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ソニー「VAIO Fit 11A」

~ソニー最後のVAIOとなる2-in-1モバイルノートPC

ソニー「VAIO Fit 11A」
発売中

価格:オープンプライス

 ソニーは既報の通り、VAIOのPC事業の譲渡を決定しており、ソニーから発売されるVAIOは、2014年春モデルが最後となる。VAIOの2014年春モデルは2回に分けて発表されており、最後に発表されたのはVAIO Fit 13A/14A/15Aであるが、これは2013年秋モデルとして発表された製品のマイナーチェンジモデルであり、ハードウェアスペックは変わっていない。VAIO Fit 11Aは、2014年春モデルで初めて追加された新シリーズであり(型番からもわかるようにVAIO Fit Aシリーズのバリエーションモデルであるが)、最初の製品がそのままソニーからの最終製品となってしまうという、やや不運なモデルでもある。VAIO Fit Aシリーズは、天板中央にラバー製ヒンジが用意されており、中央から液晶を回転させることでタブレットモードになることが特徴だ。

 今回、ソニーの最後のVAIOと言えるVAIO Fit 11Aを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。ただし、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部や仕様、パフォーマンスなどが異なる可能性がある。

VAIO Fit Aシリーズで最もボディが小さく、軽い

 VAIO Fit 11Aは、11.6型液晶を搭載したモバイルノートPCであり、一見普通のクラムシェル型ノートPCに見えるが、天板の中央にラバー製ヒンジが搭載されており、天板の中央を軸として液晶を180度回転できるようになっており、液晶を回転させてキーボードの上に折り畳むことで、タブレットとして利用できることが特徴だ。本体のサイズは、約285×198×16.5~19mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.28kgである。2-in-1モバイルノートPCとしては軽く、気軽に携帯できる。店頭モデルは1モデルで、ボディカラーはシルバーのみだが、VAIOオーナーメードモデルでは、シルバーのほかブラックやピンクも選べる。試用機のボディカラーはピンクだったが、派手すぎず、落ち着いた上品な色合いに好感を持った。

VAIO Fit 11Aの上面。天板中央に入っている横のラインがラバー製ヒンジである
VAIO Fit 11Aの底面。フラットですっきりしている。メモリ増設やバッテリ交換はできない
試用機の重量は、実測で1,204gであった

CPUとしてBay Trailを搭載

試用機のデバイスマネージャーを開いたところ。CPUはクアッドコアである

 VAIO Fit 11Aは、兄貴分となるVAIO Fit 13A/14A/15Aとは、搭載CPUが異なっており、店頭モデルはCeleron N2920(1.86GHz)を、VAIOオーナーメードモデルでは、Celeron N2920またはPentium N3520(2.16GHz)を搭載する。

 Celeron N2920およびPentium N3520は、いわゆるCoreシリーズではなく、開発コードネームBay Trailと呼ばれていた製品であり、アーキテクチャは8型Windowsタブレットに搭載されているAtom Z3740などと同じ系列だ。ただし、タブレット向けのBay Trail-Tは、ストレージ用インターフェイスがeMMCであるのに対し、本製品のBay Trail-MはSATA 6Gbpsに対応しており、速度面で有利だ。Coreシリーズの下位に位置するが、クアッドコアCPUであり、最大4スレッドの同時実行が可能なので、一般的なアプリケーションを利用するには十分なパフォーマンスである。

 メモリ容量は店頭モデルが4GBで、VAIOオーナーメードモデルでは2GB/4GB/8GBから選択できる。ただし、メモリはオンボードで実装されており、2GBモデルや4GBモデルを後から8GBに増設することはできない。ストレージは、店頭モデルが128GB SSD、VAIOオーナーメードモデルが128GB SSDまたは256GB SSDとなる。今回の試用機は、CPUがCeleron N2920、メモリが4GB、ストレージが128GB SSDという構成であった。

3種類のモードで利用できる

 VAIO Fit 11Aは、天板中央に用意されているラバー製ヒンジによって、いわゆるクラムシェル型ノートPCとして利用できるキーボードモードと、液晶を180度天板の中央で回転させてキーボードの上に折り畳んで使うタブレットモード、さらに液晶を180度天板の中央で回転させた状態で、液晶側を手前にして利用するビューモードの3種類のモードで利用できることが特徴だ。

 いわゆる2-in-1ノートPCであるが、一見普通のノートPCに見え、デザイン的にも理にかなっている。天板中央のヒンジにはロック機構が用意されており、キーボード奥のディスプレイロックスイッチによって、ロック状態とリリース状態を切り替えられる。変形させたくないときは、ロック状態にしておけば、天板中央のヒンジは動かない。

