日本エイサー「Aspire One 751」
~Atom Z520を搭載する低価格モバイルノート



日本エイサー「Aspire One 751」

発売中
価格:オープンプライス



 日本エイサーの「Aspire One 751」は、CPUにAtom Z520を採用することで低価格を実現したモバイルノートだ。日本エイサーでは、この製品をネットブックのカテゴリーに入れているが、スペックがIntelの言うネットブックの範囲に入っていないため、正確には通常のモバイルノートということになる。同様にAtom Zシリーズを搭載するモバイルノートとしては、ソニーの「VAIO type P」や、ASUSTeKの「S121」などがある。いずれも、ノートと言うには少々非力だが、ネットブックではないという微妙な位置付けの製品となっている。だが、この微妙なカテゴリへのニーズは確かに存在しており、だからこそ各社が参入しているわけだ。そのニーズとは、ノートほどの性能はいらないが、ネットブックの画面解像度では狭過ぎると感じているユーザーである。この製品も、実際に使ってみるとネットブック以上ノート未満といった仕上がりになっており、なかなか興味深い。

●モバイル端末向けのAtom Z520を採用するユニークなノート

 Aspire One 751は、Atom Z520というCPUを搭載している。このCPUは、モバイルノートやネットブックよりも更に小さな製品向けのCPUだ。Intelでは、MID(モバイル・インターネット・デバイス)向けと言っている。しかし、基本アーキテクチャはネットブックで使用されているAtom N280やAtom N270と同様なので、性能にはほとんど差はない。では何が違うのかというと、消費電力だ。

 たとえば、同じ1.6GHzで動作するAtom N270とAtom Z530を比べると、Atom N270はTDP(熱設計上の最大消費電力)が2.5Wであるのに対して、Atom Z530は2Wしかない。数字が小さいのでわずかな差のように感じるかもしれないが、両者の差は25%もあるので結構大きな差だ。消費電力以外の部分では、L2キャッシュはどちらも512KB、FSBクロックも533MHzで、実際の性能もほぼ同じである。性能が同じなら、より低消費電力なAtom Zシリーズを何故ネットブックに使わないのかと疑問に感じる人もいるだろう。それは、Atom NシリーズよりもAtom Zシリーズのほうが価格が高いからだ。安価であるということを一番の特徴にしているネットブックにとって、部品価格はもっとも重要な選択基準となっている。

 また、対応チップセットと組み合わせた場合の方向性が、ネットブック向けのAtom Nシリーズでは性能と消費電力のバランスが重視されているのに対して、Atom Zシリーズは消費電力のみが重視されている。そのため、ほぼ同じ性能のCPU同士ではあるが、チップセットまでを含めた総合的な性能ではAtom Nシリーズのほうが上位となっているのだ。

 さて、Aspire One 751に話を戻すと、この製品が搭載しているCPUは1.33GHz動作のAtom Z520だ。当然、ネットブックで一般的な1.6GHz動作のAtom N270よりも遅いことが予想できる。気になるその実力については、後述するベンチマークテストの結果で紹介しよう。

□スペック表

モデルAspire One 751(AO751-Bw26F)
価格オープンプライス
OSWindows XP Home Edition SP3
CPUAtom Z520(1.33GHz)
チップセットIntel US15W
グラフィックス機能Graphics Media Accelerator 500
メモリDDR2-667 1GB
HDD160GB(5,400rpm)
液晶11.6型ワイド 1,366×768ドット
ネットワークIEEE 802.11b/g/、100BASE-TX、Bluetooth 2.0+EDR
Webカメラ30万画素
バッテリ駆動時間約8時間
サイズ(突起部含まず)横284×奥行き198×高さ25.4mm
重量(バッテリ搭載時)約1.35kg

●チップセットには1チップ構成のUS15Wを使用

 CPUがAtom Z520ということで、チップセットにもAtom Zシリーズ用のものを使用しなければならない。それが、Intel US15Wだ。このチップセットは、MCHとICHの機能を1チップにまとめており、グラフィックスコアも内蔵している。一般的なノートは2チップ構成で、ネットブックの場合にも通常は2チップ構成のIntel 945GSE+ICH7-Mが使われている。1チップ構成と2チップ構成で、もっとも差が出るのは消費電力だ。2チップ構成の場合、Intel 945GSEのTDPは6Wで、ICH7-MのTDPは3.3Wなので計9.3Wだが、1チップ構成のIntel US15Wの場合は2.3Wしかない。CPUと合わせて低発熱低消費電力なので、より長いバッテリ駆動時間が期待できる。

