デル「Alienware X51」
~Mini-ITXを採用した省スペースゲーミングPC



デル「Alienware X51」

発売中



 デルから登場した「Alienware X51」は、コンパクトながら高性能を実現したゲーミングPCである。Alienwareは、デルのゲーミングPCブランドであり、ノートPCからデスクトップPCまでのラインナップを誇るが、今回発表されたAlienware X51は、AlienwareシリーズのデスクトップPCの中で、最もコンパクトなことが特徴だ。従来のAlienwareのデスクトップPCは、大型タワーケースを採用した製品ばかりで、設置に場所をとることが欠点であったが、Alienware X51は、家庭用ゲーム機に近いサイズとPCらしからぬデザインを実現しており、テレビ台の下などにも気軽におけることが魅力だ。

●エイリアンのエンブレムや左右側面が光る

 Alienware X51は、独自デザインのコンパクトケースを採用しており、本体サイズは95×318×343mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約5.49kgと、ゲーミングPCとしてはかなり小さく軽い。Alienwareシリーズは、トレードマークとしてエイリアン(異星人)を用いており、本体前面にそのエンブレムが取り付けられている。エンブレムの目にはLEDが仕込まれており、電源を入れると光る。また、本体の左右側面にも三角形の窓のような発光部があり、こちらも動作中に美しく点灯する。エンブレムの目と左右の発光部の発光色は、ユーティリティソフトによって自由にカスタマイズできることも特徴だ(詳しくは後述)。

 本体は縦置きだけでなく、横置きも可能な設計であり、横置き時にもエンブレムの向きが正しくなるように、エンブレムが回転できるようになっているところにも、Alienwareシリーズらしいこだわりが感じられる。

Alienware X51の前面。幅は95mmで、デザインも家庭用ゲーム機に似ている前面下部には、Alienwareシリーズのトレードマークであるエイリアンのエンブレムが装着されている
Alienware X51の左側面。三角形の窓のような発光部が用意されている電源を入れると、エンブレムの目と左右側面の発光部が点灯する
本体を横置きにして設置することもできる横置きの場合、そのままではエイリアンのエンブレムの向きが90度変わってしまうエンブレムは回転できるようになっており、90度回転させることで、横置きでもエンブレムの向きが正しくなる

●Mini-ITXマザーボードとACアダプタの採用でコンパクトな筐体を実現

 Alienware X51はコンパクトな筐体を実現するために、Mini-ITXフォームファクタのマザーボードを採用している。さらに電源ユニットを筐体内に搭載するのではなく、ACアダプタとして外付けにすることで、コンパクトな筐体でも十分な空間を確保している。ACアダプタの採用も、Xbox 360などの家庭用ゲーム機と似た設計といえる。試用機のACアダプタの容量は330Wで、かなり大型である(構成によっては240WのACアダプタが付属する)。

 側板は、固定しているネジを外し、スライドさせることで取り外せる。ビデオカードはライザーカードを介して装着されており、その下にはHDDが搭載されている。筐体がコンパクトなため、拡張性は犠牲になっており、HDDの増設や拡張カードの追加はできない。ファンは前面に60mmファン、CPUクーラーに80mmファンが搭載されている。

「DOS/V POWER REPORT」誌とAlienware X51とのサイズ比較付属のACアダプタ。ACアダプタの重量は約1.4kgで、サイズもかなり大きいACアダプタの出力は19.5V/16.9Aで、330Wクラスだ
ネジを1本外して、スライドさせることで側板を外せる。側板にはLED用ケーブルが付いているので、気をつけて外すこと側板を外したところ。手前にあるのがビデオカードで、ネジを2本外せば取り外せるビデオカードを外すと、PCI Express x16スロットが現れる

●コンパクトなボディにGeForce GTX 555を搭載

 Alienware X51は、コンパクトな筐体に、ゲーミングPCのブランドとして恥じないスペックを詰め込んでいることが魅力だ。Alienware X51では、スタンダード、プレミアム、プラチナの3つのモデルが用意されており、CPUはCore i5-2320またはCore i7-2600、メモリは4GB/6GB/8GB、HDDは1TBという構成になっている。今回の試用機は、Alienware X51 プレミアムで、Core i5-2320と6GBメモリを搭載している。

 光学ドライブとしてはスロットイン方式のDVDスーパーマルチドライブを搭載。ビデオカードに搭載されているGPUは、スタンダードがGeForce GT 545、プレミアムとプラチナがGeForce GTX 555である。GeForce GTX 555は、PCメーカーにのみ出荷されるOEM専用モデルで、CUDA Core数は288基であり、192基のCUDA Coreを搭載するGeForce GTX 550 Tiと、336基のCUDA Coreを搭載するGeForce GTX 560の中間の性能を実現している。具体的なベンチマーク結果については後述するが、最新ゲームでも十分に遊べる(グラフィック設定を最高にすると厳しい場合もあるが)性能だといえる。

