ソニー「VAIO P VAIOオーナーメードモデル」
~Atom Z560とUS15X、256GB SSD搭載モデルの性能は?



ソニー「VAIO P VOM」

発売中

価格:79,800円~



 ソニーが5月22日に発売したVAIO Pは、2009年に登場したVAIO type Pの後継となる、気軽に持ち運べる携帯性が魅力のポケットスタイルPCだ。VAIO Pは、固定スペックの店頭モデルと、CPUやストレージ、ワイヤレス機能などの構成を選べるVAIOオーナーメードモデルに大別できる。VAIOオーナーメードモデルでは、店頭モデルよりも高性能なCPUやチップセット、大容量の高速SSDなどが用意されており、用途や価格に応じて最適な構成を選択できることが利点だ。

 VAIO Pの店頭モデルについては、すでにレビューしたのでそちらを見ていただきたいが、今回は、最上位構成のVAIOオーナーメードモデルを試用する機会を得たので、店頭モデルとのパフォーマンス比較などを中心にレビューしていきたい。また、以前のレビューでは触れられなかった、PlayStation 3との連携なども試してみたい。

●クロック2.13GHzのAtom Z560とグラフィックスコアが高速化されたUS15Xを用意

 VAIO P VAIOオーナーメードモデル(以下VAIO P VOM)は、BTOによってCPUやストレージ、ワイヤレス機能などを選択できることが特徴だ。ボディカラーも店頭モデルは、オレンジ、ピンク、ホワイトの3色が用意されていたが、VAIO P VOMでは、ブラック、グリーン、ブラッククロコダイルの3色が追加され、合計6色の中から選べるようになった。

 店頭モデルのVAIO Pは、CPUとしてAtom Z530(1.6GHz)が搭載されているが、VAIO P VOMではAtom Z530/Z550/Z560の3種類の選択肢が用意されている。Atom Z550は2GHz、Atom Z560は2.13GHzで動作する。特に、Atom Z560は従来のVAIO type Pでは選べず、今回のVAIO P VOMで新たに選べるようになった。また、チップセットはグラフィックス統合型のUS15Wを採用しているが、Atom Z560を選択したときのみ、US15Xが組み合わされる。US15Xは、US15Wの上位として新たに登場したチップセットであり、US15Wの内蔵グラフィックスコア(Intel GMA500)の動作クロックは200MHzだったが、US15Xでは266MHzに高速化されている。Atom Z系プラットフォームは、グラフィックス性能が低く、ウィンドウ描画のもたつきなどが気になることがあったが、Atom Z最速のAtom Z560+US15Xの組み合わせで、その不満がどこまで解消されるか気になるところだ。なお、メモリは、店頭モデルと同じく2GB固定で増設はできない。

今回試用したVAIO P VOMのボディカラーはグリーン。非常に鮮やかで目を引くVAIO P VOMの底面。バッテリもグリーンで塗装されている
VAIO P VOMの右側面。「の」の字のようなデザインがよくわかる試用機の重量は実測で620gであった

●高速な128GB SSDまたは256GB SSDを選択できる
試用機のデバイスマネージャーを開いたところ。東芝製SSDが搭載されている。QualcommのWWANモジュールとIntelのWiMAX/WiFiモジュールが両方とも搭載されていることにも注目

 店頭モデルはストレージとして64GB SSDを搭載していたが、VAIO P VOMでは、64GB SSDのほかに、128GB SSDと256GB SSDの選択が可能である。店頭モデルに搭載されている64GB SSDはSanDisk製のPATA対応SSDで、SSDの中では低速な方だが、VAIO P VOMで選択可能な128GB SSDと256GB SSDは、SATA対応SSDであり、転送速度も高速である。ただし、チップセットのUS15W/US15Xは、PATAのみのサポートなので、128GB SSDや256GB SSDは、SATA-PATA変換ブリッジチップ経由で接続される。

 なお、今回試用したVAIO P VOMは、CPUにAtom Z560、チップセットとしてUS15X、ストレージは256GB SSDというハイエンド構成である。デバイスマネージャーで確認したところ、東芝製SSDが搭載されていた。

●WiMAXとWWANの両搭載が可能
VAIO P VOMでは、WiMAXとWWAN(無線WAN)、無線LAN、Bluetooth、GPSの同時搭載が可能。ただし、WiMAXと無線LANの同時利用はできない

