Hothotレビュー
ソニー「VAIO Tap 11」
~VAIOシリーズ初の11.6型タブレットPC
(2013/10/21 06:00)
ソニーのVAIOシリーズ秋冬モデルとして、意欲的な製品が多数発表されたが、その中でも注目したい製品の1つが、11.6型液晶搭載タブレットPC「VAIO Tap 11」である。VAIOシリーズでは、これまで、液晶をスライドさせることでタブレットとしても使える2-in-1タイプの「VAIO Duo 11/13」などが登場しているが、キーボードを装備しない、いわゆるピュアタブレットは、VAIOシリーズとして初となる。
ただし、VAIO Tap 11は、単なるタブレットPCではなく、標準で着脱可能な薄型キーボードが付属しており、本体内蔵スタンドにより、単体で立てることも可能なので、ノートPC感覚で使うこともできる。今回は、この期待の新製品を使用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部や仕様などが異なる可能性がある。
Xperiaシリーズと同じデザインコンセプトを採用
VAIO Tap 11は、VAIOシリーズ初のタブレットPCであり、厚さ9.9mmというスリムな筐体に、最新の第4世代Coreプロセッサを搭載していることが魅力だ。店頭モデルは1モデルのみで仕様が固定されているが、直販モデルのVAIOオーナーメードモデルでは、仕様のカスタマイズが可能である。
VAIO Tap 11のVAIOオーナーメードモデルでは、筐体カラーをブラックとホワイトの2色から選択できる(店頭モデルはブラックのみ)。試用機のカラーはホワイトである。ピュアタブレットPCは、筐体デザインの自由度があまり高くなく、どこの製品も似たような印象になるが、VAIO Tap 11では、Android搭載のスマートフォンやタブレットのXperiaシリーズと同じ、オムニバランスデザインというデザインコンセプトを採用している。オムニバランスとは、全方位型という意味で、どの角度から見てもシンプルかつ美しく見えるように設計されている。
本体のサイズは、約304.6×188×9.9mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約780gである。10.1型液晶搭載の「HP ElitePad 900」の重量が約630gであることを考えると、妥当な重量といえるだろう。片手だけで長時間持つにはやや辛いが、膝の上などに置いたり、スタンドを立てて使うには使いやすいサイズだ。
CPUは、開発コードネーム「Haswell」こと、第4世代Coreプロセッサを搭載する。WindowsベースのタブレットPCでは、Atomを搭載する製品も多いが、AtomではCPUパワー不足を感じる場面もある。第4世代Coreプロセッサを搭載するVAIO Tap 11なら、Ultrabookとほぼ同じ感覚で、快適にWindows 8を利用できる。VAIO Tap 11に搭載されているCoreプロセッサは、型番の末尾が「Y」となっている、いわゆる「Yプロセッサ」であり、通常版よりもTDPが低い、タブレット向けの製品である(その分、動作クロックも低くなっている)。
店頭モデルでは、CPUとしてCore i5-4210Yを搭載するが、VAIOオーナーメードモデルでは、Core i7-4510Y、Core i5-4210Y、Core i3-4020Y、Pentium 3560Yの4種類から選べる。メモリは増設不可で、店頭モデルは4GB、VAIOオーダーメードモデルでは2GBまたは4GBとなる。ストレージはSSDで、店頭モデルの容量は128GB、VAIOオーナーメードモデルでは、512GB/256GB/128GBから選択可能だ。なお、プリインストールOSはWindows 8で、8.1へのアップグレードはユーザーが選択して行なうことになる。
今回の試用機は、CPUがPentium 3560Y(1.2GHz)、メモリが2GB、SSDが128GBという仕様であり、最もローエンドな構成になっていることに注意してほしい。この構成での価格は109,800円だ。
本体カバーとしても使える超薄型ワイヤレスキーボードが付属
VAIO Tap 11のウリの1つが、超薄型のワイヤレスキーボードが付属していることだ。このキーボードは、液晶を保護するためのカバーとしても利用できる。本体とキーボードの通信は、2.4GHz帯の無線を利用しており(Bluetoothではない)、あらかじめペアリング済みなので、電源を入れるだけですぐに使える。
キーボードと本体の4隅には磁石が内蔵されており、ぴたっと吸い付く感じで本体と装着する。上下が逆だと反発して、正しい向きでしか装着されないようになっている。キーボードにはバッテリが内蔵されており、本体に装着することで、本体のバッテリからキーボードのバッテリの充電が行なわれる。キーボードは、約3時間でフル充電が可能で、約2週間の動作が可能だ。なお、キーボードを本体に装着すると、自動的にスリープモードに移行するようになっているので、バッテリを無駄に消費する心配はない。