 しかし、メリットばかりではない。Intel US15Wの欠点はグラフィックス機能にある。Intel US15Wが内蔵するIntel Graphics Media Accelerator 500(GMA 500)は、動画コーデックのH.264、VC1、MPEG-4、MPEG-2、WMV9に対応するデコードアクセラレーターを搭載しており、結構多機能だ。携帯端末向けをうたいながらも3Dグラフィックス処理までこなせる。しかし、多機能ではあるが、その性能にはあまり期待できない。この辺りについても、後述するベンチマークテストの結果で実際の性能を紹介する。

●約8時間の駆動時間とWXGAの解像度が魅力

 Aspire One 751のハードウェア面での特徴は、前述した通りユニークなCPUとチップセットである。では、その特徴がどのように製品の魅力につながっているのかというと、約8時間のバッテリ駆動時間と1,366×768ドットの解像度を、低価格で実現しているというところに表れている。長時間駆動と高解像度と低価格は、Atom Z520を採用したからできたことであり、ハードウェアの特徴がキチンと製品の魅力につながっているわけだ。

 評価に使用したAspire One 751(AO751-Bw26F)は、2009年6月中旬現在の実売価格が75,000円程度だ。ちょうど、モバイルノート以下、ネットブック以上の価格帯に入っており、ネットブックでは解像度が足りず、モバイルノートには資金が足りないという人にピッタリの製品となっている。

 なお、ここで紹介しているAspire One 751は、6セルバッテリ+Microsoft Office Personal 2007が付属するモデルだが、3セルバッテリ+Officeなしモデルなど、製品のラインナップは全部で8種類ある。バッテリは2種類で、6セルの場合は約8時間の連続駆動時間で本体重量が約1.35kg、3セルの場合は約4時間の連続駆動時間で約1.2kgだ。

 拡張性に関しては、メモリとHDDに本体の裏側から簡単にアクセスできるので容易に拡張を行なえる。ただし、この製品の仕様ではメモリの最大搭載可能容量は1GBになっており、既に1GB搭載している。Intel US15Wチップセットの仕様では2GBまで対応しているので2GBに交換すれば認識するとは思うが、メーカーが1GBと言っているため、試すのは自己責任となる。メモリとHDDが入っている部分のフタを開けると製品保証がなくなるので、作業する場合は納得した上で作業する必要がある。

 HDDは2.5インチのSeagate Technology製Momentus 5400.5(ST9160310AS)を搭載している。容量は160GB、接続はSATAだ。こちらは、同じ2.5インチサイズのHDDなら容易に交換可能である。ただ、OSのインストールディスクが付属せず、OSイメージはHDD内に保存されているので交換時には注意が必要だ。なお、パーティションはCドライブのみで、初期状態での空き容量は131GBだった。

メモリとHDDが入っている部分のフタを止めるネジには、フタを開けると保証がなくなると書かれたシールが貼ってある。シールは剥がそうとするとバラバラに千切れるので元に戻すのは難しいメーカー保証がなくなることを承諾してフタを開ける。左上がHDD、右上がメモリ、下が無線LANカードだ。フタを外すだけなので簡単にアクセスできるメモリには、Nanya TechnologyのDDR2-667 SO-DIMM 1GBが搭載されている。メモリ上にも、メモリを外した場合にはメーカー保証がなくなるという注意書きが貼られている
IEEE 802.11b/gに対応する無線LANカードがPCI Express Mini Cardスロットに刺さっている。メーカーは不明だ。左に空きスペースがあるが、そちらにはスロットはないHDDはフタと共に本体にネジで固定されているのだが、フタを開けると更に別のネジでしっかりと固定されている。ネジを外し、左にスライドさせれば取り外し可能だ搭載しているHDDは、Seagate TechnologyのMomentus 5400.5(ST9160310AS)。SATA接続の2.5インチHDDで、2.5インチHDDとしては結構高速な製品だ

