Hothotレビュー

GIGABYTE「BRIX GB-XM1-3537」

~NUC似の超小型デスクトップPC

GIGABYTE「BRIX GB-XM1-3537」
発売中

価格:オープンプライス

 昨年(2012年)末にIntelから登場した、超小型PC自作キット「Next Unit of Computing(NUC)」は、本格的なPC性能を備える超小型PCを手軽に自作できることから、登場直後から注目を集め、現在でも高い人気を誇っている。

 その超小型PC自作市場に、新たな製品が登場した。それが、GIGABYTEの「BRIX」シリーズだ。手のひらに乗る超小型筐体に、第3世代CoreプロセッサをベースとするPCシステムを搭載しており、まさにGIGABYTE版NUCと言っていい製品だ。今回、BRIXシリーズ最上位モデル「GB-XM1-3537」を試用する機会を得たので、ハード面を中心に紹介する。実売価格は59,800円前後。

基本仕様はNUCとほぼ同等

 「GB-XM1-3537」は、BRIXシリーズの中で最上位に位置付けられる製品だ。手のひらに余裕で乗るほどのコンパクトな筐体や、第3世代Coreプロセッサの中で、Ultrabookなどで採用されている、TDP 17WのUシリーズプロセッサを採用する点、マザーボードは筐体に取り付け済みで、メモリとストレージを搭載するだけで利用可能となる、いわゆるベアボーンキットになっている点など、基本的な仕様はIntelのNUCとほぼ同じとなっている。

 BRIXシリーズが採用している筐体のサイズは、107.9×114.6×29.9mm(幅×奥行き×高さ)。NUCの筐体はサイズが116.6×120×39mm(同)で、BRIXの方が幅と奥行きがわずかに小さく、高さも9.1mm低くなっている。実際に横に並べてみると、フットプリントはそれほど大きな違いがないように見えるが、高さがかなり違うため、BRIXの方が圧倒的にコンパクトに見える。

 筐体は側面の角が丸みを帯びているものの、天板や底面、側面は平らで、NUCの筐体に比べるとかなり直線的な印象となっている。筐体のカラーはブラックのみとなる。

 本体の設置は、NUC同様に横置きでの利用が基本となっている。側面が平らなため、縦置きでの利用も不可能ではないが、側面部分に吸気用のスリットがあり、放熱効率を考えると縦置きでの利用は控えた方が良さそうだ。なお、NUC同様に、100×100mmまたは75×75mmのVESAマウントに設置できるマウンタが付属しており、液晶背面に取り付けて利用することも可能となっている。

 製品パッケージは、本体の小ささを反映し、非常にコンパクト。製品には、マザーボードが取り付けられた本体と電源となるACアダプタ、VESAマウント対応の専用マウンタ、簡単なマニュアルとドライバCD-ROMが付属する。CPUはマザーボードに装着済みだが、メモリと内蔵ストレージを別途用意する必要があるのは、NUCを含む他のベアボーンキットでも同じだ。なお、NUCでは別途ACアダプタ用の電源ケーブルも用意する必要があるが、BRIXでは電源ケーブルも同梱のため、その必要はない。

BRIXシリーズの筐体。天板は平らで直線的なイメージの筐体となっている。カラーはブラックで、天板部分は光沢感が強い
IntelのNUC(右)との比較。フットプリントは107.9×114.6mm(幅×奥行き)と、NUC筐体と若干サイズが異なっているが、ほぼ同等サイズだ
高さは29.9mmと、NUC筐体より9.1mm低い。NUCも十分に小さいが、横に並べるとBRIXの小ささが際立つ
本体正面。USB 3.0ポートが見える
左側面。側面も平らになっているが、左側面には吸気用のスリットがあるため、横置きでの利用が基本となる
背面。I/Oポートと空冷ファンの排気口がある
右側面。こちらにも吸気用のスリットがある
底面。ゴム足部分のネジを外すと底面カバーが外れ、内部にアクセスできる
BRIXの製品パッケージ。本体の小ささを反映し、製品パッケージも非常にコンパクトだ
パッケージには、BRIX本体と電源のACアダプタ、VESAマウント取り付け用マウンタ、マニュアル、ドライバCD-ROMが付属。写真には写っていないが、ACアダプタ用の電源ケーブルも付属する
このマウンタを利用して、BRIXを液晶背面に取り付けられる。試用機では固定用ネジが付属していなかったが、製品版にはもちろん付属する