キーは全87キーで、キーピッチは19mm、キーストロークは1.1mmであり、キータッチは良好だ。配列も標準的であり、快適にタイピングが可能である。また、タッチパッドを搭載していることも評価できる。タッチパッドとクリックボタンは独立しているので(左右のクリックボタンは1つのパーツとなっているが)、ドラッグ操作などもやりやすい。タッチパネル搭載で、ペン操作にも対応しているので、タッチパッドが不要な時は、右上のスライドスイッチにより、キーボードのみを有効にし、タッチパッドを無効にすることも可能だ。ワイヤレスキーボードの電波到達距離は3mであり、少し離れた場所からでも問題なく操作できる。
角度を変えて立てかけられるスタンドが便利
一般的なピュアタブレットは、手で持って使う場合は良いが、机の上に置いて使う場合などは、単体で立てて置くことができないので、不便に感じることがある。しかし、VAIO Tap 11は、折りたたみ式のスタンドが底面に搭載されており、単体で立てることができる。角度も115度から130度の間で調整可能であり、見やすい角度で立てられるのは便利だ。特に、付属のワイヤレスキーボードと一緒に使えば、ノートPC感覚で利用することが可能になる。
筆圧検知対応のペンも付属
VAIO Tap 11は、10点同時検出可能なタッチパネルの搭載に加え、ペン(スタイラス)操作にも対応していることも高く評価できる。VAIO Tap 11に付属するペンは、VAIO Duo 13に付属するものと同じで、256段階の筆圧検知に対応する。ペンを本体に取り付けるためのペンホルダーも付属しているので、スマートにペンを持ち歩ける。ただし、VAIO Duo 13とは異なり、ホルダーからペンを取り外したときに、自動的にアプリケーションが起動する機能(ペンウェイク機能)は用意されていない。
厚さ9.9mmの筐体にUSBポートを搭載
液晶として11.6型IPS液晶を採用。解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)で、オプティコントラストパネルと呼ばれる、空気層がないパネルを採用しているため、ペン操作時の視差が少なく、イメージ通りの線を描くことができる。液晶の発色やコントラストについても不満はない。カメラ機能にもこだわっており、前面カメラとして有効画素数92万画素の「Exmor R for PC」CMOSセンサーを、背面カメラとして有効画素数799万画素の「Exmor RS for PC」を搭載する。
インターフェイスは必要最小限ではあるが、USB 3.0とMicro HDMI出力、ヘッドフォン端子などを搭載する。さらに、NFCをサポートするほか、赤外線ポートも備えており、TVやHDDレコーダなどAV機器を操作するリモコンとして使うことも可能だ。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LANとBluetooh 4.0+HSに対応。GPSは非搭載だが、加速度センサーとジャイロセンサー、地磁気センサーを搭載する。
Atom Z2760搭載機の2倍以上のパフォーマンスを実現
バッテリの交換はできないが、公称バッテリ駆動時間は約8時間であり、タブレットPCとしては合格点を付けられる。ACアダプタは新型のもので、DCプラグのコネクタ形状が変更されている。ACアダプタにはUSBポートが用意されており、USB給電が可能なほか、オプションのワイヤレスルーター「VGP-WAR100」をACアダプタと一体化して利用することが可能だ。
参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark03」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark 2.2」である。比較用として、日本HP「ElitePad 900」、パナソニック「Let'snote LX3」、ソニー「VAIO Pro 11」、「VAIO Pro 13 | red edition」のスコアも掲載した。
結果は下の表に示したとおりで、第4世代のCore i7やCore i5を搭載したLet'snote LX3やVAIO Pro 11、VAIO Pro 13 | red editionに比べると、さすがに及ばないが、Atom Z2760を搭載したElitePad 900と比べると、PCMark 7の総合スコアは2倍以上も高い。CPU性能がAtomに比べて高いことはもちろんだが、ストレージのインターフェイスが高速なSATA 6Gbpsになり、SSDの性能を十分に発揮できるようになったことも効いているのであろう。
VAIO Tap 11 | ElitePad 900 | Let'snote LX3 | VAIO Pro 11 | VAIO Pro 13 | red edition | |
---|---|---|---|---|---|