 2-in-1ノートPCでは、レノボの「IdeaPad Yoga」のように360度回転ヒンジを採用した製品も多いが、この種の製品は、タブレットモード時に裏側にキーボードが剥き出しになってしまうという欠点がある。VAIO Fit 11Aならキーボードが裏側にこないので持った感覚も心地よい。

天板中央のヒンジはこのように回転する
キーボード奥には、ディスプレイロックスイッチが用意されている。スイッチを左にスライドさせることで、天板中央のヒンジのロックが外れ、モードチェンジが可能になる
タブレットモードに変形させたところ
【動画】キーボードモードからタブレットモードに変形させ、またキーボードモードに戻す様子

視野角の広いIPS液晶を採用

 キーボードは全87キーで、キーピッチは約16.95mm、キーストロークは約1.35mmである。キー配列も標準的であり、キータッチも良好だ。店頭モデルはキーボードバックライトを搭載していないが、VAIOオーナーメードモデルでは、バックライト付きと無しを選択可能だ。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドを搭載している。Ultrabookではよく見られる、パッドとクリックボタンが一体化したタイプのタッチパッドだが、パッドの面積が広く、操作しやすい。

 液晶は11.6型で、解像度は1,920×1,080ドットのフルHDである。IPS液晶を採用しているため、視野角が広く、斜めから見ても色の変化が少ない。液晶はタッチパネル対応で、オプションのデジタイザースタイラスペンを利用すれば、ペンによる手書き入力にも対応する(VAIOオーナーメードモデルでは、デジタイザースタイラスペンも同時購入可能)。

 カメラ機能としては、液晶上部に有効画素数92万画素の「Exmor R for PC」CMOSセンサーを、底面に有効画素数799万画素の「Exmor RS for PC」CMOSセンサーを搭載しており、静止画や動画の撮影が可能だ。

キーボードは全87キーで、キーピッチは約16.95mm、キーストロークは約1.35mmである。配列も標準的だ。店頭モデルのキーボードはバックライト無しだが、VAIOオーナーメードモデルでは、バックライト有りも選択できる
ポインティングデバイスとしては、タッチパッドが搭載されている
液晶は11.6型で、解像度は1,920×1,080ドットのフルHDである。IPS液晶を採用しているため、視野角が広く、斜めから見ても色の変化が少ない
液晶上部に有効画素数92万画素の「Exmor R for PC」CMOSセンサーを搭載する
底面に有効画素数799万画素の「Exmor RS for PC」CMOSセンサーを搭載する

NFCや各種センサーを搭載

 インターフェイスとしては、USB 3.0×2(うち1つは電源オフでも給電が可能)とHDMI出力、ヘッドフォン端子を備えているほか、SDカードスロットも用意されている。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANとBluetooth 4.0+HSをサポートするほか、NFCもサポート。加速度センサーやジャイロセンサー、地磁気センサーも搭載する。インターフェイスも、必要にして十分なものを搭載しているといえる。

 バッテリの交換はできないが、公称バッテリ駆動時間は約8時間とされている。実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、5時間15分という結果になった。Ultrabookとしては、標準的な駆動時間といえるだろう。ACアダプタは、USBポートを備えた新型のもので、PCへの給電とUSB給電を同時に行なうことができる。ACアダプタは、コンパクトで軽く、携帯性も優秀だ。また、オプションのワイヤレスルーター「VGP-WAR100」をACアダプタと一体化して使うこともできる。

右側面には、USB 3.0×2とHDMI出力、ヘッドフォン端子が用意されている
右側面の端子部分のアップ
左側面には、SDカードスロットが用意されている
左側面のSDカードスロット部のアップ
底面手前にはNFCが用意されている
背面には、音量調整ボタンが用意されている
背面の音量調整ボタン部分のアップ
ACアダプタは、コンパクトで軽く携帯性に優れている。USBポートを備えており、PCへの給電とUSB給電を同時に行なえる
ACアダプタの重量は、実測で210gであった

Core i搭載Ultrabookより性能は低いが、体感速度は十分

 参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「CrystalDiskMark 3.0.3a」、「CrystalDiskMark 2.2」である。比較用に、レノボ・ジャパン「新しいThinkPad X1 Carbon」、レノボ・ジャパン「Miix 2 8」、ソニー「VAIO Tap 11」、ソニー「VAIO Pro 11」、パナソニック「Let'snote LX3」のスコアも掲載した。

