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チップカンファレンスHot Chipsが開幕

〜NVIDIAのDenverとAMDのSeattleが登場

NVIDIAのDenverとAMDのSeattleが登場するHot Chips

 半導体チップ関連の学会「Hot Chips 26(A Symposium on High Performance Chips)」(8月10〜12日)が、今年も米クパチーノで始まった。新チップや新技術の発表の場として定着したHot Chipsでは、今年も数々の発表が行なわれ、NVIDIAの高性能ARMコア「Denver(デンバー)」とAMDのサーバー向けARM SoC「Seattle(シアトル)」の概要が初公開される。

 コンシューマ向けのチップでの目玉はNVIDIAの64-bit CPUコアDenverだ。NVIDIAがARMからアーキテクチャルライセンスを取得してゼロから開発した高性能CPUコアで、最大7-wayの命令並列性を達成するスーパースカラCPUだ。64-bit版のTegra K1にデュアルコアで搭載されるほか、高性能コンピューティング(HPC)向けの高性能GPUにも搭載されて行くと見られる。Hot Chipsでは、Denverのマイクロアーキテクチャの概要などが明かされる。NVIDIAはこのほか、32-bit版の既存のTegra K1についても、より詳細な内容を公開すると見られる。

1月のCESでNVIDIAが発表したDenver版Tegra K1

 Seattleは、AMD初のARMコアチップ。ARMからIPライセンスを受けた64-bitコア「Cortex-A57」を最大8個搭載する。AMDは今後、ARMとx86/x64の両コアを並列に多くの市場に展開して行く。そうしたAMDのARM戦略の最初の一歩となるSeattleのアーキテクチャ概要がHot Chipsで明らかにされる。AMDはSeattleのお披露目のほか、Kaveriのヘテロジニアス(Heterogeneous:異種混合)コンピューティングフィーチャについても発表を行なう。

 基調講演に登場するのはARMとQualcomm。ARMからは、同社の技術面の顔であるMike Muller氏(Chief Technology Officer, ARM)が登場して、現在のプロセッサの最重要の課題である電力をテーマにしたスピーチを行なう。一方、Qualcommは、同社が現在重要戦略としているIoT(The Internet of Things)についてスピーチする。

TransmetaのDitzel氏が再登場

 Dave Ditzel氏と言えば、一世を風靡したCPUメーカーTransmetaの創業者でCEOだった人物。Ditzel氏は、Transmeta後にIntelに在籍していた間もHot Chipsに聴講者としてほぼ毎年参加していたが、今年はスピーカーとして登場。シリコンダイ積層技術のThruChipのCEOとして講演を行なう。ThruChipは、慶応大学の黒田忠広氏がCTOとして参加しているスタートアップだ。黒田氏は数年前にISSCC(IEEE International Solid-State Circuits Conference)で、積層したダイ間を無線で接続する技術で話題をさらった。ThruChipは同技術の商用化を目指す。

2010年のISSCCで黒田研究室が発表した128層のNANDチップ
2010年のISSCCで黒田研究室が発表した積層チップの通信用コイル

 高性能CPUでは、日本勢でNECが同社の新ベクタプロセッサ「SX-ACE Processor」を発表、富士通もHPC向けの「SPARC64 XIfx」について講演する。Oracleは旧Sun Microsystems系のメニイコアCPUの新製品「SPARC M7」を発表する予定だ。Intelも、ISSCC 2014で技術概要を明かした最新サーバーCPU「Ivy Bridge(アイビーブリッジ)-E」のベースとなっているIvyTown(アイビータウン)について説明を行なう。

IvyTownの派生化

Microsoftがデータセンタソリューションを発表

 変わったところでは、MicrosoftがFPGAコーナーで登場。同社が独自開発したFPGA統合のサーバーボードソリューションについて説明を行なう。Microsoftは前週に開催されたFlash Memory Summitでも、独自開発したデータセンタ用SSDについて講演している。大手データセンタが、独自ハードを開発している現在の潮流が明瞭に見える。FPGAでは双璧のAlteraとXilinxも、それぞれ20nm製品についての発表を行なう。FPGAの重要度が増す潮流を反映している。

 また、今回のHot Chipsでは、ハードウェア実装のアクセラレータチップの発表も目立った。レイトレーシングのハードウェアアクセラレータをスタートアップのSiliconartsと、コンピュータビジョンのMovidiusがそれぞれ発表を行なう。

 プロセッサ以外では、SK Hynixが高性能向けのシリコン貫通ビア(TSV:Through Silicon Via)積層メモリ「HBM(High Bandwidth Memory)」の概要を発表する。HBMについては、最近NVIDIAも別なカンファレンスで発表を行なっており、シングルバンクリフレッシュなど高い性能や、省電力機能について明らかにしている。

チュートリアルはセキュリティとIoT

 Hot Chipsの初日は毎年チュートリアルデイとなっており、その時々のホットな技術にフォーカスしたチュートリアルが行なわれる。Hot Chipsの場合は、このチュートリアルが非常に内容が濃く、情報に富んだものとなっている。この点は、日本の半導体チップ学会Cool Chipsと同様だ。

 今回のHot Chipsのチュートリアルは、ハードウェアセキュリティとIoT(The Internet of Things)。セキュリティではARMやAMD、Intelが登場し、ハードウェアベースのセキュリティ技術の概要について説明を行なった。IoTチュートリアルでは、省電力とコミュニケーションの2つのテーマで、企業ではARMやQualcomm、Texas Instrumentsが登場。チュートリアルの企業の顔ぶれの内、ARMとQualcommは、基調講演と重複する。現在のチップ技術の焦点が、こうした省電力コアの企業にあることがよく分かる。

 Hot Chipsの概要については明日以降にレポートして行く。

Hot Chips会場は例年はスタンフォード大学の講堂だったが、今年はクパチーノのFlint Center for the Performing Artsで開催されている

(後藤 弘茂 (Hiroshige Goto) E-mail