Core i7-3537Uをオンボードで搭載

 BRIXでは、サイズが100×105mmの独自仕様マザーボードを採用している。NUCが採用するマザーボードは「Ultra Compact Form Factor(UCFF)」というフォームファクタに準拠するもので、サイズは4×4インチ(101.6×101.6mm)であり、形状はわずかに異なっている。ネジ穴の位置も微妙に異なっており、双方に互換性はない。ただ、メモリスロット、拡張スロット、オンボード搭載のCPUやチップセットの設置場所、外部I/Oコネクタの位置など、構造は非常に似通っており、BRIXのマザーボードは、UCFFをベースに設計されていると考えてよさそうだ。

 マザーボードは、筐体底面側にメインメモリ用のSO-DIMMスロットが2本、拡張スロットは、ハーフサイズのMini PCI Expressスロットが1本、フルサイズのmSATAスロットが1本用意されている。SATAポートは用意されないため、内蔵ストレージはmSATA仕様のSSDのみ搭載可能だ。対応メモリは、DDR3-1333またはDDR3-1600で、最大16GBまで搭載可能。2枚搭載することで、デュアルチャネル動作となる。

 反対側には、CPUとチップセットが実装され、ヒートシンクと空冷ファンが取り付けられている。搭載CPUは、今回試用したGB-XM1-3537ではCore i7-3537Uとなるが、ほかにCore i5-3337U、Core i3-3227U、Celeron 1037U搭載モデルもラインナップされている。チップセットは、Core i7/i5/i3搭載モデルがIntel HM77 Express、Celeron 1037U搭載モデルがIntel NM70 Expressとなる。ちなみに、ヒートシンクと空冷ファンは、NUCに採用されているものと同じものであった。

 基板上の外部I/Oポートは、筐体前面側にUSB 3.0×1ポート、筐体背面側にGigabit Ethernet、USB 3.0、Mini DisplayPort、HDMI、電源コネクタを用意しており、他のBRIXシリーズでもほぼ同じとなっている(Celeron 1037U搭載モデルのみ、前後のUSBポートがともにUSB 2.0となる)。USBポートが前後1ポートずつという点はやや物足りないが、Mini DisplayPortとHDMIを利用した2画面出力に対応している。

 ちなみに、NUCのマザーボードでは、HDMIやUSBポートが基板に対して垂直に取り付けられているのに対し、BRIXのマザーボードでは水平に取り付けられている。この違いが、筐体の高さの違いとなっている。

底面のネジを外してカバーを開けた状態。見た目はNUCの内部構造にかなり近い
BRIXのマザーボード。サイズが100×105mmの独自仕様マザーボードだ
NUCマザーボード(右)との比較。基板サイズやネジ穴の位置が微妙に異なっていることが分かる。ただ、メモリスロットや拡張スロットなど、構造はかなり似ている
メモリは、SO-DIMMスロットを2本備え、DDR3-1333/DDR3-1600を最大16GB搭載可能
拡張スロットは、ハーフサイズのMini PCI ExpressスロットとフルサイズのmSATAスロットが1本ずつ用意される
基板上にはSATAポートはなく、内蔵ストレージはmSATA対応SSDを利用する
基板の裏側には、CPUとチップセットが実装され、ヒートシンクと空冷ファンが取り付けられている
CPUはCore i7-3537U、チップセットはIntel HM77 Expressを採用
ヒートシンクと空冷ファンは、NUCマザーボード(右)に搭載しているものと同じだった
マザーボードの前方側にはUSB 3.0が1ポートある
筐体裏面側には、電源コネクタ、Gigabit Ethernet、USB 3.0×1、Mini DisplayPort、HDMIの各端子がある
BRIXのマザーボードでは、背面のUSBやHDMIポートが横向きに取り付けられているため、NUCマザーボードより高さが抑えられている

無線LANモジュールを標準搭載

 NUCの筐体には無線LAN用のアンテナが搭載され、マニュアルには、対応する無線LANモジュールを装着することで、無線LANに対応するとされている。ただし、NUCは技術基準適合証明の申請がされておらず、日本国内で無線LANモジュールを装着して利用すると電波法違反となる可能性がある。

 それに対しBRIXでは、Mini PCI Expressのハーフスロットに標準で無線LANモジュールが装着され、初期状態で無線LANが利用可能となっている。無線LANモジュールは、IEEE 802.11b/g/n対応のAzureWave製「AW-NE139H」を採用。5GHz帯域に対応しない点は残念だが、標準で無線LANが利用できるという点は、NUCに対する大きな優位点と言えるだろう。

BRIXでは、ハーフサイズのMini PCI Expressスロットに標準で無線LANモジュールが取り付けられている
無線LANモジュールは、IEEE 802.11b/g/n対応のAzureWave製「AW-NE139H」を採用
筐体には無線LAN用のアンテナが取り付けられている

