性としては)悪意やおもしろ半分の気持ちから、RTするメッセージ改変できることも頭の中に入れておくべきだ。

 このため、重要と思われる情報を発見した場合は、迷わず公式リツイートをしよう。公式RTには次のような特性がある。

・発言元が誰なのか判別できる
・発言元が間違いに気付いて発言を削除した場合、リツイート先からも見えなくなる
・発言内容の改変が仕組み上できない
・元発言を短縮する必要がない
・同じツイートをフォローしているユーザーが何度リツイートしても1度しか表示されない(追加)
・何度リツイートされても、公式Webページでの検索にヒットするのは1つだけ(追加)

【15日9時20分追記】
公式RTの特徴として下の2項目を追加しました。【17日16時50分追記】リツイートの検索結果が1つしかヒットしないのは、公式Webページのみで、クライアントによっては挙動が異なるため、その旨表現を修正しました。

 ほとんどのツイッター用サービスやクライアントソフトは公式RTに対応しているが、一部は対応しているものの、設定変更しない限り公式リツイートにならないものがあるようだ。中でも代表的なものが日本で人気の高いHootsuiteというサービス。基本設定で「公式RT」に必ずチェックを入れておこう。

 するとHootsuiteでリツイートする際、リツイートするのか、あるいは編集するのか(つまり非公式リツイートにするのか)を選択できるようになる。

 今回のような大災害だけでなく、多くの人が興味を持っている話題では、情報が錯綜して信頼感のある人が、信頼に足ると考えられる情報を発するも、結果的に間違っていた、あるいは情報そのものの精度が低かったので発言元を消すという事があり得る。

 「自分はフォロワーが少ないからたいした影響はない」と思っていても、リツイートの爆発はいつ起こるか分からない。フォロワーのフォロワー、あるいはまたそのフォロワー。どこかにフォロー数の多い人がいると、その瞬間から大きく広まっていく。非公式リツイートは一人歩きし始めると、もう誰も止めることはできない。

 自分自身で非公式リツイートを使わない。そして非公式リツイートで流れてきた情報に関しては、その背景をきちんと確認するといった自己防衛してほしい。

●緊張時には確認が十分にされていないと思うべし

 ツイッターを使い慣れた人ならば、その発言の信頼性を十分に吟味するクセがついていると思う。よく筆者は「TLは嘘をつかない」という話をする。TLとはタイムラインで、時間ごとのツイッター発言の列だ。たとえば、ある人の発言1つだけを見ても、その人がどんな人かは想像できない。しかし、TLを少し追いかけてみると、人となりが出てくる。時間軸が変化していく中で、何かを演じようとしても、無理があるからだ。

 もちろん、その人がどのぐらいフォローされているのか、どんな人からフォローされているのかなども参考になるかもしれない(あくまで参考。相互フォローなどのコミュニティもあるのでフォロー数の多寡と人物の信頼感は必ずしも比例しない)。

 少なくとも筆者なら、重要な情報が流れてきた時に、その発言元がどんな人かを軽く確認してから、その発言内容を評価する。ただ、緊張時や緊急時には、そうした確認ができていないケースもあると考えるべきだ。

 上記の非公式リツイートと似たケースだが、他の人が流した情報源へのURLを、元情報をリツイートするのではなくブラウザからコピーしたURLを、自分の発言に貼り付けて発言しているケースもある。こちらも非公式RTと同じ理由で、緊急時には害となる可能性があるので元発言をリツイートすべきだろう。「まるで元発言主のように見える」という点では、むしろこちらの方が害が大きいとも言える。

 さて、このような事を踏まえた上で、自分自身がRTに気をつけたとしても、もしかすると不十分かもしれない。たとえば前後の文脈の中で、単なる冗談で発言した事が、1つの発言のみ引用されて一人歩きする場合がある。

 こうした場合、たいていは気付いた時には遅いため、無用に不安な気持ちを表に出さない努力もしたい。たとえば、今回の震災では福島第一原発に関連して不安を煽る発言がチェーンRT化しているのを何度も目撃している。

 まだ問題の確認、顕在化がされる前から、「これはおかしい、○○なはずだ」、「そんなことはないはずだ」、「これはどう見たって異常だろう」、「○○なんだから、もうダメだよな」といった発言が流れてくる事がある。ただ、こうした発言の多くは根拠がないと考えるべきだ。

 ツイッターは気軽に発言できる分、思わず気持ちが出てしまう事がある。これは筆者自身、反省すべき点でもあるのだが、単なる自分の気持ちを表現しただけの言葉が、確定情報として流れる場合もあった。自戒を込めるとともに、そうした発言はリツイートしないという気持ちも必要だと思う。

●リツイート依頼よりハッシュタグを

 さて、もう1つツイッターの話題。

 この週末は何度も「RTしてください」、「拡散してください」との悲痛なメッセージが直接依頼の形で飛んできた。筆者のフォロワーはせいぜい5,800人程度だが、数万人のフォロワーがいる著名人のところには多数のメッセージが届いていると思う。

 内容をよく見て、時間に余裕があるならば発言者のTLやプロフィールをチェックし、さらに余裕があるならば発言内容に関してインターネットで情報を検索してからリツイートをしているが、個人での対応には限界もある。可能な限り時間を割いて処理をしている人がほとんどだが、依頼数やそのときの疲れなどによって処理が滞ったり、チェックが甘くなるといったことは必ず起きる。