 VAIO P VOMは、ワイヤレス機能の選択肢も充実している。店頭モデルでは、WiMAXとIEEE 802.11a/b/g/n対応無線LAN、Bluetooth 2.1+EDRをサポートしているが、VAIO P VOMでは、さらにWWANの追加が可能で、WWAN/WiMAX/無線LAN/Bluetoothのいわゆる全部入りの構成が可能だ。また、WWANを選択すると、GPS機能も追加される。なお、無線LAN機能はWiMAXの有無で仕様が変わり、WiMAXを選択するとIEEE 802.11a/b/g/n対応になり、WiMAX無しにするとIEEE 802.11b/g/n対応となる。

 WWANのキャリアとして、従来のNTTドコモだけでなく、日本通信の「b-mobile Doccia」にも対応し、1,000円単位でのプリペイド方式でWWANを利用できるようになった。なお、VAIO P VOMでは、ワンセグチューナの搭載も可能だが、WWANとワンセグチューナの同時搭載はできず、排他となる。また、WiMAXと無線LANの同時搭載は可能でも、同時にオンにすることはできない。なお、試用機にもWWANとWiMAXが搭載されていたが、SIMが装着されていなかったため、WWANのテストは行なっていない。

●ノイズキャンセリングヘッドフォン機能も搭載可能

 VAIO P VOMでは、店頭モデルでは省略されているノイズキャンセリングヘッドフォンも選択できる(プラス3,000円)。専用のノイズキャンセリングヘッドフォンを接続することで、周囲の騒音を約1/4に低減できる。また、ノイズキャンセリングヘッドフォンの内蔵マイクは、ビデオチャットにも利用でき、マイク指向性機能をオンにすることで、ノイズキャンセリングヘッドフォン内蔵マイクの指向性を自分の声に合わせられるので、騒々しい場所でも相手にクリアな声を伝えられる。

 また、店頭モデルではオプションとなっているディスプレイ/LANアダプターも、VAIO P VOMなら、単体で購入するよりも安いプラス2,000円で追加できる。ディスプレイ/LANアダプターを本体右側面のI/Oコネクタに接続すれば、外部ディスプレイ端子(ミニD-Sub15ピン)とLAN端子(1000BASE-T対応)が利用できるようになるので、プロジェクターに繋いでプレゼンテーションをする場合などに便利だ。

VAIO P VOMで追加が可能なノイズキャンセリングヘッドフォン本体と同時に追加購入が可能なディスプレイ/LANアダプター
ディスプレイ/LANアダプターには、外部ディスプレイ端子(D-Sub 15ピン)とLAN端子が用意されているVAIO P本体と接続するコネクタは、裏側に収納できるようになっており、持ち運びに便利

●PS3連携機能「リモートプレイ」「リモートキーボード」に対応

 新たにPlayStation 3(以下PS3)との連携ができるようになったことも、VAIO P(VOMだけでなく店頭モデルも同じ)の特徴である。PS3との連携機能は「リモートプレイ」「リモートキーボード」の2種類があるが、前回の店頭モデルレビューでは試すことができなかったので、今回試してみることにした。

 まず、リモートプレイ機能を紹介する。リモートプレイとは、PS3の画面をVAIO Pに表示させ、VAIO Pから操作を行なう機能だ。VAIO PとPS3との接続は無線LAN経由で、ローカルだけでなく、インターネットを介した接続も可能だ。いわゆるVNC的な機能である。

 ただし、リモートプレイで利用できるコンテンツには制限があり、ゲームやtorneで録画したテレビ番組、著作権保護された動画ファイル、Blu-ray DiscやDVDの再生は非対応である。リモートプレイで利用できるコンテンツは、著作権保護されていない動画ファイルや写真、音楽、ブラウザなどに限られるのが残念だ。

 リモートプレイの利用手順は簡単で、VAIO P側で専用アプリケーションの「リモートプレイ with PlayStation 3」を起動し、PS3のメニューから「設定」→「リモートプレイ設定」→「機器登録」を選び、機器の種類で「パソコン」を選択する。すると、PS3の画面に8桁の登録番号が表示されるので、その番号をVAIO P側に入力すれば、登録が完了する。

 機器登録が完了したら、PS3のメニューから「ネットワーク」→「リモートプレイ」を選択すれば、リモートプレイが実行される。リモートプレイ実行中は、PS3側の画面は「リモートプレイ実行中」という表示で固定される。リモートプレイの画質(ビットレート)は、標準では512Kbpsだが、256Kbps~1,024Kbpsの間で変更できる。また、反応速度も7段階から選べる。

 画質、反応速度ともに標準状態で、PS3のHDD内の動画を再生してみたところ、メニュー操作などのレスポンスはかなり高速であり、反応速度は十分であった。圧縮率が高いため、動画の画質はオリジナルに比べると劣化しているが、コマ落ちはほとんどなく、鑑賞に耐えるレベルであった。torneで録画したコンテンツに対応していれば、外出先でも自宅のPS3で録画した番組をVAIO Pで再生できて便利なのだが、現状ではそうした使い方ができないのは残念だ。なお、リモートプレイ実行中は、VAIO Pのキーボードを、PS3のコントローラー代わりに使うことになるが、そのキーアサインも何種類かを選べる。