ビデオカードは、GeForce GTX 555を搭載したOEM専用品で、ライザーカードを介して接続されているメモリスロットは2基用意されており、最大8GBまで増設が可能だが、メモリの着脱を行なう際には光学ドライブのコネクタを外す必要がある
光学ドライブとしてスロットイン方式のDVDスーパーマルチドライブを搭載。前面にUSB 2.0ポートが2基とマイク入力、ヘッドフォン出力が用意されている背面には、USB 2.0ポートが4基とUSB 3.0ポートが2基、有線LAN、HDMI出力、DVI-I×2、サウンド入出力が用意されている背面の取っ手を引き出すと、リサイクルPCマークやVCIマーク、シリアルナンバーなどを確認できる

●発光ギミックの色を自由にカスタマイズでき、ゲーム起動時の環境の設定も可能

 「Alienwareコマンドセンター」と呼ばれる独自ユーティリティが導入されていることも特徴だ。Alienwareコマンドセンターには、発光ギミックの発光色を変更できる「AlienFX」、パワーマネージメント関係の設定が可能な「AlienFusion」、ゲーム起動時の環境を設定できる「AlienAdrenaline」の3つの機能がある。AlienFXでは、両側面の三角形と前面にあるエンブレムの目の発光色を独立して変えることができるほか、メール着信やアプリケーションの起動によって、発光色を変えることも可能だ。設定できる色のバリエーションも多く、メール着信やアプリケーションの起動に応じて発光色を変えられるのも便利だ。AlienFusionでできる設定は、基本的にWindows 7のパワーマネージメント関係の設定と同じだが、まとめて設定できるので見やすい。AlienAdrenalineは、ゲームごとに起動時の環境を設定できる一種のマクロツールであり、ゲームの起動にあわせてVoIPのチャットツールを起動することなどが可能だ。こうしたゲームプレイに特化したユーティリティが付属することも、Alienwareシリーズならではだ。さらに、Alienをモチーフにした独自の壁紙も多数プリインストールされている。

AlienFXを利用して、発光色を変えているところ
「Alienwareコマンドセンター」には、発光色を変更する「AlienFX」、パワーマネージメント関係の設定が可能な「AlienFusion」、ゲーム起動時の環境を設定できる「AlienAdrenaline」の3つの機能が搭載されている。AlienFXでは、両側面の三角形とエンブレムの目の発光色を独立して自由に変更できるAlienFXでは、起動するアプリケーションにあわせて発光色を変えたり、メール着信で発光色を変えることも可能だAlienFusionでは、パワーマネージメント関係の設定が可能
AiienAdrenalineでは、ゲームタイトルに応じて、起動時の環境を設定できる例えば、ゲーム起動にあわせて、VoIPのチャットツールを起動することも可能だAlienware独自の壁紙がプリインストールされている

