~デュアルコアAtom搭載でパワーアップしたネットブック |
NECは、ネットブック「LaVie Light」シリーズの最新モデルを発表した。そのうち、上位モデルとなる「LaVie Light BL550/CS」は、CPUにデュアルコアCPU「Atom N550」を採用することで、処理能力が大きく向上している。今回、いち早くLaVie Light BL550/CSを試用する機会を得たので、仕様面や使い勝手などを紹介していこう。
●Atom N550採用で動作が快適にデュアルコア仕様のAtom N550を搭載。4スレッドの同時処理が可能で、シングルコアAtom搭載機より動作が快適になった |
「LaVie Light BL550/CS」(以下、BL550/CS)は、従来モデルからさまざまな部分が強化されているが、その中でも最大の強化ポイントとなるのがCPUだ。従来モデルでは、CPUとしてシングルコアのAtom N470が採用されていたが、BL550/CSでは、Atomシリーズの最新モデルとなる、デュアルコアのAtom N550が新たに採用されている。デュアルコア仕様とハイパースレッディング・テクノロジーにより4スレッド同時処理が可能となったことで、全体的な快適度が向上。シングルコアAtom搭載ネットブックでは、OS起動やアプリケーションの起動に時間がかかるなど、さまざまな場面で処理のもたつきを感じることが多かったが、BL550/CSではそういった場面がかなり減少している。もちろん、根本的なCPUの処理能力に差があるため、CULVノート並の快適さとまではいかない。それでも、複数のアプリケーションを同時に利用する場合や、マルチスレッド対応アプリケーションを利用する場合には、かなり快適になったという印象を受ける。
ただし、動作クロックは、Atom N470の1.83GHzに対し、Atom N550では1.50GHzと低下しているため、シングルスレッドのアプリケーションを利用する場合には、逆にやや重くなったと感じる場面もあるだろう。事実、各種アプリケーション単体の動作については、思ったほどの快適さを感じなかったのも事実。そういった意味では、デュアルコアAtomが搭載されているとはいえ、処理能力の向上に対して過剰な期待は抱かず、遅くなりにくいと考えた方がいいかもしれない。
ちなみに、下位モデルの「LaVie Light BL350/C」は、CPUとしてAtom N475が搭載される。動作クロックはAtom N470と同じ1.83GHzだが、対応メモリがPC3-8500 DDR3 SDRAMとなったことで、わずかではあるがパフォーマンス向上が実現されている。
快適度の向上という点では、キーボードが変更されている点も見逃せない部分だ。従来モデルでは、一般的な形状のキーボードが搭載されていたのに対し、BL550/CSではキーとキーの間が離れた、いわゆるアイソレーションタイプのキーボードに変更されている。しかも、キーピッチが従来モデルの約17mmから約19mmへと広がっている。これによって、キー入力の快適度も大きく向上している。Enterキー付近の一部のキーで、ピッチがかなり狭くなっている点は少々気になるが、アルファベットキーは余裕を持ってタイピングが行なえ、A4ノートとほぼ同等の打ちやすさが実現されている。実際に、タイピング時に窮屈さを感じることはほとんどなく、非常に扱いやすい。カタログスペックに現れにくい部分だが、キーボードが変更された点は、CPUの強化とほぼ同等の魅力と言っていいだろう。
パッド式ポインティングデバイスのNXパッドは、従来モデルとほぼ同等のものを搭載。面積も十分ゆったりしており、使用感は申し分ない。
アイソレーションタイプのキーボードを新たに採用。無理な配列もほとんどなく、非常に扱いやすい | キーピッチは約19mm。従来モデルの約17mmから大きく広がり、窮屈さはほとんど感じない |
Enterキー付近のキーピッチがかなり狭くなっている点は少々気になる | ポインティングデバイスのNXパッドは、従来モデルとほぼ同じ仕様で、使い勝手は申し分ない |
●天板にスクラッチリペアを採用
ボディデザインは、見た目こそ従来モデルから大きく変更がないように見えるが、サイズがコンパクトになるなど、ボディは一新されている。フットプリントは、幅253mm×奥行き194.5mmと、幅こそ従来モデルとほぼ同等だが、奥行きが約18.1mm短くなっている。ちなみに、BL550/CSでは、標準で容量5,800mmAhのバッテリ(L)が搭載されているため、ボディ後部がかなり高くなっていると共に、後部にバッテリが飛び出すデザインとなっているが、この点は従来モデルから変わっていない。
重量は、実測で1,213g。従来モデルと比較して140g以上軽くなっている。ボディサイズがコンパクトになった点と合わせ、モバイル性は大きく向上したと考えていい。下位モデルのBL350/CSでは、軽量のバッテリ(M)が搭載されていることもあり、重量はカタログ値で約1kgとさらに軽量となっている。
ところで、LaVieシリーズの中でもモバイル性の強いモデルでは、細かなキズが付いても自然に元の状態に復元する性質を持つ「スクラッチリペア」コーティングが施されているものが多い。ただ、LaVie Lightシリーズは、極限までコストを削減しなければならないこともあり、モバイル性の強い製品ではあるものの、これまでスクラッチリペアが施されることはなかった。しかし、今回登場した新LaVie Lightでは、天板にスクラッチリペアが施されるようになった。しかも、上位モデルのBL550/CSだけでなく、下位モデルのBL350/Cでも採用されている。