PS3のメニューから「設定」→「リモートプレイ設定」→「機器登録」を選び、機器の種類で「パソコン」を選ぶ8桁の登録番号が表示されるので、この番号をVAIO P側に入力する登録が完了したら、「ネットワーク」→「リモートプレイ」を選択すれば、リモートプレイがスタートする
リモートプレイ実行中は、PS3側の画面はこのような表示になるリモートプレイ実行中のVAIO Pの画面(ウィンドウ表示)。右には、キーアサインが表示されているもちろん、フルスクリーン表示も可能だ
リモートプレイ実行中の様子。動画はやや圧縮による劣化が見られるが、レスポンスは十分高速だ
リモートプレイの画質(ビットレート)は、5段階から選べるリモートプレイの反応速度は7段階から選べる。先ほどの動画は、画質も反応速度も標準に設定しているキーアサインも変更できる

VAIO Pのキーボード。キーピッチは約16.5mm。アイソレーションタイプのキーボードで、快適にタイピングが可能

 リモートキーボードは、VAIO PをPS3のキーボードとして利用する機能だ。PS3には標準でキーボードが付属していないので、ネットワークゲームでチャットをする場合など、コントローラーで文字を入力するのは大変だ。PS3では、USBキーボードやBluetooth対応キーボードの利用が可能だが、リモートキーボード機能を活用すれば、VAIO Pのキーボードを使って、PS3の文字入力を行なえるので、入力の効率が格段に向上する。

 リモートキーボード機能では、VAIO PとPS3は、Bluetooth経由で接続される。こちらも利用手順は簡単で、VAIO P側で専用アプリケーションの「リモートキーボード with PlayStation 3」を起動し、PS3のメニューから「設定」→「周辺機器設定」→「Bluetooth機器管理」を選び、VAIO PをBluetoothキーボードとして登録する。いったん登録してしまえば、あとはアプリケーションを起動するだけで、リモートキーボード機能を利用できる。リモートキーボードを有効にした状態でも、PS3コントローラーの利用は可能だが、PS3コントローラーの○×△□ボタンやSelectボタン、Startボタン、方向キーなどもVAIO Pのキーボードにアサインされており、コントローラーの操作も可能だ。リモートキーボードの操作感は良好で、入力を取りこぼすようなこともなかった。

PS3のメニューから「設定」→「周辺機器設定」→「Bluetooth機器管理」を選ぶ「JCTOL-B keyboard」を選択するリモートキーボード実行のVAIO Pの画面。リモートキーボードを終了させないと、PC側の操作はできない
リモートキーボード機能を利用して、入力を行なっているところ

●店頭モデルに比べてパフォーマンスも格段に向上

 最後にVAIO P VOMのパフォーマンスを検証してみよう。今回試用したVAIO P VOMは、CPUにAtom Z560、チップセットにUS15X、ストレージに256GB SSDを搭載する、最強仕様であり、店頭モデルのVAIO Pとの性能比較も興味があるところだ。

 利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較対照用にソニー「VAIO P」(店頭モデル)、旧モデルのソニー「VAIO type P」(Windows Vista Home搭載のVAIOオーナーメードモデル)、ソニー「VAIO X」、NEC「LaVie M」の値も掲載した。

 まず、店頭モデルのVAIO Pとの比較だが、PCMark05の総合値であるPCMarksの値は、店頭モデルの約1.4倍と、かなり向上している。詳しく見てみると、CPU Scoreが1369から1808へと約32%アップ、Memory Scoreが2215から2571(約1.16倍)にアップ、Graphics Scoreが224から263(約1.17倍)にアップ、HDD Scoreが3311から11585(約3.5倍)に向上している。特に、HDD Scoreの伸びが著しいが、これは搭載SSDがSanDisk製の64GB SSD(PATA仕様)から高速な東芝製の256GB SSD(SATA仕様)に変更されたためだ。CrystalDiskMarkの結果を見ればわかるように、シーケンシャルリードやシーケンシャルライトも店頭モデルのVAIO Pに比べて高速だが、512Kランダムライトにいたっては、実に28倍近くも速度が向上している。

 その他のベンチマーク結果も、店頭モデルのVAIO Pに比べると明らかに結果が向上している。さすがにデュアルコアのCeleron SU2300を搭載したLaVie Mには及ばないものの、Atom搭載機としてはトップの性能を持っているといえる。


