森山和道の「ヒトと機械の境界面」

獣害対策や放射線モニタリング、PM2.5対策もロボットで!?

〜早稲田大学高西研が「自律移動型環境モニタリングロボット」を開発

自律移動型環境モニタリングロボット

 早稲田大学理工学術院 高西淳夫研究室と株式会社JAPAN ROBOTECHは8月22日、共同で「自律移動型環境モニタリングロボット」を開発し、記者発表と屋内外でのデモンストレーションを行なった。

 これは、太陽電池でバッテリを充電しながら自動探索を継続できる車輪移動型の屋外用小型ロボット。Android 4.0のスマートフォンを搭載し、各種センサーで収集した情報を3G/LTE回線経由でGoogleドライブに保存することができる。スマートフォン経由で遠隔操作もできる。

 サイズは250×360×200mm(幅×奥行き×高さ)で、重さは5kg。凹凸のある山林でも移動出来るように楕円型脚を使った移動システムを採用。左右合わせて6枚の楕円型車輪があるが軽量化と駆動時間を考慮して自由度数は2。ブラシレスDCモーターを搭載している。登坂性能は18度。18cmまでの段差を乗り越えることができる。移動速度は0.1m/sec程度。ボディと足はCFRP製で、完全防水されているとのこと。

 今回の機体に搭載しているスマートフォンはソニーのXperia SX SO-05D。スマートフォン搭載のGPSや内蔵カメラもセンサーとして用いている。本来は内蔵して全方位カメラと接続して運用するが、今回はロボット表面に搭載した形でデモされた。

 ロボットの制御コントローラはロボット教材などを展開しているJAPAN ROBOTECHが主体となって開発した「STM32」。STマイクロエレクトロニクス製のマイコンを搭載し、独自開発のアプリを使って、スマートフォンと協調してロボット制御が行なえる。今後、ボード単体で発売されるかどうかは未定。

 バッテリはリチウムイオンポリマー(11.1V/4,300mAh)。ロボットは日中に太陽電池(12V×200mA×2)で充電を行ない、主に夕刻に移動と計測を行なう。これまでに富士山麓で実証実験を行った。今後は実証実験を進め、地方自治体や環境モニタリング実施団体に導入を働きなかけていく。

楕円の車輪を使って18cmまでの段差を乗り越えられる
実際には機体中央の全方位カメラを使って運用する
今回はデモ用として先端にスマートフォンを搭載
スマートフォンから遠隔操作もできる。
操作画面
【動画】ロボットの動作の様子。旋回動作なども可能
【動画】屋外でのデモの様子
【動画】木の根を乗り越える

ロボットの技術概要

早稲大大学理工学術院 高西研究室講師 石井裕之氏

 技術解説は高西研究室講師の石井裕之氏から行なわれた。1番のポイントは移動と計測を自律的に行なう制御システムと、複数台同時運用を前提としたシステムにあるという。

 ロボットは4つのモードを持っている。基本は自動探索モード。電池の電圧が低下し、太陽電池が発電しているときには充電モードに移行する。発電できないときは休止モードに移行する。ユーザーからの信号が入って来たら遠隔操作モードに移行し、信号がなくなると自動で探索モードに再び移行する。

 なお計測は、移動中はノイズが乗るため、移動してセンサーの値が落ち着いたら計測する仕組みを採っている。夕方に活動するという仕組みも、対象となる動物などが活動を開始するのも夕方なので、夕方に活動するのは理に適っていると考えているという。

 なお搭載されている太陽電池は直射日光下で100mAの発電能力を持つ。ロボット活動時の電力消費量と勘案すると、活動時間は一時間前後、平地での移動距離は、おおよそ200〜500mくらいと想定している。ただ、ロボットの仕組みは基本的にシンプルに作られており、今後、より大型のロボットや小型のロボット、別の機構を採用したものなどのオプション展開も想定しているとのことだ。

ロボットの4つのモード
複数ユーザーがデータにアクセス可能
Google Drive上に写真やデータが保存される
独自開発アプリを搭載
制御基板
主に夕刻に活動
電源システムの概略
搭載予定のセンサー
早稲田大学理工学術院 高西淳夫教授
株式会社JAPAN ROBOTECH 代表取締役 河野孝治氏

 株式会社JAPAN ROBOTECH 代表取締役の河野孝治氏は、このロボットを使ったアプリケーションの可能性を紹介した。例えば野生動物のモニタリング、生態も確認しながら追い払う獣害対策用途のほか、農耕地の放射線モニタリング、学校に備え付けてPM2.5(微小粒子状物質)を計測するなど子供たちの遊び場の安全確認なども検討しているという。河野氏は「作付け前に計測を行なうことで、安心作付けに繋がるのではないか」と語った。

 同社は教材展開してきた会社なので、できれば学校・幼稚園・保育所などの校庭/園庭などでの運用から始めたいと考えているが、いまのところ実際には鳥獣害を調べ、必要に応じて追い払う用途のほうが多そうだという感触を持っているそうだ。追い払うために、青色LEDや超音波などを発する機能を追加することを想定している。

 今後は、県単位での販売代理店を作ろうかと考えており、今年(2013年)末までに販売できる形にして、来年(2014年)夏までにテスト販売を行なう予定。価格はオプションによって変わってくるが、1台あたり15万円から50万円を想定している。

放射線モニタリングロボットとしての用途
光化学スモッグを監視する「環境番犬」としての用途も
一番ニーズがありそうだと見込んでいる獣害対策
事業化体制。県単位で販売代理店を作りたいという
屋外でのデモの様子

 環境モニタリングにしても獣害対策にしても、実際にはこのロボットだけでは何ともならないだろう。むしろ既存のアナログな仕掛けや、次世代の対策システムの中で活動してこそ力を発揮しそうに思えた。最近はセンサーや通信情報技術を組み合わせた設置型のセンサー類は増えている。それらがこのようなロボットなど自律移動体が組み込まれたシステムとして発展していくことを期待したい。

 また、ロボットの場合は、害を防ぐだけではなく、できれば普段から仕事もできるシステムであることを現場からも期待されるのではないだろうか。そちらの方向も期待する。