深いキズには対応できないものの、カバンからの出し入れや、移動時に他の物とぶつかったり擦れ合ったりして付く細かなキズであれば、10分程度放置しておくだけで、ほぼキズのない元の状態に戻る。鮮やかなカラーリングとともに、光沢感の強い塗装が施されていることもあり、細かなキズでも結構目立つことを考えると、スクラッチリペアが施されるようになった点は大いに歓迎したい。
もう1点、モバイルマシンとして見逃せない点がACアダプタだ。従来モデルに付属していたものと比較して、小型かつ軽量となっているのだ。重量は、電源ケーブル込みで220g(実測値)しかなく、本体との同時携帯も苦にならないだろう。スペックとして現れるポイントではないが、この点もモバイルノートとして大きな魅力と言っていいはずだ。
本体天板部分。鮮やかで光沢感の強いレッドに、格子状の模様がアクセントになっている。また、スクラッチリペアが施され、キズにも強い | フットプリントは、幅253mm×奥行き194.5mm。従来モデルより奥行きが18.1mm短くなった | 重量は、実測で1,213g。従来モデルより140g以上軽くなっており、携帯性が向上している |
本体正面。ラッチレス構造で、すっきりとした印象だ | 左側面。高さは25.7~44.9mm。大容量のバッテリ(L)が標準搭載され、奥がかなり高くなっている |
背面。バッテリが本体下部および後方に大きく飛び出している点は従来モデルと同じだ | 左側面。バッテリによって後部が高くなっているが、本体利用時にはちょうどいい傾斜となる |
標準添付のバッテリ(L)。容量は5,800mAhで、長時間の駆動が可能となっている | 付属のACアダプタは、従来モデルよりもかなりコンパクトとなった | ACアダプタの重量は、電源ケーブル込みで220g(実測値)と軽量だ |
●下位モデルでも1,366×768ドット表示対応の液晶パネルを標準搭載
基本スペックは、CPUが一新されたこともあり若干の変更も見られるが、多くは従来モデルとほぼ同じだ。変更点となるのはメインメモリで、対応メモリがDDR2からDDR3に変わったことで、下位モデルも含め、メインメモリにはPC3-8500 DDR3 SDRAMが搭載されている。容量は、BL550/CSが標準2GB、BL350/CSが標準1GBとなる。
チップセットは、Intel NM10 Express、グラフィック機能はCPU内蔵のIntel GMA 3150と、これらは従来モデル同様。HDD容量も、BL550/CSが320GB、BL350/CSが250GB。無線機能は、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANおよびモバイルWiMAX対応の無線LANモジュールのみが搭載され、Bluetoothは非搭載。このあたりも従来モデル同様となっている。
液晶パネルも、従来モデルと同じ、1,366×768ドット表示に対応する、10.1型ワイド液晶だ。表面は低反射光沢処理が施されたスーパーシャインビュー液晶で、バックライトがLEDとなっている点も従来通り。発色は鮮やかで、表示品質は申し分ない。ただ、低反射とはいえ光沢タイプの液晶なので、外光の映り込みはやや気になる。ちなみに、下位モデルのBL350/CSでも、BL550/CSと同じ、1,336×768ドット表示対応の液晶パネルが標準搭載されており、使い勝手が大きく向上している。
OSは、BL550/CSがWindows 7 Home Premium、BL350/CがWindows 7 Starterとなる。また、BL550/CSには標準でOffice Personal 2010がプリインストールされる(BL350/CSは2年間ライセンス版がプリインストールされる)。
本体正面左には、SDXC対応のSDカードスロットが用意されている | 内蔵HDDは、バッテリスロット部から簡単に取り出すことが可能となっている |
●快適さ重視でネットブックを選びたい人にオススメ
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage (Build 1.0.1 0906a)」「PCMark05 (Build 1.2.0)」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の3種類。比較として、ASUSTeK Computerの「Eee PC T101MT」および「Eee PC 1005HA」の結果を加えてある。
試用機のスペック | |
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CPU | Atom N550(1.50GHz) |
メインメモリ | PC3-8500 DDR3 SDRAM 2GB |
グラフィック機能 | CPU内蔵 Intel GMA 3150 |
HDD | 320GB(WD3200BEVT) |
OS | Windows 7 Home Premium |