●GeForce GTX 555搭載でやや重いゲームも快適に遊べる

 参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」である。

 比較用として、NEC「VALUESTAR N VN770/FS」とエプソンダイレクトの「Endeavor Pro5000」の値も掲載した。

 Ailenware X51VALUESTAR N VN770/FSEndeavor Pro5000
CPUCore i5-2320(3GHz)Core i7-2670QM(2.20GHz)Core i7-2600(3.40GHz)
ビデオチップGeForce GTX 555Intel HD Graphics 3000GeForce GTX 460
PCMark05
PCMarksN/AN/AN/A
CPU Score108571007512666
Memory Score7063759011736
Graphics Score20988490820419
HDD Score6941662448877
PCMark Vantage 64bit
PCMark Score8917749419202
Memories Score6714493412735
TV and Movie Score548554937317
Gaming Score9462635321329
Music Score7236722919655
Communications Score11111996118521
Productivity Score6724446320149
HDD Score4214394338469
PCMark Vantage 32bit
PCMark Score8314720317407
Memories Score6629473412008
TV and Movie Score542454097237
Gaming Score7872572718770
Music Score6899676218964
Communications Score11006994318140
Productivity Score6306417018192
HDD Score4213405639085
PCMark 7
PCMark score26912619未計測
Lightweight score20631967未計測
Productivity score18241556未計測
Creativity score29504942未計測
Entertainment score32132518未計測
Computation score356510892未計測
System storage score16321738未計測
3DMark03
1,024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)557291068256824
CPU Score304018283486
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH9564451311092
LOW11850664812808
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP99.9799.97100
HP99.9799.9799.97
SP/LP10099.9799.97
LLP99.97100100
DP(CPU負荷)1165
HP(CPU負荷)532
SP/LP(CPU負荷)321
LLP(CPU負荷)221
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード122.3MB/s111.0MB/s370.3MB/s
シーケンシャルライト106.2MB/s118.6MB/s205.7MB/s
512Kランダムリード43.14MB/s44.70MB/s316.MB/s
512Kランダムライト82.13MB/s59.40MB/s198.9MB/s
4Kランダムリード0.546MB/s0.610MB/s20.46MB/s
4Kランダムライト1.138MB/s1.217MB/s43.15MB/s
ストリートファイターIVベンチマーク
1,280×720ドット308.62fps未計測未計測
1,920×1,080ドット219.55fps未計測未計測
バイオハザード5ベンチマーク
1,280×720ドット120.4fps未計測134.5fps
1,920×1,080ドット94.5fps未計測95.4fps
S.T.A.L.K.E.R. Call of Pripyat Benchmark
1,280×720ドット:Ultra設定
Day205.1fps未計測未計測
 136.9fps未計測未計測
 59.6fps未計測未計測
Night212.5fps未計測未計測
 131.8fps未計測未計測
 80.1fps未計測未計測
Rain226.8fps未計測未計測
 145.7fps未計測未計測
 73.4fps未計測未計測
SunShafts104.7fps未計測未計測
 75.8fps未計測未計測
 42.6fps未計測未計測
1,920×1,080ドット:Ultra設定
Day130.4fps未計測未計測
 90.3fps未計測未計測
 51.3fps未計測未計測
Night130.8fps未計測未計測
 78.8fps未計測未計測
 48fps未計測未計測
Rain128.1fps未計測未計測
 83.1fps未計測未計測
 45.9fps未計測未計測
SunShafts61fps未計測未計測
 42.9fps未計測未計測
 24.5fps未計測未計測

 PCの総合パフォーマンスを計測するPCMark05のPCMarksの値は10857、同じくPCMark Vantage 64bitのPCMark Scoreの値は8917で、クアッドコアCPUのCore i7-2600とSSDを搭載するEndeavor Pro5000には及ばないが、モバイル向けのクアッドコアCPUのCore i7-2670QMとHDDを搭載するVALUESTAR N VN770/FSよりも高い。PCMark 7の総合スコアであるPCMark scoreの値は2691で、こちらもVALUESTAR N VN770/FSをわずかに上回っている。PCとしての基本性能は、十分だといえるだろう。

 また、Alienware X51は、ミドルレンジ上位クラスのGPUを搭載しているため、3D描画性能が高い。古いベンチなので、最新GPUの性能を計測するには適さないが、3DMark03やFINAL FANTASY XI Official Benchmarkのスコアは、単体GPUを搭載していないVALUESTAR N VN770/FSよりも格段に高い。

 そこで、いくつかゲームでのパフォーマンスを計測してみた。ストリートファイターIVベンチマークの結果は1280×720ドットで308.62fps、1,920×1,080ドットで219.55fps、バイオハザード5ベンチマークの結果は1280×720ドットで120.4fps、1,920×1,080ドットで94.5fpsであり、フルHD解像度でもフレームレートには十分な余裕がある。もう少し負荷の高いゲームベンチマークということで、S.T.A.L.K.E.R. Call of Pripyat Benchmarkを利用してみた。画質をUltraに設定して計測を行なったところ、一番負荷の高い「SunShafts」の平均fpsが、1280×720ドットでは75.8fps、1,920×1,080ドットでも42.9fpsとなり、やや重いゲームでも画質設定を多少下げれば快適に遊べる性能だといえる。

 また、ワットチェッカーを用いて、アイドル時と高負荷時(S.T.A.L.K.E.R. Call of Pripyat Benchmark実行時の最大消費電力)の消費電力を計測したところ、アイドル時は52W、高負荷時は189Wとなった。

●コンパクトなゲーミングPCが欲しい人にお勧め

 Alienware X51は、Mini-ITXフォームファクタの採用によって、コンパクトなボディとゲーミングPCとして十分な性能を両立させていることがウリだ。独特のデザインの筐体や発光ギミックも魅力であり、ゲーム機と一緒に並べても違和感がない。コンパクトなゲーミングPCが欲しいという人はもちろん、リビングの大型テレビに繋いで使うPCとしてもお勧めできる。

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(2012年 3月 12日)

[Text by 石井 英男]