●パールとブラックのコントラストが美しいボディ

 最近のノートはデザインのレベルが高い。この製品も良くできていて、低価格なのにスタイリッシュだし高級感もある。とくにデザイン上の問題はなく、どう感じるかは好みの問題だろう。本体カラーは、液晶カバーが光沢のあるパールで、液晶の外枠部分が光沢のあるブラック、キーボードとパームレストが光沢のないブラックで、底面が光沢のないザラザラとしたホワイトという配色になっている。本体を閉じているときは、ブラックをホワイト系の色でサンドイッチにしているように見えてメリハリを感じるデザインだ。閉じているとパールが目立つので柔らかな雰囲気で、開いて使う際にはブラック部分しか見えないので引き締まって見える。6セルバッテリが後ろに派手に出っ張るのはどうかと思うが、これはどのノートでも同じことだ。また、横から見ると液晶とキーボードの間に大きめの隙間が空いている。この隙間に指を引っ掛けて液晶を簡単に開けられるのだが、デザインとして見ると少し気になる人はいるかもしれない。

 本体は結構薄く、メーカー公証値では25.4mmしかない。しかし、見た目には明らかに前が薄くて後ろが厚いので実測してみたところ、最厚部となる本体後部側は約32mmあった。スペックには最薄部の値を書いているようだ。約32mmもあるのは6セルバッテリの出っ張り部分が大きいためで、バッテリを外した状態では約28.5mm程度だった。出っ張り部分は通常の状態では見えにくいので、実際には結構薄く見える。また、写真ではバッテリの出っ張りが邪魔なように感じるかもしれないが、実はその出っ張り部分が手に馴染むので本体を持ちやすい。

液晶カバーの色はパール。光沢があるが光り過ぎることはなく高級感がある。指紋があまり目立たないのも良いキーボードと液晶ベゼルがブラックなので、パールとホワイトでサンドイッチしたようなデザインとなっている本体は、手前側から奥に向かって厚くなっていく。まずまずの薄さで、モバイルノートとしては標準的だ
6セルバッテリは本体の後ろにかなり大きく出っ張っているが、この部分が手に馴染んで持ちやすい液晶はノッチがなくそのまま開くタイプ。本体と液晶の間に大きめの隙間があり、そこに指が入るので開けやすい6セルバッテリは後ろにだけでなく下にも出っ張っているため、本体の後ろが上がり、本体が若干手前に斜めになる

●使用感は画面が広いネットブック

 実際に使ってみると、モバイルノートというよりは画面が広くなったネットブックという雰囲気である。これは、キーボードの質感やタッチパッドの使い勝手、体感速度などからそう感じる。

 タッチパッドの多機能さは気に入っただ。このタッチパッドはマルチタッチに対応しているので、2本の指をタッチパッドの上で開いたり閉じたりすることで、拡大縮小の操作を行なえる。また、タッチパッドの右辺または底辺部分にあるスクロールエリアを触ったあとに、タッチパッドの上で指をくるくる回すと、回す速度に応じてスクロール速度も変わる。これはかなり便利だ。タッチパッドの感度やスクロールエリアの位置など、細かい部分まで設定を行なえるので、自分好みのタッチパッドにカスタマイズすることもできる。

 次にキーボードだが、約19mmのキーピッチを確保しており、デスクトップPC用のフルサイズキーボードと変わらない指の距離感で使用できる。キーは本体から浮いているように見えるタイプのもので、キートップがフラットで面積が広い。キーピッチがデスクトップPCと同じなので、独特のキー形状に慣れれば結構使いやすい。全体に剛性がなく、弾力があってたわむタイプのキーボードなので、好みは分かれるかもしれない。

タッチパッドのボタンは左右が分かれていないタイプ。実際に店頭で触ってみることをオススメするキーボードは、標準的な日本語キーボード。本体のサイズギリギリまでキーが並んでいるキーは最近流行りのキートップがフラットで面積が広いもの。独特のキータッチに慣れれば使いやすい
モバイルノートなのにキーピッチは約19mmある。デスクトップPC用のフルサイズと同じだ電源ボタンはキーボードの右上の液晶ヒンジのすぐ下にあり、間違って押してしまうような心配がない本体の手前側の左には、無線LANのオン/オフスイッチとBluetoothのオン/オフスイッチがある

 液晶は、まるで高級なガラスの表面のように光沢があり、大変見栄えがいい。色にメリハリもあり、写真や動画もキレイに見える。ただし、その分映り込みもあるので、これも好みが分かれるところだ。明るい部屋で使うと結構派手に映り込むので、自分の使用環境を考えつつ店頭で確認してみるといいだろう。

 この製品の特徴となっている1,366×768ドットの解像度は、このクラスのモバイルノートには十分な広さで、快適に使用することができた。最近は外出時に1,024×600ドット表示のネットブックを使っているのだが、画面が少し広くなっただけでここまで使いやすくなることに驚いた。エクスプローラーも、Webブラウザも、画像ビューアも、Media Playerでさえ、解像度が広いというだけで使い勝手が変わる。もうネットブックには戻りたくない気持ちになったほどだ。

