■井上繁樹の最新通信機器事情■
「WiMAXは速いけど建物の中には届きにくい」と言われてきたが、2011年4月に出力アップが認められたことで「弱点」を改善できるようになった。「URoad-Home」は新規定に初めて対応した据え置き型モデルでもある。苦手とされる屋内でどれだけ頑張れるのだろうか? そんな話題も含め本機について詳しく見てみたい。
●11nと100Mbps有線LANに対応したWiMAXルーター「URoad-Home」はIEEE 802.16e-2005に対応したWiMAXルーターだ。UQコミュニケーションズの据え置き型としては最も新しいモデルであり、4月に改訂された総務省令の規定に初めて対応した製品だ。この規定に対応した製品は「WiMAXハイパワー」対応モデルと呼ばれる。
無線LAN部分はIEEE 802.11b/g/nに対応しており、SSIDは2つでそれぞれ5台まで、計10台まで同時に接続できる。無線LAN部分についてもWiMAX同様強化されており(「ハイパワーWi-Fi」と呼ばれる)通信距離が従来機の1.5倍の150mに伸びたとしている。有線LAN部分は10/100Mbps対応で2ポート搭載しており、有線LAN対応機器を同時に2台まで接続できる。つまり、無線LAN部分と有線LAN部分を合わせて12台まで無線及び有線LAN対応機器を接続できる。
壁掛け設置用のジョイントにクレードルを装着して背面から見たところ | 壁掛け設置時のイメージ。縦置き時と比べると本体が時計方向に90度回転する |
着脱可能なクレードルを同梱しており、縦置きと壁掛け設置ができる。大きさはクレードルを装着した状態で縦置き時152×36×126mm(幅×奥行き×高さ)、重量は220g。クレードルを外した状態の大きさは140×36×98.3mm(幅×奥行き×高さ)で重量は190g。電源はACアダプタで本体右側面のMicroUSB端子に接続。消費電力はワットチェッカーで計測したところ4~5Wだった。バッテリ動作は非対応ということで、持ち歩きでの利用はできない。設置場所によって接続速度が変わるWiMAXならではの事情に合わせてか、同梱しているLANケーブルもACアダプタもケーブル長が3mと長めで扱いやすい。なお、マニュアルについてはより詳細な内容のものが製造元のシンセイコーポレーションのWebサイトに公開されている。
接続設定は有線LANを使う場合であればLANケーブルでPCと接続するだけで完了する。無線LANであればアクセスポイントリストから選択してあとは本体背面にプリントされている暗号化キー(ラベルでは「KEY」)を入力するか、WPSボタンを押せばよい。WiMAXの接続設定は特にやることはない。
●「URoad-Home」のベンチマーク結果まずは気になるWiMAXの速度について。測定はPCとURoad-Homeを無線LAN(11n)でつないだ場合と有線LANでつないだ場合の2通りで行なった。さらに、WiMAXは屋内よりも屋外に強いということで比較のために屋内と屋外に設置して測定を行なった。無線LANのセキュリティ機能はいずれもWPA2-PSK(AES)を使用した。
測定には「価格.comのブロードバンドスピードテスト」を使用した。測定結果は以下の表の通り。なお、WiMAXは測定場所や利用者の密集度等環境に左右されるものであり、他の多くのインターネットサービス同様ベストエフォート型のサービスなので数字はあくまで参考値として捉えて欲しい。
【表1】ブロードバンドスピードテスト(屋内) | ||
下り(Mbps) | 上り(Mbps) | |
11n | 7.79 | 1.56 |
100BASE-TX | 9.54 | 1.18 |
【表2】ブロードバンドスピードテスト(屋外) | ||
下り(Mbps) | 上り(Mbps) | |
11n | 14.14 | 1.17 |
100BASE-TX | 15.47 | 1.42 |