Core i3版NUCより性能は大きく優れる

 では、性能を見ていくことにしよう。テストでは、メインメモリにPC3-12800準拠の4GB DDR3 SDRAM SO-DIMMを2枚と、mSATA仕様のSSDとして、Crucial M500 mSATA SSD 128GBを用意し、Windows 8 Pro 64bitをインストールした。また、比較用として、Core i3-3217Uを搭載するIntelのNUC「DC3217IYE」を用意し、メモリ、SSD、OSを同じ環境にして同じテストを行なった。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 7 v1.4.0」、「PCMark Vantage Build 1.2.0」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Professional Edition v1.1.0」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク ワールド編」の7種類だ。

BRIX GB-XM1-3537NUC DC3217IYE
CPUCore i7-3537U(2.00/3.10GHz)Core i3-3217U(1.80GHz)
チップセットInte HM77 ExpressInte QS77 Express
ビデオチップIntel HD Graphics 4000Intel HD Graphics 4000
メモリPC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×2
ストレージ128GB SSD(Crucial M500 mSATA SSD)128GB SSD(Crucial M500 mSATA SSD)
OSWindows 8 Pro 64bitWindows 8 Pro 64bit
PCMark 7 v1.0.4
PCMark score48623872
Lightweight score51004074
Productivity score42882962
Entertainment score34093030
Creativity score92308022
Computation score1708213435
System storage score49835006
Raw system storage score41514178
PCMark Vantage x64 Build 1.2.0.0
PCMark Suite149279696
Memories Suite84776836
TV and Movies SuiteN/AN/A
Gaming Suite115059599
Music Suite1609011923
Communications Suite169156803
Productivity Suite1895614308
HDD Test Suite4133643576
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark ScoreN/AN/A
CPU Score96135684
Memory Score85185355
Graphics Score26352554
HDD Score3729938708
3DMark Professional Edition v1.1.0
Ice Storm3800332956
Graphics Score3954539700
Physics Score3344020668
Cloud Gate39193409
Graphics Score44874641
Physics Score27161768
Fire Strike506533
Graphics Score552591
Physics Score39952481
3DMark06 Build 1.1.0 0906a
3DMark Score50754859
SM2.0 Score16371647
HDR/SM3.0 Score21242134
CPU Score37062311
Windows エクスペリエンスインデックス
プロセッサ7.16.3
メモリ7.57.2
グラフィックス5.95.7
ゲーム用グラフィックス6.36.3
プライマリハードディスク8.18.1
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】
1,280×720ドット24222487
ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク ワールド編
標準品質・1,280×720ドット・フルスクリーン33933347

 結果を見ると、CPUの違いによる性能差が如実に表れている。CPUコア数とスレッド数は双方とも2コア4スレッドと同じだが、内蔵キャッシュ容量の違いや、Core i7ではTurbo Boostで高負荷時に最大3.1GHzまで動作クロックが上昇するなどの違いがあるためだ。

 ただ、3D描画関連のテストでは、一部Core i3版NUCの方が結果が優れる部分がわずかながら見られる。内蔵GPUは双方ともHD Graphics 4000で、Core i7の方が最大動作周波数が高く、本来ならCore i7搭載のBRIXの方が結果が優れるはず。このような結果になったのは、CPUの放熱が追いついていない可能性が考えられる。発熱の大きいCore i7を採用しつつも、冷却機構が同じという点が影響しているのだろう。

 ちなみに、高負荷時のファンの動作音は、NUCの動作音とほぼ同じ程度。ファンが勢いよく回転している状態では、ファンの動作音や風切り音が耳に届くものの、うるさいと感じるほどではない。また、低負荷時には動作音はほぼ聞こえず、非常に静かだ。

性能重視の超小型PCキットとして有力な製品

 BRIXは、オリジナルマザーボードを採用する、GIGABYTE独自の超小型PC自作キットではあるが、IntelのNUCシリーズと性格は同じで、ハード的な仕様も非常に似通っていることもあって、直接のライバルとなるのは間違いないだろう。

 そういった中で、NUCシリーズにはない、Core i7搭載モデルをラインナップしている点が優位点になるのは間違いない。I/Oポートの豊富さなど、拡張性に関してはNUCが優位な部分もあるが、Celeron搭載モデル以外は全てUSB 3.0を2ポート備え、無線LANとGigabit Ethernetを標準で搭載する点が、拡張性の弱さを十分にカバーしており、使い勝手がNUCに劣ることはない。

 パッと見では、単なるNUC後追いの製品という印象を受けるかもしれないが、競合にない特徴を備えている。特に、今回試用したCore i7-3517U搭載のGB-XM1-3537は、性能重視の超小型PC自作キットとして有力な選択肢になるだろう。NUCシリーズ、BRIXシリーズとも、今後はHaswell搭載モデルの投入が視野に入っているはずで、しばらくは超小型PC自作市場から目が離せそうにない。

(平澤 寿康)