結果を見ると、PCMark VantageおよびPCMark05はマルチスレッド処理に最適化されていることもあり、シングルコアAtomよりも優れた結果が得られていることがわかる。冒頭でも紹介したように、確かに複数のアプリケーションを同時に利用する場合など、処理の重さを感じる場面がかなり少なくなり、デュアルコア+ハイパースレッディング・テクノロジーでの4スレッド同時処理に対応したことによる快適度の向上は、十分に体感できるものとなっている。ただ、コアの動作クロックが1.50GHzとやや低いため、アプリケーション単体のパフォーマンスは若干落ちたような印象を受けるのも事実。それは、FF XIVベンチマークの結果がかなり低くなっていることからもわかるはずだ。そのため、もしアプリケーション単体のパフォーマンスを優先させたいのであれば、動作クロックが1.83GHzのAtom N475を搭載する下位モデルのBL350/Cを選択したほうがいいだろう。
LaVie Light BL550/C | Eee PC T101MT | Eee PC 1005HA | |
---|---|---|---|
CPU | Atom N550 (1.50GHz) | Atom N450 (1.66GHz) | Atom N280 (1.66GHz) |
ビデオチップ | Intel GMA 3150 | Intel GMA 3150 | Intel 945 GSE Express |
メモリ | PC3-8500 DDR3 SDRAM 2GB | PC2-5300 DDR2 SDRAM 2GB | PC2-5300 DDR2 SDRAM 1GB |
OS | Windows 7 Home Premium | Windows 7 Home Premium | Windows XP Home Edition SP3 |
PCMark Vantage Build 1.0.1 0906a | |||
PCMark Suite | 1396 | N/A | N/A |
Memories Suite | 467 | N/A | N/A |
TV and Movies Suite | 1332 | N/A | N/A |
Gaming Suite | 655 | N/A | N/A |
Music Suite | 1951 | N/A | N/A |
Communications Suite | 1115 | N/A | N/A |
Productivity Suite | 915 | N/A | N/A |
HDD Test Suite | 2690 | N/A | N/A |
PCMark05 Build 1.2.0 | |||
PCMark Score | 1767 | 1617 | 1647 |
CPU Score | 1665 | 1420 | 1454 |
Memory Score | 2174 | 2419 | 2525 |
Graphics Score | 542 | 528 | 626 |
HDD Score | 3630 | 4933 | 4667 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |||
LOW | 1074 | 1250 | 1537 |
Windowsエクスペリエンスインデックス | |||
プロセッサ | 3.1 | 2.3 | N/A |
メモリ | 4.7 | 4.4 | N/A |
グラフィックス | 2.9 | 3.1 | N/A |
ゲーム用グラフィックス | 3 | 3 | N/A |
プライマリハードディスク | 5.4 | 5.7 | N/A |
次に、バッテリ駆動時間のチェックだ。まず、Windows 7の省電力設定を「省電力」に設定するとともに、バックライト輝度を40%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約6時間39分だった。カタログ値では、約10.1時間とされていることを考えると、やや短いという印象も受けるが、バックライトが最低輝度ではなく、無線LANも有効になっていることを考えると、まずまず満足できるレベルと言っていいだろう。また、Windows 7の省電力設定を「高パフォーマンス」、に設定し、バックライト輝度を100%、無線LANを有効にした状態で、動画ファイル(WMV9、ビットレート1,156kbps、640×480ドット)を連続再生させた場合には、約4時間27分だった。大容量バッテリが標準搭載されているため、フルパワー動作でもなかなかの長時間駆動が可能となっている点は嬉しい。
バッテリ駆動時間 | |
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省電力設定「省電力」、BBench利用時 | 約6時間39分 |
省電力設定「高パフォーマンス」、動画再生時 | 約4時間27分 |
BL550/CSは、デュアルコアのAtom N550を搭載することで、従来までのネットブックと比較して快適度が向上。確かに、コア自体の動作クロックはそれほど高くなく、シングルスレッドの処理能力はやや落ちている。それでも、動作の重さを感じる場面はシングルコアAtom搭載機よりも確実に減っており、デュアルコアAtomの魅力はかなり大きい。スペック面も充実しており、快適に利用できるネットブックとしてオススメしたい。
(2010年 9月 14日)
[Text by 平澤 寿康]