元麻布春男の週刊PCホットライン

3Mのモバイルプロジェクター「MPro150」を試す



 会議室でのプレゼンテーションツール、あるいはホームシアターでの大画面AV機器として、プロジェクターはすっかりお馴染みだ。前者としては、明るい会議室での利用や広い会場への対応を目指し、より明るさを増す方向へ、後者としては、明るさはほどほどで、より画質を高める方向へ、それぞれ進化を続けている。

 この2つのメインストリームに加え、もう1つの利用形態がプロジェクターにある。それはポケットプロジェクター、あるいはミニプロジェクターと呼ばれる種類の製品だ。ハッキリとした定義があるわけではないが、サイズとしては、だいたい手のひらに載る程度の大きさで、バッテリ駆動が可能な製品を指すことが多い。バッテリ駆動のプロジェクターだから、据え置き型のような大光量は望むべくもないが、手軽にどこにでも持ち運んで利用できる点が魅力だ。

 ここで紹介する住友スリーエムの「MPro150」は、内蔵リチウムイオン電池を電源に、最大2時間の連続利用が可能な超小型のプロジェクターである。大きさは130×60×24mm(幅×奥行き×高さ)と超小型で、重量もバッテリ込みで167g(実測値、本体のみ)と超軽量だ。640×480ドット(VGA)解像度のLCOSに表示したイメージに光源の光を反射させることで、スクリーンに像を投影する。光源には長寿命(約2万時間)のLEDを用いる。光源の明るさは15ルーメンで、ビジネス用据え置き型プロジェクターの2,000〜5,000ルーメンとは比べるべくもないが、これでもこのクラスとしては最も明るい部類に入る。

MPro150のパッケージ 上面には操作ボタンとスイッチが並ぶ ボタンはバックライトつきで、暗いところでも操作できる
付属の三脚にセットしたところ レンズ左にピント調節用のダイヤルがある レンズの反対側にAV端子、ヘッドフォン端子、USBコネクタ、電源ジャックが並ぶ。AV端子はミニHDMIコネクタを利用しているが、信号はアナログである。
本体右側面 本体左側面

 基本的にプロジェクターは、明るければ明るいほど投影面(スクリーン)までの距離を伸ばすことができる。距離を伸ばせば、それだけ投影サイズが大きくなる。また光源が明るければ、周囲を暗くする必要性が小さくなる。

 MPro150の投影距離は、16cm〜102cmとなっており、その時の投影サイズは6インチ(12cm×9cm)〜50インチ(102cm×76cm)となっている。が、50インチサイズに投影して実用的な視認性を得るには、周囲をほぼ真っ暗にする必要がありそうだ。実用的には投影サイズ20インチ(41cm×31cm)程度が想定されているようで、この時の投影距離は49cmとなる。この投影サイズであれば、室内を完全に真っ暗にしなくても、半分程度照明を落とした会議室で利用できるだろう。投影面までの距離が約50cmということは、4〜5人でスクリーンを囲む、という感じである。

 対応する入力信号は、アナログRGBあるいはコンポジットビデオとオーディオ(ステレオ)で、それぞれ専用のコネクタに対応したケーブル(VGA+音声ケーブルおよびAVケーブル)が付属する。対応するRGB信号はVGA〜WXGA(1,280×768ドット)となっているが、最終的に投影される画素数はあくまでもVGA(640×480ドットに縮小されて投影)となる。別売オプションとして用意されているiPod/iPhone用AVアダプタ(IPDC-120)を利用することで、iPodやiPhoneのDockコネクタと本機を直結し、iPodの写真やムービーを投影することもできる。

XGA(1,024×768ドット)解像度での投影 SVGA(800×600ドット)解像度での投影 VGA(640×480ドット)解像度での投影

 MPro150が面白いのは、プロジェクターとして他の機器、たとえばPCのディスプレイ出力を投影するだけでなく、単体でのデータ再生が可能なことだ。携帯電話等にも採用されているピクセル・ファイル・ビューワーを搭載しており、本体内蔵の1GBフラッシュメモリ、あるいはmicroSDカードスロット(2GBのmicroSDカードが付属するが、対応は32GBまで)に書きこまれたファイルの再生と投影を行なうことが可能だ。