VAIO Fit 11A新しいThinkPad X1 CarbonMiix 2 8VAIO Tap 11VAIO Pro 11Let'snote LX3
CPUCeleron N2920 (1.86GHz)Core i7-4600U (2.1GHz)Atom Z3740 (1.33GHz)Pentium 3560Y (1.2GHz)Core i5-4200U (1.6GHz)Core i7-4500U (1.8GHz)
ビデオチップIntel HD GraphicsIntel HD Graphics 4400Intel HD GraphicsIntel HD GraphicsIntel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4400
PCMark05
PCMarksN/AN/AN/AN/AN/AN/A
CPU Score403098023730370978649379
Memory Score363298512890376299788599
Graphics Score12432706N/A183421443302
HDD Score298915627310202475325512256040
PCMark Vantage 64bit
PCMark Score637915934N/A56871288115540
Memories Score41148842N/A481471068493
TV and Movie ScoreFailedFailedN/AFailedFailedFailed
Gaming Score567410957N/A5483702511030
Music Score772413732N/A70921574418077
Communications Score533619675N/A65461493417972
Productivity Score766919615N/A85631620921503
HDD Score2954750926N/A482285078447907
PCMark Vantage 32bit
PCMark Score617814618456453711194414111
Memories Score418182442816458169948104
TV and Movie ScoreFailedFailedFailedFailedFailedFailed
Gaming Score544592693951458875549699
Music Score726715706539468171496216543
Communications Score501717806520259951350816043
Productivity Score707817590379083361532519719
HDD Score293264666910123491865115748117
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score282152942476300640165310
Lightweight score172936321402210248925789
Productivity score112226951010150638354724
Entertainment score197138241692193426453816
Creativity score4101100064460432383129986
Computation score51931844356284513997016901
System storage score481253393792518353175491
Raw system storage score338253441319488656796121
3DMark
Ice Storm175524267216167155272731244155
Cloud Gate142245221240170734614900
Fire Strike計測不可604計測不可237469721
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
1,280×720ドット 最高品質4841621448695未計測1580
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC)4891635440716未計測1598
1,280×720ドット 高品質(ノートPC)85923147921031未計測1894
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)1292347111581445未計測3350
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)1290347310671448未計測3279
CrsytalDiskMark 3.0.3a
シーケンシャルリード272.2MB/s510.5MB/s未計測未計測未計測未計測
シーケンシャルライト130.2MB/s252.2MB/s未計測未計測未計測未計測
512Kランダムリード246.1MB/s427.8MB/s未計測未計測未計測未計測
512Kランダムライト124.6MB/s250.1MB/s未計測未計測未計測未計測
4Kランダムリード23.52MB/s31.42MB/s未計測未計測未計測未計測
4Kランダムライト42.99MB/s102.5MB/s未計測未計測未計測未計測
4K QD32ランダムリード90.14MB/s382.9MB/s未計測未計測未計測未計測
4K QD32ランダムライト84.96MB/s224.4MB/s未計測未計測未計測未計測
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード271.8MB/s517.5MB/s91.91MB/s487.2MB/s481.2MB/s513.8MB/s
シーケンシャルライト130.0MB/s253.4MB/s36.76MB/s156.4MB/s139.3MB/s455.1MB/s
512Kランダムリード237.3MB/s432.0MB/s86.19MB/s366.9MB/s419.4MB/s454.6MB/s
512Kランダムライト136.7MB/s228.0MB/s32.79MB/s142.3MB/s140.7MB/s444.9MB/s
4Kランダムリード23.43MB/s32.00MB/s12.57MB/s20.53MB/s33.36MB/s24.57MB/s
4Kランダムライト42.77MB/s100.5MB/s5.095MB/s54.06MB/s99.30MB/s56.09MB/s
BBench
標準バッテリ5時間15分7時間39分9時間43分6時間13分8時間5分19時間16分

 結果は上の表に示した通りであり、CPUのパフォーマンスを計測するPCMark05のCPU Scoreの値は4030と、Core i5やCore i7を搭載したUltrabookの半分以下だが、タブレット向けのPentium 3560Yの3709を上回っている。PCMark VantageやPCMark 7の総合スコアも、Pentium 3560Yとはいい勝負である。3D描画性能はさすがにCore i5やCore i7に比べると大きく見劣りする。ストレージパフォーマンスは、Atom Z3740搭載でeMMCのMiix 2 8に比べるとシーケンシャルリードやシーケンシャルライトは約3倍高速であるが、Core i5やCore i7を採用したSSD搭載機に比べると半分程度となっている。

 ただし、実際の使用感はベンチスコアほどの差はなく、快適に利用できるだけのパフォーマンスは持っていると言えるだろう。

初めて買うPCとしてもお勧めの1台

 VAIO Fit 11Aは、ラバー製ヒンジの採用による独自の変形機構がウリの2-in-1モバイルノートPCであり、ボディがコンパクトで軽いため、気軽に持ち歩けることが特徴だ。ソニー最後のVAIOとなる製品だが、そのことを抜きにしても魅力的な製品である。第4世代Core搭載Ultrabookに比べるとCPU性能は低いが、一般的な利用には十分なパフォーマンスであり、1台でさまざまな用途に対応できるため、学生が初めて買うPCとしてもお勧めだ。

(石井 英男)