VAIO P(オーナーメードモデル)VAIO P(店頭モデル)VAIO type PVAIO XLaVie M
CPUAtom Z560 (2.13GHz)Atom Z530 (1.60GHz)Atom Z540 (1.83GHz)Atom Z540 (1.83GHz)Celeron SU2300 (1.20GHz)
ビデオチップUS15X内蔵コアUS15W内蔵コアUS15W内蔵コアUS15W内蔵コアIntel GS45内蔵コア
PCMark05
PCMarks14681054147612482826
CPU Score18081369165915832966
Memory Score25712215243824213066
Graphics Score2632242622451397
HDD Score1158533111127135264948
3DMark03
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks)4573554273652048
CPU Score232202156207495
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH4634043634361995
LOW8096727187661367
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP31.8730.53未計測36.1776.43
HP68.0773.37未計測85.599.97
SP/LP97.799.97未計測10099.97
LLP99.7799.97未計測10099.97
DP(CPU負荷)8784未計測7868
HP(CPU負荷)9785未計測7842
SP/LP(CPU負荷)9455未計測5928
LLP(CPU負荷)9256未計測3922
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード82.46MB/s61.05MB/s未計測65.90MB/s60.31MB/s
シーケンシャルライト51.33MB/s39.21MB/s未計測38.42MB/s66.25MB/s
512Kランダムリード76.98MB/s58.53MB/s未計測63.23MB/s27.50MB/s
512Kランダムライト44.80MB/s1.606MB/s未計測3.108MB/s31.19MB/s
4Kランダムリード7.702MB/s4.485MB/s未計測4.135MB/s0.369MB/s
4Kランダムライト17.18MB/s1.731MB/s未計測1.523MB/s0.984MB/s
BBench
Sバッテリ(標準バッテリ)4時間48分4時間17分未計測2時間57分3時間39分
Lバッテリ未計測未計測未計測6時間2分7時間26分
Xバッテリなしなし未計測12時間56分なし

 Windowsエクスペリエンスインデックスを計測したところ、下のような結果となった。店頭モデルの場合、プロセッサが1.8とかなり低かったが、Atom Z560搭載のVAIO P VOMでは、プロセッサが3.0へと大きく向上したほか、グラフィックスの値も4.6と、このクラスのモバイルノートPCとしてはかなり高い。

VAIO P VOMのWindowsエクスペリエンスインデックスの計測結果。ゲーム用グラフィックスが2.6と低いが、それ以外は3以上であり、特にプライマリハードディスクのスコアが高い。ちなみに店頭モデルのWindowsエクスペリエンスインデックスは、プロセッサ1.8/メモリ4.1/グラフィックス2.9/ゲーム用グラフィックス2.2/プライマリハードディスク5.2であった

 実際にVAIO P VOMでいくつかのアプリケーションを起動したり、Webブラウズなどをしてみたが、店頭モデルで多少気になっていたウィンドウ移動や再描画時のもたつきが、改善されており、イライラせずに利用できた。

 さらに、バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、4時間48分の駆動が可能であった(電源設定は「バランス」に設定、バックライト輝度は中、自動輝度調整はオフ)。バッテリ駆動時間も店頭モデルに比べて長くなっており(同じバッテリでの比較ではないので、店頭モデルのバッテリのほうが充放電回数が多く、実質的な容量が少なくなっている可能性もあるが)、こちらも優秀な結果だ。

●店頭モデルのパフォーマンスに不満がある人にお勧め

 VAIO P VOMは、CPUやチップセット、ストレージ、ワイヤレス機能などをBTOによって自由にカスタマイズでき、特に店頭モデルより高速なCPUやチップセット、ストレージを選択できることが魅力だ。VAIO Pの店頭モデルも、実用的なパフォーマンスを実現しているが、ウィンドウ描画やアプリケーションの起動などに多少もたつきを感じることもある。今回試用した最強仕様のVAIO P VOMでは、そうした不満はほとんど感じなかった。このクラスのポケットPCとしては、十分に満足できるパフォーマンスといえる。もちろん、デュアルコアCPUを搭載したCULVノートPCに比べれば性能は低いが、携帯性はVAIO Pが格段に優れている。

 また、店頭モデルにないメリットとして、WWANを搭載可能なことも挙げられる。WiMAXのエリアが広がったとはいえ、まだまだ3GのWWANのほうがカバーエリアは広いので、WiMAXのエリア外でもインターネットにアクセスしたいというのなら、VAIO P VOMで、WWANを選択することをお勧めしたい。

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(2010年 6月 16日)

[Text by 石井 英男]