 対応するファイルフォーマットは、Word(doc/docx)、Excel(xls/xlsx)、PowerPoint(ppt/pptx)にPDFとなっており、その気になれば軽量な本機だけを持ち運んでプレゼンテーションすることも不可能ではない。ほかにもムービー再生機能を備えており、g3pp、g3p2、mp4、avi、movといった拡張子のムービーファイルを単体で再生可能だ。音声は、内蔵のステレオスピーカー(出力0.5W×2)で再生できるほか、ヘッドフォンジャックも用意されている。

 というわけで、このMPro150の実機だが、男性の手のひらにすっぽりと収まるくらいのサイズ。ちょっと重めのリモコンという感じだ。上部にはiPodのような円形の操作ボタンとスイッチがあり、操作ボタンでファイルモードで動作する際の送り/戻りや、表示の拡大を行なうことができる。操作ボタンの役割は、モードによって異なるため最初はとまどうが、使っているうちにだいたい理解できる。スイッチは電源スイッチと戻るスイッチ(メニューの階層を戻る)の2つで、電源スイッチを長押し(3秒以上)することでオン/オフが可能だ。

ファンは口径が小さいためかノイズがやや目立つ

 本体の右側にはmicroSDスロットと冷却ファンがある。筐体が小型ということは、ファンの直径も小さいということであり、回転音はちょっと甲高い。夜の住宅地では気になるかもしれないが、音楽等を再生すれば目立たなくなる。底面には開閉式のスタンドと三脚穴が用意される。本機は投影光にオフセットがない(本体の軸上にまっすぐ投影光が伸びる)ので、光軸を上に向けるためにスタンドが用意されているのだろう。が、卓上で利用する場合は、このスタンドでも角度が不足しがちなので、パッケージにはミニ三脚が付属する。

 投影レンズのある前面左側には、焦点調節ダイヤルが用意されており、手動でピントの調節を行なう。レンズの反対側(背面)には、AV入力端子、ヘッドフォンジャック、USB端子、電源端子が並ぶ。本機には標準でコンポジットビデオ入力用と、アナログRGB入力用の2本のケーブルが添付されており、音声信号とともに入力することが可能だ。この入力端子からの信号が優先で、入力がない場合は自動的に動作モードがファイルモード(内蔵フラッシュあるいはmicroSDカードに記録されたファイルを再生するモード)に切り替わる。


リチウムポリマーバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動ができる

 内蔵フラッシュにデータを書き込むには、本機をPCにUSBケーブルで接続する。本機の電源を入れず、ただ接続するとUSB経由の充電が行なわれ、電源を入れるとUSBマスストレージデバイスとして認識される。USB充電でフル充電を行なうには約6時間を要するが、付属のACアダプタ経由であればその半分で充電は完了する。

 今回は、このMPro150の本体に、210gと軽量で手軽に持ち運びできるモバイルファイルスクリーン(MFS-20)と、iPod接続用のAVアダプタセット(IPDC-120)の2種類のオプションを加えて利用してみた。MFS-20はちょうどA4のバインダーくらいの大きさで、開くと20インチのスクリーンになる仕組みだ。スクリーンは銀色のフィルムで、暗くない部屋での利用を助けてくれる。MFS-20を広げていると、紙芝居屋さんにでもなったような気がしてくる。直販ショップでの価格は7,140円とやや高いが、サードパーティのオンライン通販サイトでは5,000円前後で売られているようだ。


A4ファイルサイズのモバイルスクリーン(MFS-20) MFS-20に投影してみたところ PCと組み合わせて投影したところ

 IPDC-120は、iPodに接続するDockアダプタと、MPro150を接続するケーブルのセット(直販サイトの価格は5,040円)。注意すべきはケーブルにアダプタ側とMPro150側の向きがあることで、もし何も投影されなかったら、ケーブルの向きを逆にすると良い。またiPod/iPhoneの映像出力にはメニュー等は含まれず、出力されるのはコンテンツのみとなる。