 本体の発熱は、Atom Z520を採用しているということもあり、長時間使っていても気にならない。音楽を再生しながらWebブラウザを使う程度ならあまり熱くならないようだ。室温摂氏26度の状態で、WebブラウザでYouTubeの動画を15分ほど連続再生したときの表面温度を測ってみたところ、パームレスト部分で摂氏36度程度だった。特定の場所が極端に熱くなるということもなく、キーボードの表面も全体でほぼ同じ温度になる。負荷をなくせば温度も下がるので、通常の使用方法なら熱が気になることはあまりないだろう。動作音も、耳を近付けるとHDD以外の何かが回転している音が聞こえるのでファンは回っているようだが、耳を近付けないと聞こえないレベルである。

11.6型ワイドの液晶サイズは、このノートには十分な大きさ。1,366×768ドットの解像度が使いやすい高負荷時のタッチパッドの温度は摂氏35.9度。室温が26度のときに計測を行なったキーボードの温度は摂氏36.3度。タッチパッドとほぼ同じ温度で、とくに熱いとは感じなかった
本体前面にはインターフェイスはない。左下に見えるスイッチは、無線機能のオン/オフスイッチだ本体背面にはバッテリが搭載されているだけで、インターフェイス類はない右側面には、左からメモリカードスロット、USB 2.0、ミニD-Sub 15ピンがある
左側面は、左からEthernet、電源ポート、USB 2.0×2、マイク、ヘッドフォンがあるメモリカードスロットにはダミーカードが入っていて、使うときに取り外して使用するWebカメラは30万画素だが結構キレイに映る。モバイルノート用としては十分なカメラだ
6セルバッテリは5,200mAh/54Whの容量で、連続駆動時間は約8時間せっかくACアダプタが小型なのに電源ケーブルが太くてかさばる。これは残念持ち運び時に本体を入れることができるキャリングケースが付属している

●ベンチマークテストはネットブックよりも若干低い結果に

 最後に、ベンチマークテストの結果を見ていく。テストには、Futuremarkの「PCMark05 Build 1.2.0」、HDBENCH.NETの「HDBENCH Ver3.40beta6」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」を使用した。比較用には、日本エイサーの「Aspire One D250」と「Aspire One D150」を掲載している。どちらもネットブックだ。

□ベンチマーク結果


Aspire One 751Aspire One D250Aspire One D150
CPUIntel Atom Z520 1.33GHzIntel Atom N280 1.66GHzIntel Atom N270 1.6GHz
ビデオチップGMA 500GMA 950GMA 950
メモリ1GB1GB1GB
OSWindows XP Home Edition SP3Windows XP Home Edition SP3Windows XP Home Edition SP3
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark Score112914961427
CPU Score124615511480
Memory Score202924942374
Graphics Score291590553
HDD Score395837314662
HDBENCH Ver3.40beta6
ALL317943897938870
CPU:Integer779669737994033
CPU:Float534506736164700
MEMORY:Read394515001848016
MEMORY:Write399075024348447
MEMORY:Read&Write704188867784352
VIDEO:Rectangle71491774416786
VIDEO:Text375698008965
VIDEO:Ellipse562047204216
VIDEO:BitBlt121200255
VIDEO:DirectDraw192930
DRIVE:Read648515848052810
DRIVE:Write253965412247805
DRIVE:RandomRead234001805015168
DRIVE:RamdomWrite184072283122212
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
High368N/AN/A
Low54715081459

 気になるCPUの性能だが、PCMark05のCPU Scoreの値がAtom N270に比べて低い。約20%低い値となっており、これはクロックの差とほぼ同じだ。HDBENCHのCPU周りの値もほぼ同じ傾向である。このことから、Atom Zシリーズの性能はAtom Nシリーズとほぼ同じだが、この製品が採用しているAtom Z520は、クロックが低い分だけネットブックよりもCPU性能が落ちるということが分かる。

 メモリ性能は、比較用のネットブックはDDR2-533メモリを搭載しており、この製品はDDR2-667を搭載しているのだが、この製品のほうが値が低い。この傾向はPCMark05でもHDBENCHでも同様だ。Intel US15Wチップセットは定格ではDDR2-533までの対応なので、結果はネットブックと同じ程度の値になるはずだが、モバイル端末向けのチップセットなので若干メモリコントローラの性能が低いのかもしれない。また、Atom N280搭載ネットブックの値が高いが、これはFSBクロックが667MHzで、Atom Z520およびAtom N270の533MHzよりも速いからだ。

