元麻布春男の週刊PCホットライン

Adamoの思想を引き継ぐ「デル Vostro V130」を試す



 ノートPCを選ぶ際に、大きなポイントとなるのは内蔵する液晶ディスプレイの大きさだ。液晶ディスプレイの大きさで、全体の大きさが決まるし、それによって用途、持ち運び用か据え置き(メインマシン)用か、も自ずと決まってくる。本来であれば、持ち運び用であってもディスプレイは大きい方が良いに決まっているのだが、ディスプレイサイズの大きなノートPCは重量がかさむ。どこかでディスプレイサイズと重量の妥協を図らねばならない。

 その妥協のポイントとして、筆者が最近気に入っているのは13型だ。筆者の手元にある(筆者が自分で購入した)3台のノートPCのうち、MacBook Air 13インチにIdeaPad U350と、13型液晶ディスプレイを採用したノートPCが2台を占める。筆者が購入するノートPCは、あくまでも持ち運び用なのだが、筆者にとって文字の見やすさと携帯性のバランスをとると、今はこのサイズになるらしい。

●前モデルから大きく進化
Vostro V130

 そんな13型液晶搭載ノートPCのラインナップに最近加わったのがデルのVostro V130だ。デルにはノートPCだけで、コンシューマ向け、ビジネス向けを合わせて、計6種類ものブランドがあるが、このVostroは中小規模事業者向けのビジネスノートPC。大企業向けのLatitudeに比べると、機能的に欠けている部分(vProのサポート等)もあるが、その分安価で、プラットフォームの更新が早いという特徴がある。

 以前はVostroというと、どうも個性がハッキリしていないPCという印象があった。コストパフォーマンスは悪くないものの、コンシューマ向けのInspironと何が違うのだろうと思えたり、Latitudeに比べて質感的に見劣りするといったマイナス面が気になることもあった。が、現在のVostroは、すべて筐体にアルミニウム素材を採用、カラーバリエーション展開と合わせ、明らかにLatitudeと異なる個性を備えたPCになっている。

 今回取り上げたVostro V130は、シリーズ中のモバイルPCという位置づけで、光学ドライブを持たない1スピンドルの超低電圧版プロセッサ搭載ノートPCだ。本校執筆時点では併売となっているVostro V13の、事実上の後継機だと考えられる。価格帯もほぼ同じである。

 Vostro V130の大きな特徴は、筐体の厚みが16.5mm〜19.7mmとフラットかつ薄型で、重量(実測値1,653g)以上にカバンに入れやすいことだ。それでいて価格は、搭載するプロセッサにより異なるが、6万円弱から9万円弱とリーズナブル(本校執筆時点におけるデルのパッケージ価格)。Celeronベースのエントリーモデルを除くと、プリインストールOSがWindows 7 Professionalになっている点も割安感がある。

2cmを切る薄型でフラットな筐体 重量は実測で1,653gだった

 Vostro V130のベースとなるのは、ArrandaleプロセッサをベースとするCalpellaプラットフォーム。プロセッサとして、Celeron U3400(動作クロック1.06GHz、HyperThreadingなし)、Core i3-380UM(同1.33GHz、HTあり)、Core i5-470UM(同1.33GHz、TurboBoost時1.86GHz、HTあり)の中から選択することができる。前のVostro V13は、ほぼ同じ筐体で、PenrynプロセッサによるMontevinaプラットフォームベースだったが、なぜかシングルコアのプロセッサ(CeleronおよびCore 2 Solo)しか用意されておらず、用途によっては性能的に不満を感じることがあった。Vostro V130では、搭載するプロセッサはすべてデュアルコア化されており、幅広い用途に対応可能となっている。

 このプラットフォームの更新に伴って、もう1つ改善されたのが搭載メモリ容量だ。Vostro V13では1スロットのみのDIMMスロットに、2GB DIMMを1枚実装できるだけだったが、Vostro V130ではメモリスロットの数こそ変わらないものの、4GB DIMMが使えるようになっている。メモリクロックは1,066MHzから800MHzに落ちてしまったが、4GB搭載可能なメリットの方がはるかに大きい。

 ほかにも無線LANがIEEE 802.11b/g対応からIEEE 802.11b/g/n対応になったり、アナログRGBのみだった外部ディスプレイ出力にHDMIが追加されたり、USBポートが1つ追加されたりと、細かな改良が加えられている。V13からなくなったものは、ExpressCard/34スロットくらいで、多くのユーザーは、このスロットと、HDMI+追加のUSBポートの選択であれば、後者を選ぶのではないかと思う。Vostro V13は、見た目や薄さが機能と性能に先行した印象があったが、Vostro V130になって機能と性能が追いつき、実用的なマシンになったという印象を受ける。

●インターフェイスを背面に集め、フラットで特徴的なデザイン

 さて、今回試用した評価機は、本校執筆時点でパフォーマンスモデルというパッケージで販売されている製品。詳細な仕様は表1にまとめておいたが、プロセッサにCore i5-470UMを採用した上位モデルである。メモリも4GB搭載している。HDDも500GB(7,200rpm)で、本シリーズ向けとしては最大容量になっているが、残念ながらSSDのオプションは用意されていない。

【表1】評価機の仕様
OS Windows 7 Professional 64bit
CPU Intel Core i5-470UM (1.33GHz/3MB L3)
Chipset Intel HM57 Express
Graphics Intel GMA (チップセット内蔵)
Memory 4GB DDR3-800×1 (空きスロットなし)
Display 13.3型HD(1,366×768ドット)LEDバックライト
HDD 500GB 2.5インチ 7,200rpm(WD5000BEKT)
外部ディスプレイ アナログRGB + HDMI
Webカメラ 200万画素
拡張スロット なし
メモリカードスロット 5 in 1
USB 2.0×2 + eSATA/USB 2.0兼用×1
内蔵スピーカー モノラル
LAN GbE(Realtek)
WLAN IEEE 802.11b/g/n
BT Bluetooth 3.0+HS
バッテリー 6セル(30WHr)
重量 1,653g(実測値)

