~最軽量約868gのCore i7搭載モバイルノート |
VersaProシリーズは、NECのビジネス向けノートPCのブランドであり、コンシューマ向けノートPCのLaVieシリーズとは異なる製品ラインナップを展開している。VersaProシリーズの中でも、特に携帯性を重視した製品には、UltraLiteというサブブランドが付けられている。今回モデルチェンジが行なわれた「VersaPro UltraLite タイプVC」は、UltraLiteシリーズの主力製品であり、前モデルと筐体は共通だが、中身のアーキテクチャが一新され、性能が大きく向上していることが魅力だ。
●マグネシウムダイカスト製ボディで軽量化を実現VersaPro UltraLite タイプVCの筐体は前モデルと同じで、素材に軽くて丈夫なマグネシウムを採用している。ダイカスト製法により、最薄0.45mm厚まで徹底して薄肉化することで、軽量化を実現。部分的な肉厚化やリブ構造の採用により、強度や剛性も確保している。満員電車での圧迫を想定し、150kgfの面加圧試験や25kgfの点加圧試験をクリアしているほか、76cmの落下テストもクリアしており(すべて非動作時)、安心して持ち歩ける。
筐体のサイズは、283×210×25~29.8mm(幅×奥行き×高さ)とスリムで、天板も底面もフラットなので、カバンなどからの出し入れもスムーズだ。重量は、最軽量時構成で約868gと非常に軽い。今回の試用機は無線LAN機能を搭載していたため、実測では897gであったが、軽いことには変わりがなく、片手でも楽に持ち上げられる重さである。
VersaPro UltraLite タイプVCの上面。ボディカラーはシルバーで、落ち着いた印象を受ける | 「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。フットプリントはほぼ同じだ |
VersaPro UltraLite タイプVCの底面。底面もフラットである | 試用機の重量は実測で897gであった |
●Core i7搭載で大幅に性能が向上
2009年10月に発表された前モデルのVersaPro UltraLite タイプVC VY14A/C-8は、CPUにCore 2 Duo SU9400(1.40GHz)を搭載していたが、新モデルのVersaPro UltraLite タイプVC VY10G/C-Aは、Core i7-620UM(1.06GHz)を搭載している。定格クロックは低くなっているが、Core i7-620UMは、Hyper-ThreadingテクノロジーをサポートしたデュアルコアCPUであるため、4スレッドの同時実行が可能で(Core 2 Duo SU9400は2スレッドの同時実行)、さらにTurboBoostテクノロジーにより、負荷状況やCPUの余裕に応じて最大2.13GHzまでクロックが向上する。そのため、新モデルは前モデルの約1.7倍のパフォーマンスを実現しているとのことだ。チップセットは、Intel QS57 Expressで、メモリはBTOによって1GB/2GB/3GB/5GBから選択可能だ。なお、すべての構成において、1GB分のメモリはオンボードで実装されている。今回の試用機には3GBのメモリが実装されていた。
ストレージは、160GB HDD、320GB HDD、62GB SSDから選べる。容量重視ならHDDを、性能重視ならSSDを選べばよいだろう。試用機には62GB SSDが搭載されていたが、このSSDは性能に定評のある東芝製を採用しており、動作も非常に軽快であった。光学ドライブは搭載していないが、BTOでUSB接続の外付けDVD-ROMドライブまたはDVDスーパーマルチドライブを追加できる。また、在庫限りとのことだが、USB接続の外付けFDDもプラス6,000円で購入できる。
また、OSは、Windows 7 Professional/Windows XP Professional SP3/Windows Vista Business SP1から選べるが、試用機にはWindows 7 Professional(32bit版)がプリインストールされていた。
SO-DIMMスロットは1基しか用意されていないが、オンボードで1GBのメモリを実装しているため、最大5GBまでメモリを増設できる | BTOで追加可能なUSB接続の外付けDVDポータブルドライブ。電源供給用とあわせて2つのUSBポートに接続する |
●ノングレアタイプの液晶を搭載
液晶ディスプレイは、12.1型ワイドで、解像度は1,280×800ドットである。ノングレアタイプの液晶なので、鮮やかさには多少欠けるが、眩しすぎず、外光の映り込みも少ないので、長時間使っていても目への負担が少ない。仕事で使うのに適したパネルだ。また、BTOメニューのディスプレイの項目には、「スクラッチリペア塗装」という選択肢が用意されている。スクラッチリペア塗装を選ぶと価格が18,000円高くなるが、天板の塗装が細かな擦り傷を自動的に修復する仕上げとなる。