CPU | Pentium 3560Y (1.2GHz) | Atom Z2760 (1.8GHz) | Core i7-4500U (1.8GHz) | Core i5-4200U (1.6GHz) | Core i7-4500U (1.8GHz) |
ビデオチップ | Intel HD Graphics | Power VR SGX 545 | Intel HD Graphics 4400 | Intel HD Graphics 4400 | Intel HD Graphics 4400 |
PCMark05 | |||||
PCMarks | N/A | N/A | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 3709 | 2146 | 9379 | 7864 | 8293 |
Memory Score | 3762 | 2084 | 8599 | 9978 | 6708 |
Graphics Score | 1834 | N/A | 3302 | 2144 | 2722 |
HDD Score | 47532 | 6516 | 56040 | 55122 | 63337 |
PCMark Vantage 64bit | |||||
PCMark Score | 5687 | 未計測 | 15540 | 12881 | 15722 |
Memories Score | 4814 | 未計測 | 8493 | 7106 | 7637 |
TV and Movie Score | Failed | 未計測 | Failed | Failed | Failed |
Gaming Score | 5483 | 未計測 | 11030 | 7025 | 9549 |
Music Score | 7092 | 未計測 | 18077 | 15744 | 18049 |
Communications Score | 6546 | 未計測 | 17972 | 14934 | 19798 |
Productivity Score | 8563 | 未計測 | 21503 | 16209 | 24448 |
HDD Score | 48228 | 未計測 | 47907 | 50784 | 62248 |
PCMark Vantage 32bit | |||||
PCMark Score | 5371 | 未計測 | 14111 | 11944 | 13652 |
Memories Score | 4581 | 未計測 | 8104 | 6994 | 7324 |
TV and Movie Score | Failed | 未計測 | Failed | Failed | Failed |
Gaming Score | 4588 | 未計測 | 9699 | 7554 | 8514 |
Music Score | 6817 | 未計測 | 16543 | 14962 | 16885 |
Communications Score | 5995 | 未計測 | 16043 | 13508 | 17580 |
Productivity Score | 8336 | 未計測 | 19719 | 15325 | 21896 |
HDD Score | 49186 | 未計測 | 48117 | 51157 | 63355 |
PCMark 7 v1.4.0 | |||||
PCMark score | 3006 | 1457 | 5310 | 4016 | 4500 |
Lightweight score | 2102 | 950 | 5789 | 4892 | 3520 |
Productivity score | 1506 | 594 | 4724 | 3835 | 2624 |
Entertainment score | 1934 | 1060 | 3816 | 2645 | 3097 |
Creativity score | 4323 | 3004 | 9986 | 8312 | 8456 |
Computation score | 4513 | 3866 | 16901 | 9970 | 10444 |
System storage score | 5183 | 2983 | 5491 | 5317 | 5466 |
Raw system storage score | 4886 | 未計測 | 6121 | 5679 | 6367 |
3DMark03 | |||||
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 6549 | 2180 | 12856 | 10128 | 13605 |
CPU Score | 1127 | 336 | 2072 | 1655 | 2018 |
3DMark | |||||
Ice Storm | 15527 | 未計測 | 44155 | 27312 | 34294 |
Cloud Gate | 1707 | 未計測 | 4900 | 3461 | 3923 |
Fire Strike | 237 | 未計測 | 721 | 469 | 501 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |||||