 急いで何かの情報を伝えたいのであれば、影響力のある人にリツイートを依頼するよりもハッシュタグ(#で始まる検索用タグ)を付けて訴えた方が効果的だ。特に震災に関しては、多くの人が興味を持って注視している。

 ツイッター上では公式なハッシュタグとして、以下が定義されているので、目的に合わせてハッシュタグを付加して発言すれば同種の情報を発信できる。もちろん、情報を欲しい側は該当ハッシュタグで情報に注目しよう。

#j_j_helpme (救助要請)
#jishin #jisin (地震
)
#earthquake #eqjp (地震)
#tsunami (津波)
#hinan (避難)
#anpi (安否)

 なお、多くの人がご存じと思うが、震災発生時から「#prayforjapan」というハッシュタグが使われた。世界中から日本への祈りが行なわれている様子を見る事ができる。今でこそ落ち着いているが、震災のニュースが伝わった当初は、毎秒20発言以上の凄まじいペースでメッセージが流れ、思わず涙をこぼしてしまった。安らぎを求めたい場合には検索してみるといい。

●停電時のモバイルWiMAX接続

 さて、関東地区は大規模な輪番制の計画停電が最低でも2カ月程度は行なわれる見込みのようだ。これによる交通の寸断も大きな問題だが、停電地域では情報がラジオや携帯型TVなどに限定されてしまい、特に大きな余震がある時などは大変に不安だ。

 停電時に有線のインターネット接続回線は活きているので、無停電電源装置(UPS)を個人で所有している方ならば、末端のモデムと無線LANルータをUPSにつないでおき、PCやスマートフォンなどをバッテリで利用すればブロードバンド接続を確保できるという(筆者はUPSを所有していないので未確認)から、挑戦してみる価値ありだ。

 できれば近所、あるいは同じ集合住宅の中で無線LANを電波が届く範囲で共有できればベストだろう。

 またモバイルWiMAXについても情報を集めてみた。モバイルWiMAXに関しては、以前に停電すると使えなくなるという情報を頂いていたため、バックアップ電源がないと考えていた。しかし、実際にはバックアップ電源は存在するようだ。

 UQコミュニケーションズの公式コメントは「つながりにくくなる場合がある」というもの。何人かに話を伺ってみたが、これ以上の確定的な情報は言えないので理解してほしいとの事だった。現在、同社は震災による緊急障害対策に追われており、急な停電対策が追いついていないのかもしれない。

 ただし、非公式な情報だが「つながりにくくはなるが、自分の方が移動すれば繋ぐこともできる」そうだ。バックアップ電源を持つ基地局と持たない基地局が混在しているのか、あるいはバックアップ電源時に電波出力が制限されるのか、どちらかだとは思うが、原因は明らかではない。

 個人的にテストするために出かけてみようとも思っていたのだが、筆者が済むエリア周辺では計画停電が行なわれなかったため、現時点ではどの程度繋がりにくのかはわからない。

 とはいえ、停電時には非常に有用と思われるので、ユーザーはモバイルWiMAXルーターやモバイルWiMAX内蔵PCを持ってインターネットが繋がる場所を探してみるといいかもしれない。

●最後に

 今回の震災でのインターネット上のさまざまな出来事は、とてもではないが、ここですべてを書ききれない。

 IT関連の動きでは、ツイッター上でマイクロソフトWindows Azureのエンジニアやマーケティング担当者が連携し、通常は手動で行なう無償お試しIDの発行を、被災者救援用IDを入力すると即時発行したり、Azureで情報発信を行ないたい人のためにテクニカルサポートを行ない始めた。ツイッターのハッシュタグ「#azurejp」をチェックして欲しい。

 それ以外にも多数の事業者が無償でのホスティングを提供しているので、Internet Watchの該当記事を見て欲しい。

 また震災直後から、筆者のようなテクノロジ系ジャーナリスト(あるいは電機製品が好きな人)ならたくさん持っている、家電量販店系のポイントを寄付できないか? とツイッターなどで発言していたのだが、週末にはいくつかのポイントシステムが対応した。他社サイトではあるが、こちらの神尾寿氏の記事がよくまとまっている。

 ただし、家電量販店にまだは拡がっていないようだ。ヤマダ電機、ヨドバシカメラ、ビックカメラといった販売店も、首都圏の大型店舗売上げが一時的に落ち込むことが予想されることから厳しいとは思うが、寄付対応してくれれば、貢献したいという人もいるはず。

 また、個人的にも微力ながら、指定した電子書籍の印税を一定割合、一定期間、寄付するプロジェクトを開始している。

 まだ詳細な枠組みは決まっていないが、電子書籍の流通と交渉し、著者が申し出た場合に一定条件でお金をプールし、寄付を行なう仕組みを作りたいと考えている。すでにソニー様、およびpaperboy&co.様より協力の約束をいただいた。震災明け月曜日で電車通勤が困難な状況のため、まだ連絡が十分にできてないが、一時的なものではなく継続的に細く長く支援金を捻出する仕組みとして実現したいと考えているので、興味のある方はhttp://www.facebook.com/savej.ebooksで意見をいただけると幸いだ。

 また、震災関連情報として、こちらのサイトが非常によくまとまっているので、ぜひ紹介しておきたい。

 孤立している被災者の元に支援が、少しでも早く行き届くことを祈っています。

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(2011年 3月 15日)

[Text by本田 雅一]