 季節柄、梱包から取り出してまず感じたのは、アルミニウム筐体のひんやりとした手触りだ。最薄部と最厚部の差が小さく、「板」に近いデザインだが、両脇が底面に向かって斜めにそぎ落とされているのに対し、前面と背面がほぼ垂直にカットされたような、特徴的なデザインとなっている。厚みといい、ヒンジの位置といい、初代Adamoの面影を感じる。実際、前モデルのVostro V13にはAdamoのノウハウが活かされているという。

 本機では、ほとんどのポート類が背面に集められており、わずかに前面にヘッドフォンジャックとマイクジャックが、そして右側面に5 in 1のメモリカードスロットが用意されている程度だ。ダミーカードが挿されたメモリカードスロットは、SDカード全体がスッポリとおさまるものの、メモリースティックはDuoではなく、フルサイズ版の対応となっている。

 デザイン上のもう1つの特徴は、底面にユーザーがアクセス可能なベイ類が一切ないことだろう。メモリモジュールやHDDの交換はもちろん、バッテリまで内蔵になっており、ユーザーによる交換は考慮されていない。このあたり、好き嫌いが分かれるデザインとも言えるし、オーダー時にメモリ搭載量やHDD容量について、よく考えておく必要がある(といってもメモリ搭載量は4GB一択かもしれないが)。

手前側は右端にヘッドフォン、マイクのジャック 右側面は真ん中辺りにメモリカードスロット(ダミーカード式) 背面に集中しているインターフェイス。左からHDMI出力、USB 2.0/eSATAポート、Gigabit Ethernet、ミニD-Sub15ピン、USB 2.0×2、ACアダプタ用

●予想以上の性能、価格のバランスが良い

 同じCalpellaプラットフォームの超低電圧版プロセッサ搭載モデルとして、デルにはコンシューマ向けのInspiron 13zが存在する。こちらは、一般的なノートPCのデザインで、バッテリ交換やメモリの増設等がユーザーによって可能だが、本機より厚く、重量も重い。内部へのアクセス性と重量/薄さはトレードオフになっており、好みに合わせて選ぶしかない。ちなみにバッテリ駆動時間は未発表だが、おそらく公称で4時間30分程度、ワイヤレス接続等を行なう実環境ではその6割前後だろう。そう考えると、本格モバイルというより、社内モバイルに近い性格と考えられる。

 キーボードはEnterキーの右側に、特殊キーが1列並ぶタイプ。ただし、13型ワイドで横幅が十分確保できるため、キーピッチが十分あり、Enterキーを打つつもりでPgUpやPgDnを打つ、といったミスは起こりにくい。右シフトがやけに小さいことを除けば、特に変わった配列ではない。筐体が薄いだけに、キーのストロークは浅いが、しっかりとしたクリック感があるため、タイピングが難しいとは感じなかった。タッチパッドは、ホームポジションに合わせて左寄りに設けられている。

Adamoを彷彿とさせる特殊なヒンジ Enterキーの右側に特殊キーが並ぶデルお馴染みのキーボードだが、13型ワイドのためEnterキーが大きめで、誤爆はほとんど無い

 最後に性能についてだが、思った以上に良好であった。ここでは参考までに、手元にあったIdeaPad U350のCeleron 723搭載モデルと比較しているが、スペック的にはVostro V13のローエンドモデル(Celeron 743搭載)に近い。Vostro V130のベンチマークスコアは、AES-NIが有効になるPCMarkVantageのCommunicationsのような特殊なものを除いても、おおむね2倍以上のスコアとなっており、シングルコアに対するデュアルコアの優位性がハッキリと示されている。TurboBoostもかなり効いているようで、できればTurboBoostのついたCore i5を選択したいところだ。触っていても、モタつくことが少なく、言われなければ超低電圧版のプロセッサと気づかないだろう。

【表2】ベンチマーク結果

Vostro V130 IdeaPad U350
CrystalMark 2004R3
Mark 74831 30459
ALU 19774 6048
FPU 19145 5305
MEM 13476 7222
HDD 13022 6636
GDI 6846 3481
D2D 1053 802
OGL 1515 965
PCMarkVantage 32bit
PCMarks 3979 1264
Memories 2388 1107
TV and Movies 2804 824
Gaming 2288 877
Music 4668 2034
Communications 3472 1063
Productivity 3989 1474
HDD 4882 2466
PCMarkVantage 64bit
PCMarks 4466 na
Memories 2484 na
TV and Movies 2703 na
Gaming 2593 na
Music 4992 na
Communications 3982 na
Productivity 4534 na
HDD 4864 na

 Adamoに端を発したデルの薄型ノートPCは、Adamoというブランドがなくなっても、形を変えて生き残った。SMB(中小規模事業所)向けのビジネスノートPCに変貌したのは意外ではあったが、薄くてフラットな筐体は持ち運びしやすいしスマートだ。アルミニウム製の筐体は、質感も悪くないし、価格と性能のバランスもとれている。余計なソフトウェアがプリインストールされていないこと、リカバリメディアが添付されていることは、ビジネス向けモデルならではだ。バッテリ駆動時間を重視するユーザーには厳しいかもしれないが、そうでなければ悪くない選択ではないかと思う。