キーボードは全85キーで、キーピッチは17.55mm、キーストロークは2.5mmと十分だ。キー配列も標準的であり、キータッチもしっかりしているので、快適にタイピングが行なえる。BIOSメニューで、「Fnキー」と左「Ctrlキー」の入れ替えが可能なことも評価できる。「Fnキー」+「1」キーおよび「Fnキー」+「2」キーに任意のアプリケーションの起動を割り当てることも可能だ。さらに、キーボード下には防水シートが貼られており、万一液体をキーボードにこぼしても、水滴がPC内部に入り込むことを遅らせる構造になっている。ポインティングデバイスとしては、NXパッドを搭載。オーソドックスな2ボタンタイプのタッチパッドで、こちらも操作性は良好だ。また、BTOメニューで、スクロールホイール付きの光学式マウスまたはスクロールホイール付きのレーザーマウスの追加も可能だ。
●挿抜耐久性を強化した強化USBコネクタを採用
インターフェイスとして、USB 2.0×4やミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernetなどを搭載する。このクラスのモバイルノートとしては、USB 2.0の数が多く、たくさんのUSB機器を接続したい人には嬉しい。また、USB 2.0ポートは左側面に1つ、右側面に3つ用意されているが、右側面の一番手前側のUSBポートは、通常に比べて挿抜耐久性を強化した強化USBコネクタが使われている。このコネクタは、挿抜1万回の耐久試験をクリアしており、暗号化や認証鍵としてUSBメモリを使う場合などは、強化USBコネクタに挿すようにすれば安心だ。カードスロットとして、SDメモリーカードスロットとType2 PCカードスロットを搭載。ただし、どちらのスロットもフタはダミーカード方式になっているので、紛失する恐れがある。
ワイヤレス機能もBTOでカスタマイズ可能であり、IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LANやBluetooth Ver.2.1+EDR、FOMAハイスピード対応のワイヤレスWANの搭載が可能だ。なお、無線LANとBluetoothはそれぞれ単独で搭載できるが、ワイヤレスWANは必ず無線LANとの同時搭載になる(無線LAN、Bluetooth、ワイヤレスWANの3つの同時搭載も可能)。本体前面にはワイヤレススイッチが用意されており、ワンタッチでワイヤレス機能の有効/無効を切り替えられるので便利だ。
左側面には、ミニD-Sub15ピンやLAN、USB 2.0、マイク入力、ヘッドフォン出力が用意されている | 右側面には、PCカードスロットとUSB 2.0×3、SDメモリーカードスロットが用意されている。右側面の一番手前側のUSBポートは、通常よりも挿抜耐久性の高い強化USBコネクタが使われている | SDメモリーカードスロットとPCカードスロットのフタはダミーカード方式である |
前面の左端にワイヤレススイッチが用意されている | ワイヤレススイッチのアップ |
●大容量バッテリ装着時は公称11.7時間駆動を実現
VersaPro UltraLite タイプVCは、バッテリ駆動時間が長いことも魅力だ。バッテリは2種類のサイズがあり、小さい方がバッテリ(M)、大きい方がバッテリ(L)と呼ばれている。今回の試用機にはバッテリ(M)が装着されていたが、BTOメニューでバッテリ(L)に変更することも可能だ。バッテリ(M)では、公称約7.7時間(JEITA測定法、Windows 7 Professional時)の駆動が可能とされている。また、バッテリ(L)なら、同条件で公称約11.7時間もの長時間駆動が行なえる。バッテリ(M)の重量は約225g、バッテリ(L)の重量は約315gであり、差は90gしかないので、バッテリ(L)を装着してもほとんどの構成で1kgを切る。
実際に、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、4時間23分の駆動が可能であった(電源設定は「バランス」に設定、バックライト輝度は中)。無線LANを常時オンにした状態でこれだけ持てば、十分合格だ。バッテリ(L)を装着すれば、駆動時間は約1.5倍に延びるので、AC電源のないところで長時間使いたいという人には心強いだろう。ACアダプタもコンパクトで軽く、携帯性は優秀だ。ウォールマウントプラグも付属しており、壁などのACコンセントに直接差し込んで固定できるのも便利だ。
リチウムイオンバッテリ(M)は、7.2V/6,100mAhという仕様だ | CDケース(左)とリチウムイオンバッテリ(M)のサイズ比較 |
ACアダプタもコンパクトで軽い | CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較 |
付属のウォールマウントプラグ | ウォールマウントプラグのACプラグ部分は折りたたんで収納できるようになっている | ウォールマウントプラグをACアダプタに取り付けたところ。壁のACコンセントにそのまま差し込んで固定できる |
●A4サイズノートに迫る性能を実現
参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較対照用にレノボ「ThinkPad T410s」、ソニー「VAIO P」(オーナーメードモデル)、ソニー「VAIO P」(店頭モデル)、NEC「LaVie M」の値も掲載した。