 HDDの性能は、比較用のAspire One D150だけPCMark05の値が妙に高いが、これは少々おかしな値が出ているのだと思われる。また、Aspire One 751はHDBENCHのDRIVE:Writeの値が妙に低い。そのため、HDDの転送速度を計測するCrystalDiskMark 2.2.0でも計測を行なってみたが、連続読み出しが66.4MB/s、連続書き込みが50.8MB/s、ランダム読み出しの512Kが32.4MB/s、ランダム書き込みの512Kが41.37MB/sだった。

 グラフィックス性能は、予想通りかなり低い値となっている。FINAL FANTASY XIでは、値がどうというよりも実行画面が紙芝居にもならないような状態だった。3D性能はオマケ程度と考えたほうが良さそうだ。まあ、このクラスのモバイルノートにとって、Windows Vistaを使わないのなら3D性能はほぼ不要なので大きな問題ではない。だが、実はGMA 500は3D性能だけではなく2D性能も低いということが、HDBENCHのVIDEO周りの値に表れてしまっている。こちらもメモリ性能と同様に、チップセットがそもそもモバイルノート向けのものではないので仕方がない。

●微妙な位置付けの製品だが今後の動向次第では魅力的に

 実際の使用感だが、だいたいベンチマークテストの結果と似たような体感速度である。ネットブックよりも若干遅いように感じながらも、Webブラウザやテキストエディタ、Excel、MP3ファイルの再生、YouTubeの視聴などを、それ程不満なく行なえる。この製品とほぼ同じ大きさなのに、画面が窮屈なネットブックに比べれば遥かに使いやすくて快適だ。解像度の広さは、性能を犠牲にしてでも得る価値のあるものだと思う。

 OSの起動時間は、ようこそ画面が表示されるまでが34秒、マウスカーソルの砂時計が消えるまでが61秒だった。シャットダウンの時間は40秒だ。いずれも、3回計測を行なって平均を取った。だいたい、HDD搭載ネットブックと同じ程度の速度だ。

 バッテリ駆動時間は、いつも通りテキストエディタでこの文章を書きながら、30分程度MP3ファイルを再生しつつ、無線LANを使用してWebブラウザをときどき使うという方法で計測を行なった。結果は、バッテリ残量が10%になって警告が表示されるまでが5時間30分、残量が3%になって休止状態になるまでが5時間40分だった。さすが、8時間の連続駆動時間を謳っているだけあり、かなり長い時間使える。

 最後にAspire One 751についてまとめると、この製品は、やはり画面が広くなったネットブックとして見るのが正しい。性能はネットブックよりも低いので、解像度の広さにどれだけのメリットを感じるかという辺りが、製品選択のポイントになる。ネットブックと比較した場合、解像度が広いことによる使い勝手の向上はかなりのもので、比較にならないほどこちらのほうが使いやすい。ただし、解像度以外の部分ではネットブックのほうが高性能なので難しいところだ。

 また、もう1つ悩ましい問題がある。それは、ネットブック以上ノート未満の、ちょうどこの製品がターゲットとしている市場に向けて、Intelが新しいCULV(Consumer Ultra Low Voltage)プロセッサを投入してきたことだ。日本エイサーも既に搭載ノートを発売しており、Core 2 Duo SU9600(1.6GHz)を搭載する重量1.6kgのノートが90,000円前後で売られている。まだ登場直後ということで高価であり、重量も重いが、今後各社からより安価でより軽い製品が出てくる可能性は高い。また、各社から次々に同様の製品が出てくれば、ネットブックと同じようにどんどん価格が下がる可能性がある。そうなったとき、この製品の居場所があるのかどうかが問題だ。

 できるだけ低価格になるようにパーツ構成を工夫し、高解像度版ネットブックのような製品を出すというのは良いアイデアだと思う。しかし、CULVプロセッサが出てきた今、ちょっと出すのが遅かったのではないだろうか。もう少し早く出てきていれば、魅力的な選択肢として、もっと高く評価できた。ただし、今後もっと価格が下がり、この製品がネットブックよりも少し高い程度の価格になった場合には、CULVノートが多数出てきたとしても、結構魅力的な選択肢になるだろう。今後の動向に期待したい。

バックナンバー

(2009年 6月 15日)

[Text by 小林 輪]