HIGH | 3652 | 879 | 7598 | 6732 | 7424 |
LOW | 6062 | 1442 | 10899 | 9938 | 10862 |
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編 | |||||
1280×720ドット 最高品質 | 695 | 未計測 | 1580 | 未計測 | 未計測 |
1280×720ドット 高品質(デスクトップPC) | 716 | 未計測 | 1598 | 未計測 | 未計測 |
1280×720ドット 高品質(ノートPC) | 1031 | 未計測 | 1894 | 未計測 | 未計測 |
1280×720ドット 標準品質(デスクトップPC) | 1445 | 未計測 | 3350 | 未計測 | 未計測 |
1280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 1448 | 未計測 | 3279 | 未計測 | 未計測 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | |||||
DP | 99.9 | 43.47 | 100 | 99.97 | 99.97 |
HP | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 |
SP/LP | 100 | 100 | 100 | 99.97 | 100 |
LLP | 100 | 99.97 | 100 | 100 | 100 |
DP(CPU負荷) | 53 | 31 | 42 | 12 | 42 |
HP(CPU負荷) | 24 | 31 | 34 | 6 | 32 |
SP/LP(CPU負荷) | 16 | 19 | 28 | 4 | 30 |
LLP(CPU負荷) | 6 | 18 | 27 | 3 | 28 |
CrystalDiskMark 2.2 | |||||
シーケンシャルリード | 487.2MB/s | 80.52MB/s | 513.8MB/s | 481.2MB/s | 987.8MB/s |
シーケンシャルライト | 156.4MB/s | 34.60MB/s | 455.1MB/s | 139.3MB/s | 434.1MB/s |
512Kランダムリード | 366.9MB/s | 78.11MB/s | 454.6MB/s | 419.4MB/s | 604MB/s |
512Kランダムライト | 142.3MB/s | 29.31MB/s | 444.9MB/s | 140.7MB/s | 416.2MB/s |
4Kランダムリード | 20.53MB/s | 9.542MB/s | 24.57MB/s | 33.36MB/s | 28.42MB/s |
4Kランダムライト | 54.06MB/s | 2.498MB/s | 56.09MB/s | 99.30MB/s | 69.71MB/s |
BBench | |||||
標準バッテリ | 6時間13分 | 7時間38分 | 19時間16分 | 8時間5分 | 10時間18分 |
標準バッテリ+シートバッテリ | なし | 14時間27分 | なし | 未計測 | 21時間 |
ElitePad 900では、デスクトップアプリを使う場合に、ややレスポンスが遅いと感じることもあったが、VAIO Tap 11では、そうしたストレスはほとんど感じなかった。今回試用したモデルは、一番低いスペックになっていたことを考えると、店頭モデルやCore i7搭載機なら、さらに快適な環境を得られるであろう。
また、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、6時間13分の駆動が可能であった(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)。Atom搭載のElitePad 900に比べると、バッテリ駆動時間はやや短くなっているが、パフォーマンスの差を考えると、納得できる範囲だ。
いつでもどこでもWindowsを使いたい人にお勧め
VAIO Tap 11は、VAIOシリーズ初のピュアタブレットPCであるが、ワイヤレスキーボードの付属や自立できるスタンドの搭載、筆圧検知対応のペンの装備など、よくあるタブレットPCとは一線を画す、ソニーらしい製品に仕上がっている。ペンを使って画像を切り抜ける「VAIO Clip」やノートアプリ「VAIO Paper」などの手書きを活かす独自ソフトも魅力の1つだ。単にWebブラウズをしたり、メールチェックをするだけなら、iPadでもAndroid搭載タブレットでもかまわないが、いつでもどこでも使い慣れたWindowsアプリケーションを使いたいという人には、魅力的な製品であろう。キーボードの使い勝手もなかなか良好なので、ノートPCとして使っても十分に実用的だ。