iPod/iPhone接続アダプタIPDC-120 iPhoneと接続してみたところ YouTubeの動画などをiPhoneから投影できる

 その使い勝手だが、PCを接続した場合は一般的なプロジェクターと基本的には同じ。ただ、オフィスの据え置き型に比べれば暗いし、解像度が低い点に気をつける必要はある。あまり細かな文字等は避けた方が無難だ。本機は1,280×768ドットまでのアナログRGB信号を受けつけるが、この解像度の動画をPCから送り込まれると、画像が乱れることがあった。最終的な出力解像度を踏まえて、コンテンツ等を選択した方が良いだろう。その点、iPodやiPhoneを本機に接続して再生するのは、丁度いい感じだ。ただ、軽量な本機に対してケーブルが太いため、ケーブルに触ると簡単に付属の三脚ごと本機が倒れてしまう。軽量なおかげで、倒れたからといって壊れる心配はあまりないのだが、気になるならばもう少ししっかりしたミニ三脚(クランプ式のものなど)を使うと良いだろう。

 一方、ファイルモードだが、こちらも意外と使える印象だ。Word文書のように、サードパーティ製のアプリケーションではレイアウトが崩れやすいものは、本機が内蔵するピクセル・ファイル・ビューワーでも問題が起きやすいし、あまりに高解像度の写真や図版を用いたプレゼンテーションは、見にくかったり、場合によっては内蔵メモリの不足というエラーが表示される。

 しかし、これらは例外的なものであり、大半のファイルは問題なく本機だけで投影することが可能だった。小さな文字の表示には適さないが、3段階のズームで部分拡大できるので、全く読めないという心配はほとんどない。むしろ、本機の操作ボタンでプレゼンテーションを行なうと、どうしても画面が揺れてしまう。オプションでいいからリモコン、できればワイヤレスのものが欲しいところだ。

 動画の再生は、上述した拡張子のファイルに対応するが、おおむねSD解像度以下のものに限られるようだ。iPodやPSP向けにエンコードしたMPEG-4/AVCファイルの再生には丁度いい。AVIファイルについてもDivX 5.02でエンコードしたファイルが再生できたが、高解像度に対応できないし、120fpsのように一般的でないフレームレートの再生では乱れたり、全く再生できないケースも見られた。また、いったん再生を始めると、一時停止はできるものの、同一ファイル内で先送りしたり、巻き戻したりすることはできない。長編の映画等の再生より、PV等の短いものをファイル単位で再生することに向いている印象だ。

PCの映像を壁に投影したところ 同じく天井に投影したところ
ケーブルをつけずに電源を投入すると表示されるメニュー。動画再生やPDFファイルの閲覧ができる 内蔵のデモ動画を投影したところ PDFファイルを投影したところ

 こうした制約があるとはいえ、PCを必要とせず、microSDのデータを投影できるというのは、なかなか楽しい。ムービーの対応(g3ppやg3p2への対応)でも分かるように、本機は携帯電話と併用することを意識している。ケータイで撮影した写真やビデオを、外出先、旅先で簡単にみんなで楽しめるのはかなり気が利いている。たとえば、キャンプの夕食の後、その日に撮影した写真を家族で見ながら団らんを過ごす、などというのは本機が活躍しそうなシナリオだろう。ぜひ、オプションのMFS-20といっしょに持って行きたい。

 また、出張先のホテルで、明日のプレゼンテーションに備えて本機でリハーサルを行なう、というのも有力な利用法だ。万が一、本番でプロジェクターのある会議室が借りられなくても、少人数であれば本機でプレゼンを行なうこともできる。本機は投影レンズの反対側(コネクタのある面)がフラットだから、テーブルの上に立てて、天井に投影することも可能だ。就寝前に、天井という大スクリーンを使って、ベッドに寝そべってお気に入りのPV等を見る、という使い方もアリだろう。

 最新の液晶やプラズマの薄型TVと違って、本機が映し出す映像は、少し薄ぼんやりとしていて、ちょっとノスタルジックな味わいを持つ。筆者のような中高年には、幻灯機を思い出させるデバイスだ。それも本機の魅力の1つではないかと思う。

 色々な使い方が考えられる本機だが、難点を挙げるとすればやはり価格だろう。直販サイトで約5万円、ネット通販サイトで37,000円〜4万円台半ば、モバイルスクリーン(MFS-20)を合わせると、4万円を越えてしまう。出力が高いとは言えない本機を使う上で、モバイルスクリーンはぜひ欲しいオプションの1つ。セットで3万円くらいになると手を出しやすくなるのだが。さらに光源を明るくするとともに、低価格化も図って欲しいところだ。