PCMark05のCPU Scoreは3596で、Atom搭載機に比べると2倍程度のスコアになっており、Celeron SU2300搭載のLaVie Mに比べても2割以上高い。さすがに通常電圧版のCore i5-430Mを搭載したThinkPad T410sに比べると、半分以下のスコアになっているが、今回試用したVersaPro UltraLite タイプVCは、高速SSDを搭載しているため、HDD Scoreが高く、総合スコアのPCMarksでは、ThinkPad T410sにかなり迫っている。動作もキビキビしており、動画エンコードのようなCPU性能が大きく効いてくる作業以外で、性能に不満を感じることは少ないだろう。
VersaPro UltraLite タイプVC | ThinkPad T410s | VAIO P (オーナーメードモデル) | VAIO P (店頭モデル) | LaVie M | |
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CPU | Core i7-620UM (1.06GHz) | Core i5-430M (2.26GHz) | Atom Z560 (2.13GHz) | Atom Z530 (1.6GHz) | Celeron SU2300 (1.2GHz) |
ビデオチップ | CPU内蔵コア | CPU内蔵コア | US15X内蔵コア | US15W内蔵コア | Intel GS45内蔵コア |
PCMark05 | |||||
PCMarks | 5092 | 5677 | 1468 | 1054 | 2826 |
CPU Score | 3596 | 7375 | 1808 | 1369 | 2966 |
Memory Score | 3965 | 6184 | 2571 | 2215 | 3066 |
Graphics Score | 1684 | 2610 | 263 | 224 | 1397 |
HDD Score | 16265 | 4291 | 11585 | 3311 | 4948 |
3DMark03 | |||||
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks) | 2714 | 4101 | 457 | 355 | 2048 |
CPU Score | 771 | 1068 | 232 | 202 | 495 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |||||
HIGH | 1631 | 2458 | 463 | 404 | 1367 |
LOW | 2410 | 3808 | 809 | 672 | 1995 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | |||||
DP | 100 | 96.63 | 31.87 | 30.53 | 76.43 |
HP | 100 | 99.97 | 68.07 | 73.37 | 99.97 |
SP/LP | 100 | 100 | 97.7 | 99.97 | 99.97 |
LLP | 100 | 99.97 | 99.77 | 99.97 | 99.97 |
DP(CPU負荷) | 27 | 21 | 87 | 84 | 68 |
HP(CPU負荷) | 13 | 12 | 97 | 85 | 42 |
SP/LP(CPU負荷) | 8 | 7 | 94 | 55 | 28 |
LLP(CPU負荷) | 8 | 6 | 92 | 56 | 22 |
CrystalDiskMark 2.2 | |||||
シーケンシャルリード | 164.2MB/s | 36.20MB/s | 82.46MB/s | 61.05MB/s | 60.31MB/s |
シーケンシャルライト | 39.58MB/s | 40.05MB/s | 51.33MB/s | 39.21MB/s | 66.25MB/s |
512Kランダムリード | 142.6MB/s | 23.30MB/s | 76.98MB/s | 58.53MB/s | 27.50MB/s |
512Kランダムライト | 34.53MB/s | 24.25MB/s | 44.80MB/s | 1.606MB/s | 31.19MB/s |
4Kランダムリード | 7.629MB/s | 0.425MB/s | 7.702MB/s | 4.485MB/s | 0.369MB/s |
4Kランダムライト | 13.66MB/s | 0.961MB/s | 17.18MB/s | 1.731MB/s | 0.984MB/s |
BBench | |||||
Sバッテリ(標準バッテリ) | 4時間23分 | 4時間15分 | 4時間48分 | 4時間17分 | 3時間39分 |
Lバッテリ | 未計測 | なし | 未計測 | 未計測 | 7時間26分 |
Xバッテリ | なし | なし | なし | なし | なし |
●ビジネス向けモバイルノートとしての完成度は高い
VersaPro UltraLite タイプVCは、重さ900gを切る携帯性に優れたボディと、最新のCore i7搭載による高いパフォーマンスが魅力の製品である。ただし、直販価格は、最小構成時でも248,000円、試用機構成では30万円を超えるという、価格の高さが気になる。「軽量」「高性能」「長時間駆動」の3つを満たす本製品は、モバイルノートとしての完成度は高い。本製品をベースにした、より低価格なコンシューマ向けモデルが欲しいところだ。
(2010年 7月 13日)
[Text by 石井 英男]