測定結果を見ると下り速度は無線より有線の方が概ね速いが、上り速度は速度差が小さく逆転しているケースも見られる。屋外と屋内で比べると、下り速度は屋外の方が圧倒的に速いが、上り速度については差があまりなかった。数字を信用するのであれば、屋内でも不満の無い速度ではあるが、電源や設置場所が確保できるのであれば屋外に置いておきたいところだ。
続いてLANの速度について。こちらはWindows PC(1)の共有フォルダをWindows PC(2)のネットワークドライブとして登録して「CrystalDiskMark 3.0.1」で測定した。PC(1)はURoad-Homeと有線LANでつなぎ、PC(2)は無線LANまたは有線LANでつないで、それぞれ場合で速度を測定した。また、参考データとして、PC(1)をUbuntu 11.11 PCに置き換えて、共有フォルダとFTPの速度(サーバーはPC1)を測定した結果を追加した。結果は以下の表の通り。
【表3】LAN内速度測定結果 | ||
読み込み(Mbps) | 書き込み(Mbps) | |
11n | 52.54 | 63.86 |
11n (Ext4) | 39.66 | 51.8 |
11n (FTP) | 52.62 | 52.62 |
100BASE-TX | 92.84 | 92.58 |
100BASE-TX (Ext4) | 83.3 | 97.84 |
100BASE-TX (FTP) | 96.26 | 95.38 |
11nで接続した時のベンチマーク | 100Mbps有線LANで接続した時のベンチマーク |
測定結果を見るとPC(2)を無線LANでつないだ場合は読み込みが約53Mbpsで書き込みが約64Mbpsだった。また、有線LANでつないだ場合は読み込みが約93Mbpsで書き込みが約93Mbpsだった。有線LANについてはほぼスペック通りだが、無線LANについては約40~64Mbpsで、倍速モードではないにせよやや遅いという印象だ。とは言え、ファイルの大量転送でもやらない限り、普段使いでは困ることはない。LAN内であれば無線でもHD動画のストリーミング再生であろうと余裕をもって行なえる。
●リモートデスクトップ、サーバー公開URoad-Homeには他の多くのルーター製品と同様、ポートフォワーディングやダイナミックDNS、DMZなど、リモートアクセス系の機能を搭載している。つまり、リモートデスクトップやサーバー公開、VPNなども有線で接続している他のルーター製品と同様にできるということになる。WiMAXは高速ではあるが今回ベンチマークをとった環境は上り速度が速かったわけではないのでリモートアクセス系の機能は厳しいようにも思われたがリモートデスクトップとWebサーバーの公開を試してみた。
結論から言うとリモートデスクトップに関しては実用的な速度で使えた。さすがに光回線と同じレベルというわけにはいかないが、不便に感じる程ではなかった。Webサーバーについてもリモートからアクセスして稼働を確認できた。ただし、Webサーバーは画像を大量に使用するページなど重いページは実用的ではないと感じた。Webサーバーを使う場合は環境に合わせてコンテンツの容量を調節した方がよいだろう。
●まとめと感想WiMAXが苦手としてきた屋内の速度についてだが、テストした環境では充分に高速であり快適だった。ただし、屋外と比べると屋内はやはり遅く、最大で2倍近い速度差があった。できれば屋外アンテナや屋外設置用の箱でも欲しいところだ。
無線LANの速度については強化されたとあるが、読み込みについては遅めで出来ればもう少し速度が出て欲しかったところ。とはいえ、速度が不足する場面はあまりないだろう。有線LANの速度については100Mbps対応モデルとしては充分な速度が出ていた。
リモートアクセス系の機能についてだが、下り速度が少ない場合でもリモートデスクトップであれば実用的に使えた。Webサーバーについてもページが重すぎるということがなければ実用になるのが確認できた。
なお、URoad-Homeは据え置き専用モデルでバッテリでの運用に対応していない。URoad-Homeを契約した上で、出先でもWiMAXを使いたいとなると、別途端末と回線契約が必要になる点に注意したい。
(2011年 12月 15日)